「さぁ、行くよ!勝って、幻想郷中に私達の強さを見せ付けてやるッ!!」
「「おーっ!!」」
「おー……」
翌日、霊愛の率いる博麗神社の子供達は紅魔館へ進撃を開始。現在の幻想郷最強勢力と思われがちな紅魔館を打倒する事で、現在の博麗神社の強さを、幻想郷中に知らしめるのだ。
しかし紅魔館に到着した時、4人は地獄のような光景を目の当たりにする事になる。
「な…………う、そ……」
「これは……ヤバくない?」
「……負けた……」
「待ち構えられてんじゃん……」
紅魔館の門前には門番の美鈴を筆頭にメイド長の咲夜、副メイド長の弦月姫、執事見習いの虔魔の他メイド妖精や、天子が居た。
「お嬢様に、霊夢から連絡があったのよ。『今から数分後、子供達が襲撃するわよ』……ってね」
「ッ、トランシーバーか……!」
「お父さんが『円滑に連絡ができるように』って、各家庭に配ってたのが仇になったね」
「もうダメだ……おしまいだぁ……あは、あはは……」
「はい終わり、圧倒的『数』との戦いに慣れてない私達には対処しようがないね」
「1人で10人くらい倒せばいけるかな?」
「「「何言ってんのお姉ちゃん」」」
霊愛はギリリッと歯を食いしばる。霊麗は冷静に状況を分析し、霊魔は絶望のあまり笑いが漏れ出し霊子はヘラヘラしている。
「霊麗、霊魔のやる気スイッチ押してやって」
「ん。……こんな状況で勝ったら、シガレットから、もっと褒められるかもよ?」
「……ッ!!」
(明らかに目の色変わってるし、お兄ちゃん、単純過ぎでしょ……。ま、やるしかないかぁ。雑兵の群れくらいに勝てなきゃ、スカーレット姉妹、親子には勝てないよなぁ〜)
霊魔は恋人のシガレットを出汁にされると明確にやる気が出る。誰だって、恋人から褒められる事を想像したら、やる気は上がるものだろう。霊魔も、決して例外ではない。
「……引き返すなら今のうちよ。普通にお客様として入るなら、それでいいわ」
「咲夜ァ。私達がこれくらいの差を覆せないとでも思った?」
「!」
「
「あ、僕の出番……」
「あーあ。霊魔がチンタラしてるからだよ」
「あうぅ」
言うなり、霊愛は霊力で身体強化して突撃する。霊麗は姉の想いを汲んで突撃どころか後退、続けて霊魔も一歩下がる。霊子は、すぐに動けるようにと寧ろ構えるくらいには警戒している。
「はああぁああぁぁっ!!」
お祓い棒を振り回す。が、適当に振り回している様子は無く、各人の頭、鳩尾などの急所を、的確に突きまくっている様子だ。
まずは数の多いメイド妖精、次に弟の虔魔、更に妹の弦月姫。やれやれと動き出すは比那名居天子、要石をぶつけられ、または要石を蹴り返し、打撃がロクに効かぬ天子には最終的に夢想封印を連発して撃退してしまう。咲夜とは肉弾戦に発展するが既に何度も戦っていた事である程度の動きを予測可能な域に達していた霊愛は、陰陽玉をぶつけ、これまで見せてきた動きとは大きく違う動きを見せて撃退。
「ハッ!ほあたっ!!」
「はあぁぁああ〜〜〜っ!!」
「当たり、ませんよォッ!イィヤッッ!!」
「っ……お祓い棒が……!このッ、弁償しろッ!!」
強化しているはずのお祓い棒すら叩き折る美鈴。御札を使ってでも更に強化しておけばよかったと、霊愛はギリッと悔しがる。
そしてある瞬間に、美鈴は構えを崩して、両腕をダランとしてみせる。
「?」
「最近の霊愛ちゃんは、少々、オイタが過ぎます。これはお仕置きが必要ですね」
「〰︎〰︎〰︎〰︎〰︎〰︎〰︎〰︎〰︎〰︎〰︎〰︎〰︎〰︎ッッッ!!??」
刹那、美鈴の腕が消えた。
同時に姉、霊愛の姿まで消えた。ふと地面に影を見付けその先を見てみると、霊愛はなんと、真上に吹っ飛ばされているようだった。尻が痛むのか顔を苦悶の表情に歪めながら、尻を手で押さえている。
「さぁ、次『お仕置き』を受けるのは誰ですか?」
「な……何が起きて……」
「ひっ……!?」
「わーお。何m飛んだ?まぁいいや、お姉ちゃんの代わりに、私が相手してあげるよ」
霧の湖に着水寸前でどうにか持ち直した霊愛は、尻の痛みが引くまでは、一旦戦線離脱するようだ。霊麗はそんな姉のサポートをするのに同じく戦線を離脱する。
「……頑張って、霊子」
「ふふん、誰に言ってんの?私、巫月お姉ちゃんとお父さん、お母さん以外には負けたことないから」
霊魔のエールも鼻で笑い飛ばし、霊子は美鈴へと肉薄。突然変異の吸血鬼である霊子、フィジカルは並の吸血鬼をも遥かに上回っている。
その差は、まさに美鈴の予想すら上回っていた。あまりの速度に反応出来ず美鈴は初撃が遅れるが、霊子の拳を、回るようにステップする事で回避し、その勢いのまま彼女を殴る。────が、その拳は空気を切っただけで、霊子を殴れはしなかった。
「なっ」
「咲夜より体術は優れてるんじゃない?凄いね」
「くっ、防備『クラッドアーマー』ッ!!」
「透明な鎧……でも残念、私の方が上♡────!」
「あうっ……!?」
並外れた威力の超音波を飛ばし、纏っていた気を吹き飛ばしてしまう。しかし、それしきで怯む美鈴ではない。すぐに体勢を立て直し、拳をガツガツとぶつけ合い、呼吸法を特殊なものに変える。
「『
「ッ!?」
美鈴の「波紋」は、太陽を克服した者にさえ通用するくらいに強力だ。例えるなら、
それを喰らった霊子の腕は、ジュウジュウと肉が焼けるような音と共に溶け始めた。しかし霊子は、自傷を恐れる必要のない超再生力の持ち主だ。まだ無事な部分に噛み付き、ブチブチゴキゴキと骨ごと噛み砕き、ベッと吐き出す。そこから再生すれば、それで済む話だからだ。
「フン!そんなの通じないね。無駄だよ。殺す気、そう、頭にでも波紋をブチ込まないとねェ?」
「っ……」
「でもそうするとお父さんにブチギレられるねぇ。それならどうやって私を倒す?普通に考えるなら、気絶させるしかないねぇ♪」
「ならばこれなら────ッ!!」
「あ、今の私に触れない方が────」
瞬間、霊子の鳩尾に拳を叩き込もうとする美鈴。しかし拳から打撃を加えた感触は伝わってこない。霊魔のように姿を見せたままで霧化しているのか?いいや違う。そもそも美鈴は、肘から先の感覚が、消失していた。
「……え。えっ、え?い゙っ……ぎゃああぁっ!?」
霊子を殴ったはずの右手は、右肘から先が綺麗に消え失せていた。見れば霊子は、黒っぽいオーラのようなものを纏っていた。月属性の魔法、それも、より凶悪な
「大丈夫だよ、私の『破壊』は不可逆じゃないから治癒魔法で治せるよ。パチュリーのとこに行きな。そうでないと失血死するかも?あ、でも、妖怪って失血死とかするのかな?」
「くっ、しかし片腕の欠損くらいでッ!!」
「焦ってる美鈴は、まるで敵じゃないね。『気』が練れてないよ」
パチンと指を鳴らすのと同時に闇の弾幕が美鈴を滅多打ちにする。博麗神社唯一の月属性の使い手、霊子。もしかしたらエスカルゴチルドレンの中でも唯一かもしれない。その威力は折り紙付きだ。
「……結局、お姉ちゃん1人じゃ無理だったねぇ♪」
「う、うっさいなぁっ!待ち構えられてるなんて、そんなん予想できないよ……」
「多数との戦いは不慣れだし、仕方ない仕方ない」
「そーそー、霊麗お姉ちゃんの言う通り」
「くぅ……頭に血が上りすぎた……」
(僕が卍解すればイけるのかな。それくらいしか、僕は対処の方法が思い付かない……。だけど、それで対応するとしても、咲夜さん、弦月姫お姉ちゃん、虔魔をほぼ同時に倒さないと時間停止されて詰む。どちらにせよ、僕1人じゃ難しい……かな)
(とりあえず、私や霊魔が暴れればすぐにどうにかなったけど、頑張るお姉ちゃんは可愛いね……♡)
そして4人は、エントランスへ足を踏み入れる。そこはパチュリー、小悪魔、ここあ、シガレットの4人が待ち受けており既に魔法を発動させる準備を整えていた。
「……先に準備しておくとは、用意周到なことで」
「ここより先に進もうものなら、ぶっ放すわよ」
「あんたら4人の攻撃くらい霊魔の結界で防げないワケないね」
「そうね、鍛える前なら……ね」
「?」
「度重なるあなたの襲撃で、私達も、学んだのよ。そして研鑽を重ねた。暫く、襲撃が無かった時期……あったわよね。恐らくあなたもあなたで、紅魔館を攻略する為の作戦を立てていたのだろうけど、私達だって同じ。あなたを倒す為の対策を考えていた」
「でも残念、今回は私だけじゃない。4人だよ」
「そうね、
「────!」
「奇しくも私達は同じ結論に達したみたいね。さぁ小悪魔、ここあ、シガレット────悪辣な巫女に辛酸を舐めさせるわよ」
「「「はいっ!!」」」
「霊麗、霊魔、霊子!軽くあしらってやるよッ!」
「了解」
「────ごめん、シガレットお姉ちゃん。せめて痛くないようにするから」
「じゃ、余り物は私が相手するね〜」
霊愛はパチュリー、霊麗は小悪魔。そして霊魔はシガレット、霊子はここあへ向かって、それぞれが動き出した。
しかし事前に魔法を用意していた4人は、まるで慌てる様子もなく、黙って魔法を発動させた。
「「「「『
4人の魔力を混ぜ合わせ、館の中に巨大な太陽を作り出す。強力過ぎる日光のエネルギーは、美鈴の波紋疾走のように、太陽を克服した吸血鬼にさえもダメージを通してしまう────ッ!!
「眩し……って、うわっ、レーザー!?」
「うあっ!ひ、皮膚が、焼ける……!?」
「熱ッ……これってジョジョ3部のっ……」
「アッツ!ちょっとふざけてんの!?火傷は皮膚の変質だからケガより治るの遅いんですけどォッ!?いっそ美鈴みたいに溶かしてくれないかなぁ!?」
吸血鬼の弱点の1つ、急激な環境変化。4人は、まさにそこを突いた。
霊愛は混血故に効果は薄かったが、単に暑さから動きは鈍っているしレーザーの回避へ追い込めた。霊麗は肌の露出部を手で押さえ、火傷が広がるのを恐れ、結界を張りつつ後退する。
霊魔は姉と同じく結界を張り、しかし後退はせず痛みに耐えながら、アラビア・ファッツのスタンド
「
「太陽なんか!月には敵わない!死ねェっっ!!」
「所詮、月は太陽光を跳ね返すだけの衛星!恒星と比べて2ランクも劣る存在でしかないわ!神聖なる太陽の権能を舐めないことよ!!」
霊子は全力で死の魔法を展開。その向かう先は、4人の魔力の集合体である「太陽」。魔法にだって
「死」はある。それはつまり「魔力切れ」を起こすことである。
「そんな魔法、殺してやる!!」
「やってみなさい!対策は完璧よ!!」
そう、パチュリーは完璧に対策していた。魔法の
「死」とは「魔力切れ」を意味する。なら、それを防ぐにはどうすればよいだろうか?────温泉の如く、常に魔力を供給し続けること、だ。
「ッ……殺せない…………消せない、どうしてよッ!?私の破壊魔法はお父さんに次いで完璧のはず!!」
「まだまだ未熟なあなたに私達の魔法は消せない。それだけの事。全身を燃やされる前に退却なさい。瀕死にまで至ったら治癒魔法を掛けてあげるから、それを以てあなた達の完全敗北よ」
「クッッッソォォオオオオオッッ!!!」
「「「霊子っっっ!!!」」」
ジュウジュウと焼かれる霊子を姉、兄がカバーに向かう。一番効果が薄い霊愛が霊子を連れ戻した。一番防御力、つまり結界の強度が最強である霊魔が術者と魔法の繋がりを結界で切り離した。そして、フィジカルに優れる霊麗が、混乱に乗じて背後へと移動し、倒しやすい順に術者たちを倒していく。
「きゃあっ!?」
「こ、ここあ!?どうし……きゃん!!」
「まさか霊……ぎゃんっ!」
「魔力の補給路が絶たれ『太陽』を維持できない。中々の連携じゃないの」
「────ッ!?」
霊麗の魔の手がパチュリーに届こうとした瞬間、強力なバリアが霊麗の手を弾く。
「イッ……」
「魔法の二重詠唱なんて私には朝飯前。『太陽』もまだ完全には死んでない。アレが完全に死ぬ前に、終わらせるわ」
「ッ……なら、私のフィジカルでさっさと終わらせるだけだよ」
「やってみなさい。『太陽』が消える前にあなたを倒してみせる。そしてもし『太陽』が消えるまでに倒せなかったら、私の負けよ」
「ふぅん。じゃ……パチュリーの負け、ねッ!!」
「遅いわッ!!────」
霊麗の拳を再度バリアで受け止め、「太陽」とはまた別の魔法を発動しようと詠唱を始めた瞬間に、頭上の「太陽」の魔力が急激に減少、そして続けて消滅してしまった────!
「え」
「……さっすが。霊子の回復力は博麗神社イチ♡」
霊愛が離脱させた霊子は、霊麗がパチュリー達の相手をしている間に傷を回復させ、供給が絶たれたパチュリーの魔法「太陽」へと再度「死の魔法」を掛けて、消滅させたのだった。
「……霊子ちゃんの回復速度、見誤ったわ……」
そして紅魔館襲撃はいよいよ大詰め。遂に4人は揃ってボス戦へと足を踏み入れる事に────。