※この作品はR-18です。

エクスティア×FGO 異界魔導帝国ロギア・アース~堕ちた人理の希望~   作:王天君

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エクスティア×FGOシリーズ、第9話となります。
たどり着いた最果ての地。
そこでカルデアを待っていた人物と対面するダ・ヴィンチたち。そして時同じくしてマシュの様子もおかしくなっていき・・・


第9節 崩壊への序曲

北の大地

ここまでのエクスティア×FGO。

バーゲスト、メリュジーヌという犠牲を払いながらも最後の希望、北海道へ迫ったカルデア。

北海道を囲っている光の壁と四天王ユリエルが指揮するロギア帝国軍に挟まれて万事休すと思われたその時、壁の内から現れて窮地を救ったのは4人のエクスティア……カルデアを追い詰めてきたはずの帝国幹部と同じ顔をした少女達だった。

 

◇

 

エクスティアによる案内を受け、ストーム・ボーダーは西に迂回しつつ小樽港へ入港。北海道でも本州側は函館を起点として防衛拠点となっており、外部の艦を入港させて混乱を招きたくないとの理由だったから。

エクスティア側はカルデアの事を把握しており、あちらのトップも面会する用意があるという。

しかし事情によりしばらく待ってもらうということを伝えられ、艦内で待機すること1週間。

見回ることが許されて、いくつかの新発見があった。

汎人類史の北海道とは違うところがずいぶんと見受けられる建物がいくつかあること。

歩いている人間の中に耳の長い人種がいること。それがロギア帝国側の人間の特徴だということ。

本州側の帝国人とは敵対する立場だということ。

下船が許可された際に食料調達で散策すると当り前のように帝国人と日本人が混ざって生活。ただ絶対量は日本人の方が多い。

文化水準は日本中心であること。

エクスティアは双方にとっての味方の立ち位置を取っていること。

そしてなにより━━北海道のトップがいるといわれる札幌方面にそそり立つ黄金の柱、空想樹のこと。

帝国人・日本人共通で彼らはその柱を世界樹と呼び、本州からの侵攻を防げているのもその力によるものらしい。有難い存在だそうで拝礼をしている老人までいたほど。

ヨーロッパの運河を思わせる水路や使われなくなって久しいらしい漁船などにも見飽きた頃、ようやく面会がかなうことになった。

 

◇

 

ダ・ヴィンチはシャドウ・ボーダーに乗り換え、モルガンとゴルドルフを連れ立って札幌へ向かうことになった。

福岡の時とは違い、不明な点が多すぎる為にシャドウ・ボーダーへも戦力が必要とみられたためだ。

女性化がさらに進んで精神面での負担が懸念された藤丸。

盾を持ち上げるにも苦労するほど衰弱したマシュ。

両名は万が一の為にストーム・ボーダーへ残留。防衛をネモとバーヴァン・シーで担う構成。

面会班もモルガンがいればトップがこちらを捕らえようとしても脱出できるだろうとの見込みからこの選出となった。

大体30分ほどの道のり。

勢力のトップに会いに行くのもこれで3度目だ。エクスティアが乗る先導車に続き、ダ・ヴィンチは揺られている。

果たしてこの面会に意味はあるのか。そもそもアルテミスを持ち出すような輩に勝てる手段があるのか。

乗り込む前にエクスティアが語った言葉が思い出される。

 

(帝国との戦いの歴史、ルクスリア(もう一人の私)、この世界の日本に持ち込まれた空想樹……多分、知りたいと思っていることの多くに応えられると思います)

(例え異聞帯の真実に迫れたとしても妖精騎士が2騎脱落に加え、マシュと藤丸君が体調を戻せないとブラックバレルは使えない。それにアレは強力な一体を倒すのに特化している。皇帝以外にも四天王やルクスリアを持つ彼らには届かない)

 

陰鬱とした気持ちが晴れない。この異聞帯に入り、関門海峡攻防戦に敗れてからずっとこの調子。

状況的にはアトランティスが近いが、それでもあの時は現地サーヴァントの助けがあった。目的へ向けて犠牲を払いつつも進んでいる実感があった。

しかし今は違う。追い立てられるままに満足な思考をする間もなく逃げ回っているだけ。ストーム・ボーダー内でもやはり離脱するべきと考える職員のストレスも不安。

状況としてマズ過ぎるのだ。

 

(私がしっかりしないと……ホームズがいない今はもっと頭を使わなくちゃ)

「顔色が悪いぞ技術顧問。目的地に着くまでくらい寝て起きたまえ。待機期間も情報分析で満足に寝ておらんだろう」

 

隣の座席からゴルドルフが心配を隠さずに言ってくる。自分もここの所睡眠薬を使って寝ているくせに。

無理もない藤丸やマシュもそうだが特殊な訓練を積んだわけでもない普通の精神(人間)。

砲火や爆発や閃光と強烈な刺激を受け続けて神経が疲労して当たり前だ。

 

「……大丈夫だよ。私は体のメンテナンスで体調コントロールできるから。

それよりゴルドルフ君達の方が心配。この数日は多少休めてもかなり精神に来てるでしょ」

「司令官が弱い顔はできんよ。限界なのは皆同じなのだからね」

 

なんで前より色の良くない顔でそんなこと言うかなぁ。

もっとも血色の良くない顔といえば最後の同乗者が一番。今も静かに瞑目しているが

 

「モルガン。君もここ数日眠れてないんだろう。少しは休みなよ」

「不要です。先に斃れた2人の犠牲を無駄にしない為にも貴方達は勝たなくてはいけない。私はサーヴァントととして助けるだけですから」

 

機械的に答えてくるが彼女にとって大切な仲間である2人との2度目の別れだ。堪えていないはずがない。

特にメリュジーヌは目の前で撃ち落とされ、日本海へ落ちていったのを目撃している。自分の国を守れなかった彼女からすればまた守れなかった悲しみが襲っているだろうと思われた。

あくまで役目に殉じようとする姿は気高くもあって、一つゴルドルフに頼んでおくべきことがあったのを思い出す。

 

「ゴルドルフ君、君に頼みがある。カルデアの技術顧問としてじゃない。一友人として。

もしこの北海道でも帝国が侵攻してきた場合の話」

「……えらく深刻そうな顔をする。何を死にに行く兵士みたいなことを。ここ数日は侵攻もなく、現地住民によれば帝国があの壁を越えられたことはないというぞ。

心配するならこの後我々がトップに捕らえられる心配の方が先だと思うが」

「まぁね」

 

北海道を覆う壁。あれは常に展開し続けていて帝国が北海道へ上陸を許したこともないそう。ただ挑まれていないってわけでもなく、実際にアルテミスの砲撃を何度も弾いていると効果も保証されている。

だがだからといっていつまでも攻めてこないとは限らない。

それに追い詰めてきたユリエルはわざと北海道へカルデアを逃がした気配もあった。

 

「いつも先手を取られてるからね。念には念をって備えだよ。

具体的には━━」

 

◇

 

会話を終え、ようやくついた場所は北海道庁旧本庁舎。赤レンガで組み立てられた威厳を持ちつつも古びた建物だった。

館内へ入ると古めかしい外見と逆で現代的な内装。

明治時代に建てられたというそこは本来観光地。しかし内装からは街の模型や開拓民の手記など本来あるべきものが撤去され、いずれも帝国人たちが慌ただしく白衣やスーツを着て作業にいそしんでいる。

そこでも目立つ格好のエクスティアが通ると誰もが手を止めて礼。彼女たちも慣れた様子で首肯だけで通り過ぎていく。

そして2階の奥まった部屋。旧長官室とされる部屋の扉に行きついた。

 

「この先が北海道のトップ……陛下のいるお部屋です」

「陛下?」

 

その呼び方にまさかナイオーロがいて誘い出されたか!? と警戒。モルガンと一緒に杖を持ち出してゴルドルフを真っ先に逃がそうとするも心配は杞憂に終わる。

開いた扉の先にいたのはナイオーロと似ても似つかない老人だったからだ。

 

「来たか。異邦の旅人たちよ」

 

見た目は初老。貧弱さとは無縁の筋肉質な体はまだまだ若いものには負けないって雰囲気。金髪に尖った耳をしていて明らかに帝国人の特徴。

そんな人物が長官席の椅子に腰かけ、静かにこちらを見つめていた。

 

「余がロギア帝国99代皇帝ローギルグ・フレードリク・バリエンフェルト・ロギアである」

 

◇

 

真の皇帝

席から立てないと皇帝が語った為、応接用の椅子に腰かけつつそちらを向く。エクスティアの4人はただ無言で入り口へ列をなして並び、口を閉ざす。例の青い少女がお茶を入れてくれて少し冷えてきた外気を思い出しながら啜った。

落ち着いていてくれるモルガンのおかげで平静な振りが出来るが、ダ・ヴィンチは隣で訳が分からないと素直な顔が出来るゴルドルフに倣いたい気分だった。

 

(99代皇帝? ナイオーロとは別に皇帝が? 

でも北海道では帝国人と日本人も協力しているし……ダメだ、まだ不確定要素が多い)

「混乱しているのであろう。余のことも、そしてこの日本という大地に起きている多くの出来事にも」

「……その通りだね。正直私達も何が何だか分かっていない。貴方は一体誰なの? 私達が来ることも知ってたみたいだけど?」

 

自分は護衛と沈黙するモルガン。泡を食って何を言うか混乱しているゴルドルフ。

両名に代わり口を開く。敬語を求められるかと思ったが不要だと笑ってすまされた。

 

「何を語るべきか。余もまた全てを知るわけではない。

ただこの異界へ外なる者たちが来ることは知っていた。それが今の帝国にとっての敵だとも」

「どうして知ってたの?」

「奴が把握していたのだ。あの男、ナイオーロが」

「……ここで例の皇帝かね?」

「皇帝? ……フン、奴は皇帝などではない!」

「うぉい!?」

 

何気なしに呟いたゴルドルフの発言に激しい拒絶を見せる皇帝。弱った老人の雰囲気が嘘のような覇気。隣でビクゥッと背筋を伸ばしているのが若干面白い。何やらトゥールにつまみ食いがバレた時を思い出すとか言ってるが構う気になれない。

 

「すまない。客人の前で見せる態度ではなかった」

「別にいいよ。ナイオーロが私達のやってくることを知ってたのは問題だけど……もう今更だし。

それよりナイオーロが皇帝じゃないって?」

「……事の始まりから話さねばならぬな」

 

いつの間にか手元に寄せていたコーヒーカップを煽った後、皇帝は静かに話しだした。

 

「我らロギア帝国は元々この地ではなく異世界……其方(そなた)らにとっては平行世界と呼ぶが近かろうか。確かに存在する異界の地、カルローンと呼ばれる世界に存在していた。しかしカルローンは世界を構成する魔力の枯渇により危機に瀕し、民を活かす為に余は周辺国と戦っては領土を広げ続けた。それでも魔力は足らず、また他国との戦争に勝つためにもさらなる魔力の必要性が生まれた。

やむなく己の世界以外から魔力を手にしようと試み、幾度の試行の末に繋がったのがこの世界なのだよ」

「……つまり君達は異世界から来た?」

「そう思ってくれて相違ない。そして人間から魔力を吸収し、より大きな繫栄に繋げてきた」

(道理でいきなり科学力の違いすぎる侵略者なんてものと戦っていたわけだ)

 

日本だけとはいえ一方的に軍隊を蹂躙する力。怪人に四天王と揃えた技術もまったく別世界のものだったなら当然だろう。しかも侵略国家相手に汎人類史の日本ではどうやっても満足に戦えるわけがない。

九州まで追い詰められ、時間を稼ぎ続けたクサカベ達は十分に健闘していたわけだ。既に死した彼らがそれを知ることが出来ないのは無念だろう。

しかしだとすると分からないことがまた増える。

 

「ナイオーロの態度からしても君達は侵略者の立ち位置のはず。なのに北海道で日本のトップみたいで明らかに彼とは味方じゃないよね。北海道(ここ)じゃ指導者になってるし、肩書きは皇帝だっていうし……カルローンにある帝国は誰が治めてるの?」

「無い」

「な━━!? げふんげふん!!」

 

シンプルな返答に隣のゴルドルフがむせた。

隣のモルガンは特に黙ってお茶を飲み続けている。でもお代わりのスピードが早いのは緊張しているとも思えた。

 

「もう無いのだ。ナイオーロに日本侵略を本格化させてすぐカルローンの魔力枯渇は速度を増し、枯渇が頂点に達した大陸は崩壊を始めた」

 

土も水も街も等しくガラスのように透き通った塊になった後、空間ごと音もなく砕けて消えていくという。そして巻き込まれた人間は何もない無限の虚空へ落ちていく。果たしてその後に何が待っているかは生還者がいない為に分からない。

周辺国を支配し、領土拡大を続けたロギア帝国は特に影響が大きく国土がどんどん消えていったらしい。

 

「崩壊から逃れるられる場所は異界。植民地にしようと攻めた世界が唯一の安住の地だと我らは流れていった。多くの民を伴って」

 

周辺国はこれまで敵対していた帝国の手を借りてでも生き残ろうとする国、例え死んでも帝国の手は借りないと崩壊に殉じた国と色々らしい。

一度に日本へ渡れる人数や物資には制限があったが、他国と手を取り合うことでどうにか多くの国民をこちらへ渡したのだという。

 

「幸いにも侵略を進めていたナイオーロと連絡を取り、改めてこの地に帝国を築こうとしたのだが……奴め、余に皇帝の座を明け渡せと迫りおった。認めないなら殺して新皇帝になると言い放ってな。お互いに譲れない以上戦うしかない。キョウトなる街を攻めている途中で襲い、余は奴を亡き者にしようと試みた」

「そんなにあっさり身内で殺し合うなんて……」

「我らにとってはそれが普通なのだ。求めるままに奪えと余が求めた。ともあれ戦いは起き、この国の暦で……ちょうど1年近く前か、半年ほどの間で帝国の命運をかけて争ったのだ」

(技術顧問、これはクサカベ一佐から聞いていた……)

(うん。帝国が侵攻を止めた日と合致する)

 

約1年前の2018年元日から7月までの約半年。クサカベの語った停滞期間にも重なる。侵攻を命じた皇帝の存在が日本をカルデア到着までもたせたと考えるなら皮肉な話だ。

 

「それで、その……なんだ。君らの勝敗は……」

 

聞きにくそうにゴルドルフが尋ねるも既に現状を見れば答えは決まり切っている。

 

「余は敗れた。後から知ったが共に渡ってきた貴族や宰相たちも買収されていた。健闘したが、後に続かず北へと逃げおおせた先がこの地なのだ。奴め、ああも戦上手になっていたとは。

そして逃げに逃げ、この北の地へ落ち延び、以来世界樹で守りを固めて生き永らえている。そこへ其方らがやってきたのだ」

 

即位については遺書を偽造して皇帝が後継者に指名していたことにしたのだろうと締めくくる。

ようやく多少この異聞帯の性質が見えてきた。同時にナイオーロという男の事も。仮にも主君であるはずの皇帝を始末し、自分が皇帝になろうとする向上心。

どうしようもない危険な存在。もっともこの日本異聞帯の全てがそうか。

 

「ではそこのエクスティアとやらは何者なんだね? 

ルクスリアやリズエルやらとよく似ているが……」

(そう。彼女達もよく分からない。異聞帯サーヴァントなのか)

 

四天王ユリエルが即座に兵を退かせたことからも脅威扱いされているのは分かる。

しかしならばなぜ同じ顔をしているのか。英霊の別側面なのか。

謎は尽きぬばかり。

疑問を視線と一緒に投げかけると4人の誰もが暗い顔で目線を落とす。それでもエクスティアがゆっくりと顔を上げた。

 

「私達は、私、達は━━汎人類史のサーヴァントなんです」

「……いやいやいや。失礼かもしれないけどエクスティアなんて英霊は聞いたことがないよ。未来の英雄?」

「ナイオーロや彼以前の帝国軍が侵略を始めた時に奴らと戦っていたのが私達だ」

「生まれや育ちは全員バラバラでも世界を守ろうって一緒に戦ってたのよ」

 

シュヴァリエ、マギカの2人が続ける。

なるほど。異世界カルローンから侵攻してきた帝国と戦った少女と見れば汎人類史側ともいえるだろう。

そうして戦闘中に命を落とし、功績から英霊となって死んだ直後の世界に再度召喚されたと考えれば強引だが辻褄はあう。

 

「でもそれならなんでサーヴァントに? 

マスターは皇帝?」

 

その答えは皇帝から与えられた。

皇帝とナイオーロの決戦の舞台となった京都でのこと。

当初は数で勝っていた皇帝軍は一時的に優勢となり、ソラエル以外を抑え込んだらしい。

 

「そして魔術を施そうとしたのだが……どういうわけか、彼女らが召喚された」

「ルクスリアやリリスティアはナイオーロに眷属へ変えられたエクスティア(私たち)なんです。

道を間違えた自分たちが人を傷つけるのが見ていられないって思っていたら……いつの間にかこの世界に召喚されていました」

「眷属へ変えられたって……つまり君達は帝国幹部と同一人物?」

「そういうことだ。帝国は人体改造や洗脳の技術がずば抜けていたんだ。機器に繋がれ、ペニスで犯し抜かれ、精神が崩壊したところへ忠誠心を書き込まれ、最後は肉体も完全に作り変えられてリリスティア(あのザマ)だ」

(つまり悪側が生きているけど彼女達の生きた時期もあったからこちらが英霊として召喚されたのか。オルタ……それともリリィのような関係なのかな。

抑止力が座の英霊を呼び寄せたとすれば矛盾はないかも)

 

かなり刺激の強い内容をフローラが顔色一つ変えずに話す。

これで全員が空気を重くしたのに納得。

自分達の尊厳が全て奪われ、かつての敵に忠誠を誓っている光景なんて見るに堪えない。ダ・ヴィンチ自身もそんなことになった場合なんて考えたく……考えたく……

 

(……なんだろ。あんまり悪くないって思ってる私がいる。

私も変になってきてるのかな)

 

ナイオーロに洗脳され尻尾を振っている自分を想像してこみ上げたのは嫌悪感より納得。太陽が東から登るのが当たり前なように、敵へ屈服している姿に違和感を覚えられない。

一度頭を振って思考を取り戻し、続けての質問に移る。

 

「この北海道を守る黄金の空想樹。アレは一体何なの。

どうしてこの異聞帯にはいくつもの空想樹が生えているの」

「我らも深くは知らぬ。ただこの地を守る黄金樹は奴の樹を拝借したものでな。ナイオーロ共が世界樹と呼ぶ空想樹、モンスターから」

「モン、スター」

(つまり千葉県沖の個体の名前は空想樹モンスター……モンスターか)

 

単純に怪物を意味する英単語でも同じ語句はあるが、この場合はソンブレロやメイオールなどの前例に倣って銀河由来だろう。太陽の何倍もの質量を持つ恒星を短期間に生み出すスターバースト銀河の一種で、通常の銀河の1000倍の速度で星を生み出して成長を続ける銀河。異常な生命力や物量を生み出して怪物が闊歩するこの異聞帯には案外お似合いの名前かもしれない。

 

「奴らはあの樹が力の源と言っていた。ならば多少なりとも力を削れるかと踏んだ。結果、大地を守る大樹へと成長してくれた」

「空想樹の枝を切るってとんでもないことを……植えた結果があの黄金の樹?」

「左様。瞬く間にあのような大樹へと成長し、敵を阻む光の壁を生み出すようになった。おかげでまだ滅びずにいる」

「……」

 

空想樹の力は異聞帯を現実へと固定化させる力。

単純な考えだが本物とその枝がそれぞれ根付いたことで、どちらも正史として根付くために領域を作っているのではないだろうか。植えた皇帝が敵意を持っているナイオーロの異聞帯に接触したため、領域を争った境界が生まれた。そしてその境界こそがあの光の壁。

かなり途中の検証を省いているが空想樹同士の衝突ならそう簡単に突破されない理由にはなる。

 

(皇帝が植えた枝で作られた壁をナイオーロが確認……本体以外でも同規模に成長することを知った彼が他の異聞帯空想樹の擬きを新たに植えた枝から作り出した……擬きの出現した時期が皇帝の敗走後なのも説明はつく)

「そもそもモルガン達が来てくれたのは奇跡だった。カルデア迎撃のために用意したわけがない。多多益善号や巨人、アトランティス艦隊にアルテミス……私達との戦いなんてオマケ。あの空想樹擬きにも別の目的があったはずなんだ」

「……前に少しだけ聞いたことがある」

「どんなこと?」

「アレは奴曰く神を殺す槍(…………)なのだと……加護の力こそあれど何かを滅ぼすことなどできるはずがないと思うのだがな」

 

神とはこの場合、異星の神の事で間違いないだろう。しかし空想樹を槍とは何か。

意思と魔力を備えていることは分かっているが、あのキリシュタリア・ヴォーダイムでさえ傷一つつけられなかった異星の神に効くようなレベルではない。幸運に助けられたカルデアに4度伐採される程度の力しかないのだ。

 

(空想樹のレプリカそのものに意味はないってこと。樹に足が生えて戦いに行くわけじゃないし。

アルテミス以外にゼウスやデメテルの模造品を大量生産して攻め込ませるとか……それでも絶対戦力不足か。あの神を殺すにはもっと次元の違う力が必要。空想樹を使ってそれをしようとしているの? 

もしカルデアの経験から策を練っているなら一番の攻撃になるのは━━)

「まさか……」

 

一つ頭によぎった可能性。このボディになる前、前身のダ・ヴィンチが記録しているなかに合致した最悪の予想。

人理焼却をもたらした魔術王の宝具。エクスカリバーに匹敵する光線を数億と束ねた星を灼く光帯━━『誕生の時来たれり、其は全てを修めるもの(アルス・アルマデル・サロモニス)』。

アレを使えば異星の神さえ葬れるかもしれない。

 

(流石にない……か? 

でも機神アルテミスさえ再現してくる敵。空想樹の力と合わせて何らかの再現を狙っていてもおかしくない。最初から標的は異星の神で私達についても重要視していないから見逃されてきた理由にもなる)

「さていくつか質問に答えたが、余からも一つ問いたい。

━━其方ら、ナイオーロを殺す気か?」

「……あくまで第一目的は空想樹の切除。ナイオーロの死は必須条件じゃない」

「技術顧問の言う通りだ。虫がいいと言われようが我々は殺戮者としてやってきたわけではない。

星の未来を取り戻すためだ。無論立ちはだかるなら戦うしかあるまいが……積極的に命を奪う望みはないぞ」

「ふむ」

 

考え中だったが皇帝の言葉に思考を止める。

ナイオーロ、敵であっても誰かの命を奪うことに前向きにはなれるはずもない。

 

「エクスティア」

「はい?」

「貴様達もこの者らについていけ。いくら壁に守られていようといつかは攻め落とされる。ならばこちらから打って出なくては」

「……それは」

 

まさか味方が出来るのか。

しかしすぐにはその思いを受け入れづらい。

関門海峡で守るために戦った時とはわけが違うし、何より空想樹切除まで手伝ってもらうとなれば……

 

「協力してくれるのはとてもありがたいけど……私達が勝って空想樹を切除すれば日本異聞帯は消える。君達も消滅するんだよ。分かってる?」

「他国を資源としか見ずに略奪と蛮行を繰り返したツケがきただけのこと。身分を追われて己を顧みる時間だけはあったのでな。

ただ可能ならば民だけは助けてもらいたい。其方らの船であれば民を外の世界に逃がすことは出来るのであろう?」

「……」

 

そっと目配せしたゴルドルフと目線がかち合う。

 

(ゴルドルフ君?)

(彼女らがどれほどの戦力か分からんが受けるべきだろう。既に妖精騎士も半分が殉死し、我々に打つ手は残されておらん。

何よりここまで来て収穫なしでは道を拓いた2名に申し訳が立たんぞ)

(……そうだね)

 

バーゲスト、そしてメリュジーヌ。両名ともカルデアに人類の未来を託すために散った。やっと北海道まで来たのに何も得られないのではそれこそ彼女らが無駄死にになる。

皇帝の提案を受けるべくダ・ヴィンチが口を開こうとした時、何人も男たちが血相を変えて飛び込んできた。

 

「陛下!! 大変です!」

「何事だ。来客中であるぞ」

「━━世界樹が……世界樹が!!!」

「世界樹が赤く!!」

 

窓の向こうに見えていた黄金の柱。

それは今や真っ赤に燃え盛る大火事に呑まれた火柱の様に燃え上がっていた。内部に見える宇宙まで赤く発光し、末端の細い部分から崩れ落ちていく。

その光景はカルデアもすでに一度見たことがあった。

 

「あれはマゼランと同じ!」

「空想樹に火が点いてるって……でもそんなこといったい誰が」

 

セイファートに着火してマゼランを延焼させたのはモルガンだが彼女のわけもない。しかし一般人が火をつけた位で燃えるような樹でもない。

ただ空想樹が燃える異常事態は当然ろくでもないことの前触れ。

あの時は異星の神の降臨を許してしまった。

では今回は何が起きるのか。

予想を裏付けるように最悪な報告を持った者達が雪崩れ込んできた。

 

「函館観測所より報告! ひ、ひひひ、光の壁が消失しました!!」

「続けて報告!! 日本海及び太平洋に展開していた艦隊が接近を開始! すでに砲撃を始めているとのことです!!」

「報告!! 国後島、礼文島、釧路、苫小牧、室蘭……その他12か所に大規模部隊出現!! 構成しているのは新種の怪人及びその同型機のようです!!」

「宗谷岬に巨大な黒い四足獣が出現!! 周辺地域を焼き払い、札幌市方面へ侵攻を開始したとのこと!!」

「陛下ぁ!! 函館に地上部隊が上陸!! 構成する中には四天王が3名!! さらにクイーン・ルクスリアまで加わっていると!!」

「な……あ……こんな数が一度に……なんという……」

 

あっという間に入ってくる絶望的な情報の数々。ゴルドルフの呆然とした声も当然だろう。ここしばらく皇帝と会うまで守られていた平和がいかに脆いものだったかを思い知らされる。

しかし思考を止めていたダ・ヴィンチたちに対し、皇帝は老いを感じさせないよく通る声を張り上げた。

 

「━━全軍戦闘準備せよ!! 主要都市には対光学魔術防壁を展開!! 易々と勝ちをくれてはやらんぞ! 

例えここが終わりの地であろうとも逆賊の手で終わりなど迎えてなるものか!! 

……終わりは突然だな。其方らも逃げよ。後はエクスティアが力となろう」

「ちょ!? でも彼女達がいなくなったら北海道は!」

「いた所で変わるものか。彼我の戦力差は奴らを調べてきた余が一番知っておる。

しかしあの下郎の思い通りにされるのも気に食わんのでな。奴が一番苛立つ手は其方らが逃げおおせることと見た」

「……ありがとう皇帝陛下。行こうゴルドルフ君!」

「分かっとるわ! 急いでキャプテンとも合流するぞ!!」

 

全く流れについていけないまま、すでに皇帝とその周囲は戦闘モード。

エクスティア達も駆け出して行き、ダ・ヴィンチたちも早く戻らなくてはならない。

何よりストーム・ボーダーに残してきた仲間の安全確保が急務だから。

しかし、

 

「空想樹への着火……知っているのは……まさか…………そんなはずはっ!!」

「モルガン!? どこへ行くの!」

「所用です!! 先に艦へ戻れ!」

 

モルガンは乗ってきたシャドウ・ボーダーではなく空想樹の方へ向かった。ダ・ヴィンチたちも迷った挙句、数少ない戦力は減らせない為に回収しようとモルガンの後を追う。

こうして日本異聞帯に残された最後の帝国に支配されていない土地、北海道。

その終焉に向けた戦いが始まる。

 

◇

 

相乗侵蝕

時を少し戻し、小樽に残されたストーム・ボーダー。

体調を心配されて残された藤丸はあまり良くない目覚めを迎えていた。

寝転がったまま下に目を向けると、以前は見えていた足元が見えない。

豊かに膨らんで自己主張する胸。それに遮られる視線を実感してやはり女性化が夢ではないと実感するのが毎日の目覚めだから。

 

(もう慣れた……って思いたいけどやっぱり体が変わってるって自覚させられるな)

 

変化は他にもある。

もう肩を越えるくらい伸びてしまった髪は痛むといけないからとダ・ヴィンチに言われ、結んでサイドに垂らしてチクチクする。男用を着た下着はお尻が少し大きくなったせいでしゃがむと上半分がはみ出て露出しがち。特に胸は男用の制服でベルトで留めることもいよいよ出来なくなり、苦しくて開けた胸元には大胆に谷間が出来た。

心配してくれていた職員たちの視線にもだんだん好色の意味が混じり始めているのも感じている。男のままの距離感で接してくれているが、それでも少しずつ目線が動いていると分かるのだ。

マシュと同じくらいの胸となれば見たくなるだろうし、藤丸だって意識しないでいられると胸を張ることはできない。

だが自分は男だ。女としての魅力を注目されたって嬉しくない……と思う。

 

(最近変な感じが増えてる。なんかもっと肌を見られたいって変な感じが時々……)

 

種子島でのルクスリアとの件を最後に四天王たちが夢に立つことはなくなった。それが光の壁によるものか、それとも策略なのかは分からない。

とにかく彼女らの顔を見ることはなくなったのだが安心は訪れなかった。

体の中にドス黒い欲望が生まれ、日に日に頭を犯してくる。まるで見せられた淫夢の続きを求めるみたいに。

職員と話していると特にそれが顕著。妙に体が熱くなって制服の胸元を緩めてみたり、シャワーを浴びた後に薄着で部屋に戻ったりと、自ら女に見られることを望んでいるような行動を気づけばしてしまう。

精神操作の類かと思ったがネモ・ナースに頼んだ検査では異常なし。キャプテンが助けてくれているがこの状態が悪化すれば、いつかは誰かに裸で迫ってしまうことまでするのではと不安がよぎる。

 

「ん……なんかくすぐった……って……」

 

股間の男性器に熱くてぬらぬらした粘膜が触れる感触。亀頭が生温かい空気に包まれて、規則的な微風が吹きつけられると腰を浮かせるような痺れを生んだ。

慌てて体を起こすと足元にかけていたシーツが人型に盛り上がっている。

剥がすとそこには……

 

「んっちゅる……ふふっ先輩(しぇんぱい)……しぇんぱぁい……れろ♡おはようございます先輩♡」

 

全裸でペニスに傅き、口で奉仕しているマシュの姿。トランクスは既に脱がされ、下着替わりに彼女の頭が股間に張り付いている状態。

そんな異様な行動をしながらもいつも通りに挨拶してくれる。こちらの目を見て挨拶してくれる姿は異聞帯に入る前の彼女そっくり。

しかし浮かべた笑みは以前の花が開くようなのと打って変わって女らしいとろとろで艶のある笑い。どことなくソラエル達が時に浮かべるゾッとするような深い女の笑み。

 

「マシュ何してっ、やぅ! 舌が、すごくぬるぬるしてっ!!」

「んんちゅる~♡ちゅりゅる♡れろれる♡むっちゅぶ♡ちゅうぶる♡

ふふっ先輩の感じて下さる顔、とても可愛いです。私のフェラチオで感じていただけているんですね♡」

 

こちらの動揺をまるで気にせずにフェラが続く。

猫化したソラエルやユリエルの小さくザラザラの舌とはまた違う肉厚で弾力に富んだ舌が亀頭へ押し付けられる。それどころか舌を押し付けて鈴口をほじりつつ亀頭に彼女の唇があっさり触れた。

頬へする親愛のキスのような気軽さで、唇でも亀頭の形を愉しむように少しだけ包まれる温もりが心地いい。

 

(マシュ何して……いやまず止めないと……って、くそぉ! ビクともしない!)

 

どう考えても正常な彼女ではない。

頭では分かっていて押しのけようとしてもデミ・サーヴァントの彼女に腕力で叶わず、腰を掴まれて離してくれない。

さらに悔しいことにいつも先輩! と呼んでくれる口がいやらしくちんぽにキスする光景が興奮になり、理性とは真逆で肉棒が固く熱く張りつめる。

 

「んんちゅううう……っぷぅ。さすがです先輩。こんなに大きくなるなんて。

ふふっ! 片手では握り切れない……火傷しそうなくらいに熱いですし……まさに理想のちんぽです♡

先輩のカッコいい素敵なちんぽ、もっともっとご奉仕させてくださいね♡」

「んぉぅ!? ん、や、やぁ! マシュはげし……止め、止めて!」

 

懇願しても舌の動きは止まってくれない。それどころか藤丸の切羽詰まった声が嬉しいらしくてより亀頭にかかる息が熱くなる。排泄器官にするとは思えない熱意で時折離れた口からたっぷりの唾液が糸を引く。常夜灯で薄暗い室内では情事から生まれたとは思えないほど仄かで綺麗な光の橋。

いつもの彼女とは思えない淫蕩に染まった動きに勃起は惹かれ、藤丸の意思と無関係に張り詰める。

 

「んちゅ♡ちゅう♡ちゅっ♡」

(明らかに正気じゃない……またソラエルの仕業か? 

でも今は現実……キャプテンたちはどうしたんだ?)

「ちゅうっ……むぅ」

 

急に動きが止まったのでどうしたのかと顔を見ると、口は相変わらず亀頭にキスしつつ先端を舐め回している。一方でどこか不満そうな感情が籠った上目遣いで藤丸を見上げていた。

 

(よくわからないけどこれ以上エスカレートする前に止められるか?)

「マシュ、落ち着いて」

「先輩酷いです」

「へ?」

 

何を言ってるのか分からない。しかしこちらの意見を聞く気なんてないらしく、更にどこかふわふわした様子のマシュは饒舌にしゃべり続ける。

 

「せっかくご奉仕しているのに先輩は考え事をしています。

もっと気持ちよくなっていただきたいのに……私のやり方が間違っているのでしょうか」

「そうじゃなくて。とにかく話を━━」

「そんな悪い先輩にお仕置きです♡はむっ!」

 

言い終える前にいたずらっぽい笑みを浮かべたマシュは亀頭へのキスを止め……次の瞬間一気に喉奥まで咥えこんだ。

 

「ぶじゅる♡じゅっぷ♡じゅっぽろろろ♡んんぶりゅ♡れぇろれろろ♡ちんぽ奥まで咥えるの美味ひ♡

もっほ……んじゅぽ♡じゅっぽ♡もっほ吸っひゃうの、いいれふよね♡」

「うっおおっ!??!」

(や……ばっ!!)

 

頬肉をすぼませ、可愛い顔が台無しにしたひょっとこ顔で肉棒に吸い付く。

今までの刺激が全部忘れてしまいそうな吸い上げ。吸うだけに留まらず頭まで動かすリズム感も完璧。

深く根元までしゃぶり、逆にカリ首までぞるぞる~と抜けそうなくらいギリギリまで引き抜いていかれる。

 

「んっぷ、じゅりゅる……ちゅっぷ、ちゅうっ……れろれろぉ、れるりゅ。

っぷはあ!! すごく、濃い臭い……♡もっと……もっと嗅がせてください♡すんすん、すんすん……はぁ♡先輩のオスの臭いが私の中を満たしてきます……ちんぽ……ちんぽの臭い好きです♡先輩ちんぽ、好きぃ……♡

っむっちゅ♡ちゅっる♡んぐぷぷぷ♡じゅりゅりゅ~♡」

 

まるで男性器への欲求に憑りつかれたみたいな勢いで啜る。時折吐き出しては臭いを嗅ぎ、唾液と先走りの混ざったペニスを嗅いではうっとり頬を赤らめる。

無垢な彼女が見せるあまりに色っぽい仕草に嫌でも興奮し、睾丸をコリコリ揉まれる刺激も程よいスパイス。

あまりに慣れた動きで射精への高ぶりがこみあげずにはいられない。

 

(やばい。気を抜いたら射精しそうだ。マシュに射精なんてそんなの……っぅ。ダメだ、やっぱり離してくれない)

「マシュお願い……口を止めて。このままじゃ君の口に……」

 

目覚め前からじっくりとマシュの唇で育てられていた肉棒。爆発しそうなまでに高まった快楽の証が精嚢で次々生み出されては発射の為に竿へ力が籠っていく。

固く張りつめ、彼女の頬をぷっくり押し上げて自己主張するペニス。亀頭が頬の内肉へ擦り付けられるとぞわぞわした快感が背筋を震わせた。

一心不乱にしゃぶる後輩の舌技に高まる射精感。射精前の緊張感も楽しんでいるみたいに可愛らしく微笑み、妖艶にしゃぶり続ける。

 

「じゅりゅるるる♡♡ぶじゅりゅりゅ♡しゃぶる度に臭い……んじゅっぼじゅっぽ♡強くなってます♡もっちゅ、じゅっぶりゅ♡はぁ♡」

「おっう!? ま、しゅ……ダメ……これ以上されたら俺……」

「射精(だ)ひて♡射精(だ)ひて下しゃい先輩♡私、先輩のザーメンびゅっびゅ~って口まんこに射精してほしいです♡

━━ちゅっ♡」

 

散々しゃぶった後に小悪魔みたいな微笑で亀頭にキス。張り詰めた風船みたいになっていた肉棒に優しい刺激が最後の決め手となって限界を超える。

思わず引き剥がそうと腕を掴んでいた手はマシュの頭へ。まるでオナホへするように大切な後輩に根元まで肉棒を突き入れてしまう。

 

「ぶぐっ!? ……ふふっ♡先輩も楽しんでくださっているんですね。いいですよ、私も、ちゅっぼ♡乱暴にしゃれるの、ぶじゅりゅう♡むっじゅぶ♡きもひ、いいでふからぁ♡頭、かき混ぜられるみたいで♡」

「っ!!」

 

耐えることなんてできずにこみ上げていた熱い迸りを口に発射。

驚いた様子もなく進んで口をペニスに押し付けて啜りだす。喉奥で亀頭を締めつけ、唇と舌を肉棒に絡みつけて根こそぎ精を搾りださせるような動きだった。

 

「ぶっぎゅ♡こっきゅ♡ごっきゅ♡んっく、んく♡んんぅ♡でへる♡射精(で)へましゅ♡

んじゅる♡先輩のザーメン……美味しい……♡私も飲んれ……イっちゃいましゅぅううう♡♡」

 

小刻みに肉棒へ触れた体が震える。思えばいつもソラエル達に好きなだけ射精させられて遊ばれるだけの性体験。きちんと女性がイク瞬間を見るのは藤丸にとって初めて。

しかし生憎と藤丸も達した彼女を気遣う余裕はなかった。

付け根まで唇を押し付け、力強く吸引するマシュのバキュームに精液が射精した端から、あるいは尿道の中からも次々に吸われて搾り取られる。絶頂しているはずなのに口も舌も動きは止まらず、飲んでいる精液の熱さや臭いにまで興奮したようで自らの秘裂に指を差し込んでかき混ぜる音がこちらにも聞こえてくる。

 

「んっじゅるりゅる♡じゅずりゅうるるぅ♡むっちゅう♡きゅっく♡んぶるろろぉ♡先輩の精液、とても熱くて、ドロドロしていて……美味しいでしゅ♡」

「うぁ……マシュ……ましゅぅ……」

 

思わず呼ぶとこちらを見てうれしそうに笑い、片手が頭を掴む藤丸の手に重なる。

 

「んく……ごっく……ごくん……ふふっ。はい、マシュ・キリエライトはここにいます先輩」

 

射精を受けた口元は白濁液で汚れているのに、その笑顔はいつも浮かべる後輩と同じよう。

まだ少し漏れてきた精液を見つけるとまた唇を寄せ舌で綺麗にし始める。

 

「れろろ……ちろちろっ♡ちゅっ♡れぇろ♡しぇんぱいのおちんぽ、綺麗にしますね」

 

射精のほとんどはマシュが飲み干したので綺麗にする必要はない。

単純に彼女がもっと舐めたいだけなのだろう。

 

「ぐちゅ、ちゅく、んくちゅ……ごくん━━ぷはぁ! 喉孕んじゃいました(ごちそうさまでひたぁ)♡」

 

わざわざ口をがばっと開き、一滴残らず飲み干したことをアピールしてくる。褒めて褒めてと犬がじゃれついてきたみたいで頭を撫でるとまた嬉しそうに目を細めて笑った。

それは一応理性的だった頭が欲望一色に染まるような男を誘惑する無自覚な魔性の笑み。大切な後輩を穢している事実が射精したばかりの肉棒を固くさせる。

そして勃起の成長を認めたマシュも笑みを深くし、唇についた精液をぺろっと舐めとった。

直後、お互いの体に変化が起こる。

紫色の光がぼんやりと体を包み、藤丸の首に付けられているのと同じようなハート形の鎖型模様へと変じて藤丸はへその下、マシュは首元へそれぞれ刻み込まれる。

刻まれたと同時、藤丸の中にどろりとした濃い粘液のような熱いものが広がる感覚。

そんな光と紋様に気づかないまま、情念の熱が藤丸を昂らせはじめた。

 

(止めないと……でもこんな気持ちいいの……それに俺もまだ満足できてない……)

 

一度ついた欲望の火が確かに燃え上がり始めている。幾度となくソラエル達に調教を施された体は一度の射精程度で体力が尽きるほどやわではなくなっていた。

そして勃起をきれいにし終えたマシュもまたフェラで満足などしていないらしい。

ベッドに上がり、仰向けになった藤丸の肉棒を跨ぐと自らのワレメを両側から広げて見せつけてくる。一本の陰毛も生えていない無垢な恥丘。いつでも準備万端と水気が滴り、広げられると涎みたいにつーっと糸が肉棒へ降りかかってきた。

 

「はぁ! はぁっ! ……ふふっ♡はぁう♡……もっと……もっと欲しい♡♡この黒くて逞しく反り返った素敵なちんぽ……嗅いでから私の淫乱後輩メスまんこ、ずっと気持ちよくなってるんです」

 

じゅるりと上の口でも涎を啜り、ぬらぬら光るワレメを指で広げながら腰を落としてくる。

そして、

 

「いれちゃい、ま……んぁああああ♡♡♡」

「っぅう!?」

 

肉棒全体が口より熱くて湿った空間に閉じ込められる。常に口を窄めた時みたいににちゅるにゅるっと襞肉が竿を包み、亀頭にはつぶつぶの襞が満遍なく吸着してくる名器。

正直、挿れた瞬間に射精してしまいそうなほどの気持ちよさだった。一度口に射精しておかなければ危なかったかもしれない。

それはマシュも同じらしく、腰を下まで落とし切るとふうふう荒い息で動きを止める。

透明な愛液と先走りカクテルにふと赤い色が混ざった。

 

「マシュ、まさか……」

「……ふ、ふぅ♡はい。私の処女、先輩に捧げさせていただきました。文献で読んでいたほど痛みが無いのですね。いえ夢なのですから痛みはないのが当然なのでしょうか」

「何言って……いやそうじゃなくて。大切なものでしょ? こんな形で、しかも俺なんかで……」

「先輩だからです。彼に奪われるくらいなら私の意志で大切な人に捧げたい。なかなか勇気が出ませんでしたが……夢の中くらいは」

 

今更だがマシュは夢の中だと思っているらしい。つまり彼女の偽らざる本心でこれまでの性技も……やめておこう。彼女自身の気持ちの問題。他人が踏み込むようなことじゃない。

 

「いつかちゃんと先輩とこうして……ふふっ♡でもそれは後です。今はもっとこの気持ちいい夢を楽しまないと。先輩ももっと気持ちよくなってください♡」

 

多少カッコつけた理由で思考を止めたがすぐにそんなことを考えてる余裕は失せる。

いつも盾を片手に戦場を駆けまわる玉の肌。汗雫が光る姿は健康的なエロさを備え、同時に暴力的な2つの実りが甘えたくなるような包容力を演出。

こんなに魅力的な少女に迫られて反応しないほど藤丸の肉棒は紳士でなかった。

 

「おちんぽがさっきより大きく……んんっ♡それでは動き、ますね。んっ! あっはっ! うっふぁ!」

「うぉ!!」

(動かれると締め付けが強く!!)

 

肉棒を迎えたヒダヒダ一枚一枚が蠢き、竿全体をまた射精しようと連動する。処女を失ったばかりとは思えない練度。

子宮口がくぱぁと口を開けて亀頭をより深くまで迎え入れ、大きく腰をグラインドされるともう射精しているような吸い出される感覚。

ぱちゅん、ぱんぱんっと若い肉と肉がぶつかりあって弾む音が部屋の中に響く。

 

「一気に膣奥、ああん♡……まで、入っちゃって……ふやぅ♡ます。先輩のおちんぽ、私の中をかき混ぜて……♡先輩は、んん♡どうで、しょうか……? 

鍛えているので締まりはいいと思うのですが……あっ♡ちんぽを跳ねて答えて下さるなんて……ふふっ、先輩もエッチです」

 

どこまでもこちらを気遣ってくれるいじらしさと、そんな子を抱いていることへの興奮が勃起をより固いものに擦り上げる。

 

(また射精しそう……でもマシュばっかりさせてたら……)

 

まだ混乱しているが彼女の献身を受けてばかりなのは嫌だった。

寝そべっていた体を起こして騎乗位から対面座位に。

今も豊かに揺れている果実の一房を口に入れ、痛みを与えないように慎重に、けれど勢いよく啜る。

 

「んっ。はぶっ。むぐっ!」

「ふぇ♡せ、先輩!? 私にしてくださらなくても━━ひゃああん♡」

 

思った通り激しい方が好みのようだ。

自らの膨らんでしまった胸をマシュのお腹に押し付けつつ、乳飲み子みたいに彼女のおっぱいをしゃぶる。

チュウチュウと吸いついては乳首を舌先で転がして気持ちよくなるように愛撫。

 

(わかる……どうすれば気持ちいいか……舌の使い方が……ユリエル達に舐められたから……)

「先輩、ああ♡おっぱいを吸うの、んっう♡お上手、です♡」

 

マシュのように藤丸もまたどこか目の前の状況が夢のように遠く感じ出す。

腰が浮くような快感も、後輩を抱いている背徳感と興奮も確かに感じているのに。

それ以上思考を進めて問題だと考えることが出来ない。

 

(マシュ……感じさせてあげたい……いつも……ありがとうって……)

 

もう止まらない。マシュの腰をがっちり掴んで快楽の逃げ場を無くした状態で激しく突き上げる。

途端、楽しく踊るようだった彼女の声も余裕のない本気の喘ぎ声が混ざりだす。

 

「う”ぉ”……♡ちんぽ太くて私の膣、ゴリゴリきて……ぎもぢ、い”い”っ♡んんぅ♡しぇ、先輩!?」

 

女性を抱くのなんて初めてなのに彼女の感じる部分が自然と分かる。腰を大きく振って常に一番奥へ届くように深く突き上げの繰り返し。

効果のほどはすぐに上がった彼女の嬌声が教えてくれた。

 

「ふひぃいいい♡す、すごいっ♡先輩のちんぽが私のまんこ、パンパンにしちゃって♡

やっぱり、やっぱり違います。先輩のちんぽ……とても強く動いていて……火傷してしまいそうに熱い♡……まるで命と繋がっているみたい。素敵……私のまんこが、んひゃん♡先輩を求めて……大好きが溢れてきます♡

私も先輩のおっぱいを……」

「ふわぁ!? ま、しゅ……それ! やめっ♡」

 

伸びてきた手が藤丸の胸を揉む。既にマシュと同サイズのバスとへ育ったおっぱいはデミ・サーヴァントの力で揉んでも十分な質量で、掌全体で握るように触られると開発された乳腺から体内へ快感が走ってくる。

 

「ダメです♡女の子になった先輩のおっぱい、ふふっ♡触っていると私も気持ちよくなってしまいます♡自分の物では意識しませんでしたが……他人のおっぱいはこうも魅力的なのですね。先輩の真似を……」

 

指遣いはこれもまた手慣れた感じ。すでにわずかな愛撫で勃起した藤丸の乳首を的確に触り、舌先で転がす動きが彼女の指で自分の胸に返ってくる。

経験を積んだレズカップルみたいに相手の感じる場所をお互いが刺激し合い、また体の中に熱い塊が生まれていく。

そしてマシュは上から、藤丸は下からお互いに視線が交わりあい絡み合う。

どちらからともなくお互いの口を開き、やがて一つに重なる。

もっともムードも何もない欲望のぶつかり合いのキスだったが。

 

「んっちゅっぅうう!!! ぶっちゅ♡むちゅ♡あむっ! ちゅっ! ちゅうう!! 先輩(しぇんぱい)の唇美味し♡」

 

貪るような舌の絡み合い。相手のして欲しいことが自然と分かって舌の裏、歯茎、内粘膜とあらゆるところへ這わせて舐めしゃぶっていく。

やがて藤丸が唾液を舌で差出し、繋がった口の中でかき混ぜ、やがて下ってきた互いの欲の塊を飲み下す。

まるで強い酒を飲んだようだった。

体は興奮で熱くなり、目の前にいる少女が愛おしくてたまらない。

 

「先輩のきしゅ気持ちいい!! っむちゅ♡はむちゅ♡」

 

それは自分のセリフだと藤丸は思う。胸を愛撫されるだけで届かない心に温かい感情の広がる心地いい気持ちよさ。調教の度に味わった快楽とも違うマシュとのセックスが快楽への誘惑に変わる。

分かっていても止められない。

止めたくない。

健気でいやらしい後輩を気持ちよくさせてあげたい。だからマシュの背中に手を回して一部の隙間もないくらい密着して突き上げる。

 

「あ”はぁ”♡先輩が動いてくれる! 先輩のちんぽ好き、好きです♡どちゅんって熱く抉られるの好き♡んんっちゅ♡れろぉ♡べろちゅーしながら騎乗位セックス気持ちいい♡

もっともっと奥まで突いてぇぇえええ♡♡」

 

願望に応える為、より深く強く腰を動かす。子宮に穴が開くんじゃないかってくらい。

時折突かれてポコッと浮かび上がった肉棒の形がマシュの下腹部に見えていやらしかった。

吸い、揉み、しゃぶりと指先と口で堪能できるマシュの体。今も少女らしい可愛らしさと精を搾りたがるメスの二つを合わせた表情が艶めかしい。

 

(マシュと……俺……私……溶けて……混ざっていくみたい……)

 

激しいキスとピストン。比例して強くなる頭を焼くような激しい快楽。

ぽおッと互いの淫紋が光り、キスを介して2人の思考がさらに近づく。

感じる所だけではない。

互いの気持ちよさ、悦び、幸福感……セックスでお互いの得ている快楽が循環している。

たちまちに快感の強さが倍加。満足に

 

「孕ませガン突き好き♡大好きです♡男らしい、んぅ♡力強い突き、くっひぃ♡出来てしまうのですね。うっぅくひ♡こんなに可愛らしいのに、うひゅぅ♡こんな先輩反則、反則です♡」

 

聞こえるマシュの声。

果たしてこの声は本当にマシュが出しているのか。

実は自分が上げているのでは? 

バカげた考えが頭に浮かんで消えて行ってくれない。

 

「はぁ♡はぁ♡まんこミチミチってちんぽに広げられてます♡苦しくて、お腹の奥がズンって沈むの……とてもいいっ♡」

 

メスを感じさせ悶えさせ喘がせるオスの喜び。

逞しいちんぽに体を貫かれて乱れるメスの悦び。

混ざり合った2つの快感はドロドロに重なって溶けあい、お互いがお互いの快楽との境界を無くしてどちらが犯しているかも曖昧になっていく。

 

(わたしが……きもちよくなってる……? マシュと……セックスして……ちんぽ、入れられて)

「……マシュ、私、私も♡気持ちいい、気持ちいいよ♡マシュとセックスするの、最高♡」

「はい♡ちんぽセックス、セックスもっと♡突いてあげます、先輩の子宮をガン突きしてっ♡」

 

藤丸は浅ましくはしたないマシュがとても可愛らしくて、マシュも可愛い声で喘ぐ藤丸が愛おしくて━━互いの心の深淵から暗い欲望が目を覚ます。

それは堕落。

もっと乱れたい。

もっとちんぽハメられたい。

この幸福と快楽の海に2人で堕ちていきたい。

 

「ましゅぅ……んちゅ♡れろ♡れろれろ♡ちゅばっ♡」

「しぇんぱい……はむちゅ♡ちゅべろ♡れりゅ♡んんっちゅ♡」

 

この時頭の中からは完全に目の前の互いのこと以外が消えていた。

ただただ気持ちよく幸せな快楽の渦に2人だけで飲まれる感覚。

タマタマから上がってくる熱い白濁の衝動も2人で共有。お互いが相手を犯し、犯されている倒錯した快感の夢にどんどんハマる。

 

「ちゅっぱぁ♡せんぱい♡せんぱぁい♡ご主人様(先輩)♡」

「むっちゅる♡レロレロ♡あはは……マシュ♡マシュぅ♡ご主人様(マシュ)ぅ♡」

 

目の前の相手と溶け合うようなキスとセックス。

その最中に呼び方が同じなのになぜか含む意味が違うように聞こえる。

でも何が良くないか分からない。

だって気持ちいいから。

ちんぽとまんこががっちり噛み合い、ぐちゅぐちゅぬぷぬぷと泡立った結合部がその証拠。

互いの胸を相手と押し付け合って柔らかさと先端の乳首を弄りあう。

唾液、我慢汁、愛液、汗、最後に浮かび上がった淫紋の光。

体中の全てが相手と混ざり、入れ替わり、やがて全く別の生き物に作り変えられるよう。

 

「上がってきた♡上がってきましたぁ♡ちんぽミルク発射寸前なんですね。

私の中に先輩の一発でメスを孕ませるような濃~い子種汁、びゅーびゅー注いでください♡私の子宮、先輩でマーキングしてください♡」

 

この願望も既にどちらかのものではない。

藤丸とマシュ2人のもの。

共有していた犯し合いの感覚はさらに昇華し、両方の頭に犯される側の喜びだけが残っていく。

 

(マシュを犯して……このちんぽの感じ……自分で動くよりもっと気持ちいい……)

(吸い込まれていくみたいです……一突きする度深く深くメスの自覚が刻まれて……)

((この気持ちいいのは……犯してくれているのは……誰……?))

 

抱き合うお互いの向こうに別人の顔が覗く。

 

(こいつは……)

(彼は……)

((誰……))

 

いつの間にか藤丸もマシュも自分が誰かに抱かれている姿を見てしまっていた。両者の頭から自分が男であること、相手は敵であることもすっかり抜け落ちた快楽の虜状態。

ふらふら導かれるように主従が向けていた相手への愛情をそのまま影へ向けてしまう。

はち切れんばかりに膨らみ、子宮を滅茶苦茶に犯し尽くしてかき混ぜてくれる肉棒に心が奪われて頭は回らない。

影がククっと笑って2人に告げる。

 

『命令だ。全力で乱れろ。そしておねだりしろ。オレにザーメン(お情け)を下さいってな。

それがお前らの当り前だ。そうだろ、奴隷共?』

(あ……)

(ああ……)

 

屈辱的な言葉なのに感じるのは命令された幸福感。全身が分かっているのだ。相手は主、ご主人様だと。そんな相手に逆らうことなんてできるはずがない。

主を喜ばせるために動けると勝手に心の中に幸せが芽生えだす。

そして今の立香に押さえ込むだけの理性は残っていなかった。

マシュに言うのと同じかそれ以上の心服で彼の言葉へ従う以外浮かばない。

 

「はい……はいっ♡」

「ちんぽ気持ちいい♡ご主人様にぐりぐりってまんこ犯されて気持ちいいんです♡」

「わ、私もです! たくさん突かれてまるで心までご主人様に塗り潰されていくようで……たまらない♡我慢できません♡もっとちんぽを……おちんぽ汁を下さい♡」

「「射精してください♡ ご主人様ぁぁああああ♡」」

 

互いの名前を呼びながら、お互いの向こうに主の存在を感じて叫ぶ。

膣出ししながら膣出しされる、一歩間違えば狂ったような背徳的快楽。しかし藤丸もマシュも一片の不安もなくその気持ちよさと熱に身を委ねた。

 

『クク、いいだろう。存分に射精してやる。好きなだけ感じてイクがいい。そらっ!!』

「「━━はぁあ……入って……きたぁ♡」」

 

待ち焦がれた灼熱が流れ込む感触。

ドプドプ音を立てて入ってくる欲望の猛りが膣壁へ染み込む。

当然子宮まで突っ込んだ肉棒の射精が膣に納まるわけもない。あっという間に征服し、淫紋のある下腹部がぽこっと可愛らしく膨らむ。

子宮をパンパンにされて飛びあがりそうな快感。

たちまちのうちにマシュの体が痙攣、そして絶頂へと押し上げられる。当然その感覚が自分のものとして感じられる立香も。

 

「「イク♡イクイクイクイグ♡ザーメンお腹いっぱい注がれてイっちゃう♡♡

━━イッくぅうううう♡♡♡」」

 

互いの下腹部へと浮かび上がった♡の淫紋は押し付けられて融合。二重に重なった複雑な紋様へ進化するとともにそれぞれの首とお尻にも所有者を示すよう、くっきりと変化して刻まれた。

男の欲望を注がれ、心身を汚される悦びに塗られながら藤丸の意識は闇に落ちた。

 

◇

 

次に目が覚めた時、藤丸はまたベッドの上。傍らではすぅすぅと小動物っぽい寝息を立てる裸のマシュ。

どちらも情事の痕跡は少しも残っていない身綺麗な格好。破瓜の血もお互いの体を汚した白濁もない。

全部夢だったんじゃないかと思えてくる。

ただ夢なら自分がマシュをあんな淫乱な子だと思っていることになるので複雑だが。

 

(本当に夢だったのか?)

 

ナメクジか蛇を思わせた糸引く舌同士の絡まり。乳首を擦り、しゃぶった鋭い快感。何よりも膣へ猛々しく注がれたあの熱さ。

全部夢だったのか。

無意識に淫紋の馴染んだ下腹部を撫で、残念に思っている異常な自分に気づいた。

 

(っ……俺は男。男だってのに。また体に心が引っ張られてるのか)

 

眠るマシュへシーツを掛けながら見下ろすと実に豊かな双丘が自分の胸に。何度も調教で開発された胸はやはりマシュと遜色ない大きさでたゆんと揺れる。

自分の体についていなければ年相応に視線が吸い寄せられるのだが。

 

「はぁ……」

「……あ、あれ?」

「あ、マシュ」

「先輩のお部屋にどうして……」

 

なぜここにいるのか分からないって表情。

最近の苦しそうな表情がずいぶん改善された感じだ。キョロキョロと親鳥を探す雛っぽくて可愛い。

そこでふと目が合い、夢の出来事を思い出して恥ずかしさと申し訳なさで顔を背ける。するとマシュも顔を真っ赤にしてバッと視線を逸らした。

 

「えっとマシュ。ひょっとして」

「な、なんでしょう?」

「……覚えてる?」

 

珍しく素知らぬ顔ですっとぼけようとするマシュを見つめると、これ以上ないと思っていた赤い顔がさらに赤く。

ついでに泣きそうになってしまったので苦笑しながら頭に手を乗せる。

 

「顔色よくなったみたいだけど体調は良くなった?」

「……ずっと体を縛っていた重りが外れたみたいです。盾も今なら十全に振るえるかと」

「うん、それならよかった」

「あの、先輩。昨日の夜の事は……私が先輩を襲って……」

「一緒の夢を見たってだけだよ。

なんでマシュが裸で俺の部屋にいるのかは分からないけど……誰かが怪我したわけじゃないんだから。これ以上思い出さなくていい」

「は、はい」

 

あの夢がマスターとサーヴァントの間で見れる夢ならやはりあの時の彼女の行為は本心。しかし本人が恥じているならわざわざ言うこともない。

そう気を回したのだが逆にマシュは何かに突き動かされるみたいに慌てた感じで主張しだした。

 

「━━っ! 

先輩! 忘れて下さい! 昨夜は少し、そう少し異常だったんです!! あんな淫らでエッチな言葉を!」

「……別に変じゃないよ。女の子もあれくらいは言ったりするでしょ」

「違います! 決して男性器をち、ちん……や、やっぱり言えません!!」

「あんなによがっといてまだ処女ぶるなんて勿体無いなぁ。いい加減認めればいいのににゃーん?」

 

聞き覚えのある聞きたくない声。

咄嗟にマシュの前に立ちつつ入り口を見ると、いつもの飄々とした笑みを浮かべたソラエルがいた。胸を強調するように腕組みして持ち上げる姿が様になっている。

 

「ソラエル!!」

「やほー藤丸クン。それにマシュちゃんも。現実で会うのは2週間ぶりくらい? 

順調に成長してるみたいで嬉しいよ♪」

 

敵意なんて微塵も感じさせない笑い。

横目でマシュの方を見ると既に装備を身に着けて盾も構え済み。

状況は不明だが一人なら戦えるかも。

 

「何しに来た」

「お迎え。そろそろ奴隷にしっかり堕としてあげたいからお城に連れていくの」

「……そんなことが出来ると思っているのですか」

 

盾を構え終えたマシュが前に出て庇ってくれる。その間に藤丸も最低限の衣服で身なりを整えるが、やっぱりソラエルはニマニマした笑いを浮かべるだけで強硬に捕まえようともしない。

 

(何考えてる。考えろ。アイツの手強さは俺がよく知ってる)

「出来ちゃうんだよねぇ。とっても簡単に。

ほら2人とも。ボクの目をじっと見て……」

「ダメです先輩見ては━━」

「おっと残念♪」

 

咄嗟に視界を遮ろうとしたマシュの顔に背中側から手が伸び、するっと上を向かせられた彼女の顔を誰かがのぞき込む。そこにいたのはソラエルだった。

 

「あっ……」

 

瞳を輝かせるとたちまちにマシュの体から力が抜け、胸の前で押さえていたシーツも解ける。隠していた豊かな胸や秘裂も露になってしまう。

ぱっと入り口を振り返ると変わらないままのソラエルがフリフリ手を振って笑う。続けるようにしてそちらのソラエルも目を光らせる。

 

「もちろんキミも☆」

「うぁ……」

 

背後に出現したもう一人のソラエルの瞳が放つ光に意識が吸い込まれる。

母親の腕で抱かれる赤ん坊みたいにゆらゆらと心地よい温かさの海を揺蕩う。

抵抗感や拒絶が薄れ、緩やかに意識が落ちていく。

 

「もっともっと相手を感じたくない? 

心まで一つに溶けて混ざっちゃうような濃厚眷属セックス。人間だと快感を得られる器官に限界があるけど眷属淫魔になれば話は別。五感全てで快楽を得られる存在になるの」

 

発言が許されないままに誘惑する声が脳を痺れさせる。

強く言葉で否定できない分、頭の中にソラエルの言葉がくっきりと残されていく。

 

「淫魔になればふたなりになれるからぁ……今とは逆にマシュちゃんが藤丸クンを犯すことも出来ちゃう。当然何度も交代で挿れあったりもね」

「マシュちゃんはふたなりちんぽ欲しくない? 

想像してみて。藤丸クンに負けないくらい大きくて太ーいちんぽでずぽずぽ好きなだけ犯して……最後にはどぴゅどぴゅ、どぴゅるるる~って可愛くなった彼の全身をふたなりザーメンで真っ白に汚しちゃう快感。キミも彼も気持ちいい思いが出来るなら他の事なんてどうでもよくない?」

 

マシュを誘う言葉。どこかにいるマシュが思わず息をのむ気配が伝わってくる。

彼女の心を留めないとと手を伸ばすが空を切るばかりで捕まらない。

まだ意思を持てるこちらを警戒したのか、言葉の矛先が藤丸へと向けられる。

 

「熱心にボクを求めてくれて嬉しいな。

キミも堕ちようよ。お姉様の触手ちんぽ、幸せそうに舐めたじゃない。オスに屈服してちんぽに口づけする背徳感たまんなかったよねぇ」

「完成すればまんこが出来て子宮も出来る。男の人の熱くて濃~いザーメンが流れ込んでくる感じは最高だよ。頭からつま先まで全身の細胞が征服されてこの人のものだって理解(わから)されちゃう」

 

言葉だけじゃない。

ソラエルの体が近寄ってくる。

健康的で細く伸びた指。作り物っぽいが心をリラックスさせる花の匂い。そして自分にもついているおっぱいの感触が背中にもっちり広がった。

 

(っ!)

「一回イけばメスの頭になるかな。侵蝕も進んでるみたいだし。メ・ス・イ・キしてみたくないカナ?」

 

唾液で濡らされた人差し指がアナルに当てられる。菊門をすぐ突かずに舌で舐めたり、皺を拡げるようにして穴をパクパク開閉させるマッサージ。

猫に吸わせるような優しい指遣いでたちまちに解れたお尻へ舌なめずりする音が耳元で聞こえる。

 

「大きくて触り心地もいいお尻。安産型って奴だよねぇ。いい子どもが産めそうで楽しみ。

……さ、開発してあげる。まずは指でほぐしてから……ずぷぷぷぷ~」

「っ、あぃ!?」

 

唾液でもまぶしたのかすんなり指が一本アナルへ侵入。第1関節、第2関節をすんなり呑み込んで浅い所をスリスリにゅるにゅると擦ってくる。

マシュと体験した肉棒の入ってくる感触には程遠い。快楽だって感じないと思った。

しかし実際にはゆっくり出し入れされる肛門から人肌温度のお湯を垂らし続けるみたいな温もりが広がる。

 

「今キミが感じてるのは何かな? 

異物感? 排泄感? 満足感? ……にゃはっ! それとも気持ちよさと物足りなさ?」

 

ソラエルの言う通りだった。異物の入る変な快感と体の奥にまで響いてこないもどかしさが澱となって腹に溜まる。

始まったばかりなのにアナルは快感を受け入れ、もっともっと欲しい思いが頭の中に浮かんでくる。

 

「んっ、キミのお尻食いつき良すぎ♪ ボクの指をパクーって美味しそうに咥えちゃって。

……もっと欲しい? 欲しいって言ってくれたら触手ちんぽでアナルをグポグポしてあげてもいいんだけどな~」

 

唇だけで軽く食まれる耳。口内から伝わる荒い息。アナルに入れられた指も少しずつ熱が入りだして動きが早くなる。

興奮しているのは彼女も同じなんだろう。誘惑をしつつ、本当に行為がしたいのは自分なのかもしれない。

 

「言おうよ。私はアナルにちんぽぶち込まれたいメスですって。ご主人様どうか犯してくださいってさ。

どうせもう負けは確実なんだし。マシュちゃんも一緒に━━ぶべら!?」

 

間抜けな音がしたかと思えば急に見ていた光景が切り替わる。

黒く塗られた部屋は消え、代わりに見慣れたマイルームに戻る。

訪れた轟音に目を向けるとソラエルが激突して壁にめり込んでいた。

 

「痛たた……っうあ!?」

「やあああ!!」

 

自身の側には盾を振りぬいた姿勢のマシュがいて、すぐさま振りかぶって突撃。惜しくもどこからか持ち出された十字槍に受け止められるが勢いは死なず、ソラエルの体は部屋の壁を粉砕して屋外へ飛び出していった。

追い出しに成功したマシュが藤丸を見つめて手を伸ばす。

 

「マシュ・キリエライトは先輩のサーヴァントです! 他の誰かのものになんてなりません!! 

先輩、指示を!!」

「マシュ……」

 

胸に去来する信頼への感謝とわずかな喪失感。

あのまま続いていたら……だが今やるべきことは誰の目にも明らか。

制服の上着に腕を通し、彼女の手を取りながら壊れたボーダーの壁の向こうへ飛び出す。

 

「ありがとう。俺も最後まで諦めたりしない。戦おう!」

「はい!!」

 

◇

 

パンドラの箱

「これは一体……」

 

藤丸がストーム・ボーダーの外へ飛び出すとそこは異常な状態になっていた。

小樽運河の倉庫や建物はあちらこちらで火の手が上がって美しい景色が台無し。海独特の波音に混ざる火の粉の爆ぜるパチパチという音。

空と大地の間にあるはずの光の壁は消え、北東の地平線からは炎のような赤色に染められている。

輝く光を見せていた黄金の空想樹も燃えて悲鳴を上げているよう。

灰色に曇った空にはいくつもの小さな点みたいなのが飛び交い、こちらへ向かってくるのもあればどこかへ飛んでいくのもいる。そして見える数は10や20ではない。明らかに100を超える黒点が動いて空を駆け巡っていた。

 

「ダ・ヴィンチちゃんを見送った時は普通だったのに」

 

何が起きたのか。

それを知っていそうな奴が十字槍を片手に頭を振りながら立ち上がる。

 

「おっかしいなぁ。2人の淫紋は共鳴して魂まで侵蝕したはず……もう戦える力はないはずなのに。

……体を重ねたせいで宝具と因子が干渉した? ……ってことは次のステージに進んでるってわけで……残念なことばっかりでもないかな♪」

「ソラエル!!」

「なにー? 

そんな大声出さなくても聞こえてるって」

「何をしたんですか! 街が、こんな……!」

「何って……見て分かんない? 

北海道侵略」

 

事も無げに語るがそれは事実上北海道のすべての命に対する死刑宣告。

九州を攻めた時の様に全てを終わらせる気だ。

 

(ダ・ヴィンチちゃん達はまだ戻ってない……キャプテンからも通信が入ってこないし……まさかソラエルが先に何かした? 

……いや違う。ここでやるべきなのは余計な詮索とかじゃない)

「マシュ」

「はい!」

 

事態は不明。

周辺でも戦闘が始まりそうな窮地。

ただやるべきは皆が戻ってくるはずのストーム・ボーダーを守ることだ。

 

「アイツから情報が取れるか分からない。艦のキャプテンやバーヴァン・シーもまったく応答がない。

だからマシュ、俺達だけでなんとかしないといけない」

「はい。私も同意見です」

「無理に攻撃しなくていい。ダ・ヴィンチちゃん達が戻ってくれば他の選択肢も取れるはずだから。

時間を稼ぎつつ、アイツを逃がさないように戦うよ。俺もシャドウサーヴァントで援護する」

「了解です! マシュ・キリエライト作戦行動を開始します!」

 

盾を構えるマシュと一緒にこちらも礼装のシステムを起動。体が変わってしまった重量バランスの変化が鬱陶しいが内部機構的には問題なし。十分サポートも可能だ。

 

「お、やる気じゃん。

にゃはは! 一方的にドロドロ犯すのもいいけど、戦いながら通じるってのも楽しいよね!」

 

あちらも構えていた十字槍の刃の一つがぐるっと伸び、初めて会った時にも見た鎌の形に。

盾と鎌、お互いの武器を構えた2人がぶつかり合おうとした時、ソラエルの周りに青、赤、黄、紫といくつもの光が着弾。もうもうと煙が立ち込めて奴の姿を覆い隠す。

そして藤丸の側に4人の少女が舞い降りた。

 

「間に合った!」

「大丈夫かお前達」

「ってかなんでアンタ達外出てんのよ」

「標的の反応は一つ。旧四天王に相当する規模の魔力……例の新生四天王か」

「エクスティアさん!」

 

降り立ったのはエクスティア、シュヴァリエ、マギカ、フローラの4人。

藤丸にはなぜ彼女らが先に来たのか分からないが、とにかく援軍が来てくれただけでありがたい。

 

「……誰かと思ったらエクスティア? もう守る場所もないくせにまだ正義の味方気取りなんだ。

ははっ、お姉様たちの偽物でしかないくせに」

 

煙が鎌の一閃で切り裂かれる。晴れた後に立つソラエルには直撃もあったはずだが特にダメージを受けた気配はない。しかし苛立った気配を隠そうともしないで、雰囲気は明らかにいつもと違っていた。

常に飄々としてにこやかな笑みを絶やさないあの顔が明確に敵へ向ける顔。体から発せられる魔力の気配もより濃密で攻めの気配を帯びたものに。

 

(うっ……まだ力が上がるのか。でもエクスティアさん達がいれば5対1。圧倒的にこっちが有利だ)

「マシュはエクスティアさん達を援護に変更。ソラエルは直接的じゃない手を使うかもしれないから気を付けて」

「了解です。先輩も私の後ろに」

 

今度こそ開戦の時。

しかしどちらかが切りかかる前に銃剣を構えたエクスティアが呼びかける。

 

「創ちゃん! あなたは創ちゃんなんでしょ!? 

もうこんなことは止めて! ナイオーロの……ロギア帝国の為に世界を差し出すなんて間違ってる!!」

「……は?」

 

沈痛な面持ちのエクスティアに対してソラエルは何を言ってんだとあからさまに怪訝な表情。しかし他のエクスティアも同じようになんとも苦しげな表情。

 

(ソラエルと知り合い? ユリエルの時も知ってるっぽかったけど)

 

まだエクスティアと四天王の関係を知らない藤丸にとっては意図が読み取れない。そもそも今更呼び掛けただけで止まるような奴でもないと思う。ただあまりにエクスティア達は切羽詰まった表情で余計な口出しをすることもできない。

 

そして予想外な出来事が続く。

 

「……なに言って……ボクの名前はソラエルって……ご主人様……ぁれ? ……頭……っ!!」

 

鎌を手放したソラエルが膝をついたのだ。

両手で頭を抱え、ふるふると体を震わせながら動きが止まった。

 

「知ってる……? 知らない……そんなはず……ボク……ボクは……」

「創ちゃん!!!!」

「創真!」

「ソーマ!!」

「紫峰!!」

 

反応があった事で意味があると感じたのだろう。他の3人も続いて声をかけ、その度に苦しみながらソラエルが立っていられないと崩れていく。

 

「ぐっ、痛っ! 頭、なんなのさ急に……こんなに痛いの……嫌だって……う━━ああああああああ!!!!」

 

上がる絶叫。血を吐きそうな声だ。

ひょっとしてだが、エクスティアの呼びかけでソラエルの中にある心が反発しているとか? 

もしこのまま彼女達の仲間としての意識が蘇るなんてことになれば好機だが……

 

(なんだろう。この感じは……)

 

いくつもの死線を越えてきた影響かもしれない。

ふと今の状況で関係のない記憶が呼び起こされる。

北欧異聞帯侵入直後にシグルドに憑依したスルトが襲撃してきた時。

中国異聞帯で芥ヒナ子が虞美人としての姿を開放した時。

インド異聞帯で神たるアルジュナがユガを廻した時。

大西洋異聞帯でキリシュタリア・ヴォーダイムが惑星轟を行った時。

圧倒的暴力による振り下ろされる死の気配をなぜか苦しむソラエルの向こうに見た。

 

◇

 

ソラエルは痛む頭を押さえる。

妙な名前でエクスティアに呼ばれてから不快感が消えてくれない。

例えると黒板に爪を立てて引っかき続けるような。

頭の周りをぎゅるぎゅるムカデが這いまわっているような。

きっちり整頓した部屋へ乱暴に物を押し込まれた時のような。

とにかく気持ち悪い。

 

(なんだよもう!! 早くお邪魔虫ぶっ殺して藤丸クン達で楽しい時間━━)

 

ひび割れた頭蓋の奥。閉じ込めた記憶の蓋が不快感の爪で徐々にこじ開けられる。

 

(なにか……見えて……)

 

愛する主人の前に立って自分へ武器を向ける姉達。

いつもの仲の良さを感じさせない冷たい表情。

 

(どうして、姉ちゃん達がこんな……)

 

さらに映像は進む。

姉達に殺されそうになった自分へ唯一手を差し伸べてくれたご主人様。

価値のない自分に奴隷としての生き甲斐をくれた愛しいお方。

 

(そう、だ……ボクを救ってくれたご主人様……一人にしないでくれたご主人様……)

 

映像は逆に過去へと戻る。

見慣れない男の格好をした自分と葛城真理奈が手を取る光景。

戦えなくなった真理奈の代わりとなって力を合わせ、ガルゾムを倒したリース。

慣れない日本での生活中も時に顔を合わせて心を繋げたアザリン。

最初から最後までずっとそばで頼れる大人としていてくれた天久保百合。

 

(これ……姉ちゃん達の人間の頃……あ、だ、ダメだ! 思い出すな! この先は━━)

 

そして最後にもう一度、最初の映像の少し前を見せられる。

一人一人、ご主人様の奴隷へ堕ちていった姉達。

男だった自分へ愛を囁いた口で罵倒し、代わりに主人への愛を捧げた姉達。

 

(あ、うあ……違う……心に……黒いのが……隠してたボクが……でちゃう!!)

 

裏切られた。

ずっと一緒だったのに。

誰もが大切な人で一緒に地球を守ると誓ったのに。

愛は快楽に敗れ、絆は魔術の洗脳に塗り潰された。

 

(っ、分かってる……お姉様たちは悪くない……だってご主人様に仕えるのが幸せだもの……ボクだって仕えるのを選んだ……でも……でもでもでもでも!!!!)

 

ソラエルは自分が刹那的に見えて理性的だと自覚がある。イレギュラーを楽しみつつ、常にカバーできる手段を忘れない。そうやって姉達を助けてきたし、全ての過去にも折り合いはつけている。

姉達を恨んではいない。自分も選んだ道だから。

主人を恨んではいない。彼に尽くすのが幸せである愛奴隷が主に反意なんて抱けない。

しかし、しかしだ。

それでもあの日仲間だったはずの姉達に裏切られ、自分は捨てられたのも事実。

感じた負の感情は心の奥底にしまい込んで思い出さないよう努めた。もう呼ばれることの無い愛称と一緒に忘れるようにしたのだ。

しかしありえない邂逅により彼の名が呼ばれたことで封は解かれてしまう。

裏切ったくせに今更間違いだとほざく愚か者たちへの怒りと憎悪を撒き散らす、災厄の形で。

 

◇

 

禁断の宝具解放

「━━うるさい」

 

藤丸達が見つめる中、体の震えを止めたソラエルの声はゾッとするほど冷たかった。

感情がまるで籠っていない。

壊れたロボットみたいに左右へ体を揺らしつつ立ち上がって、次の瞬間に叫び出した。

 

「そうだ、そうだそうだ。そうだったよ。そうだったぁあああ!!!」

「創ちゃん!! 待って!」

「うるさいうるさいうるさい!!! 勝手なことばかり偉そうに!!」

 

エクスティアの声にももう動揺していない。

むしろ声を聞くだけでも不愉快とばかりに睨みつける。

 

「見捨てたくせに! 裏切ったくせに! ナイオーロ様を選んだくせに!!! 

━━この裏切り者がっ!!!」

「それは……」

「許さない……許さない……お前らなんかいらない。

ボクにはお姉様や姉ちゃん達が本物。ご主人様の眷属に選ばれた大事な人達! お前らなんかいらない!!」

「待って! 創ちゃ━━」

「ボクをそんな名前で呼ぶなあぁぁぁっ!!!」

 

太ももに止めたベルトからカードを引き抜くと吐き捨てるように叫ぶ。

 

「【虚構装填(パラレル・インストール)】!!!」

 

カードから魔力の渦が溢れ、ソラエルの体を覆い隠す。

やがて見えてきた姿はやや変わっていた。

白く角ばっていた角は黒く湾曲した2本が側頭部から後方へ。額からも黒く鋭い角が一本そそり立つ。

翼は一回り巨大になって攻撃にも使えそうなサイズに変わり、腰から伸びる尻尾も先端が尖った凶器染みた造形に変化。

胴や手足は比較的変化が少なく、股間の前張りが黒い紐ショーツに変化したくらい。

最後に全身の衣装に付けられた装飾のラインが金色に変化し、眼球も黒に金の瞳と人外へ変化。

残滓が滴るような濃い魔力を宿しつつ、その翼で渦を払った。

 

「着装、淫魔戦姫ルクスティア━━っぐぅ……ああああ!!! 

……痛いなもう!! いつもこう!! 使いにくいっ!!!」

 

変身を終えたソラエルの体からはスパークが散り、彼女自身も時折痛みに呻きながら体を押さえている。どうやらあの姿は変身者にも負荷を強いるものと思われる。

だが発せられる魔力の質や邪悪さはこれまでの比ではない。

首に刃物を突きつけられたみたいな緊迫感が押し寄せて体の動きを許さない。

目まぐるしく姿や魔力を変化させていまや彼女の周りを目で見えるほどの魔力の奔流が流れ出している。

 

(この気配……まさか!)

「先輩私の後ろへ! エクスティアさん達も!」

「マシュ!?」

「敵性個体リリスティア・ソラエルが発する魔力が急上昇しています!! 続けて宝具による攻撃を行ってくると思われます!」

 

同じことを考えたマシュに庇われながらソラエルを監視。相変わらずネモとは通信が出来ないせいでストーム・ボーダーを逃がすこともできない。

つまり何が来るとしても受け止めて耐えるしかない。

 

「来いよ、ボクの影たち!! うざったい裏切り者共、使い道のない人間(ゴミ)共、憎いだけの世界……全部全部ぶっ壊せ!!

━━【いまは遥か、あの日の幻(ロスト・ユートピア)】ァァァ!!!」

 

咆哮と共にソラエルの足元から液体が吹き上がる。

墨を落としたように真っ黒な泥だ。べっちゃびっちゃと糸を引いて粘り強く、草木も押し潰すようにして領域を広げだす。

そして広がった闇の沼からずるりと引っ張られるみたいに何かが次々立ち上がった。

人っぽい形をした泥の塊。かろうじて手や頭らしい部位が分かるが詳細は溶けていて目や口も暗い穴が開いているだけ。そんな不気味で気持ちの悪い連中が両手を前に突き出し、まるでゾンビのように前進を始める。

莫大な魔力に後押しされた泥はたちまちに小樽の海に雪崩れ込み、続いて大地を黒々と染め始めた。建物も動植物に彼らが触れると同じように泥が染み込み、そこから腐り落ちるようにして通った後の泥沼に沈んでいく。

建物や海の自然豊かだった小樽の街が泥人形の進行が進むにつれ、平坦で黒泥沼が広がる沼地に変えられていく。

 

「8.xue」

「ihe」

「k\Zw7」

 

藤丸の耳では意味を理解できない謎の音。しかし泥人形たちが発する全てが寒気のするような憎悪を宿しているのだけは確か。

 

「この魔力……まさか固有結界!?」

「固有結界……でも確かアレ決まった範囲に取り込む奴だよね。エミヤとかイスカンダルが使うの。

ソラエルのは周りの景色をどんどん変えていってる」

「はい。周囲を塗り潰しながら自らの領域を拡張しているような……侵略型固有結界、とでも呼称するのが正解かもしれません」

「侵略型固有結界……!?」

 

驚きに固まるのも僅か。

行進を始めた人形たちの後、ソラエルの側に新しく3つの人影が立ち上がる。

人形とは違う。肌の色も黒一色ではなくて人間的な色味。目鼻立ちもくっきりしていて、一人一人が方向性の違う美しさを宿した女性たちだった。

1人目は扇で口元を隠した古風な印象の女性。年齢は一番上の20代くらいだろうか。金の瞳に縦長の瞳孔をして、口元から覗いた2又の舌とまるで蛇のような第一印象。

肌も髪も雪女みたいに真っ白。

ルクスリアに匹敵する巨乳を白い布地に赤い彼岸花をあしらった着物と帯で先端部だけ隠し、上と下の双丘はどちらもまるで隠す気配がない。痴女同然の格好ながらリリスティアとも違って高貴な気配さえ漂わせている。

胸には3つ目の眼球が上向きに弧を描いてこちらを視線で嘲笑い、頭には禍々しい気配を纏った小さな冠を戴く。

股間を覆う部分以外は細い紐で両端を結んだこれもエロチックな紐パン一枚で露出が強い。

腰に生えた角で着物を寄せた以外に胴は丸見えで新雪のようなお腹も明らか。代わりなのか腕から肩までとつま先から太ももまで真っ白な手袋やストッキング一体型の足袋で固めている。

全身が真っ白な中で着物の模様と口紅だけが真っ赤で印象的。

 

「これまた辺鄙な所へ呼びつけおったのう。妹と血の池(湯浴み)の最中じゃったのに」

 

2人目は藤丸と同世代くらいの少女。

口元の鋭い犬歯や舌につけたピアスをキラキラ光らせながら笑う姿は獰猛な肉食獣。

手は指先から二の腕まで黒紫色をしたツヤツヤした手袋に覆われ、足はつま先から太ももまでヒールと一体化したブーツが装着。

胴には大きくダイヤ型を描いた魔力のラインが走って布地に、胸と秘所周りを覆う以外は大胆に肌をさらけ出す。

子宮の位置にはハート形の淫紋に腰骨からはこれも先端がハートになった尻尾が生え、フリル付きスカートが留め具と一緒に腰回りへ接続。

大きなコウモリのような羽根が一対背中につけられ、髪色が赤みのかかった白色へ。

最後に頭部へ羽根と同じコウモリがハートを抱いた形のティアラがつけられていた。

 

「クック、キヒャハハハ!! 殺(や)りたくて犯(ヤ)りたくてまんこが濡れるこの感覚……ああたまんねぇな!! 仕事ってことだろ、ナァ!?」

 

最後にダ・ヴィンチやメリュジーヌくらいに小柄な少女。多分10代前半ってくらいの年齢。

眼球のように大きいレンズがついたバイザーで頭部を覆っているために表情はうかがい知れない。他の2人に比べるとかなりテンションは低め。

紫を基調としたハイレグスーツ。体の各所でエネルギー供給用に設置された緑のクリスタルは血のような赤色。装甲は黒く染まり、幼さの残る体格にむっちりと肉感を増した足も黒のストッキングが包む。

腕にも黒のグローブが着けられ、各所には赤く発光するラインが点在。

銀の髪が眩しく、しっかり手入れされているようで人形の髪みたいに美しい。

意思の感じられない紅い瞳もルビーみたいで現実離れした美しさを備えていた。

 

「悲嘆。楓様(マスター)との大事な蜜月を邪魔された。早く終わらせる」

 

泥から生まれた3騎は明らかにサーヴァント。

藤丸やマシュ、それにエクスティアを見つけるとその名を高らかに宣言してくる。

 

「虐殺戦姫ソアラ。ガルゾム様の由緒正しき孕みメス奴隷。お主の血で妾の舌を喜ばせよ」

「リベレイター・ソーマ。ジネーヴラΩ様に仕える奴隷だ。死ぬまでの短い間覚えてけ」

「宣告。エクスレイヴ・ε(イプシロン)。皇帝(カイザー)レクスティア様に作られたエクスレイヴの最高傑作」

「さぁ犯るよボク達! 邪魔な裏切り者共を片付けて可愛い2人で遊ぼうじゃない!」

「くふふ」

「キヒャハハ!!」

「期待」

 

敵はソラエル、ソアラ、ソーマ、イプシロンの合計4騎と無数の泥人形たち。

ダ・ヴィンチたちが不在のストーム・ボーダーを守るため、過去の罪との戦いが幕を上げる。

 

〈つづく〉




というわけで隠れていた事実の説明回と藤丸&マシュのラブラブ回(笑)でした。
今回は導入であり、次回はまたエロと戦闘回になります。
ようやく登場させられたソラエルの宝具。
詳しいことはそのうち設定資料に載せますが、端的には周りを塗り潰しつつ別世界の自分を呼び出す宝具と思ってもらえれば合ってます。泥人形の正体はBADエンドで死んだ紫峰創真の怨念集合体。

最後に登場した3人娘は過去作のエクスティアIFシリーズの創真TSIF堕ちの姿です。
詳しくはそれぞれを参照ください
『光翼戦姫エクスティアⅡ~悪堕ちルートIFエンド~』
https://syosetu.org/novel/309120/
『光翼戦姫エクスティアA~悪堕ちルートIFエンド~』
https://syosetu.org/novel/309108/
『光翼戦姫エクスティア3~レクスティア敗北IFエンド~』
https://syosetu.org/novel/309106/

なお描写は省きましたが藤丸とマシュが起きた時にきれいになっていたのは夢だったとかではなくて、ソラエルがきれいにしました。到着時ドロドロベタベタの惨状で話もエッチも出来ない状況だったので、一度綺麗にしてから登場タイミングをうかがっていました。
Fate/zeroのラストでギルが言峰をわざわざ掘り出してから全裸でポーズ決めて待ってたのに比べると常識的。

すこぶるどうでもいい話ですが今回の話の中で一つ、脳を破壊されるような隠し要素が一つあります。
以前から描写してましたし想像つくかもですが。
知りたい方は次のページへどうぞ。
なお、今知らなくてもそのうち描写はします。

ではまた次回。
戦闘・調教とこなすほかにまた何人かが脱落予定。
バーヴァン・シーは調教でヴェステギル以外を悩んでいましたが、せっかく服ならあの要素と思いついたものを入れる予定。
多作品なのでそのままではなくてある程度改変は入れるつもり。ヒントは次回予告の彼女の笑い声。
恐らく次々回辺りで使用することになるかと。

今回のマシュがやたらフェラやセックスが上手かったのはナイオーロが夢の中で仕込んだからです。
別の男が仕込んだ技術で藤丸に奉仕してたわけですね。
喜ばせようと自分も気づかないまま。
いずれここまでの仕込みの部分はマシュ回で描く予定です。
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