更に先に進むとそこには紅魔館の主、レミリア。妹のフラン。レミリアの娘のレイチェルという今の紅魔館における主力3人が一堂に会していた。
全員、既に武器を手にしている。レミリアは紅の槍、フランは燃える剣、レイチェルは紅の大戦斧を携えている。この3人で、4人を迎え撃つつもりのようだった。
陽動作戦か何かで、どこかに伏兵を忍ばせている様子などは一切ない。気配を探知しても、その辺を目視しても、特に怪しいものは無かった。
霊愛が口を開こうとするが、出鼻を挫くように、レミリアが先に言葉を発する。
「全く、子供相手にこんな事は言いたくないけど。しつこいわねぇ。今の強さじゃ私達には勝てないとまだ分からないのかしら?」
「分かるよ。だから『私1人』での攻略はもう当分するつもりは無いよ。『私達全員で』、『一発で』攻略してやる!……って決めたからさ」
「そうらしいわね。だから、こちらも常に複数人で迎え撃ったのだけど────流石に、4人も揃えばこんなにもアッサリ、呆気なく負けちゃうのねぇ」
「連携はピカイチだから。……レミリア達を倒してもモルモーの事はスルーするけど、構わないよね?」
「いいんじゃない?そもそもあなた達が攻めてくるこの騒動に、アイツは気付いてもいないはずよ」
「あはは、地下牢暮らしだもんね」
「地下牢には見えないくらい魔改造してるけどね。ともかく、この戦いは今回でおしまいにするわよ。私達の勝ちで締めさせてもらうわ」
「オッケー。皆、行くよっ!ここで奴らに勝って、終わらせる!」
「「「了解ッ!」」」
今回は、レミリアとフランのタッグ所ではなく、レイチェルまでもがそこに居る。予想していたよりずっと厳しい戦いになるのだろうと、この場に居た誰もがそう腹を括る。
そして開戦早々動いたのは────。
「卍解『
「のわぁっ!?」
「「!?」」
霊魔だった。彼は連続居合の要領で突っ込むと、レイチェルを小脇に抱えるようにして引ったくり、再度方向を変え、レミリア、フランと引き離した。
「なっ!?どういうつもり、霊魔!?」
「レイチェルお姉ちゃんの相手は僕がする」
これで、スカーレット姉妹とレイチェルの連携は取れなくなった。これだけでも割と戦況は変わると言っても過言ではないだろう。
「ふぅん……弟のクセに生意気っ!『炎獄一振』!」
ぺいっと投げ飛ばされると共にバトルアックスに炎を纏わせ、ギュルルルルッと縦に凄まじい回転をしながら真っ直ぐ霊魔へと向かっていく。
まるで制御できていない攻撃だが、制御を捨てた代わりにその速度と威力は折り紙付きである。彼は剣でその攻撃を受け止めたものの、受け止めきれず呆気なく弾かれ、両者は共に壁に突っ込んでいく。
「がはっ……受け止めたら吹っ飛ぶのか……」
「くぅっ……同じような力で吹っ飛ばされた……」
「「はぁぁあああああっっ!!」」
霊魔の卍解は継続中である。壁を強烈に蹴ると、反動を利用してレイチェルへ突撃。しかし大戦斧を振り上げ、再度、炎を纏わせては振り回す。
「『獄炎爆神撃』っ!!」
「うあああぁああっ!?」
「ハアアアアアアァァァッッ!!!」
霊魔は卍解した剣で受け止めるも、それすら破壊せんばかりの勢いでレイチェルは連撃する。しかも触れる度に爆発するのが酷い。それでいて非スペルという凄まじさ。霊魔達の場合、非スペルといえばちょっとした
因みにレイチェルは、非スペルを漢字、スペルを横文字で名付けるといったこだわりを持っている。こんなこだわりを持つのはエスカルゴチルドレンで唯一、このレイチェルのみである。
「ガハッ……ッ…………く、そォ…………っ」
「はい、戦線離脱、いっちょあがり〜っと♪」
「────ッ!?」
膝をついて倒れそうになった霊魔を壁に向かって蹴り飛ばし、トドメを刺した。壁の瓦礫に埋もれ、起き上がってくる様子は無い。
「お兄ちゃんッ!!」
「霊子!
「言われなくても!!」
博麗三姉妹からは霊子が離脱。兄が離脱した事で3対3となった戦場では、レイチェルvs霊子、更にレミリア&フランvs霊愛&霊麗という2つの戦いに分かれ、それぞれ激化していた。
「お兄ちゃんだって『四天王』の1人だってのに、よく倒せたねぇ、レイチェルお姉ちゃん」
「やだなぁ。私、皆の前で本気出した事無いだけでそれなりに強いよ?」
「……出し惜しみして、そんで結果残せてないんだ?プッ……面白いね?こんな非公式の場で勝ったって周囲の評価は大して変わらないんじゃないの?」
「真に力を持つ者は、その力をひけらかさないの。
『能ある鷹は爪を隠す』って諺、知らないのかな?知らないようだから、この場で教えてあげる。異母姉妹とはいえ私も霊子の『お姉様』なんだから♪」
「なぁぁあ〜〜〜にが『能ある鷹は爪を隠す』よ!本気を出した上で負けたらもう後がないから!皆に自分の弱さを知られるのが怖いから、出し惜しみをしてただけでしょうが!!」
「なッ……!?」
「本気じゃないとか言って偉ぶってるお姉ちゃんに教えてあげるよ!本当の『強さ』ってのはねぇ!!常に全力を出すからこそ鍛えられるってねェ!!」
「────ずああぁっ!!」
床を瓦礫に変える勢いで踏み込み、殴り掛かる。レイチェルは躊躇いなく大戦斧に炎を纏わせ、妹を一刀両断せんばかりに振り下ろすが、そんなものをまともに受ける霊子ではない。
「掛かったね!バカ正直に正面から殴り掛かるとか思ったワケ!?────スペルカード発動ッ!」
「!?」
「霊符『夢想封印』ッ……!!」
「うッ!?こ、この弾幕はっ……」
「霊力の塊!妖怪、特に悪魔系には効果覿面ッ!!至近距離から、しかも強力なホーミング!まともに回避すらできず全身に被弾して、自分の浅はかさを知る事が出来て嬉し涙流しな!マヌケッ!」
誰が聞いても悪役のようなセリフを吐きながら、霊子の弾幕は的確にレイチェルへ強烈なダメージを与えていく。徒手格闘による接近戦と見せ掛けての相手の弱点となる属性での攻撃────これまで、特に戦闘が長引く事が無かったレイチェルは、その戦闘時間の短さ故に「相手の戦法」を見る事が殆ど無かったのだ。だから余計に反応が遅れ、弾幕で、滅多打ちにされてしまった。
「げはぁっ……!!」
「────フンッ、他愛もないね。これでもまだ、
『実力は隠してるだけ』とか何とか言えるんなら、大したモンだけどね。……後でお墓は立ててあげるよ霊魔お兄ちゃん。もう少しだけ待っててね。墓標も卒塔婆もアイスの棒だけど」
兄と同じように壁の瓦礫に埋もれたレイチェルを冷たい目線で一瞥。霊愛、霊麗と合流しようと踵を返す霊子だったがそんな彼女が思わず足を止めた。ざわりと、毛が逆立つような悪寒を感じたからだ。
「……ッ!」
「まだ…………負けて……ない……ッ!!」
「……へぇ、しぶといね。さっすが、貴族のお嬢様。私とは大違いっぽい……かもね?」
「絶対に……倒してみせる!私は今、ここで!初めて両親以外に本気を見せるわッ!!」
「『本気を出すに値する敵』って判定してくれた?光栄だねぇ。両親以外なら私がハジメテ?いいね、ゾクゾクしてくる♡」
「私に本気を出させた事、後悔するといいわッ!!魔弾『ファイアボール』っっ!!」
「……デッカい……パチュリー達みたいな弾…………」
レイチェルの2枚のスペカのうちの、1枚目だ。初級魔法のような名前なのに、実際は、既に最上級レベルの威力、規模である。
小さな太陽のような巨大な弾幕は、散らばる瓦礫すらも焦がしながら迫ってくる。しかし悲しいかな相手は「破壊魔法」の使い手、霊子なのである。
「……やっぱ甘いね。そんなの喰らったって、私ならノーダメージだっての」
「『破壊魔法』ごと燃やし尽くしてやるわっ!!」
破壊魔法を身に纏い、ジュワッと焼かれる霊子。しかし破壊魔法の方が上回ったらしくレイチェルの魔法の方が破壊されてしまい、霊子は無事だった。
「な……っ、この私の魔法がっ……」
「
「なんですって!?この『お姉様』相手にっ!口の利き方がなってないわよ!これでも喰らいなさい!魔弾『ヘビーレイン・オブ・フレイム』ッ!!」
「無駄無駄無駄無駄ァーーッ!!数を増やそうと!この私の鍛え上げた破壊魔法の前には無力同然ッ!思い知るがいいわ!全てを破壊するこの力こそが!極悪!無敵!最強の力だとッ!!」
「
「……ッ!」
レイチェルの能力《確率を操る程度の能力》は、
「絶対に可能・不可能なこと」以外なら大体何でも操作が出来てしまう、限りなくチートに近いもの。
例えば「トンネル効果」で人妖などの物体が壁を通り抜けられる確率は「限りなく0に近い」。が、厳密に「0%」ではない。それを操作する事によりトンネル効果を意図的に引き起こす事さえも可能になる────という能力である。
ここでは「自分の弾幕が全てを燃やせる」確率を確定レベルに引き上げた。これによりレイチェルの炎弾は霊子の破壊魔法すらも燃やして、ダメージを与えられるかと思われたが────。
「まだ分かんない?私が魔力切れを起こさない限りお姉ちゃんの魔法に押し負けたりなんかしないよ」
「!」
「能力
「そんなっ……」
拳がレイチェルに到達する寸前に身に纏っていた破壊魔法を解除。レイチェルはそれを見逃さずに、ビンタの一発でも見舞ってやろうとするもそれより先に霊子の拳がレイチェルの頬をブン殴った……。
「はぐぁあっ!!」
「せっかく持って生まれた能力も────トコトン使いこなせなきゃ無意味。『宝の持ち腐れ』だね」
「ど……どぼ、じで……こん、な…………強……」
「忘れたの?私は、エスカルゴチルドレンで唯一の
『無能力者』だよ。能力が無いんだからそれ以外をトコトン鍛えまくってるに決まってんじゃんね〜。異能以外の『技術』とかを『〜程度の能力』なんて呼びたくないんだよね、私さ」
「……ッ」
ガクリと気絶してしまうレイチェル。そんな姉とまるで入れ替わるように、瓦礫の山の下から霊魔がズルズルと這い出してきた。
「あ、お兄ちゃん。生きてたんだ?しぶといね〜」
「誰の墓標がアイスの棒だってぇ……?」
「あはっ、聞こえてた?ふふ、適当言ってみた♡」
「ったく……。さて、お姉ちゃん達は……」
「ご覧の通り、バッチバチにやりあってるよ〜」
「少し劣勢だね。……霊子、瞬間移動の魔法は?会得してる?もし、会得してるんなら……2人で同時に、不意討ち仕掛けてみよう」
「フン。
「だよね。やっぱり鍛え……」
「てるワケないじゃんか。バカなの?能力が無いんだから直接戦闘に使えるようなのしか鍛えないよ。そんな余裕、今の私には無いんだからね?」
「……」
あまりに予想外だった答えに霊魔はついため息をついた。あんなドヤ顔で「愚問だね」と言われれば誰だって「鍛えてる」と思うだろうに、まさか逆に
「鍛えてるワケない」という意味で胸を張っていたなんて。
「霊愛お姉ちゃん以外が純血吸血鬼……。というか、吸血鬼しか居ないって狂ってるね……この戦場」
「ふふ、今更?それなら、不意討ちしやすい方法があるよ?しかも、上手くいったならその次で決着がついちゃうような……最高の方法♡」
「え?」
「耳、塞いで♡」
「……ッ!待っ……」
「〰︎〰︎〰︎〰︎〰︎〰︎〰︎〰︎〰︎〰︎〰︎〰︎〰︎〰︎〰︎〰︎〰︎〰︎〰︎ッッ」
霊子は、突然変異の娘である。異端で、凶悪で、そして誰より強力な「吸血鬼の技能」を生まれつき備えている子供だ。
赤子の頃に、超音波だけで博麗神社を倒壊、いや内側から爆破させるように破壊した実績まである。そんな霊子が、大きくなった身体で全力の超音波を放った────!!
「ギャッ……!?」
「ふぎっ!?」
「ぐうっ……!?」
「……な、なんか煩い……?」
レミリアとフランは思わず武器を落とし、両耳を塞ぐのに手を使う。霊愛は半妖なので、効果は半減以下であるが、霊麗はスカーレット姉妹と同じく、お祓い棒を落とした上で動けなくなっている。
「霊魔お兄ちゃん近くに居たけど大丈夫?」
「……手で塞ぐの間に合ったからね。ギリギリだよ。キンキンするけど……」
「あっそ。じゃあ、あと10秒以内に相手さんも耳、治るだろうから、トドメ刺そっか」
「……霊愛お姉ちゃん、僕らの声、聞こえてる?」
「私はね。でも霊麗がヤバい。せめて合図しなよ、味方を巻き込むのはヤバいでしょ」
「合図なんてしたら、相手の方が戦闘歴長いんだし反応されるに決まってんじゃん。同じ吸血鬼だよ?経験豊富な方がすぐ対処が可能なのは明白じゃん」
「う……でも霊麗……」
「お姉ちゃんはこの程度で怯まないよ。妖怪退治の訓練の方がキツいし、あの頃に比べて制御もできるようになってるから……できるだけ直線的に、そう、レーザーみたいなイメージで
「それもそっか。霊麗、気絶してないもんね」
「そうそう」
スカーレット姉妹が頭を押さえ呻いている間に、博麗4姉弟妹は合流。そして最後の最後、相殺すら許さぬ4人最強の技をブチ込む────ッ!!
「「「「博麗奥義『夢想封印』ッッ!!!」」」」
まさに原点にして頂点。最強の夢想封印が2人を吹っ飛ばし、霊愛の襲撃に始まったこの長い騒動に強制的に幕を下ろす事になった────。
◆
一方その頃、紅魔館の地下牢でのんびりと暮らすスカーレット姉妹、エスカルゴの先祖である神代の吸血鬼・モルモーは────。
「でねー、エスカルゴくんったらさぁ〜♡」
「うふふっ、だってご主人様ですものねっ♪」
彼の専属のメイドであるシャロンと、いつも通り惚気話のキャッチボールをしていたのである。
霊子編も残るところ2話となりました。
いつもの流れならエロ回となりますが、果たして。