【完結】「助けてノノえもん!」~ブルアカの世界でノノミとエッチしまくるダメ先生~ 作:春画屋@二次創作R18
これにて完結です。
エピローグ
前:約8000字
後:約13000字 ←
「んー……大丈夫かなぁ……大丈夫だったらいいな……」
「
というわけで、のの美が娘の
----
アル(便利屋68)
『ロックンローーール!』
----
「おお、アルは今回も元気だな。派手だし」
アルたち便利屋68が活動の一環として結成したバンド、名前は「
ワイルドハントなんかの
——とはいえ、それは表の顔。多分、ファンの——それも熱狂的なやつの——人数で言ったらこっちの方が有名だ。『便利屋68』でもなく、『ブラアカ68』でもない、便利屋バンドの裏の顔。
俺は画面を切り替えた。見たことがあるような、ないような建物が映り——
----
カヨコ(便利屋68)
『We are『
ムツキ(便利屋68)
『オッケー、カヨコちゃん♪ くふふっ♡ トリニティのシスターちゃん達、いっくよ〜!』
----
ムツキのうねるような独特のベースソロが始まり、そこにカヨコのボーカルが重なると、その場にいた子たちの一部から、「本物!?」、「えっ、嘘でしょ!?」と、戸惑いの声に混じって歓声が上がる。
『レッド・ホット・アーカイブ69』——カヨコとムツキが主導でやっている、ゲリラライブ専門のバンドだ。要はパートチェンジして、カヨコがボーカルをやっている
作曲はムツキ、作詞はカヨコと、どちらも表のブラアカと変わらないのだが、二人とも「こっちはやりたい放題だから」と言わんばかりに攻めまくっている。ブラック・デス・ポイズンを思わせる重く攻撃的な曲は、ムツキの本気のベーステクニックがいかんなく発揮される。一般人は軽く引きそうなぐらいに発揮されている。……やりすぎだって。いや、ベースソロとかカッコいいんだけどさ。
歌詞にいたっては、「気に入らない奴はぶん殴れ(意訳)」とか、「気持ちイイことしてイッちゃえ(意訳)」とか過激なものばかり(意訳すぎるかも知れない)で、ベースを演奏しながらムツキが
そんなわけで、裏と表で雰囲気が違いすぎて、メンバーを見て気付いても、「あれ? これ同じバンド?」と戸惑ってしまうだろう……いや、そもそもそんな話は関係ないか。裏名義の方を聴く機会があるのは、ほとんどがライブハウスなんか行かないような子ばかりだ。そういう子のところにわざわざ乗り込んで行って、ゲリラライブをするのだ。よりにもよって、
エデン条約が何の問題もなく締結された世界で、トリニティとゲヘナの友好を積極的に進めてたカヨコがねぇ……という気持ちと、正義実現委員会から信用されてるカヨコだから、ギリギリ許されてるんだよなぁ……という気持ちと、半々ぐらい。何でわざわざケンカを売るような……。
「げ、これ、大聖堂の
実は、カヨコたちが出没する場所の中でも、一番人気があるのはトリニティらしい。特に、真面目に見える……悪い意味で「トリニティらしい」というか、お嬢様然としている生徒の間に、隠れファンが相当いるらしいのだ。内側にモヤッとため込んでいるのがスッキリするらしい。確かに、「陰口叩くぐらいなら正面から殴っとけ(意訳)」みたいな意味では、(ヤンキーの発想みたいだが)健全な曲ばかりだし。
しかし、そういう連中がこんな曲を聴きに堂々とライブハウスまで行けるかというと——まあ、行けないわな。周りの目もあるし。……いや、ライブハウスで
それは分かる。うん、立派。だけどな、カヨコ? 重ねて言うが、俺は胃が痛い。多分、取り締まってるサオリも胃が痛い。……ああ、今回もご苦労様だ。頑張れ。
----
ムツキ(便利屋68)
『カヨコちゃーん、サオリちゃんたち来たよ〜♡』
サオリ(アリウススクワッド)
『誰がサオリちゃんだ! 毎度毎度、お前たち……! せめて許可を取ってから
カヨコ(便利屋68)
『悪いね、
ムツキ(便利屋68)
『はいはーい♡ ごめんね〜、サオリちゃん♪』
サオリ(アリウススクワッド)
『⁉︎ また、煙幕か——? ミサキ! ヒヨリ! 散開しろ!』
----
どーん。
てなわけで、アルはちょっと見習った方がいいくらい、カヨコのアウトローっぷりが
あ、カヨコの追っかけだ。
----
トリニティの生徒A
『ほら、急いで急いで! ——って、もしかして終わっちゃってる⁉︎』
トリニティの生徒B
『あー、もう、せっかく駆けつけたのに!』
----
「確か、ヒフミが最古参のファンってことで祭り上げられてるんだっけ。あいつとアズサの教育がいいから、ガチファンの間では
ヒフミのファーストキスをカヨコが奪っちゃったとかで、大騒ぎになったのだ。キスされて真っ赤になって、それ以来ヒフミは何かのスイッチが入っちゃったらしいし、ハナコはキレまくってるし、ムツキはすねるし。女ったらしのところまで俺を見習うなよ……。ムツキとも、かなり前から、
で、サオリなのだが、
----
サオリ(アリウススクワッド)
『くっ……また逃したか。『正義実現委員会』も
----
というわけだ。サオリかわいそう。仕事だからしょうがないんだけどさ。カヨコはもうちょっと手加減してあげて。
----
ミサキ(アリウススクワッド)
『でもリーダー。知り合いって言ったら、うちもあまり変わんないよね。『美食』とか『温泉』を取り締まる時は手伝ってくれるし』
ヒヨリ(アリウススクワッド)
『み、味方としては頼りになりますよね。戦闘の方も一流ですし』
ミサキ(アリウススクワッド)
『それに曲は嫌いじゃないんでしょ? まあ、言葉の選び方は過激だけど、歌詞の内容は割とまともだし、トリニティの子にも人気あるし』
ヒヨリ(アリウススクワッド)
『よ、よく内緒でってことで、あのバンドのこと聞かれますよね』
サオリ(アリウススクワッド)
『だから余計に腹が立つんだ! 私だって、別に取り締まりたくて取り締まってるわけじゃない! しかるべき手続きを踏めば、別にトリニティの中でだって……』
ミサキ(アリウススクワッド)
『いや、それは無理でしょ。あんな歌詞、検閲されまくるに決まってるし』
----
全くだ。カヨコもどこで覚えたんだか、あんな
----
サオリ(アリウススクワッド)
『大体、普通に告知してライブハウスでやって、CDだって出せば、もっと多くの人間に聴いてもらえるし、知ってもらえる! 何が不満だと言うんだ!』
ミサキ(アリウススクワッド)
『そりゃまあ、そうしてもらえれば私たちの仕事も少なくなってありがたいけど』
ヒヨリ(アリウススクワッド)
『な、何かこだわりとかはあるんでしょうけど……』
サオリ(アリウススクワッド)
『それにしたって、こんな形でやるから、私たちやゲヘナ風紀委員会、ヴァルキューレあたりが止めざるを得ないし、最後まで演奏も出来ない。せっかくいい曲を作っても、聴かせられなかったら意味がないだろう! 聴く方だって、それならそれで曲の配信ぐらいちゃんとやれと……』
ヒヨリ(アリウススクワッド)
『あ、サオリ姉さん的にはそれならいいんですか?』
ミサキ(アリウススクワッド)
『ああ、これ、どっちかっていうとファン目線だ』
アツコ(アリウススクワッド)
『ふふっ、聴きたくてもなかなか聴けないライブを毎回聴けるんだから、サッちゃんも追っかけみたいなものだよね』
----
ファン……? そうか……? 追っかけをするぐらいのファンだったら、もうちょい優しくされると思うが……。まあ、サオリもカヨコの音楽は認めてるんだよな。こういうの以外の場面では便利屋と気が合うみたいで、アルのことも(勘違いは入っていそうだが)評価してるし、曲だってスクワッドの連中なんかは好きそうだし。
——ま、バッドエンドになんて、なるわけないか。
俺は、一番好きな曲がスマホから聴こえてきたので、少し静かに聴くことにした。
——I sing my story
Sing your story
つまらない
お前だけの
赤く、熱く、ほとばしるほどの望みを持て
私が - 全部! - 受け止めてみせる——
音だけでなく、全身で自分を表現しようとする力強いカヨコの歌声に、ムツキが楽しそうにコーラスで掛け合いを入れる。聴く人間に、音だけでなく、カヨコそのものがぶつかってくる。体当たりをして、こちらを
——約束通り、ちゃんと聴いてるぞ。カヨコ。
「読む」のではなく、カヨコの生の歌声を聴いていると、安心する。サオリやハナコやその他にも……他のことを少し本気で心配してしまうのは、カヨコ本人を心配する必要はないと確信しているからだ。
「カヨコもムツキも、自分たちの行動の結果が誰かにとっての「バッドエンド」になるような——そう思わせるような真似はしない。何が起きても、どんな結末だって、笑い飛ばして誰にとってもハッピーエンドにしちまう。口出しなんてしたら、また過保護だとか俺の方が怒られそうだもんなぁ。こわいこわい」
アリウスの連中だって、カヨコたちと命のやりとりをしているわけじゃない。ぶつかるのだって、憎み合うためじゃない。それは、お互いを理解するための一つの手段だ。その辺を一番理解している『ホシノ先生』だって見守ってる……
「——いや、サオリの胃に穴が空きそうだから、ホシノ先生は、もうちょいよく見張っててくれ。マジで。たまに取り締まるのを手伝ってやるとかさぁ……。あの人、根っからの武闘派っていうか、思いっきりケンカした方が後々仲良くなれるとか平気で言うし、カヨコはカヨコで
まあ、そっちは心配いらないとしても、せっかく仲良くなりつつあった(カヨコのおかげなのに……)トリニティとゲヘナの間を、カヨコが引っかき回しているのはまぎれもない事実。なので、ただでさえ改善される気配のなかったミカのゲヘナ嫌いが加速している。まあ、あれはゲヘナ嫌いなのか単に特定のゲヘナ生が嫌いなのか、よく分からんが。前より悪化しているのは確かだ。困ったもんだ。
……なんて思いながらログを追っていたら、どこからかミカが現れた。あいつ、サオリがいるところにはどこにでも現れるな。仲良しさんか。
----
ミカ(ティーパーティー)
『私、あの子たち嫌ーい。いかにも野蛮なゲヘナの典型って感じ』
サオリ(アリウススクワッド)
『いや、別にゲヘナを代表しているわけではないし、あいつらは規則さえ守れば……』
ミカ(ティーパーティー)
『ナギちゃんのところにお忍びで来る風紀委員長は、意外と品もあるし許せるけどさ。あの子たちと
サオリ(アリウススクワッド)
『その辺に関しては、気持ちは分かるが……』
ミカ(ティーパーティー)
『美食研究会も温泉開発部もあの子たちも、ゲヘナって行動する時は基本テロ行為だよね』
サオリ(アリウススクワッド)
『その二つと一緒にするのは勘弁してやってくれないか。あいつらは破壊行為はしないんだ』
----
何でサオリが一生懸命カヨコのフォローをする羽目に……。重ね重ね、かわいそう。俺が「向こう」にいたら、真っ先にサオリのフォローに行ってるわ。胃薬持って。
しかし、案の定、出てくる名前がピンポイントというか、いつも通りというか、やっぱりゲヘナが嫌いとかいう問題じゃないな、あれは。レッドウインターの工務部も大して変わらないようなことを言ってたし。イロハとかメグとか、いくらか話の通じそうなのもいるみたいだから、その内、俺が何とかしようと思ってたんだが……ま、相対的にヒナの好感度が上がってるみたいだし、いいか。あんまりいい上がり方じゃないが、仲良くしてくれるならヒナだけでもいいよ。
----
ミカ(ティーパーティー)
『でも、ボーカルの子がソロでやってる曲は好きなんだよね。こっちは音源だってちゃんと配信してるし、こういうのばっかりやってくれればいいのに』
サオリ(アリウススクワッド)
『ソロ? 鬼方カヨコは一人でも活動しているのか?』
ミカ(ティーパーティー)
『やってるよ? 聴いてみる? ラブソングがキヴォトスでは珍しく本格的なんだよね。あれ、実体験なのかな? いーなー、恋愛。私もしたいなー』
サオリ(アリウススクワッド)
『ミカは、相手がいただろう。あの、シャーレの何とかいう……』
ミカ(ティーパーティー)
『だって、あの人には逃げられちゃったし。あーあ、もう相手は誰でもいいんだけどなー』
----
ミカは誰でもいいとか言うな。俺を追っかけてたのも、手近にいたからって理由みたいじゃないか。事実っぽいから、余計傷つくんだよな……とはいえ、そのぐらいの扱いの方が助かる話でもある。「あの時」みたいなままでも困る。
——そう、「あの時」。おかしいとは思ったのだ。俺が『現実世界』に戻るために、みんなが俺の帰還を願ってくれた(あれは実際のところ何が起きていたのかよく分からないのだが)時の話。何人か見かけない気がしたのだ。案の定、その時のログを後から「読ん」だところ——まあ、名前は伏せておこう。
トリニティのMさん「ていうか、幸せになりたいなら私のところに来るべきじゃん? 私はそのつもりだったんだけど? おかしくない?」
ミレニアムのYさん「以前暮らしていたところに帰るかも知れないとは聞いていましたが! こんなに突然! 本命の女性を連れて帰るとは聞いていないのですが⁉︎ だったら今からでも、私もそちらに行けるよう要求します!」
ゲヘナのAさん「後任の方が来るとは聞いていましたが、こんなにやる気も能力もないとは聞いていないのですが! あなたがいないとストレスの発散も出来ませんし、これ、もしかして放置プレイの一種か何かなんですか⁉︎ もう限界なんですが!」
三人とも、セリカを見習って俺の幸せを祈ってくれ。これだから、もう……。とはいえ、ほったらかすわけにもいくまいということで、のの美と一緒に撮った写真とともに、「私たち結婚しました」というメッセージを送ったのだが、答えは、
「ばーか。死んじゃえ」
「一生恨んでやる!」
「いいから戻って来て下さい!」
……本当に、ミカもユウカもアコもさぁ……おっと、名前を言ってしまった。え? 全面的に俺が悪いんじゃないかって? そうかも知れない。……うん、どう考えても俺が悪いな……。もう結婚したし、あやまちは繰り返さないようにしよう。
------------------------
「
「おっ、そうか」
「ふふっ、あなたにもあげましょうかー?」
「いや、直前まで実の娘が飲んでいたおっぱいを父親が吸うのは、人としてどうなんだ」
実の娘とか父親とか関係なくても、十分人としてヤバいよ、というツッコミは聞かないことにしている。こっちに戻ってきてからは、そういうプレイはしてないし。
「それで、そろそろアリスちゃんたちがいる時間かと思ったのですが」
「ん? ああ、そういや、そろそろゲーム開発部がログインしてる頃か」
「私にもやらせてくださいねー♪」
スマホの画面を切り替えて、マインクラ……じゃなかった。スマホ版の『ミネラルクラフト』を起動する。例のサンドボックスゲーの、キヴォトス版だ。で、マルチプレイでログイン。
「……あ、いた。アリスとモモイだけかな」
とりあえず、キャラの腕をブンブン振って
すると、『あれっ⁉︎ 先生ログインしてるの⁉︎ 久しぶり!』、『私は昨日も会ったけど。先生、やっほー』と、ヴェリタスのマキとハレも声をかけてきたので、遠くに向かってブンブン腕を振る。ヒマリが言うには「こっち」と「あっち」で完全に同期が取れないとか何とかで、俺の方からはチャットが送れないのが少し不便。
まあ、ゲーム内でオンラインの時だけとはいえ、ミレニアムの連中とこうしてコミュニケーションが取れてしまう時点で、十分「ンなこと出来んのかよ」という話なのだが、何しろ超天才病弱美少女ハッカー(自称)のしてくれたことなので。本人も「不可能なことなど、ほとんどありませんとも。ミレニアムの誇る超天才美少女ハッカーですから♪」と言っていたし。
どうもヒマリ、俺や『前の先生』の手伝いをしている内に、以前の『十六夜ノノミ』レベルに不可思議な存在になっているようなのだ。異世界がどうとか関係なく、普通にこっちに連絡してくる。助かることは助かる。
ちなみに、どんな理屈でどんなことが出来るのか聞いてみたところ、「ふふっ、先生のスマホぐらいなら簡単にハッキング出来ますよ♪ ちなみに、先日のぞいてみたところ……」とのこと。やめてくれ。シャーレに気軽にハッキングをかけて、俺のプライベートを
『先生! ノノミはそこにいますか?』『先生の奥さん、元気ー?』と、アリスたちに聞かれて、のの美が横で、「いますよ、アリスちゃん☆」と答えているので、代わりにジェスチャーで『いるぞー』と答えてやる。アリスは今も、のの美によく
それにしても、アリスたちはいまだに「え? 先生は先生でしょ?」「先生ですよね?」で普通に通じているらしいのだが、あの辺は『俺』や『前の先生(もう順番が逆だが)』に関して、どういう存在だと認識してるんだろう……。今も、のの美に操作を代わったところ、何も言ってないのに当たり前のように見分けてるし。なまじ「器」がどうとか余計なことを考えないから、誰が誰だか正確に分かるんだろうか。何でもいいけど。
そんなわけで、キヴォトスから『現実世界』に帰ってきた……という話なのに、「海外に引っ越したから会えないんだけど、ゲームの中ではむしろ前より会ってるわ」みたいな状態。アリスが「また一緒に遊びましょう!」なんて言っていたので、えらい軽いノリだなと思ったのだが、完全にそのノリのままの付き合いをしている。
『あっ、大変です! 「魔王」が来ました!』
『本当だ! 「魔王」だ! 先生、逃げて!』
何⁉︎
慌てて、ログアウトの準備をする。
「? 「魔王」って何です?」
「このゲーム、たまに緊急イベントでめちゃくちゃ強いモンスターが乱入してくんの。俺のは戦闘は全然ダメだから、襲われる前に逃げた方がいいってことで、いつもアリス達が」
「ふーん……それ、本当です?」
大嘘ですが、そういう反応をされるから、アリスたちがかばって逃してくれるんです……とは言えない。何を察して、そんなにニコニコ笑ってるんだ。
「こわいんだよ? 「魔王」に襲われると、ゲームオーバーになるだけじゃなくて、ぼうけんのしょが消えるんだよ? バックアップも取れないんだよ? 課金もパーだよ?」
「このゲーム、ゲームオーバーとかぼうけんのしょとか、ありましたっけ?」
そんなもん、ないです。くっ、思いつくままに出たらめを言っても
そうこうしている内に「魔王」が現れてしまったので、必死に画面を
『モモイ、いる⁉︎ この間の件だけど、あなた——』
『やめてよ、ユウカ! 現実の話をゲームに持ち込まないで!』
『あのねえ、私だって別に……』
魔王——いや、ユウカ。相変わらず苦労しているようだが、結婚もしてやれなかったが、強く生きろよ。結婚だけが人生じゃない。
------------------------
「……とまあ、そんな感じで、「先生」がいてもいなくても、もしくは顔を出す程度でも、みんな生き生きと生活してるみたいだわ」
「クックックッ……それは良かった。私たちが目指した、「生徒」の日常を邪魔するような「事実」が
「あのね、
「そうですか? しかし、これは
「悪役が何か
「では。はっはっはっ。みんな楽しそうで良かったですね!」
「バカみたいだな」
「あなたがしろって言ったのでしょうが!」
キレさせてしまった。銀座の高そうなお店で俺と一緒に飲んでいる、この男。黒澤敦夫、三十二歳、独身。年齢に似合わず、パーマに銀フレームのメガネと、知的なタイプのイケメンに見える。こう見えて、元は
……いや、そう言っちゃうとブルアカの黒服に失礼な気がしてきた。「転生したら黒澤とかいう名前の面白おかしい奴になっちゃった俺の友人」である(ラノベのタイトルではない)。戸籍やら社会的身分やら、その辺はのの美と同様、「こちら」に来た時には既に存在していたらしい。ちなみに、某企業の代表取締役に転生したそうなので、無駄に金を持っている。ずるい。
で、某企業ってのが何なのかというと、
「どう? 最近はエロゲー売れてる?」
「
エロゲーメーカーの社長である。お前、俺の夢の中の『現実世界』では、コンサルタント会社「ゲマトリア」の社長じゃなかったか? いいのか、お前の人生はそれで。夢は
「やはりパッケージ売りは、今の時代、厳しいものがあると——」
「ふむふむ」
「——スマートフォンの……ブラウザ版なら……アプリではなく……」
で、その話が続き、一時間……いや、一時間半ぐらい経過した。
「——というわけで……」
「で、その壮大な企画を実行する資金はあるの?」
「そこはクラウドファンディングで……」
「夢を追うのはいいけどさあ、やめときなよ」
「社員にもそう言われています」
しょぼんとしてしまった。本当にもう、こいつ、見た目以外も『黒服』でも何でもない普通の日本人になったな。本人の希望通りだわ。
「でも、お前も楽しそうで良かったよ。「こっち」に来た甲斐があったね」
「ホシノさんたちのおかげで、変われたからですよ。どこの世界にいても違いはありません。あなたにとって、場所それ自体には意味がないように」
「まあねー」
「とはいえ、人生は一回しかありません。やりたいことをやらなければ」
「一回しかないんだよね……、「こっち」の人生は」
「? ……ああ」
こいつも知っているのだろう。「ゲームの中」のタイプの『ブルーアーカイブ世界』は、つくりが根本的に『現実世界』とは違う。のの美もこいつも、存在をまるっきり変えて「転生」しなければ「こちら」には来られなかった。つまり、のの美は『十六夜ノノミ』という存在を俺が一度リセットして、生まれ変わらせたようなものだ。
「……それは、少し
「いやね、たまに思うんだよ。「こっち」では「あっち」と違って、人生は一度しかない。年もとるし、若返ることは出来ない——そういう「絶対のルール」がある。なら、いつまでも若いまま、何回もいろんな人生を送ることが出来る世界から連れてきちゃって、本当に良かったのかな……なんて」
「ああ。……そういうとらえ方をしますか」
「何かおかしい?」
「いえ、私とはだいぶ違うというだけです。ふむ……」
黒澤くんは、黙ってしまった。そして、
「常に決めつけず、疑問を持ち続けるのは、あなたの長所でもありますが、ネガティブに考えがちなのは悪い
「…………。うーん……」
想像してみた。すっげー、怒られそう。正座で説教されそう。
「そういうことを考えるの、良くないよねー。気をつけよ」
「というより、自分に自信を持つべきですね。あなたの選択が間違いだったはずがありません。たとえ間違いだったと感じても、その時は正解に変えてしまえばいいのです。離れ離れになったのではなく、彼女は今もあなたと一緒にいるのですから」
「相変わらず、いいこと言うよねキミは」
「いえ、そんなことは」
「いい奴だし、ある意味面白いし、お金も持ってるし、何でそれで彼女は出来ないのかな」
「うるさいですよ」
怒られてしまった。
ともあれ、俺の知る限りの人間は、俺とのの美のように「ハッピーエンド」を迎えている。少なくとも、本人たちがそう思える結果をつかみ取っているはずだ。
——少なくとも、俺からは何も言うことはないね、どっちの世界も。
みんなが同じように、そう思ってくれれば、と思う。
------------------------
「やっぱりあなたのお友達も、ホシノ先輩を信頼しきってるから安心なんですかね〜?」
「そりゃそうだよ。結局、おじさんと一番付き合い長いのって、あいつだもん。SRTのこともアリウスのこともよく知ってるし」
「ふふっ、『先生』がヤキモチやいちゃいますね☆」
「そんなことないでしょ、あの辺は」
「そうですか? 分かりませんよぉ〜?」
女の子は本当に、そういう話に持ってくの好きだなあ……と思いつつ、のの美を抱きよせて、生の肌を感じる。言われてみれば、結婚してからそういう感覚が俺の中からなくなっただけなのかも知れない。変に安心感があるもんだから、のの美とエッチするって言っても、特別な何かを感じることもない。ただ、そのあたたかさだけが心地よい。
「ん♪」
のの美がぎゅっと抱きついてきた。
「ね、金之助さん」
「何?」
「もし、またどこか……こことは違う、別の世界に行ってしまったら、ちゃんと帰って来てくれます?」
「帰ってくるよ?」
「そこで、どうしてもあなたがやらなきゃいけないことがあっても、ですか?」
「それなら、それを全部終わらせてすぐ帰ってくるよ。妻と娘が待ってますからって言って」
「ふふっ、良かったです♪」
間違いなく、俺はそうするだろう。待っている人間がいるなら、絶対に俺はそこに帰る。自分が何も変わっていなくても、いつの間にかキヴォトスにいたあの時のように、元いた世界に何もないわけじゃない。
……いや、それはいいんだが、のの美は変なフラグみたいなことを言うの、やめてくれないかな。どこにも行ったりしないよ。それに——
「そもそも、こことは違う別の世界になんて行けると思う? 俺にとって、のの美と
「うんうん、そうですよね! じゃあ……、絶対に逃げられないように、二人目、作っちゃいましょうか☆」
「いやいや、そんなこと言ったって、そうそう出来るもんじゃない……」
「じゃ〜ん! 『絶対に妊娠する☆コンドーム』!……なんて♪」
「何だその、独身男には恐怖しかないアイテムは! しかも普通は逆だろ!」
「や〜ん♡」
どこかで誰かが「主人公」を必要としても、俺はそれにはもうなれない。何かしなきゃいけないことがあるなら、それはするだろう。それでも、俺自身がその「主人公」になることはあり得ない。俺の人生に
——完——
最後まで読んでいただきありがとうございました。
無事、完結することが出来ました。
ゴールの決まっていた連載ですので、たどり着くまで、長い間支えになってくれた読者の皆さんに、まず感謝を。
それから、いろんな立場や感想があったと思いますが、どんな形であれ関わってくれた全ての人に感謝したいと思います。少なくとも今は、そういう心境です。
今後に関してですが、書こうかと思っていたものは一応あるのですが、綺麗に終われました(作者的には……)ので、あまり付け足したくないというのが正直なところです。少なくとも、しばらくは何も書かず休むと思います。
アンケートの結果・ここすき機能等は、頭に入れておきますので、読了がてら何か入れておいて頂けるとありがたいです。後からでも構いませんので。
何か更新やお知らせ等あったら、第一回のあとがきやXに書くつもりです。少し落ち着いたら活動報告も書こうと思います。
それから、加筆修正やまとめ分の整理は続けるつもりなので、複雑だったところも読みやすくなっているかも知れませんし、良かったら後からまとめ読み等どうぞ。
主人公たち二人を含め、あの世界の住人たちが、少しでも読んだ方の記憶に残ってくれれば幸いです。「そういや、そんな奴いたなあ」とたまに思い出す程度に……。
それでは。
春画屋@二次創作R18
X:@shungayaR18sub