【完結】「助けてノノえもん!」~ブルアカの世界でノノミとエッチしまくるダメ先生~ 作:春画屋@二次創作R18
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6000字(後編)
直接繋がりがあるもの:
ホシノ等まとめ → 56回 → 今回(前編・中編・後編)です。
☆ホシノ等まとめ
→https://syosetu.org/novel/350152
☆第56回:「東京にて」
→https://syosetu.org/novel/308525/71.html
参考:
対策委員会編1〜3章
最終編
デカグラマトン編
シロコ・シロコ*テラー・その他キャラ、絆ストーリー
私、小鳥遊ホシノはシャーレに来ていた。
私を含む何人かが今日ここに集まるのは、クロコちゃん——『シロコ*テラー』という、「もう一人のシロコちゃん」を呼び出し、迎えるためだ。集まるのは、先生、私、ノノミちゃん、シロコちゃん。ある程度の事情を知り、彼女に
ちなみに「クロコ」というのは、『小鳥遊ホシノ』をブルーアーカイブのプレイヤーが「おじさん」と呼ぶのと同じで、「もう一人のシロコちゃん」の服装が黒いことから、そう呼ばれているそうだ。区別しやすいので、私たちもそう呼んでいる。こういう時、『現実世界』の文化はなかなか役に立つ。
シャーレの執務室に入ると、そこには既に先生がいた。
「やっ、先生。相変わらずのんきそうな顔してるね〜」
「そりゃあ、そうやってシリアスにならずにいるのが俺の仕事みたいなもんでしょー?」
「あははっ。そうでなきゃ、みんな調子狂っちゃうよね」
「先生」——元「プレイヤー」であり、『現実世界』という異世界の人間であり、世界の一部である『シャーレの先生』でもある『彼』。『彼』がのほほんとした「世界観」を維持することで、
「
「こっちこそ、後方で支援してくれる人がいるのがありがたいって、あらためて骨身に染みてるよ。シャーレ所属の子への仲介、弾薬や物資の補給、いろんな情報。先生は対応も速いし、多少の無茶は通してくれるしね。現場では、うちの
「黒服のやつ、ちゃんとやってる?」
「『ゲマトリア』関連なんかは、もともと相棒一人で出来るような簡単な仕事ばかりだからね。その他だって、せいぜい自動販売機の点検に行くぐらいのもんだし。私が出しゃばっちゃって、申し訳ないくらいだよ」
「でも、おじさんと「一緒に」やることには意味があるだろ? うちの黒服くんに限らず。ヒナが「肩を並べて戦えて嬉しい」なんて言ってたよ?」
「そんなこと言ってた?」
「一人で出来ることは一人でやる」、それが必ずしも正しいわけじゃないのは、今なら分かる。呼吸を合わせ、背中を預ける。誰が何を考え、どう動くのか、一緒に戦うことで他人を理解できる。理解してもらえる。戦力だけの問題じゃない。少なくとも、私と相棒はそうして絆を深めた。
理解し合うことは、必ずしもいい結果に繋がるとは限らない。それが原因で衝突することだってある。戦い以外に、先生たちのようなやり方があるのも知っている。それでも私は、今の自分に一番向いていると思う方法で、他人と理解し合おうとしている。その結果として私の生き方を理解してくれた子たちが、間違いを犯したりはしない——そう信じている。
……とはいえ、基本的に平和な
「『シャーレの先生』から、活躍の場を奪っちゃって悪いねぇ〜♪」
「いやいや、どんどん奪ってよ。
「相変わらずだねぇ〜。ま、ノノミちゃんもそのぐらいの方がいいらしいけど」
いつものように軽口を叩いているけど、根っから後方からのサポートの
「「器」の件はどう? 『シャーレの先生』の「器」の代わりになるような「器」なんて、そう見つかるもんじゃないだろうけど」
「ダメだねえ。ヴェリタスとエンジニア部が、いまだにヒマリのパソコンの中に引きこもってる『ケイ』のために体を作ってるんで、それを参考に俺の分も作れないかって聞いたんだけどさ。そんなのに入ろうなんて、危険すぎるって猛反対されちゃって」
「なら、ダメなんだろうねぇ。AIのケイちゃんとは全然話も違うだろうし。ヒマリさん、先生が無理してまで『現実世界』に帰るのにも反対してるし、心配して当たり前か」
「とはいえ、なし崩し的に俺がずっと「こっち」にいる状況も、どうにかしなきゃならんと思ってるらしいし。目的を全部聞けば、話だって変わってくるでしょ。まあそれも、今日クロコを迎えて、当面やることが片付いてからだな」
「「器」が必要な状況を作れるかどうかすら分からないしね。気長に探そう。それより、ケイちゃんはいまだに外に出てくる気はないの?」
「それが、エロ小説書くには、執筆も資料集めもパソコンの中の方が便利だからと言い張っているそうで」
「エロ……」
うーん、いつもながら、ひどい理由だ。『Key』——「ケイ」と名付けられたAIのあの子は、ヒマリさんが引き取って育てていたらしいんだけど……
「ヒマリさん、何だってあの子にそんな教育しちゃったの。天才の考えることは分かんないなあ……」
「「天才」じゃなくて、「超天才清楚系なんちゃら美少女ハッカー」らしいぞ。元のブルアカだって似たようなもんだろ。ゲーム開発部にクソゲーで教育されちゃったアリスとか」
「うちの相棒と違って、アリスちゃんの方はエロゲーじゃなくて良かったよ」
『シャーレの先生』という「器」に代わるもの——そんなものを探し始めたのは、先生があることを思いついたからだ。ほとんど夢物語だけど、それが可能なら『彼』は『シャーレの先生』から引退出来るかも知れない。
うちの相棒が以前、こんなことを言ったそうだ。「「概念上の『連邦生徒会長』」でこれだけ上手くいっているのだから「概念上の『先生』」でも用は足りるのでしょう」と。
——「概念上の先生」なんてもんがもし成立するなら、「中身」である『俺』なんかいらないわけだ。なら、シャーレでやってる実務なんかを極力切り離して、形式上だけでも「概念上の先生」に限りなく近い状態を作り上げれば、中身である『俺』を引き
『前の先生』——『あの人』だって、もしかしたら帰ってこられるかも知れない。『彼』と入れ替わりじゃなく、同時に存在出来るかもしれない。
「もし、俺の考えていることが可能なら、あいつもきっと同じ結論に行き着く。俺が「こっち」で準備さえしておけば、元の『シャーレの先生』の「器」に入ること自体は簡単なはずなんだ。だったら、『あいつ』だって「あっち」を引き払う準備くらいして、俺に合わせてくれるだろ?」
「引き払うって……それ、『現実世界』にいた『あなた』って存在の
「そんなこと言ったら、『俺』が「こっち」に呼ばれてここにいること自体、無茶苦茶なんだぜ? 『俺』が「あっち」に
——俺は「先生」をやめるつもりはないよ。シャーレ所属の『俺』として今までと同じようにやっていく。だから、もし成功したら三人でやっていこうぜ。「先生」がやるようなことは、『俺』と、帰ってきた『あいつ』と、おじさんとで。
その言葉が本当に嬉しかった。自分自身とノノミちゃんのため、他の子たちのため、いろいろ理由はあるにせよ、私の「会いたい」という、ささいな望みを覚えていてくれた。「三人で」と言ってくれた——
あまりにも
「ノノミには絶対怒られるよなあー。そこまでして「こっち」に残ろうとするな、とか。我ながら発想がマッドサイエンティストみたいだし」
「他にいい方法があるなら、そっちにするんだけどねぇ。まあ、移った先の"アレ"がちっちゃかったら、ノノミちゃんだって不満だろうし〜? うへへ」
「おじさん、下品」
「ハナコちゃんほどじゃないでしょ?」
「コハルにはまとめて「エッチなのは駄目! 死刑!」って言われてるじゃん」
「あれは、コハルちゃんの基準が厳しいだけだよぉ〜。それに、先生だって……」
「また、どっかで何か聞いてきたの!? アカリか誰かか!?」
なんて、いつもバカなやり取りをしている。
「何にしても、「連邦生徒会長への窓口」みたいな概念に成り果てつつある『シャーレの先生』は、完全に名前だけの存在にしておいて損はないだろ。シャーレの仕事の実務部分を切り離すのは前からやってるし」
「キヴォトスが「先生」に依存しなくなるのは、それだけでも意味があるからね。今日のことが終われば、「先生」の超常的な力はいらなくなるはずだし」
「器だって、探すだけなら
「うへ〜、どっかで売ってればいいんだけどね〜」
「シャーレの経費で落ちるかな、それ」
その他、「うちの相棒が一番キレそう」「あいつ、俺のこと大好きだもんな」「頭かたいんだよねぇ〜」などなど、まるっきり悪だくみをする悪ガキ二人状態。それが楽しかったりする。
——それに、この人相手じゃないと聞けないこともあるんだよね…….。
少しためらったけど、私は聞いてみることにした。
「……あのさ。私、『あの人』に嫌われたりしてないかな」
「うん? 『前の先生』の話だよな? 何をいきなり……」
「ほら、あの日。私がうちの相棒と一緒に行動するって宣言した時、私、「あっちの世界」から「読んで」るはずの『あの人』に向けて、結構キツいこと言っちゃったでしょ? 『メインストーリー』のままで良かったとか、『あの人』が必死の思いでやったはずのことを、全部否定するような……」
「ああ。あれは言っていいんだって。おじさんが我慢して何も言わない方が問題だってのは、あいつも含め、あの場で聞いてた人間の総意だろうし、本気で責めてたわけじゃないでしょ? 何より、おじさんが自分の意思で行動したいって思うように——」
「そうじゃなくて。自分が言ったことは間違いじゃないと思ってる。単に言葉通りの意味じゃないっていうのも、分かってくれてると思う。でもほら、『あの人』だって人間なんだし、生意気なことを言われたら怒りたくもなるだろうし……ううん、きっと傷ついた。あの時は、無条件に許してくれるんじゃないかって勝手に思い込んでたけど……。でも、そんなことしておいて、「会いたい」とか「待ってる」なんて言ってたら、嫌われてもしょうがないんじゃないかって、最近不安で……え? 何、その顔。何ニヤニヤしてんの? 一応、真面目に悩んでるんだけど」
「いや、これはノノミの言ってるのが正解かなー、なんて」
そういえば、最近ノノミちゃんによく言われているのを思い出した。
「……そうだね、これが「恋」ってやつなのかもしれない」
「あら? 前みたいに、あわてたり恥ずかしがったりしないんだ?」
「観念したっていうかね……うちの相棒と最初に出会って、デートしたじゃない? あれはかたちだけみたいな感じだったけど、結構楽しくてさ。でも、本当に誰かと行きたいとしたら誰なのかって考えてみると、先生、相棒、それから——そこまで考えて、本命は
先生が優しい笑顔で、軽くため息をついた。
「うわついた感じもなく、そう思うんなら、そうなのかもなあ。だから、そういうのは『あいつ』が帰ってくるまでお預けと」
「一応言っておくけど、最近あらくれ者みたいになってるけど、これでもちゃんと女の子なんだからね? SRTの子たちだって——」
「いや、そういうのもそうなんだけどね。『シャーレの先生』じゃない『あいつ』のことを、そういう風に考えられるってのは本物なのかなって。それこそ、対等な関係でなけりゃそんなこと考えないだろ? まあ、心配しなくたって、怒ってやしないって。おじさんには甘いんだからさあ。ま、ちょっとぐらいは凹んだかも知れないけど……」
「対等」という言葉で、少し嬉しくなる。さっきみたいな話で思ってはいけないのかも知れないけど。私の望みは、別に立派なものなんかじゃない。ただ、『あの人』と対等の人間になりたかった。そのために一人前になりたくて、がむしゃらにやってきた結果、出会った人たちに認めてもらえただけだ。そのおかげで、自信はついた。ヒナちゃんやミヤコちゃん、周りのみんなには、私の方が感謝しなくちゃいけない。
——でも、その分怖い。『あの人』が私を「生徒」ではなく自分と対等な自立した人間として見るなら、もう『あの人』に私の面倒を見る義務なんてない。『シャーレの先生』が無条件に助けなきゃいけない相手じゃないんだ。自分一人でやれと突き放されるかも知れない。一緒にいたいなんて甘ったれるなと言われるかも知れない。あの時のことは「生徒」として許してくれても、次は本当に嫌われるかも——対等に扱われるというのは、そういうことだ。それは怖い。
それでも、私は——
「『あの人』とまた会えたら、もう一歩踏み込んでみたい、かな……なんて思ってる。少し怖いけど、ノノミちゃんや、『あなた』のことを好きになって、『あなた』に踏み込んだ子たちみたいに。……ダメかな?」
「んな、別にダメなんてことなんて何も……いや、『あいつ』か。んー……」
「あ、あれ?」
また背中を押して欲しい、なんて思っていたわけじゃない——つもりだけど、こういうことは無条件に応援してくれると思っていたから、少しとまどう。
「こればっかりは、相手のあることだしなあ……」
「ダメかな? それとも何かある? あ、『シャーレの先生』が「
「枷? ああ……いや、それもそうなんだけど、『あいつ』、自分のために何かを望むことって出来るのかなって。おじさんとそんな話したことあるじゃん。あいつ、中身はちゃんと一人の人間として人格はあるんだろうけど、自分の人生を全部投げちゃってるんじゃないかって」
「ああ……そうか。そうかも。それ、他の子も確か言ってたけど……」
『ブルーアーカイブ世界』に、『シャーレの先生』という「器」の内部に生まれた『あの人』が正確にはどんな存在なのか、私は知らない。でも、今その器に入っている先生——『彼』も、『ゲマトリアの黒服』という「器」に生まれた相棒も、自分の人生をきちんと望んで生きている。でも『あの人』は、その点に関してはそれこそ『ブルーアーカイブ』に出てくる「先生」と同レベルに、何も望んでいないように思える。あれでいろいろエッチなことを考えていた、なんて話で安心するぐらいだ。でも、何もないとは思えない——
「だって、俺があいつの立場だったら……」
「……先生が? 何?」
「え? あー……うん、俺は関係ないね? そうだ、そうだ。今は俺の話はしてないわ。あいつの話ね? 自分のことじゃねーし、ちょっとわっかんねーかなあ!」
「何なの、その不自然な誤魔化し方は。先生もうちの相棒も、その二人の話になると」
いい加減、聞き出してやろうか。この人たちの下手なすっとぼけ方、付き合うの面倒くさいんだよね。『あの人』と先生がどんな関係だっていうの。
「いや、俺も一度聞いてみたかったんだけどさ。『シャーレの先生』っていう「器」は抜きで、中身としての『あいつ』だけ見てみたら、俺みたいなしょーもない奴だったら、どうする?」
「えっ」
「ちょっと待て。えっ、て何だ」
しまった、反射的に。
「いやいや、うへへ、ほらね? 『あなた』はステキな男性だと、おじさんも思うんだけどね? 『あの人』とはタイプも違うじゃん? むしろ『あなた』の方が事務仕事もできるし、女の子にもモテるし? あっちはほら、ジャンル違いっていうか? いいところが違うっていうかさー」
「そっちの誤魔化し方も大概じゃねーか。何なんだ、その棒読みみたいなのは。絶対そんなこと思ってないだろ」
「だって! あっちは普段からまんべんなく優しいし、もし彼女がいたら絶対浮気なんかしないし、あなたみたいに、いつもおっぱいの大きさとか、そんなこと考えてるわけじゃないでしょ! 多分! きっと!」
「俺だって別に、いつもそんなこと……まあ、大体いつも考えてるけど!」
「否定しないんかい!」
これだから一緒にされたくないんだ、全く。まあ、大きさの好みが違うだけで、おっぱいがどうとかは考えてそうだけど……。それにしても、ものすごく低レベルなケンカになってしまったなぁ……なんて思っていたら、「こんにちわー☆」と明るい声が聞こえた。ノノミちゃんだ。
「あらあら、今日も二人とも仲良しさんですね〜……きゃっ! ぁん♡ ホシノ先輩ったら、ダメですよ☆ ぁ、あん♡」
「うへへ〜、ノノミちゃんのおっぱい〜」
「そこのセクハラおじさん! そのおっぱいは俺のだ!」
「いやいや、先生。こんな立派なおっぱいを独占しようなんて、天罰が下るよぉ〜? うへ、やわらか〜い」
最近、大きいおっぱい(主にノノミちゃん)の良さに目覚めてきた。何しろ、触って良し、顔を押しつけて良し、何だかいい匂いがする。うへへ。それに、ユメ先輩も……ユメ……
——痛っ。
また頭痛だ。最近、昔のことを思い出そうとすると、よくこうなる。何なんだろう。まあいいや。今はやることもあるし、ノノミちゃんのおっぱいのことは、ひとまず置いといて——
……なんて思っていたら、今度はシロコちゃんが来たみたいだ。あとは、『手乗りアロナちゃん』っていう、先生の娘(みたいなもんらしい)も先生のスマホの中にいるし、これで全員この場に集まった。
「シロコ、自転車で来たの?」
「ん。軽く200km走ってきた」
「軽く……。相変わらず、キヴォトス人にしても感覚がおかしい気がする」
「あとミレニアムに寄って、スミレのところでトレーニングもしてきた」
「すっかりトレーニング部に入り
「先生? 先生がいつものんきにしているのが仕事なのと一緒だよ。シロコちゃんは、いつだって変わらず、やりたい事に熱中してないとね。クロコちゃんに最初に教えなきゃいけないことだって、それでしょ? あなたは世界を壊したりなんかしなくていい、そんなことを強制するものは、
「うんうん! 私たちならきっと安心してくれますね☆」
ノノミちゃんが元気よく同意してくれる。シロコちゃんも
「ん。有望な子が来るかもって、スミレも新しいメニューを組んで待ってる」
……もう、メニュー組んであるんだ。
「ロードバイクも用意してあるし、ロングライディングのコースも、もう下見してある」
「もうシロコちゃんと走ることになってるの? 自転車買っちゃったの? 本人の意思は……?」
「何か高校ん時の、入学式終わった後に新入生を勧誘しようと待ち構えてた運動部を思い出すな……。目がマジなんだよな。あの人ら、入学する前から目ぼしい奴チェックしてたし……」
クロコちゃんが来ても、「あなたは自由だよ。やりたいことをやっていいんだよ」と言っていいんだろうか、これは。自由ないな……。
なーんて、どこまで真剣なのかはともかく、シロコちゃんがこんな風なら、きっと大丈夫だろう。重い過去を背負った人間にとって、のんきに楽しく暮らす、というのは意外と難しいものだ——私には今でも難しい。でも、「もう一人の自分」が引っ張ってくれれば、クロコちゃんもすぐに新しい生活に馴染むことが出来るだろう。
シロコちゃんが「反転」した存在だという、『シロコ*テラー』——クロコちゃんは、私たちやキヴォトスの生徒が全員、正真正銘の「バッドエンド」を迎えた時間軸から来る存在だという。私たち、その時間軸におけるアビドスのメンバーも悲惨な最期を遂げ、クロコちゃんは独りぼっちになっていた——少なくとも、そういう「
でも、その全てを無視して、私たちは「二人そのもの」だけを呼び出す。色彩も、プレナパテスも、反転も関係なく、その二人だけをピンポイントに。
「じゃあ、そろそろ準備を始める?」
「そうだな。ノノミ、やれそうか?」
「バッチリです☆」
「シロコは?」
「ん。いつでもオッケー」
「オリジナルの『アロナ』……じゃなくて『手乗りアロナちゃん』だけど、プラナはうちの娘に迎えてもらおう。向こうは画面の中から出られないから、お前もスマホの中にいなさい」
「はーい、パ……先生!」
今この子、「パパ」って言いそうになってたな。完全に子持ちだよね、この人。結婚は許してもらえないのに娘がいるって、確かにちょっと
「んじゃ、始めるか」
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「ではでは〜☆」
ノノミちゃんが、私たち——先生、私、シロコちゃん、『手乗りアロナちゃん』の前に立つ。
「行きますよ〜! じゃじゃ〜ん! 『クロコちゃん確定☆ピックアップガチャ! プラナちゃんのおまけ付き〜!』」
ノノミちゃんがどこからか出した、光り輝く封筒。それに、先生がサインをする。すると——
——私たちの目の前に黒い次元の穴のようなものが開いて、そこから黒いドレスのスラッとした女性が現れる。銀色の長い髪、
「胸、デカっ!」
「アホかーーーっ!」
私は、あまりにも素直な感想を言った先生に、思いっきりつっこんだ。思ってても、言うな! 私も思ってたし、おっぱいデカいな! とか言いそうになったけど! 私は後で触らせてもらおう。
「ほら、クロコちゃん泣いちゃったじゃん!」
クロコちゃんが顔を手で
「ひと言めが、そのエッチな発言……先生……本物の先生だ……」
「そこで判断するんだ⁉︎」
先生も先生だけど、クロコちゃんもノリがいい(マイルドな言い方)というか何というか。
「初めて会った時のノノミみたいな反応してる……」
「あー、『現実世界』にいた頃から『あなた』がそーゆー人だって知ってたから、ノノミちゃんもそこで見分けたんだっけ? 初対面で「エッチさせてくれ」なんてバカなこと言ってるから、これって、あの人だーって」
「ふふっ、懐かしいですね〜☆」
ノノミちゃんもダメっぽい……今この場には、緊張感をなくす人間しかいないらしい。(私も含めてだけど)完全に人選を間違えた。残りの一人だって、シロコちゃんだし……何であの子、私を見てドヤ顔してるの。先生を(シロコちゃんの方が)襲って、思いを
「えっと……ごめんね、いきなり騒々しくて」
「ホシノ先輩も……みんな、あの頃みたいに……あの、楽しかった頃と一緒……」
「え? 一緒なの? このノリと?」
「うん。みんなで銀行をおそっ——……」
私は耳をふさいだ。聞きたくない。実際に銀行を襲ったのかどうかなんて聞きたくない。この子、どんな世界で暮らしてたの? マジでこのノリと一緒の世界だったの? もちろん、覆面水着団とか実際にやってた私たちに、他人のことなんて言えないんだけど!
——ともあれ、
「でも、ここ……私……? 先生やホシノ先輩だけじゃなく、ノノミも……。それに、あなたはもしかして……」
「うん。私は
「やっぱり、「この世界の私」なんだね」
「……ううん、少し違うかも。
「? ブルー……?」
「クロコちゃん……って呼んでいいですか?
「私にも——『私』には、ホシノ先輩やノノミと出会うまでの記憶がない。今のあなたは、多分その時の私と同じ。少し混乱すると思うけど」
「でも、
「ん。それにアビドスに行けば、セリカやアヤネだっている。だから、こう言うね。私たちのアビドスへようこそ。それから、私たちの
そこで言葉を切って、
「ようこそ」
にっこりと微笑んだ。
きっと、私の知らないところで、自分も何かを乗り越えたんだろう。彼女を迎え入れるように両手を広げるシロコちゃんは、とても頼もしく見えた。
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「うまくいきそうだね」
「だな。プラナも、うちの娘——っと、あの、ちっこいアロナのことな? あいつとうまくやれそうだし」
クロコちゃんに、ノノミちゃんとシロコちゃんが、
それら、彼女の記憶の中にあるものは、全て
「しかし、「ゲームの中」のタイプの『ブルーアーカイブ世界』——要するに
「うちの相棒以外の『ゲマトリア』みたいにね。話が全く
『ゲマトリア』という器の中に生まれたのは、『黒服』の中に生まれた、うちの相棒だけだった。先生——『彼』と出会い、『現実世界』のゲーム(エロゲーなんだけど)を教えてもらい、それに感化されて「器」の中に芽生えた自我、それがうちの相棒だ。他の『ゲマトリア』の器の中には、そういったものは生まれなかった。『マエストロ』『ゴルゴンダ』『デカルコマニー』『ベアトリーチェ』、全て『メインストーリー』通りの行動しか取れない、人形のようなものだ。私は相棒とその監視に行き、実際に見ている。
「しかし、クロコが俺を見て「先生」だって言ってるんだから、少し話が違うのかもしれない。
「いや、私たちがクロコちゃんを「呼び出した」のではなく、
そう言ってから、胸がちくりと痛んだ。そう、死んだ人は生き返らない。だから、ユメ先輩と会うことは二度と出来ない。私はもうその事実を受け入れ、つらい記憶ではなく、いい思い出だと思えるようになったけど。死んでしまって、もう会えなくても、思い出せばユメ先輩はいつもそこにいるから……そう思えるようになった。
でも、クロコちゃんのは私のとは少し事情が違う。生き返ることはなく、二度と会えない——どころか、本当は実際に会ったことすらない、幻のような存在。あの子の記憶の中にある大事な「その人」が、最初から存在しない相手だと知ったら、どう思うんだろう。その気持ちは、私が理解することは出来ないだろうけど——
——ズキン。
痛みと同時に——何て表現すればいいんだろう、この気持ち悪い感じ——、頭の中、いや、私の「記憶」に黒い点がいくつも生まれ、それがじわじわと広がっていく。そして、誰かが私に問いかけてくる。
——理解することが出来ない? 自分とは事情が違うから? 死んでしまって、もう会えなくても、ユメ先輩はちゃんと存在したから? 存在しない別時間軸の世界なんかじゃなく、同じ世界にいたから? 本当に? ——だって、私にはこんなにはっきりした記憶が——
ドクン、心臓が脈打った。目の前の景色が意識から薄れ、代わりに全身が世界と繋がったような感覚と、そこから得られるイメージが視界を覆う。スマホのゲーム……ストーリー……設定……画面に映る……
——これが『ブルーアーカイブ』というゲームを表す形……? だとしたら……
その瞬間、私は『ブルーアーカイブ』というものの本質を理解した。
——vol.1、vol.2、vol.3、vol.4、最終編……。分割され、アーカイブ化されたストーリー。「現在」も、「過去」も、「未来」という概念すらなく、自由にどこからでも読むことが出来るストーリー。既に配信されたストーリーは、プレイヤーがどんな形で読んでも既に確定している。『ブルーアーカイブ』の本質は「ストーリー」だ。
それを設計図として生まれた『ブルーアーカイブ世界』は、その枠の中でのみ存在する。ストーリーを拡張した範囲で許容されるもののみが、存在を許される。そして、「設計図」がないものは生まれない。『色彩の嚮導者』の生前の姿は存在しない。そして、『最終編』まででストーリーを切り取られてしまった、
そう。
「まあ、ヒマリたちとよく相談した上で、何か必要があるなら『プレナパテス』だけ呼び出すのは検討してみても——おじさん、どうした?」
「……び出しちゃダメだ」
「え?」
必死に声を絞り出す。
「呼び出しちゃダメだ。——呼び出さないで。お願い、だから……」
「おじさん⁉︎ どうした⁉︎」
先生が慌てている。
私は思い出していた。どんなにこの世界が優しく見えていても、すぐ
『私』には『ユメ先輩』はいなかった。彼女の「名前」も、「顔」も、『私』の中には
「先生……私は……、私は「まがいものの『小鳥遊ホシノ』」なの……?」
「まがいものって……何言ってるんだ⁉︎」
先生が崩れ落ちそうな私を支えてくれる。ノノミちゃんに目で合図して、私を別の部屋に連れて行ってくれる。でも、私はもう予感していた。——私は、もうダメだ。
------------------------
——同日、同時刻。『現実世界』の『日本』、『東京』
スマホの画面に映る、ホシノの立ち絵とそのセリフを「読ん」でいる青年がいた。『ブルーアーカイブ世界』からプレイヤーである『彼』と入れ替わりに『現実世界』に来て生活している青年は、今は『前の先生』と呼ばれている。ホシノからは特別な意味を込めて『あの人』と呼ばれている存在である。
「やっぱり、恐れていたことが起きた。おそらく『ユメ先輩』が存在しなかったのを知ってしまったことが、ホシノの自己否定に繋がってるんだ。今のあの子を支えられるとしたら、それは『私』しかいない。『シャーレの先生』ではなく、『私』しか」
『ですが先生、くれぐれも無茶だけは……!』
「大丈夫だよ。自分を犠牲にするようなやり方が本末
『はい!』
——私たちの
「それでも、
青年はそこで黙ってしまい、唇を引き結んで、ただ画面を見つめた。
「白」と「黒」、二人の「先生」、そして(中編)へ続く——
細かいネタですが…
第55回ラストで主人公が言ってたのは今回出てきた話です。
カヨコの言ってた「シャーレで準備してるやつ」→「先生」と業務の切り離し
主人公の言ってた「全く考えてないわけじゃない」→『シャーレの先生』の引退
カヨコは途中までしか知らないので少し勘違いしてるわけです。
他にも「概念上の先生」とか、ちょこちょこ以前出てきた話が出てきてます。
すっとぼけてる人達のせいでホシノが知らない話なんかもあります。