その子、霊麗
博麗神社の2人目の子供として生を受けた女子。名を、博麗霊麗。吸血鬼化後の霊夢の初めての子で純粋な吸血鬼だ。
一般にも広まっている有名な二つ名には「博麗の妖怪巫女」が挙げられている。その名の通りだが、霊麗は妖怪の身でありながら人間の味方────、博麗の巫女を目指している。
とはいえ次期博麗の巫女は姉の霊愛に確定済み。霊麗は更にその次、更には霊愛の補佐をしようとも考えており、それを狙っている。
「……という訳で。今日も修行するから、
「霊力の多さも強さも大違いなのに、僕じゃ相手になんてならないよ。だからヤダ」
「でも、霊魔の速度は私以上じゃない。気絶させる勢いで掛かってきな。なんなら夢想封印は1回しか使わないって縛りも付けようか」
「……分かったよ」
霊愛はエスカルゴチルドレン長女・巫月に会いに永遠亭に行っている。霊夢はいつも通り、読書やら巫女としての業務やらに勤しんでいる。それでいて末っ子は魔法の特訓に魔界に行っている。今ここに残っているのは、4姉弟のうちの2人のみだった。
博麗4姉弟には、それぞれの得意分野がある。
長女・霊愛は膨大な霊力に加え、神降ろしなどの巫女としての技術は一通り、霊夢も認める高水準で扱う事ができる他、能力も覚醒させている。
次女・霊麗は膨大な霊力に加え、吸血鬼としての凄まじいフィジカル、継戦能力、攻撃性。
長男・霊魔はチルドレンでも屈指の防御能力の他チルドレンの中でも最速レベルの速度が出せる上、霊力を殆ど消費した後でなら、という条件はあるが少しだけ魔法を使える。
三女・霊子は突然変異
「────ハッ!!」
「っ……速いっ……」
霊魔の居合切りで翼をちょっぴり切られる。が、それでも彼は容赦せず、ザザザザッと急ブレーキを掛けて180°方向転換、再び斬りつけてくる。
構えを見るに、袈裟斬りをするつもりのようだ。霊麗はそこまで見抜き、敢えて彼の狙い通りに行動させようと、斬られ易いように、逆の意味で体勢を整える。
彼の剣が通りやすいルートを敢えて作ってやり、彼の行動を限定させる。そうする事で不確定要素を減らし、的確に反撃しやすいように備える。
「ハアアァァッ!!」
「予想通りのルートだね」
「っ!」
刀や剣などは、横からの力に弱いとされている。その事を伝聞ながらも知っていた霊麗は、霊魔から発せられる雷エネルギーで生成される雷刀を自身のお祓い棒を振るい、横からへし折ってしまった。
「未来予知でも出来るようになったのかな。まるで想定通りの動きしかしないね。ちょっぴり残念」
「僕はこれから、読書の時間なんだ……お姉ちゃんの相手なんて、早く終わらせてやるっ!」
「読書って。どうせ漫画でしょ?読書って言うならお母さんみたいに小説でも読みなよ」
「お姉ちゃんだって、エロ漫画読んでるクセに!」
「私はアレを『読書』って思ったことは無いよ〜。アレは遊びの時間。自由時間だもの」
「……じゃあッ、漫画から得られた知識で勝てたら、
『戦闘訓練』って呼ぶから!」
「アハッ何それ!反論にもなってないと思うけど、面白いね!やってみてよ!」
「────
ポケットからけん玉を取り出した。それは、魂をコピーできる神代の鉱物、
彼は「卍解」の合図と共に、けん玉から剣へ形を変化させると、チルドレンでも最高速度と言われる斬撃を繰り出す────ッ!!
「な……ッ!?」
「あのね、霊魔。戦闘っていうのはさー、速けりゃイイってもんじゃないって、まだ分からないかな」
霊力の他に御札まで使って強化されたお祓い棒で霊魔の攻撃を受け止めてしまった霊麗。身体能力に優れる吸血鬼同士ではあるが、霊魔の速度は霊麗の最高速度の数倍だ、容易に対応できるはずが無い。
「ぐぇっ!?」
「四天王に入れたからって、少し調子乗ってる?」
「そんなこと……無いッ!!」
「あそう、それなら良かった。あの後、お母さんとお父さんにボコボコにされたもんね」
「……」
この少し前に地底にて開催された、エスカルゴの子供達のキング・オブ・チルドレンのトーナメント及び、四天王決定戦、その後のエキストラマッチの事である。
その四天王のうちの3人は、なんと、霊麗以外の3人が入っている。キングを除き24人も居るのに、それでも3人は霊夢の血を引く子だったのだ。
唯一四天王入り出来なかった霊麗だったがそれで卑屈になるような子供ではない。黙って自己の力を高め、いつなん時、どんな敵と戦闘になってもいいようにと訓練している。
「軌道さえ分かれば、目を瞑っても対処できるよ。確実にね」
否。霊麗が言うほど、そう簡単なものではない。仮にメジャーリーガーが、「ストレートのボールを時速165キロで投げる」と宣言したとして、それをたった一発で
それが出来るとしたら、そのメジャーリーガーと同程度の強さを持つ者か、野球経験において多くの経験をして理論的に正解を導き出せる者だったり、タイミングやバットの動く軌道、バットを振る力や速度、角度などなどの諸々の条件において、極めて運が良かった者などであろう。
しかし霊麗は「確実に」と言い切っている。まだ幼く力量もそこそこな霊魔だったが、己の速度には全幅の信頼を置いている。それを容易く突破され、彼は、冷静になるよう自分に言い聞かせながらも、キレた。
「だったらッ!僕を倒してみてよっ!!」
「一撃でね」
「卍解『安穏遊戯・
目にも止まらない超速の居合を連続で仕掛ける。これには流石の霊麗も対応しきれず流血に至るが、どれもが、決着に至る攻撃には至っていなかった。
それは全て、彼女が持ち前の霊力にて身体強化を施した上で、お祓い棒も変わらず強化し続けていたからだった。それでもダメージを受けるあたり彼の本気度が窺えるというもの。
博麗の巫女になる為の修行は、巫女としての修行だけではなく、妖怪退治にも特化している。如何に弟が相手でも関係ない。
「……霊符『夢想封印』」
「ッ!!」
絶大な霊力を込められたソレは、まるで移動する壁のような勢いで霊魔へと向かっていく。彼が移動すれば、ホーミング弾であるが故に弾幕も移動して霊麗と霊魔との間に割り込む。どうにかして弾幕と霊麗の間に入り込み霊麗に斬り込むが、夢想封印の弾幕はまだ溢れてくる。
「自己『ス────」
「遅い」
夢想封印の弾幕に挟み撃ちにされた上、上空から頭をお祓い棒でバチッと叩かれた霊魔は、キュゥと呻いて目を回して倒れてしまった。
本来の霊魔であれば、霊麗にも負けるはずは無い程度には凄まじい力を発揮できた。それなのに何故こうもアッサリと負けたのか。
それは、いつもの冷静さを捨て、彼らしくもなく勝負を焦ったからだ。そして霊麗がそこに漬け込み勝利をモノにしたのも、霊麗もまた冷静さを欠いて負けるという負け方をした事が多いからだった。
「『人の振り見て我が振り直せ』ってね。昔の人はよく言ったもんだよね」
「きゅぅ〜……」
倒れ込んだ弟を縁側に寝かせ、霊麗もまた、姉を追って永遠亭へ飛んで行く。永遠亭にはチルドレン最強の娘がいる。子供達では誰も勝てない、最強の娘。
そしてこの後、霊愛と組んで「最強」と戦うも、やはり歯が立たなかった博麗の巫女姉妹であった。