※この作品はR-18です。

エクスティア×FGO 異界魔導帝国ロギア・アース~堕ちた人理の希望~   作:王天君

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エクスティア×FGOシリーズ第3話です。
福岡へ辿り着いたストーム・ボーダーとカルデア一行。現地の責任者との面会に向かったゴルドルフとダ・ヴィンチは置かれた現状の厳しさと次に襲い来るであろう場所を知る。
そして同時に藤丸とマシュの夢の中には仕込まれたソラエルの策略が牙を剥き始め・・・

※この作品はpixivでも投稿しています。


第2節 日本滅亡カウントダウン/夢の中の逢瀬

幕間 荒廃した日本

四天王リリスティア・ソラエルの襲撃から半日後。カルデアは九州主要都市、博多に到着していた。ストーム・ボーダーが本来の速度を出せれば数時間で着く予定だったのだが、空想樹擬きにぶつかった損傷とソラエル交戦のダメージから高速航行は不可能。元の船舶としての速度で進む羽目になったが故の結果だった。

ミニソラの語った通りに福岡は帝国の支配下に落ちておらず、奇襲を受けることはなかった。

ただこれでもかと防波堤に日本国旗が翻って警戒心バリバリ。ストーム・ボーダーを停泊させるだけでも帝国の新兵器ではと軍艦に囲まれたり、接近を警告されたりと色々あったが無事に博多港へ。

海は元の色を残していながらも港は漁船以上に迷彩服を着た兵隊たちがうろつき、平時の日本ではすでに無いことを乗員全員に嫌でも分からせた。

ネモ・ナースから安静指示が出た藤丸とマシュ、艦のメンテナンスに必要なネモとムニエルも残し、所長とダ・ヴィンチが艦を囲んだ兵士たちに対応。

彼らの上司から連行命令が出ているとのことで異聞帯解決の糸口やこの国の置かれた現状を確かめる為、また安全に修理する時間をもらう為にも内地の司令部へ向かうこととなったのである。

 

◇

 

━━福岡県福岡市 旧福岡市役所 現対ロギア帝国前線本部━━

 

博多港からほど近く。

ストーム・ボーダーからも見える位置に立っていた長方形の建物。対ロギア帝国の本部らしいところをダ・ヴィンチはゴルドルフと一緒に訪れていた。

正面玄関に止まった車から降ろされ、四方を銃を携帯する兵士たちに囲まれた状態で内部へ。手には二人とも手錠つき。

まるっきり犯罪者に対する扱いだがソラエルの襲撃を見た後だとこの警戒も当然だ。サーヴァント級の戦力4人対ただの軍人、これで勝てるわけもない。きっと何度も戦闘を重ね、その度に傷ついたのであろう。前を歩く男は頬に抉れたような大きい傷跡をつけていた。

 

「しかしこれで良かったのかね」

「何がだい?」

 

前を歩くゴルドルフがこちらにだけ聞こえる音量で心細そうに呟く。

 

「我々の身分を国連の秘密組織などと偽ったことだ。しかもストーム・ボーダーはアメリカ製の特殊航空戦艦ということにしてしまったではないか」

「全部嘘ってわけじゃないし。人理保証機関なんて言っても頭がおかしいって思われるよ。

話すならある程度事情を知ってる偉い人にしておかないと」

 

カルデアは元々時計塔のロード、アニムスフィア家が管理する国連承認機関。南極という侵入を許さない立地でも万が一を考えて外部との接触があった時用に、国連組織の身分を偽れるように用意が色々とされている。

源所長のゴルドルフも全権を買い取った時に国連職員の偽装身分証が作られていた。ダ・ヴィンチはその秘書官ということでゴリ押ししている。

 

「不安だ。あの小娘の言いなりではないかね」

「それはまあね」

 

ソラエルが藤丸を気に入ったからと刻印とセットにして残されたミニソラ。

福岡へ立ち寄ることも博多港に入ることも、日本側の勢力との接触を勧めたのだって彼女。もちろん自分達で議論して決定は下したが思い通りに動かされている感は拭えない。

結局選択肢と呼べるものもないのだから。

主であるソラエルと接続していて軍の情報を抜き取るつもりかとも考えたのだが、彼女は興味ないの一言で今もストーム・ボーダーに残ったまま。妖精騎士が交代で見張っているから何かできるわけでもない。

つまり現状だけ見ればカルデアにしか得のない提案を勧めたことになる。目的が全く読めない気味悪さが喉に刺さった小骨みたいに嫌だった。

エレベーターで上階へ進み、カーペットが敷かれていたらしいコンクリが剥き出しの床を進んで奥まった一室へ案内された。

両開きの金属製の扉は上に市長室と書かれた半欠けのプレートが残っていた。

連行してきた一人がノックして中に入ると敬礼。

 

「クサカベ一佐、例の奇妙な船舶の責任者と思われる男を連れてまいりました!」

「ご苦労。その2人を残して貴官らは下がれ」

 

山のような重々しい雰囲気を纏う50代後半くらいの壮年の男だった。白髪の混じった髪を短く刈り揃えた現場のたたき上げを思わせる厳つさ。パリッと糊のきいたスーツなのに銃を持っている兵士より凄みがある。眉間に深々と刻まれた皺は重ねてきた苦労の表れだろうか。

英霊には届かなくても修羅場をくぐってきた人間特有の覇気が醸し出されていた。

 

「はっ! しかし未だ身元も定かでない不審者相手に護衛なしでは……」

「ロギアの手の者なら護衛などいても変わらんわ。分かったら下がれ」

「……かしこまりました」

「━━よく来てくれた。かけてくれ」

 

出ていく兵士を見送ることもせずに椅子を薦められる。断る選択肢もなくゴルドルフと並んで応接用の長椅子に腰かけると、向かいにクサカベと呼ばれた男も座る。

飲み物はとの提案を断り、隣のゴルドルフが持参したペットボトルを煽った。この地域のトップらしい男との対談だ。緊張もかなり襲っているのだろう。

ナイオーロの時とは違って、まともな情報を仕入れなければと気合を入れなおして口を開いた。

 

「初めまして。私達は━━」

「カルデア、なのだろう?」

「む。すでに我々のことを知っているのかね」

 

組織名を正確に言い当てられて驚くと、なんでもないみたいに首を横に振った。

 

「先日から風の噂になっていたのだ。白亜の艦で現れるロギア帝国と戦う戦士たちの話を。彼らの名がカルデアだとな。

そうして警戒していたら先日の対馬方面での発光現象に、我々が知りえない謎の白い艦……もしやと思い、来てもらった」

「……そんな噂を偉い人が鵜呑みにして大丈夫なの?」

 

都市伝説レベルの話を真に受けていたらキリがない。いたずらに嘘を触れまわる輩だっているだろう。ロギア帝国が何かしら罠を仕掛けてくる可能性だってあるはず

だがダ・ヴィンチの疑問をフッと分かり切った質問みたいにクサカベは片づける。

 

「状況を好転させてくれるなら嘘でも神でも歓迎だ。もう無くすものより無くしたものの方が多い。

この1年で信じられないような魔獣や怪人に見飽きた。だったら同じ信じられない奇跡の一つも起こってくれはしないかと思ってしまうのだよ。

━━挨拶を遮って済まなかった。対ロギア帝国軍一佐クサカベだ。この地域での最高責任者を務めている」

「やあこれは丁寧に。人理継続保証機関フィニス・カルデアの所長、ゴルドルフ・ムジークだ」

「同じく技術顧問のレオナルド・ダ・ヴィンチだよ。有名人とは名前が同じだけの別人と思ってね」

 

軽い挨拶を交えた握手。小さな少女でしかない自分の手を握る男の力は思ったよりずっと弱かった。

険しさしかない瞳。睨まれたと錯覚しそうな瞳は積み重ねられた悲しみや苦労が溢れそうな所で堪え続けている。

強面の力で隠し通されてきた感情が瞳の奥にチラついていた。

 

「それで君達は何のためにこの博多へ?」

「あー、それはだね……なぁどう説明すればいいのだね? 一から説明するのか?」

「代わるよ」

 

魔術的な危険を含むことは隠して、この世界の調査に来たと手短に説明。世界的に日本と同じような異常事態が起きていて災害調査だと。

魔術知識のない人に異聞帯の説明をしても混乱を招くだけ。藤丸がいれば全て打ち明けたかもしれないがここにいるのは大人だけ。現地住民まで敵に回すことは避けておきたい。

どう反応するかと思ったが、彼はまず戦力がこれ以上増えないことを知ると落胆を強くにじませた。

 

「近隣諸国からの増援も望めないか……」

「申し訳ないけどそれどころじゃない。この国を包む壁の外もかなり危険な状態で、ここの方が安全なくらいなんだ」

「ははは……奇跡は起こらずか。この歳になると過剰な期待もしないようになったが、いややはり少し堪える」

「そもそもの話をしたいのだが……彼ら、ロギア帝国について教えてもらえないかね。我々も襲ってきた四天王と皇帝のことしか知らんのだ」

「我々も多くを知っているわけではない。奴らはロギア帝国。首魁は皇帝ナイオーロとその妻を自称するクイーン・ルクスリア。さらに直属の配下として四天王を名乗る淫魔が4人仕えている。日本の制圧を狙っているらしいが詳しくは不明。後は怪人という人間を変貌させた化け物を使い魔にしていることか」

(使い魔……死徒みたいなものか。それに四天王。四姉妹なんて言ってるから予想してたけどこちらが不利すぎる)

「……人間を道具にしておるのかね」

「ギルツシードという。クルミくらいの大きさをした種で人間に投与すると宿主の最も強い欲望を反映した怪人に変貌させる。それを大量に使って制圧する度に奴らの兵が増え、今では数的有利さえ残っていない」

「……一体今の日本はどんなことになっているの?」

 

ダ・ヴィンチの言葉で動きを止めたクサカベは溜息を吐くと席を立つ。

 

「ここに来るまでの車窓から街の様子は確認できたよ。皆俯いて浮かない顔をしてばかり。

アレはもう生きているなんて言えないよ」

「同感だ。あれはなんといか……生ける屍がまさに似合いだった。生きる意思を無くしてただ習慣の生活を繰り返しているような」

「━━そうだな。我が国の歴史も知ってもらった方が理解しやすいだろう」

 

立ち上がったクサカベは奥にあった責任者用の格調高い机の引き出しから折りたたまれた紙を持ってきて、お互いの間にある応接机へ広げた。

それは手書きでいくつも手が加えられた日本地図だった。

まず初めに千葉県の海に面した海浜幕張辺りの一地点をペンで叩く。

 

(書き込みびっしり! 元は学者とかを目指してたのかな?)

「すべての始まりは2年前の1月1日。奴らは最初千葉県の方丈市に出現した。声明が出た当初は年始に浮かれたバカだとか過激化したデモ行為だとテレビもネットも面白おかしく書き立てていたが……四天王と怪人が現れ、更に警察と市役所が制圧されて死傷者の情報が出回ると一気に事態は深刻化した」

 

ソラエル一人でもネモやダ・ヴィンチを相手取る戦力。それがもっといれば警察どころか軍隊が出ても勝てなかっただろう。最初に対応に当たらされた人々を思うとダ・ヴィンチでも陰鬱とした気持ちにさせられる。

千葉から西、東京へ。

 

「一ヶ月かからずに千葉県庁は陥落。その足で侵攻の足はすぐ隣の東京に進んだ。

侵攻するほど数を増やす敵の怪人に市街戦とあって自衛隊も満足に動けず。2月の頭に東京都庁が落ちた。

霞が関の連中は東京都庁が落ちたその日に長野県松本市への首都機能移転を公表。国民にはテロ組織活動激化に伴い、大局的な見地からの決定と首都陥落を誤魔化してな。

暴力に訴えず対話を~なんて言っていた間抜け面を思い出すと今でも殺したくなる。あの時、違う手を打っていれば……すまない、話が逸れた」

 

ペン先は東京をぐるっと回った後、北西に上がって長野県を叩く。

だがダ・ヴィンチの記憶している日本地図とは違い、長野県松本市が×を引かれて第2新東京市と震えた筆跡で書き殴られていた。その上からぐちゃぐちゃと赤ペンで長野県を消し去るように塗り潰してあった。

それはクサカベが最初の侵攻からずっと携帯し、情勢に合わせて感情を込めながら更新してきた証拠なのだろう。

 

「東京を落とした奴らは関東圏を次々制圧。4月頃にはほぼ関東全域が奪われ、法律をようやく調整して派遣した自衛隊も全滅。

5月に群馬が奪われるに至り、政府は2度目の首都移転として京都を発表した。もうこの頃にはロギア帝国の存在自体がテロ組織におさまらない侵略者だと国民全体が知るようになっていた。それでも避難せず、日々の仕事に向かう人間の方が多かったのは真面目というのか頭が固いというのか……」

「ちょっと待って。長野県の赤いのはいったい何なの」

「核だ。当時の政府は第2東京都庁を放棄する際に地下に核爆弾を仕込み、後から制圧しに来た帝国軍の攻撃に使おうとしたんだよ。あわよくば幹部の一人でも葬れればと目論んで。

6月20日。梅雨が明けたばかりの暑い、夏の訪れを予感させる日だった」

 

一言区切るとコップを煽る。この地図が彼の所持品なら地図を塗った時にはかなりの葛藤もあったと思われるが、どこか他人事みたいに聞き取れた。

 

「結果は聞かずとも分かるだろう? 

━━大失敗だ。自爆同然に使ったせいで旧松本市どころか飛騨山脈までが消滅。衝撃と反動で起きた大地震が木曽・赤石山脈まで崩壊させて日本をほぼ2つに割ったのだ。もちろん厳重な箝口令が敷かれ、死んでいった多くの国民も知らなかった方が多いだろう」

「なんという……」

 

ゴルドルフが思わず絶句。

自国に対して核を使う。常識ではありえない。政府の人間も国を守る為にやったのだろう。それでもこれほどの事態を起こしてしまうとは。

これまでの異聞帯のように神の戦争や大昔の出来事でない分、喉元に迫るような苦しさがある。

 

「だがある程度戦力を削ることはできたようでな。一時的に進行は鈍化。代わりに侵攻先が京都ではなく北陸地方へ伸びて7月に日本は事実上、東西に分断された」

「国が割れるなど……冷戦の時代ではないか」

「政府の命令で我々自衛隊は西に進むしかなかった。東と北の方はどうなったのか……昨年の12月までは通信も繋がったが現在はまったく応答がない。おそらくはもう日本人はいないのだろう」

「でも侵略は止まらなかったんだね」

「8月に侵攻が再開。琵琶湖を起点にした絶対防衛戦も抜かれ、政府は最後の策として鹿児島への首都機能移転を宣言した」

「3度も……」

「京都の町も燃え、歴史的文化財も接収されたか破壊されたかだ。自国内で世界遺産が強盗にあうとはな。そして先の失敗で核なら時間稼ぎができると学んだ政府は追い詰められてもう一度同じことを考えた」

「ちょ、ちょっと待ちたまえ! それはつまり何かね。まさかまた━━」

「使った。それも御所があるから退去はしないと決め、避難勧告が遅れたせいで何千人もの国民を巻き込んで……2017年12月31日のことだった」

 

示されたのは兵庫県。

豊岡市から姫路市までをケーキカットしたみたいに赤ペンの空白でぱっくり切り取られている。これが何を意味するのか、わざわざ問う必要はなかった。

 

「地下に仕込んだ核を使い、国土を割る大爆発。ここで兵庫の中ほどから東西に分断された。本州が2つになった衝撃は忘れようがない。

━━だがここで奴らの侵攻が止まった」

「とまった?」

「でも山口県まで攻められ……いやそうか、1年で千葉県から京都府を制圧しているのにまだ福岡県(ここ)が健在なのはおかしい」

「その通り。姫路湾━━例の核で作られた海を境界に進んでこなくなった。時間にして2018年7月までだな。約半年ほどの安息が訪れて我々も少しは戦力を整える余裕が出来た」

 

千葉県から地図をなぞり続けてきたペンが山口県を叩く。

 

「そして今だ。2018年12月。侵攻再開した奴らに抗戦の成果はあげられず……この福岡まで後退してしまった。

下関の関門海峡でここ1ヵ月は侵攻が止まっているが……執行を待つ死刑囚の気分だ」

「半年間の停戦期間……帝国がわざわざ待つ必要はないはず。理由は分かっているの?」

「奴らに聞いてくれ。ただ今の所、海を渡るのに手間取ったからという見立てだ。半年は姫路湾を兵が渡る時間稼ぎだったのではと」

「待て待て待て! 我々はソラエルに対馬島上空で襲撃を受けたのだぞ! 飛べるのではないのか?」

「単独飛行を行えるのは四天王だけだ。その中でも高速で飛べるのはソラエルのみらしい。

現に船や橋で渡ろうとすれば門司港に配備した軍艦が砲撃で叩き落している」

「でも関門海峡には橋が架かっていたと思うんだけど。それは利用されたりしないの?」

「もう落とした」

 

破壊したではなく落としたという言葉が少し引っかかる。それにいやに反応が早かった気が……

 

「それってまさか……」

「砲撃だ。追手が近すぎて爆薬をしかける時間もなかった」

 

砲撃で橋を破壊するほどの緊急事態。避難民は巻き込まれなかったのだろうか。その答えは険しすぎるクサカベの表情が明確にしていた。

ゴルドルフもこみ上げた言葉があったらしいが今はそれ以上追及できない。当時だって非難はいくつもされたであろうし。部外者の自分達にそんなことをする権利はない。

 

「何も言わないのだな。いや独り言だ。気にしないでくれ。

とにかく多くの犠牲を払ったが、現在は海峡を境界として仮初の平和が保たれている」

「時限装置付きの平和か」

「言い得て妙だな。怪人なんて理外の存在を作る奴らだ。明日にも海を渡ったところで驚かんよ」

「でも彼らがもし渡ってきたら……」

「住民は長崎と鹿児島へ避難を順次進めているが九州より先に逃げる場所はない。四国も1週間前に陥落。沖縄より先は嵐の壁に消えた。北も青森まで制圧されているだろうし、北海道は……期待するだけ無駄だろう」

 

ダ・ヴィンチたちの目の前で九州地方にペンで×が引かれる。ペンが止まった時には日本地図で陸続きに残っている部分はどこにもなかった。

 

「ロギア帝国が関門海峡を渡った時、日本は本当に終わるのだ。

皇族の血は絶え、政府機能も喪失、首都も3度移転を繰り返した。鹿児島にいるのは現実に目を背けて享楽に耽る愚劣な元政府高官。総人口も500万と残っていないだろう。

あるいはもうとっくに終わっているのかもしれないな」

「……それでもまだ戦うんだね」

「今までに斃れた仲間から後を託された。世を儚んで自害できるほど弱ければ楽だったのだがね」

 

私の話はここまでだと締めくくられても、正直ダ・ヴィンチは頭を抱えたい気分だった。

権力への抵抗だけならロシアやインドやギリシャしている。だが日本は置かれた状況が悪すぎる。

一服失礼と離れた窓際に立ってくれたクサカベに感謝しつつ、ゴルドルフと方針を語り合う。

 

「異聞帯の支配者というのは嘘ではなかったみたいだね。皇帝は日本を征服してそのまま世界にも手を伸ばすつもりなんだろう」

「もう少しは良好な状態を願っていたのだが」

「説明通りなら日本側にサーヴァントはいない。恐らくだけど私達がいないと九州は陥落して日本は消滅すると思う」

「我々が加勢すれば変わると? 

勝利の可能性が見えるのかね。あるいはストーム・ボーダーの隠された機能とか……」

「無理! 妖精騎士やモルガンがいたって帝国の方が資源も潤沢で戦力豊富。彼女達に回す魔力が無くなって磨り潰されるよ。出来るとすれば関門海峡の防衛に徹して現状維持を続けるくらい」

「それでは我々も取り込まれるだけではないか!」

「でも補給や修理をお願いしたら確実に防衛してくれって頼まれると思う。国家滅亡間近で手段を選ぶ余裕もないだろうし脅されるかも」

「くぅぅ……しかし考えてみればストーム・ボーダーも修理のために停泊は必須だ。キリエライトも藤丸も万全でない所を四天王にでも襲撃されたら撃沈しかねんし」

「敵扱いしていなくても数は脅威だしね。軍と行動を共にしていれば対馬みたいな単独襲撃は避けられると思う」

「……我々にできるのは日本軍の一員として戦う選択肢しかないのか」

「しばらくの安全を取るという意味でもね。

一度ストーム・ボーダーに戻って相談は必要だけど大きな路線変更はできないよ」

「━━そろそろいいかね」

 

2本ほどタバコを携帯灰皿に捨てたクサカベが対面席へ。ふぅと息を吐きながら眉間を揉む姿もこなれている。だが指先に皺が寄っていない所を見ると思っていたより若いのだろうか。

 

「我々の状態も知ってもらったところで交渉といこう。お互いに要求したいことはあるはずだ」

「なら単刀直入に。私たちの艦、ストーム・ボーダーの修理のために数日間の停泊と船員の上陸許可が欲しい」

「構わんよ。ただし関門海峡防衛に参加してもらえるならだが」

(やっぱりそうなるよねぇ)

「こちらとしても恩には報いるつもりだが。しかし無期限というわけにはいかんぞ。君らの指揮下というわけでもない。政府機能の残っている鹿児島へも行って話を聞いてみねばならないし」

「分かっている。補給が終わった後の数日の話だ」

「それくらいの条件ならこちらもありがたいけど……逆に君たちの軍はいいの? 

ほんの数日なんかいても変わらないんじゃ」

「━━予感がするんだ」

 

上げた目の中には明確な光が宿っていた。

 

「そう遠くなく奴らは動き出す。そこまで明言できなくても、何か大きなことが起きる嫌な予感がする」

「いや君、いくらなんでも軍の司令官の決断が勘ではだね……」

「長野と兵庫、そのどちらでも同じ予感がした」

「核で消えた街……偶然とかじゃ?」

「かもしれない。だがその予感を信じて行動した私は生き残った。

信じなかった、あるいはそれでも残った仲間達が代わりに何人も死んでいった。後輩もいれば同期もいた。気づけば前線に立つ上官もいなくなって私が司令官に繰り上げだ。

いい加減この直感とも別れたいんだ」

「悪い予感、つまり帝国の進軍が始まる。そしてそれを打ち破りたいと」

「恥も外聞もいまさら必要ない。身元も不確かだと承知で君らに助力を請う。あの艦一つで戦力になることは十分理解した。どうか力添えいただけないだろうか」

 

◇

 

一度検討させてほしいと伝えてストーム・ボーダーに戻った頃には夜になっていた。自分の電算室に籠ってダ・ヴィンチは思考に耽る。

クサカベも全員で相談して決めればいいと結論を焦らせはしなかった。それが逆に真剣さの表れであるようで緊迫感を強まらせる。

サーヴァントは全員待機中だが藤丸とマシュがネモ・ナースの判断で睡眠剤投与の上で休まされている。2人も交えた結論は明日下すことに。極めて重大な問題だとして、全員の意見を共有するための決定だった。

 

(リリスティア・ソラエルの襲撃以降、藤丸君とマシュの体調不良が続いてる。キャプテンも調子が良くないことがあるし……彼女が何かしていったのか)

 

謎の魔術紋を書き込まれた藤丸と攻撃を受けたマシュ。今の所大きな異常はないが断言も出来ない。少なくとも調子はあまりよくなさそう。さらにネモも戦闘後から体調不良を時々訴えるようになってしまっている。

ソラエルが何かしたと思うのが当然。しかしこの事についてはミニソラも死ぬような呪いじゃないよと言って答えないため判断不能。ホームズがいれば断片から正解を導き出せたかもしれないが、それも今は無理だ。

さらにクサカベからもう一つ聞いておけた事実があった。

日本異聞帯に存在する空想樹のことである。

シャドウ・ボーダーのメインシステムに自らを接続。記録しておいたメモリーを分析して見つめ直す。

 

『そうだ。対馬島に生えている巨大樹について知っていることは?』

『アレか。確か半年前、奴らの侵攻再開に前後して突如出現したそうだ。当時の九州にいた兵士から聞いている』

『半年前……分岐点はそんなに後? いやそもそも分岐するほどの事態じゃ……』

『奴らが世界樹と呼ぶ存在の模倣品と思われるがそれ以上は不明だ。あんなに巨大なものを次々と……質量兵器の一種なのか』

『世界樹? 次々? ……ちょっと待って。あの樹に似たものが他にあるの!?』

 

ホームズ退去前の発言から空想樹が別にあることは想像していた。

しかし空想樹擬きの複数存在は想定外。日本の置かれた現状と同等クラスに危険な問題が最後に出てきたのだ。これはクサカベ達からするとただの巨大な建造物としか映らない為に認識の祖語が生まれたと思われる。

ロギア帝国の出現からずっと戦闘を繰り返していた人間でないと手に入らない情報だった。録っておいたメモを元に本来の日本地図に場所や特徴を当てはめていく。

 

「千葉県沖に桜色の個体、世界樹と呼称……それ以外は基本的に白い外見。把握できている場所は神奈川、静岡、岡山の児島半島、島根半島、そして対馬」

 

神奈川の個体はブロック状の表面デザインと青白い光。

静岡の個体は燃えるような真っ赤な外観。

島根半島の個体には血のような赤いライン。

児島半島の個体は特に大きく、空に向けて花開くような枝が特徴だったという。

最後の対馬の個体は枯れたように白く中身がなかった。

クサカベが調査した部下の報告ではどの個体の根元でも帝国が集まって作業をし、そのまま放置されているのは一つとしてないという。

 

(似ている)

 

土地との関連性は不明だが発見されている空想樹擬きの外見は怖いくらいに覚えがある。

 

「メイオール、スパイラル、ソンブレロ、マゼラン、セイファート。これまでの異聞帯にあった空想樹と酷似した擬きがこれだけ」

 

クサカベの話では約2年前の千葉県制圧と同時に同県沖の海に桜色の空想樹が発生。それ以外は半年前に一斉に出現したという。おそらく千葉県のものがカルデアの外からも観測された空想樹だと推測される。

では他の役割とはなんだ? 

カルデアの来訪を察知していたなら本命を隠すためのデコイか? 

だが1、2本どころでなく5本だ。多く用意してもコストがかかりすぎるだけで得になるとは思いづらい。

 

(そもそも話が確かなら空想樹が根付いたのはほんの2年前。しかもロギア帝国は世界征服したわけでもないし日本だってまだだ。状況としては北米特異点の状態に近い。すでに平行世界からも逸脱するほどの何かが起きているとはとても……)

 

そのとき艦内を流れる魔力にわずかな乱れが発生。直結していたダ・ヴィンチにも違和感となって脳内に伝わる。

すぐさまセキュリティに接続。艦内の監視カメラや探査装置でフルに確認。

 

(メインハッチ、非常口共に開けられた形跡なし。魔術の光学迷彩の気配もなし。通路や各施設で不審な行動をとっている人物もいない……気にしすぎかな?)

 

時刻はすでに深夜0時。

侵入者がいれば必ず気づくはずだ。

機械の誤作動かもしれないと結論付け、もう一度ダ・ヴィンチも推論に戻っていく。

僅かに迫った日本異聞帯の秘密を見逃さないために。

 

◇

 

翌日、体調の回復した2人にネモも加えた全員による会議の上で修復のために停泊することを決定。

同時に数日間だけ関門海峡防衛のための戦力に加わることも。

バーヴァン・シーは何でそんなマネをと嫌がったがモルガンが説得。

バーゲストとメリュジーヌはそれが必要ならと異論なし。

藤丸とマシュは当然現地の人間を守らなくてはと前向きで。

一行は補給を終えてから一路東に。

行き先は福岡県と山口県の県境、関門海峡。そしてその最寄りの門司港。

奇しくもクサカベの予感通りカルデアの到着翌日、街全域にロギア帝国の侵攻開始を告げる警報が鳴り響くのだった。

 

◇

 

ユメクイ

ゴルドルフとダ・ヴィンチがクサカベとの交渉に向かっていた頃の話。

ミニソラはブリッジで瓶に閉じ込められて交代制で見張られて何もできない。

安静にしておくようネモ・ナースから厳命された藤丸とマシュはマイルームと医務室のベッドで、それぞれ睡眠薬も受け取った上で休んでいた。

証明が消されて真っ暗。プライバシー関連で監視カメラもついていない個室。

彼の首に刻まれた紋章が誰にも見られることなく輝くと影で出来た掌が出現。5本の指がカッと開いて彼の頭に指先をズブズブ沈みこんでいった。

 

◇

 

「て……ってば」

「いよ……ったく」

 

呼んでいる。

片方は聞き覚えのある声。安心できないが妙になじみのあるような変な感じ。

すると耳にフッと息を吹きかけられてむず痒さで目を覚ます。

 

「おはよ、藤丸クン。寝顔もとっても可愛いからドキドキしちゃった♡」

「ッソラエル!? どうして━━ってここは!?」

 

薄暗くてどこまでも混沌とした闇の広がる世界だった。声は反響しないほど広く、物がないせいでどこまで続いているのかも分からない平原。

そんな世界に裸で藤丸は寝かされ、傍らには忘れようもないソラエルがにんまり笑って相変わらず露出度の高い衣装で侍っていた。

 

「最初は夢の中にお邪魔しようとしたんだけどねー。なんだかヤバ気な黒い影とかタコみたいな触手とかに邪魔されちゃって。

だから君の精神をボクの夢に引っ張らせてもらったの。こっちならしばらくは手出しできないからじっくり楽しもうよ」

 

にこやかに精神へ介入という荒業をやったと語る彼女。普通はサーヴァントでも簡単にできることではないのに……そう考えて首の淫紋に思い至る。

 

「そうかこれを縁にして」

「ピンポーン。ボクとキミはサーヴァント契約にも似た状態なの。だからお互いの夢に関わるのもお手の物。しかも━━」

「ちょっと! いつまで待たせるのよ」

 

そこで聞き覚えのない新たな声がソラエルの喋りを遮った。

彼女の背後に立つのは同じようなショートのボブヘアをした美少女だった。ピンクの髪に太い角を生やし、ソラエルみたいに胸は大胆に晒して、股間は前張りだけとやたら露出の多い淫魔の恰好。

勝気そうなツリ目を不機嫌そうに持ち上げ、片手を腰に当てた姿勢で藤丸の顔から腰辺りまでをジロジロ値踏みするように見下してくる。

 

「こいつがソラのお気に入りねぇ?」

「うん! どうどう? カッコよくて可愛いって言ったとおりでしょ!?」

「顔はまぁまぁかしら。ちんぽは……勃起前は大したことないわね」

「もう姉ちゃん気が早いって! 

━━ってそうそう紹介がまだだった! こっちの派手で綺麗な人はボクのお姉ちゃん、四天王の2番手リリスティア・アズエル! おっきなおっぱいとお尻にSな性格で攻めプレイが超得意なの♪」

「2番手言うな!! ━━お前はアズエル様って呼びなさい。人間如きが私の名前を呼ぶだけでも恐れ多いんだから」

「アズ姉ちゃんでもいいよ~」

「いいわけないでしょうが! それはソラだけ!」

 

ソラエルの距離感を見失わせる語りのせいで警戒を忘れてしまいそうになるが、相手は敵側の存在。それもリリスティアとつくなら四天王の一角を務める最高幹部。

身体から感じられる魔力も上位のサーヴァント達に匹敵する気配だし、漂う甘い匂いはソラエルのとよく似ている。

 

(早く逃げないと)

 

精神を拉致された理由は不明。

ただ、しばらくと語ったソラエルの発言を信じるなら時間を稼げば脱出の見込みはある。

また彼女に密着されて匂いを嗅がされたら思考が回らなくなるかも。それ以前に精神だけ剥き出しなら魔術の一つもかけて操ろうとしてくるかも。

 

「俺を、どうするつもりなんだ」

「えーそれ聞いちゃう? もう鈍いなぁ」

「網にかかった哀れな餌が1匹。何されるかなんて考えなきゃわかんないのかしら」

 

どちらともなくにんまり笑った淫魔が2人。藤丸の体を挟んで右と左に座って、こちらの体もゆっくり空間に押し倒される。

むにゅっと桃みたいにみずみずしくて柔らかい感触をした胸に両腕が捕まり、はぁはぁと彼女らの熱い吐息が体にかかり始める。

 

「安心してよ。今日はキミと愉しむだけ」

「魔術で発情セックスしてもいいけど理性が消えるだけでつまらないのよね」

「お猿さんは人間達で間に合ってるし!」

「だから今日はアンタの身体をメスに目覚めさせるための調教よ」

「ボクとアズ姉ちゃんは一番息が合うからね♪ 姉妹のコンビネーションで感じさせてあげる。

両側から美少女に挟まれて気持ちよく調教してもらえるなんて幸せ者~♡」

 

また勝手なことを。

何か言い返してやろうと思ったが直後にペニスへ2人の指がさわさわと触れる。

アズエルが竿でソラエルが玉。息が合うとの自己申告通りに全く被らずにそれぞれで掴むと、痛くない力でシュッシュッもみもみと手コキが開始。

悔しいが快楽に反応した体はたちまち股間へ血を集め、みるみるその大きさをオスの象徴らしい固く反り返ったものに。

 

「へぇ?」

「わっ♡」

 

その反応を見た2人もわずかに表情が変わる。アズエルは退屈していた感じが獲物に興味が出た獣のように。ソラエルは期待通りと嬉しそうに顔をほころばせる。

どちらもゴクッと喉を鳴らし、手元で固くなった男性器を興味津々に見つめる。

 

「思ったよりいいじゃない。私達の奥まで届きそうな上物ちんぽ。ナイオーロ様には負けるけど」

「前はちゃんと見れなかったけどやっぱりちんぽも美味しそう♡キミって全身が素敵の塊だね。新しいことを知る度にもっと好きになっちゃう。

さ、それじゃ気持ちいい時間の始まり始まり~……はむっ、ちゅ、ちゅべっ、あむぅ」

「っおぁ!」

(み、耳!?)

 

右耳が暑くて湿気の強い空間に包まれる。それがソラエルの口内だと遅れて気づいた。顔を横にして耳全体を口に含み、時々離して唇で甘噛み。

包まれている間は舌が蛇かナメクジのように表面を這いまわり、耳の裏や耳たぶの段になった陰までねっとり舐め尽くす。

 

「あはっ! いい声出すじゃない♪ 男の喘ぎなんて聞けたもんじゃないと思ってたのに」

「ちゅぱ、むっちゅ……先に喉だけ開発しておいたからね。ボクも低い声で喘がれると萎えちゃうから」

「さすがソラ、気が利いてるわ。それじゃあ私も反対の耳を……かぷっ、あむっ、れるおぉ、じゅるるぅぅ!!!」

「ひっ、あっ!」

(こっちは噛んで、いや吸われ……!?)

 

ソラエルの攻めが優しさと甘さに溢れた行為とすると、アズエルのは激しく攻めっ気に満ちた捕食のような耳舐め。

傷をつけないギリギリの力で耳に歯を立て、たっぷり唾液を振りかけた後に全力の吸引。内臓が耳から飛び出てしまいそうな凶悪な勢いと衝撃が体の中を突き抜ける。

そしてどちらの耳にも塗られる彼女らの唾液がそれら刺激を悔しくもまた快楽に変換。

彼女達の手の中で震える肉棒がどうしたって感じていることを証明してしまう。張り詰めた肉を扱く滑らかな指使いも自分で慰めたことしかない少年にとってはあまりにきつい刺激。

 

「くっ……うあっ……」

「声かみ殺してるの可愛いよ。負けたくない~って頑張ってるんだね。偉い偉い♡」

「ソラがこんなに甘やかすなんて珍しい。そんなに気に入ったんだ」

「そりゃもう! 全部ぜーんぶ大好き! ほら藤丸クンもっと気持ちよくなって♡はむはむ、ちゅれろ、ちゅうううっ━━はぁぁぁ。早くキミの頭の中、全部ボクで染めてあげたくてうずうずするよ」

 

耳を吸われながらの手コキも未体験。

耐えようとしても耐え方も分からないまま快楽の暴力に打ちのめされて奥歯を噛んで耐え続ける。

 

「俺は、お前らの思い通りには……ならないっ!」

「ぷっ、くくく!!! バッカじゃないの! 人間一人で何かできると思ってるわけ? 

こんな男一人も殺せないなんて。ご主人様が警戒したクリプター共も大したことなかったのね」

「また姉ちゃんはそうやって油断して」

 

悶えるしかできなかった体と頭がアズエルの心底バカにした声で引き戻される。

マシュの手を握って最期は友達として眠ったオフェリア。

最愛の項羽とずっと一緒にいることだけを望んでいた芥ヒナ子。

異聞帯を越えて助けてくれて散っていったペペロンチーノ。

まだ君達は負けていないと満身創痍の自分を顧みずに背中を押してくれたキリシュタリア。

誰もが自分にできることを、世界を守ろうとしていた。

堕落した淫魔達の発言で彼らの尊厳を侮辱され、心の火が真っ赤に燃え上がった。

 

「……せ」

「はぁ? なんか言った?」

「取り消せよ!! 皆、必死で生きてたんだ。彼らをバカにする権利は誰にもない!!」

 

僅かにたじろぐアズエル。相手が誰でも関係ない。譲れないもののために戦った彼らへの侮辱は、どうしてか自分をバカにされるよりずっと腹が立つ。

胸に挟まれた手を強引に引き抜いてでもとして、先手を打ったソラエルの唇が覆いかぶさるようにして重ねられる。

 

「んんぐっ!?」

「ちゅっ、ちゅうううっ……っぷはぁ♡はいはーい、藤丸クン落ち着こ? アズ姉ちゃんも言い過ぎ。正攻法じゃボクらもヴォーダイムは倒せなかったんだから。あんまり言うとカッコ悪いよ」

「だ、だってソラ!」

「藤丸クンは自分より他の人のために怒っちゃう変わった子なの。一度は敵でもね。

イジメるポイント間違っちゃうのは姉ちゃんらしくないよ」

「なんなのよコイツ……本当に頭おかしいんじゃないの」

「逆立ちしたって勝てないの分かってて平気で逆らってくる。心一つで戦える強さ、ボクは好きだな♡

ね、藤丸クン。もう一回ちゅーしよ♡さっきの姉ちゃんのことは謝るからさ。仲直りのちゅー……んっちゅ」

 

勝手なことばかり言いながら口の中を彼女の舌が蹂躙。またあの甘い匂いが感情も思考もドロドロと溶け崩してくる。

姉の失言でこちらが正気に戻りかけたのを察知して瞬時に絡めとる対応力。危険すぎて拒まないとと分かっているのに、蜘蛛の糸に引っかかったようにもがいても抜け出せない。

こちらを見つめる上気した顔は敵と分かっていても目を奪われるような色気に満ちていた。

さらにソラエルのキスで藤丸の意識が弱ったのを見たアズエルも再び耳を舌で犯してくる。

 

「よくも脅かしてくれたわね。人間の分際で! がぶっ、かぷっ」

「んふふ~。姉ちゃんも調子出てきたし、そろそろメインを……」

(今度は何を……)

 

体の前でゴソゴソしたかと思えばソラエルの胸当てが消失。抑えられていた二つの果実が豊かな質量と一緒に藤丸の胸の上に。両手で持ちあげると見せつけるようにむぎゅッと指で変形させてみせた。

 

「よいしょっと。どうかなボクのおっぱい? 

お姉様譲りの大きくて形もいい素敵おっぱいなんだよ。このままキミの乳首にボクの乳首を……クリクリ~」

「っ!?」

 

ソラエルの乳首が藤丸の乳首に触れる。触れるか触れないかの距離でツンツンとマッサージ。キスの為に押さえられた口はそのままで体は動かせず、彼女の思うままに胸を弄ばれる。

 

「くすくす。ちんぽ、胸に触れたらもっと固くなったわ。なに男のくせに胸で感じるなんてこの変態♡」

「これから女の子になっていく藤丸クンには当然のことだよね。ほらもっとスリスリってしてあげるから気持ちよくなって」

 

羽毛でくすぐられるような感覚。快感になるほど強くなく、さりとて無視できるほど弱くもない。じんわりとした疼きの熱が胸の奥に生まれては消えずに燻ぶり続ける。

そこへ今度は男性器にぬめぬめした何かが2つ巻き付く感触。漏れ出した先走りを潤滑油にぬっぽぬっぽ音を立てる上下運動でペニスに新しい刺激を与えてくる。必死にソラエルのキスに耐えながら視線を動かすと2人の淫魔の尻尾が肉棒をグルグル締め付け、その上から握ったアズエルの手がシュコシュコオナホを使うように動かしていた。

 

「あはは! 尻尾オナホに包まれて喜んじゃって! こんなプレイで感じるなんてどれだけ変態なのよ」

(好き勝手言って!)

「いいでしょ藤丸クン。おっぱいで感じるのも尻尾グルグルで感じるのもさ。この世界でボクらに奉仕プレイしてもらえるなんてご主人様だけなんだよ?」

「他の奴らじゃやっただけで死ぬものね」

「アズ姉は質より量派だもんね~。山口に到着するまで食べた人間で橋が出来るってリズ姉ちゃんとケンカしてたし」

「今関係ないでしょ!? 大体人間が壊れやすい方が悪いのよ。私は悪くないもん」

「にゃはは~分かってる分かってる。アズ姉ちゃんは悪くないよ。

……藤丸クンのちんぽもそろそろいい感じかな?」

 

夢の中でも奇妙な射精感のこみ上げは変わらなかった。アズエルが擦る度に快楽電流が背筋を流れ、グツグツ玉袋で煮詰まったオス汁が刻一刻と昇ってくる。

香りと予感を感じ取った2匹の淫魔も嬉しそうに口元をゆがめた。

 

「うふふ、いい感じにオス臭い。ソラが飽きたら私のコレクションにしてもいいかもね」

「ダメー! 藤丸クンはボクのものなんだから! 

……ああ、尻尾で密着して感じる。キミのちんぽが早く射精したいよ〜って叫んでるの。早く楽になろ? 

もっと乳首スリスリしてあげるからやみつきになっていいんだよ」

 

身勝手な言い分が繰り返されるまま、所有権を主張したソラエルの貪るようなキスに意識が奪われる。魂そのものに口づけされて吸われているような、恐ろしくもやはり気持ちよく感じてしまう刺激。

胸同士のすり合わせも徐々に刺激から快感とはっきり呼べるものに変異。彼女の乳首から流れ出た白乳でペチャペチャ舌でミルクを舐めるような音を立てて乳首が触れ合う。

抵抗しなくてはという意識から切り離された体はいとも容易く淫魔の求めに応じて最後の爆発へと精神を引きずり上げていく。

 

「射精せ! 射精しちゃえ! 乳首で女の子感じながらどびゅどびゅ雄精子まき散らしてイっちゃえ!!」

「敗北ザーメン発射しろ! 私達の尻尾に出せることを感謝して咽び泣け! ほら射精せ!!!」

 

胸の奥のじんじんした疼きも怒りとは違う炎になって体中を火照らせる。

やがて耳と胸と口から与えられた快感がペニスへ集中し、体がはじけ飛びそうな強烈な射精感になると爆発。

 

(クッ……ソぉ)

 

どぷどぷっと縛っていた尻尾越しでも分かる炸裂と解放。

わずかな沈黙の後に腰から力が抜けた。

黒々とした尻尾の間からも流れ出す泥みたいに粘つくザーメン。マイルームで一人慰めたときなんて目じゃないほどの快感と絶頂。

屈辱と敗北に満ちた射精。ぬちょっと音を立てて剥がれた尻尾とペニスには白く粘ついた橋がかかる。

ゆっくり解かれた尻尾から垂れる白濁を口にした2匹がまた淫靡に笑う。

 

「くふふ。ザーメンの濃さはご主人様並! もう最高!」

「ソラの言う通り。れろっ、この濃くて喉も孕みそうな雄汁はこの辺の男じゃ絶対無理ね。貧相な怪人だったら負けそうなくらいにいい味してる」

(と……とにかく、これで奴らの目的は)

 

よろよろ体を動かそうとするとまた唇が奪われ、今度はアズエルもより熱の籠った視線で見降ろしてくる。

 

「なんでもう終わりみたいな顔してるのカナ?」

「終わるわけないじゃない。一回目なんてただの前戯よ。

でも少し見直したわ」

 

まだ硬さを失っていない男性器を掌で撫でまわし、アズエルもソラエルも惚れ惚れしたように熱の籠った視線を向ける。

熱く滾った肉棒は一度の吐精でビクともせず、むしろこれから本番だと主張しているみたい。

 

「一度射精しても萎えない。それどころかもっと硬くしちゃって。いいちんぽしてるじゃない」

「たっくさんトレーニングして鍛えてるもんね。こんなところもボクら好み! 

ザーメンコーティングしたちんぽ、美味しそー♡もっともっと吐き出してケーキみたいに真っ白にしよ!」

 

再びアズエルの手が動き始め、水気を加えられた手コキはこれまで以上に頭を揺さぶる。使っていない片手に精液を塗りたくり、大きく開いた口でパクっと咥えて一本一本をねぶってみせる。

指先から谷間に従い付け根まで。

男性器への奉仕を連想するような動きがまたペニスを熱くさせる。

 

「れぇろ、ちゅばっ、んぷぷっ、ぐっぽ……あはは! 見ただけで硬くしちゃって。カッコつけてたわりに体は正直ね、マスターちゃん?」

「おっぱいももっと気持ちよくなろ! ほら上に跨ってぇ……んっしょ、んしょ!」

 

上に跨って覆いかぶさられる。いよいよ両胸の突起が彼女の突起と擦りあい、小悪魔っぽく笑った彼女が腰を動かしだす。前後にグラインドされるとまた先端同士が定期的に擦れあう刺激も、いつの間にか敏感になって男性器を触られているように強烈に感じてしまう。

 

「このまま、搾り殺す気か……」

「まさか! 気持ちいいことを覚えてもらいたいだけ。

それに安心してよ。朝になった起きた時にはこの夢もきれいさっぱり忘れてるから。ひょっとしたら後遺症がでるかもだけどね♡」

「クスッ! いいわねその戸惑った顔! ソラの気に入った理由が少しわかったわ。

ザーメン合格だしちんぽもまだ萎えないし、ご褒美に私の口も使ってあげる」

 

ねっとり肉厚な唇がペニスへ近づき、そっと口づけ。口内から伝った唾液だけでまた射精前の張り詰めを思い出すほど気持ちいい。

一度射精して大幅に失われた体力と抵抗力では声を我慢するのも難しい。

 

「うぁ……」

「あー! ちんぽファーストキス、ボクが欲しかったのに!」

「妹でもちんぽは早い者勝ちよ」

(にげ……ないと……)

 

まだまだ藤丸を襲う淫夢は続いていく。

 

◇

 

翌朝、マイルームで目を覚ました藤丸は妙なくらい体が軽くなっていた。

一日寝たままだったから寧ろけだるさも感じるかと思っていたのに。

何か変な夢を見ていた気がするがあまり思い出せない。

そして何気なく朝のストレッチで体を動かして腕が胸に触れた時だった。

 

「うぇあっ♡!?」

 

ピリッと微弱な電流に似た快感が流れた。

恐る恐るシャツをめくると指で摘まんでと自己主張する2つの乳首。固く張りつめたそれは男の自分の身体についているとは思えないほどビキビキで。

震える指でツンとつつけばまた気持ちいい快楽電流が頭を蕩けさせる勢いで流れてしまう。

 

(な、何が起こってるんだ俺の身体!?)

 

戸惑う藤丸をよそに、刻まれたハートの首輪型の淫紋が薄く輝く。

ぞぞぞっと蠢きながら侵蝕を広げて紋様が肩のあたりにまで伸び、やがて元の首輪部分以外は肌に溶け込むようにして消えた。

 

◇

 

幕間 従者への勧誘

そして藤丸がソラエルとアズエルの淫夢に囚われていた時間。

マシュもまた闇の中に囚われていた。

そこはどこまでも続く暗闇の回廊。

ギャラハッドの霊基を宿していた時の鎧姿であてもなくただ歩き続ける。

 

(ここはどこなのでしょうか。確かストーム・ボーダーの医務室で休んでいたはずなのに)

『よう』

 

肩にそっと誰かの手が触れる。正確には触れたような気がした。

その気配で振り向いたところにいたのは。

 

「貴方は!」

 

金髪碧眼の整っていると言って問題ない顔立ち。しかし明らかな邪悪さも孕んだ嫌な印象を受ける。

威厳を隠すことなくローブとマントを着込んだ、映像越しに覚えのある顔。

 

『もう顔合わせはしただろ。ロギア帝国皇帝ナイオーロだ』

 

この異聞帯で敵となる存在、ナイオーロがそこにいた。手を伸ばせば触れられそうな間合いに。

急いで後ろに飛びずさって盾を召喚……しようとするが反応がない。

 

「え!? どうして!」

『道具なら出そうとしても無駄だぜ。ここはお前の頭の中だからな』

 

戸惑う反応を面白がった様子でククと笑ってくる。

事実だとすればかなり危険。右も左も分からないマシュに対してナイオーロは何が起きているかを熟知している様子。

このまま抑え込まれたりしたら、それどころか対馬島上空で藤丸がソラエルにされたようなことまでされたら。

不意に例のキスの時間、一瞬だけソラエルが動けなかった自分を見て嗤ったのを思い出す。

藤丸は自分のもの、そう主張するかのような嘲笑。

見下された感覚を思い出すと形容しがたい昏い熱が胸の中にぽっと灯りそうになった。

 

(先輩にキスを、あんなにべったりくっついて……どうしてか嫌な気持ちが……)

『そう驚くなよ。何もしやしないさ。今のところはな』

「っ」

 

いつの間にか近寄ってきていたナイオーロの言葉で正気に返る。ソラエルに昏い感情を向けようとしていたことに気づき、自分で自分が信じられない。

だがひと先ずそれよりも目の前の敵だ。

身構えたマシュの鎧に彼の手が伸びてきて、跳ねのけようとした手が空ぶった。

 

「!?」

『クク、だから言ったろ。何もしないと』

「貴方は幻なのですか」

『そんなもんだな。今のところは』

「これから変わる可能性があると言っているように聞こえます」

『その通りだ。お前がこの異聞帯で戦えば戦うほど、オレははっきりお前に触れられるようになる。

ソラエルが仕込んだ贈り物だ』

「……何が目的なのですか。私には貴方が理解できません」

『お前が欲しい。それだけだ』

 

楽しそうに語るその心が分からない。

そんなつまらない嘘を言われても自分の心は動じない。時間稼ぎをする必要もないはずなのに。

 

『なんだ信じられないか?』

「貴方にとって私は初対面のはずです。そのような感情を向けていただく理由が分かりません。貴方のそれはベリル・ガットと同じように愛と呼ぶものなのですか?」

 

触れられないならと警戒は解かずに疑問を解消するべく問いかけた。

返しに戻ってきたのは破裂したような大笑い。おかしくてたまらないとばかりに腹を抱えて笑ってみせる。

 

『フハハハハハ!!! あんな文字通りの負け犬と一緒にするなよ。何もできず、何も得られず、何も残せず死んだ犬っコロとはな』

 

そっと歩み寄ってきた彼の手が顎へ伸びてくる。

触れられないと分かっているのに妙な圧に耐えきれず、足が一歩引いてしまう。

そしてやはり触れられず、すり抜けているのにそこにあるような彼の手が顎にそう。

 

『オレは欲しいと思ったものは必ず手に入れる。お前は騎士としてオレに仕えろよ。それが幸せだぜ』

「嫌……嫌です! 私は━━」

『今はそれでいい。だがソラもお前の主を篭絡したがっているようだしな。どうせ最後には2人まとめてオレの配下になる。なら早く受け入れて楽しんだ方が利口だぜ』

 

意味深な笑みを浮かべながらナイオーロの体が闇の中に溶けていく。

あるはずのない掌の感触を振り払いながら、マシュは自分で自分の手を握る。

 

(……大丈夫です。私は先輩と一緒なら、先輩が手を握ってくれたあの日の思い出があれば)

 

毅然とした言葉とは真逆に自分で包み込んだ掌の震えは当分止まりそうもなかった。

 

◇

 

そしてしばらくして医務室で目を覚ますマシュ。

しかしそばに大切な先輩の姿はなく。

自ら心細さに震えながら掌を包むしかできない。

 

「先輩、手を……握ってほしいです。私に勇気を……これから何度も皇帝が現れてしまったら……取り返しのつかないことになってしまいそうな気が」

 

誰も聞く者のいない医務室で一人、心細く呟き続けるしかできなかった。

 

◇

 

幕間 開戦直前

藤丸達が関門海峡へ移動している最中の頃。

 

━━帝都ホウジョウ━━

━━都内帝城ペンドラゴン━━

玉座の間でまさしく玉座に腰かけて頬杖をつきながら、ナイオーロは喧々諤々と怒鳴り続ける無数の大臣や将軍たちを見つめる。

気分は正直よろしくない。悪いと言ってさえいい。

理由は今まさに左右に整列して会議という名の野次飛ばしをしている輩が嫌でも目に入るから。

肩書きも忘れた大臣や武将が募っているが、実際に成果を上げたのは何人いるのか。煌びやかな衣装や鎧を身に纏っていても中身が吊りあわなくては気分を悪くする材料だ。

 

「予言された侵入者も所詮はこの程度か」

「これでますます皇帝陛下のお力が増すぞ」

「しかし由緒正しき四天王の座を全て己の愛人、それも元敵で埋めるなど。それに皇妃様も……」

「ちっ」

「ナイオーロ様?」

 

玉座の隣で妃の席に堂々と座るルクスリアだけが苛立ちに気づいてこちらを見てきた。何でもないと首を振って安心させ、またイラつく連中の話に目を戻した。

こんな連中でも帝都と帝国を回すには必要な存在と我慢。替えの利く人材さえいればすぐに物理的に首を斬ってやれるのに。

 

(ソラエルが3人を連れてくればそれだけで3人間引けるんだがな)

 

皇帝となった経緯のせいでまだ重用しないといけないが、本来は無能を生かしておくほど生易しくはない。早く帰ってこないかと愛奴隷の帰還を切望していると玉座の間の扉を押し開けて衛兵が飛び込んできた。

 

「急報! 急報でございます!」

「何用だバカ者!」

「神聖な玉座の間を騒がすでないわ!」

「黙ってろお前ら。━━ご苦労、オレが見るから寄越せ」

「はっ!」

 

急報を持ってきた兵に無駄に怒鳴るバカ共を威圧して受け取った魔術書簡は、ちょうどいま思っていたソラエルからだった。

まず命令が失敗したと書いてあって苛立ちで眉毛が吊り上がる。しかしその後に書かれた彼女からの書面を追うにつれ、厳しかった目つきが楽しげで邪悪なものに変わる。

全て目を通しきった後でルクスリアへ書簡を渡し、こみ上げた笑いのまま事実を周囲に告げてやる。

 

「ソラエルからだ。生け捕りは全員失敗しただとさ」

「やはり新参に任せるなど間違いだったのです!」

「左様。ここは帝国人の将に任せてですな……」

「では聞くが。お前達の中にカルデア侵入を聞いてすぐ動いた奴はいたか?」

 

いい加減耳障りな連中に一言告げる。

簡単な事実一つを突き付けられただけで誰も動けなくなって言葉も返せなくなった。

どこまでも情けなくて楽しめない連中だ。

 

「気概に溢れる帝国人の割には国の有事に誰も何もしてないようだが」

「いえ本日は陛下の即位1周年を祝う日でございますし……」

「我らとてすぐ動きたかったのですが祭りの対応に追われていましてな」

「それにソラエル殿には陛下の加護と独断行動の特権をお持ちではありませぬか」

「左様。元はただの平民の出、陛下のお力なくして功績を上げられぬ輩では……」

「━━聞き捨てならないな」

 

そこに今度は開け放たれていた扉から新たな人影。

桃色のポニーテールを垂らし、ソラエルやアズエルと同じ煽情的な衣装に身を包んだ少女。子どもっぽさや淫魔らしさが先行した2人とは少し違う。

肩口に止めた黒と赤のマントを棚引かせて入場してくる姿は凛々しくすらある。左腰に槍にも変形する両刃の剣を吊った姿は姫騎士そのもの。

遅れてその入場に気づいた衛兵が高らかに名乗りを上げる。

 

「近衛騎士団団長及び帝都警察機構長官、四天王リリスティア・リズエル様入場です!」

「こ、これはリズエル殿」

「祝祭の警備にあたっておられたのでは」

「部下に任せてきた。惰眠をむさぼる貴様らよりよほど安心できる。

━━そんなことよりソラエル(私の妹)を愚弄したのは誰だ。あの娘への侮辱は私への侮辱。相応の制裁を受ける覚悟はあるだろうな」

「ひぃいいい!」

「お、お許しを!」

「その辺りにしておけリズエル」

「はっ。ご主人様がそうおっしゃるのであれば……チッ、グズ共が」

 

内心同じことを考えているであろうルクスリアと違い、集った大臣たちへの嫌悪を隠そうともしない。

その光景にそこそこ溜飲が下がるが表面上は顔を変えずに問いかける。

 

「ちょうどいいタイミングだぜリズ」

「もったいないお言葉です。陛下の剣たるこの身はいつでも傍に控えてこそですから」

 

片膝をついて命令を待つリズエルを見つつ、隣で読み終えた書面を燃やすルクスリアに振る。

 

「読んだか?」

「はい。でもあの子が失敗するなんて。例の異分子を勧誘しに行った時以来ですね」

「役目を果たすまでは帰城しないそうだ。クク、相変わらず妙な所で生真面目な奴め」

「うふふ、あの子の真面目な一面も好いておられるくせに」

「英霊4騎の増援とはな。アイツでも手を焼くか」

「警戒すべきはカルデアの強運ですね。神に愛されたとしか思えない天の救い……忌々しい」

「だがそいつらも俺の好みだから連れて帰ると言ってきている。転んでもただでは起きないってのはアイツの良い所だ」

 

会話を終えた所でルクスリアが杖を手に立ち上がる。

 

「では私も出かけてきます。久しぶりに全力が出せる相手のようですから」

「クク、手加減はしなくていいぞ。死ぬならそれまでだ」

「うふふ。留守はユリエルに任せておきますね。リズエル、行きましょうか」

「はい! お供いたしますお姉様! ━━ではお手を」

 

壇上から降りてきたルクスリアの手を取り、リズエルが扉へと歩いていく。

お互いの格好が淫魔そのものという点を除けば騎士と姫そのものだ。

玉座のナイオーロを差し置いて集まった重臣たちの視線を集めた2人が出ていくのを眺めていると、最初のイライラはとっくに消えていた。

 

「眷属が優秀すぎるとオレの出番がなくなっちまうな。クク、贅沢すぎるか?」

 

誰だろうとあの女達を手にできるのは自分だけ。

そしてこれからさらに何人ものメス奴隷と優秀な部下たちも手に入る計算。

何度失敗しても、ナイオーロはかつての敵から自身の奴隷に堕ちたソラエルの策略を少しも疑っていなかった。

 

◇

 

━━旧山口県下関市 関門海峡━━

 

ルクスリアの出発から数日後。

旧山口県側の海岸線沿いには集められた帝国兵や怪人達が勢ぞろいしていた。

総数にして数万を下らない数の戦力。

今にも海の向こうにいる九州の人間達を襲いたくて暴れそうな怪人や、命令のままに連れてこられて戦いに臨む兵士たち。

興奮や緊張に包まれた彼らの頭上に翼をはためかせた人影がふわりと出現。

胸や秘所を大胆に見せつける衣装と桃色の髪に太い角。

片方が両手を腰に当てて見下しているのと対照的に、少年っぽい幼さを残した少女━━ソラエルは足を前張りが剥がれない限界まで大きく開くとワレメをくっきり見せつける。

そのまま片手でピースサインとポーズを決めてアピールを忘れない。

 

「はーい皆! 帝国軍のアイドル、四天王の一人リリスティア・ソラエルちゃんだよー!」

 

その姿と声を確認した途端に怪人達の高まっていた興奮がさらに一段階上がる。

 

「うぉおおおおお!!!」

「ソラエル様ー!!」

「あはは、歓声ありがとー! 

━━今日は皆で海の向こうに残ってる人間達を狩りに行くよ!! 頑張ろうねー!」

 

浮かされていた熱がその無茶な命令に静まり返る。

まだ冷めきってはいないが本当に可能なんだろうか、これまで突破できていないのに、とそんな理性でストッパーがかかっているらしい。

そんな群衆の心理を見抜いているのか、ニヤッと笑ったソラエルが指を鳴らす。

それを合図に海岸線にそろっていた彼らの後ろからズン、ズンッと地響きのような音が聞こえだす。

 

「今日は勝つためにたくさん助っ人用意したからね!! ボク達は絶対負けないよ! 

そ・れ・に、今日一番頑張ってくれた人にはボクが一晩付き合ってあげる♡もちろんショッピングや食事なんかじゃない。ベッドで一晩、素敵な体験をさせてあげちゃう♡

━━ボクがこれだけサービスするのにやる気になってくれない子はいるかな~?」

 

とどめとばかりにぴらっと胸当てをずらして何度体を重ねても桜色のままの胸を一瞬見せる。頑張ればこの胸も使いたい放題だよと。

一瞬の静寂。

しかし今度は聞こえ始めている地響きを跳ね返すような極大の声援が大地から吹き上がった。

 

「やるぞぉおおお!!」

「腐れ人間共を殺しまくってやるぜぇえええ!」

「ソラエル様を抱いてやるんだ!!!」

「……時々アンタが元男だって忘れそうになるわ」

「ん?」

 

あっさり士気を爆上げさせて満面の笑みを浮かべていたソラエルにアズエルが飽きれたように話しかける。

 

「ちょっと色目使っただけであんなにやる気出すとか。男ってホントに単純」

「そこが可愛いんだよ♡

それに諜報と謀略はボクの仕事。これくらいはパフォーマンスでやれなきゃ」

「アンタを眷属にしたご主人様の慧眼には驚くしかないわ。私は一緒にいるのが楽しいだけだけど」

「えへへ~。アズ姉ちゃんと一緒にいるとボクも幸せだよ。ぎゅ~♡」

「ちょっ、こんな兵たちが見てるところで抱き着くな!! 胸に顔埋めんな!! 

……ったく。それで私はサーヴァントを狙えばいいのね?」

「うん。コヤンちゃんからもらっておいた情報で妖精騎士の情報は全部掴んでるから。アズ姉ちゃんは用意した怪人と一緒にあの娘と戦って」

「捕まえなくていいの?」

「うん。とりあえずは手をつけて逃がしてくれればいいよ。後はボクの仕事。

姉ちゃんのお楽しみ中にこっちはとっとと福岡に上陸しちゃうからさ。

そのために━━」

「グォアアアア!!!」

 

その時、怪人達の声援を引き裂くようにしてひときわ大きな吠え声が内陸から上がり始める。

 

「━━あの子たちも用意したんだから♪」

 

ドシンドシンと大地を揺らす足音。

人に近い形をしているのにあまりに人から逸脱した長い手や高い身長。

肌は赤だったり白だったり茶だったり。

それは踏みしめる土が見えなくなるような密度で現れた巨人種達。数にして数千にも上るような大量の戦力。

手にした棍棒や槍を振り上げてソラエルを称えるようにして再びの咆哮を大地にとどろかせる。

 

「ヨトゥン種、ベルグリシ種、ムスペル種……ソンブレロ・レプリカから作り出した巨人の大軍勢。たかが数十隻の鉄の船と人理の守護者たちだけで止められるかな? 

もちろんこれだけじゃないし♪ 懐かしい敵に会えて藤丸クンも大喜びしちゃったり!! あははは!!!」

「相変わらずえげつないことするわ。

それじゃ私も動こうかしら。待ってなさい━━妖精騎士トリスタン」

 

かくして日本の滅びをかけた戦いの幕が切って落とされる。

 




エロがないと書きにくいね。
つまり次回はもっと書きにくいということ。
藤丸が順調にメス化するのに合わせてマシュの心にもナイオーロが入り込み始めました。
種は内緒ですが早く突破しないとマシュがヤバいことになります。
ゲーム的にはシナリオ後半になるほどナイオーロとの戦闘時にマシュにステータス弱体化デバフがかかる感じ。間に合うといいね。

次回は関門海峡攻防戦となります。
戦闘メインですがアズエルに目をつけられたバーヴァン・シーがエロ攻めされて・・・まだ堕ちませんしプレイ内容は次回まで内緒です。


ではまた次回。
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