※この作品はR-18です。

エクスティア×FGO 異界魔導帝国ロギア・アース~堕ちた人理の希望~   作:王天君

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敗れ傷つき、それでも託された鹿児島へ到着。少しでも多くの人を救いたいと願うことさえも彼らには許されないのか。桜島を背景に巻き起こる一つの戦い。勝者が決まる時、カルデアから脱落者が出てしまう。
しかしサブタイトル頭悪いな。


第5節 鹿児島撤退戦/猫猫おっぱいづくり調教

報われぬ想い

誰も知らない夜の秘め事が終わった翌朝。

修復を終えたストーム・ボーダーは阿蘇山山中より浮上し、明け方から鹿児島へ向かった。

クサカベから託された残った日本人の救助。そしてまだ政権としての機能を残しているらしい政治家たちから情報収集のためだ。

問題がなければわずかでも救出を行い、すぐ離脱する予定だった。

しかし……

 

「━━だ、ダメだダ・ヴィンチちゃん!!」

「静かにしろ!」

「あぐっ!」

 

ある建物の中でやや少女っぽく髪や胸が変化した藤丸はスーツを着た男に銃を突き付けられ、会話しようとしても殴りつけられる。彼を守るべきサーヴァント達も彼が人質に取られたせいで動けずにいた。

そして押さえられた彼を嗤う声が一つ。

 

「力を持っているくせにお優しいことだ。サーヴァントに殺させればいいじゃないか、そんな愚図一匹」

 

彼らに何が起きたのか。

事の起こりは約2時間前。

カルデアが鹿児島へ到着した時にまで遡る。

 

◇

 

身内に敵がいるとは知らず、息のつまるような雰囲気を感じながらも進むしかないカルデア。

鹿児島中央、桜島付近にたどり着いた時にはクルーの一部に体調不良の傾向が顕在化していた。

1人は藤丸。トゲトゲして男っぽい髪型は髪がやや伸びて、ややしんなりし落ち着き始めたセミショートヘア。胸部にはCカップはありそうな2つの盛り上がりが強く自己主張。顔立ちも少し険が取れて中学生っぽい感じになってしまっている。

また1人はマシュ。ずっと口を指でなぞる姿が妙に色気があり、股間部の食い込みもしきりに気にしている。まるでそこに入っていた何かの感覚がまだ拭えないみたいに。

最後の1人はバーヴァン・シー。ブリッジの壁にもたれかかって誤魔化す、立ち上がったばかりの小鹿みたいな震え方はあまりに見え見え。艦が揺れる度にビクビクっと足元から震えては口元を覆う。

共通して全員が上気した赤い頬と乱れた息を無理やりに整えて立っていた。

ゴルドルフやダ・ヴィンチもそれぞれの異常には気づいていたが、それぞれの意思を尊重。

時々負担がかかっていると見られたネモだけが離席しつつも、他の面々はブリッジに揃って鹿児島本港へ着陸して寄港。

福岡と同じく、寄港後すぐに防衛軍の兵に囲まれた。クサカベの名前を告げ、国連組織として人命救助に来たと申告。すぐには信用されず、ここでも防衛軍の司令部へ連れていかれることになった。

しかしここで少々問題発生。会談場所へはストーム・ボーダーが入れないために港へ置き去り、車で移動ということになったのだ。

移動はシャドウ・ボーダーで行うとして、当然ストーム・ボーダーを港で守る戦力も必要。ミニソラはいつでもビンから抜け出せると分かった時点で見張りが解除された。藤丸の側にしか現れないならこちらを守ればいいという判断。

 

「いつ敵が来るか分からないし内陸限定とも限らない。艦をキャプテンだけに任せるのは危険だと思うね」

「技術顧問の話ももっともだがね。直接会談に赴く我々も守ってもらわんと。どこで襲撃されるか分からんぞ」

「だったら人数の配分は……これでいいんじゃないかな」

 

ダ・ヴィンチ、ゴルドルフ、藤丸の打ち合わせの下で会談組と防衛組に戦力が決まった。

会談に向かうのはダ・ヴィンチ、ゴルドルフ、藤丸、マシュ、バーゲスト、メリュジーヌ。

ストーム・ボーダーを守るのはモルガン、バーヴァン・シー、ネモ。

戦略的判断が出来るモルガンと明らかに不調なバーヴァン・シーを残すのが最良との判断だった。

 

「よろしくバーゲスト、メリュジーヌ」

「こちらこそマスター」

「心配はいらないよ。僕の後ろにいれば傷つけられる存在なんていないんだから」

 

そしてシャドウ・ボーダーは会談の場所、鹿児島市役所へ向かう。

 

◇

 

鹿児島市役所は裁判所や大学の学び舎みたいな外見をした建物だった。ダ・ヴィンチちゃんから聞いたビルっぽい福岡市役所とも違う形。

シャドウ・ボーダーから降りて建物を眺めた藤丸にはほんの数年前まで通っていた高校が思い出されて足が止まりそうになる。だが体は意に反して足を進め、前を歩く兵隊たちの後を追う。

 

「先輩、やはりお身体が優れませんか? 

その、主に胸部の肉体的変化なども」

 

遠慮がちだが的確に問題になっていることを言ってくれるマシュ。

視線の先は胸についた余計な重り。極地用カルデア制服のバンドが締め付けるデザインのせいで、左右からの圧迫を受けた胸が本来以上の膨らみを見せつける格好。

朝シャワーを浴びてネモと話した時は普通だったのに、その後に首の紋が光ったかと思えばこんなことになっていた。髪も少し伸びた上に顔もちょっと幼くなった気がする。

例のソラエルが施した呪いのせいだろうが、いよいよ本格的に効力を表し始めたのかもしれない。

ただ現状で行動する上で大きな支障はない。わざとらしく背を伸ばして笑って答えた。

 

「ううん、ちょっと考え事。俺よりマシュは大丈夫? 

朝からずっと顔が赤いし」

「え……あ、いえ。大丈夫! 大丈夫です!!」

 

嘘だ。

マシュの表情は明らかにいつもより固い。戸惑いや混乱の混じった複雑な表情。

沢山の旅を共にしてきた間柄。今更相手の表情で好調不調くらい見抜くのは簡単だ。

そしてそれはマシュも分かっているはずなのに。

 

「……ごめんなさい先輩。先輩にだけは知られたく━━」

「いやあよく来てくださった!!」

 

何かを小さな声で呟く彼女の声がしわがれた大声で遮られた。

藤丸達に向けて両手を広げて笑みを浮かべながら歩いてくるのは兵士を従えた白髪の男。クサカベと比べてもずっと年上。藤丸から見ても祖父を越えていそうな歳の顔をしていた。

とはいえいかにもな枯れ木の老人というわけでもなく、やはり鍛えている感じは体の随所から漂っている。

 

「君らが国連組織カルデアの職員たちだね。クサカベ一佐から話は聞いておるよ。私が防衛軍司令官を務めているカタセだ。我らの救援を救ってくれるとの話、本当に感謝しているよ。

まさかこのように可憐な女性とは知らなかったがね」

「あ、はあどうも。藤丸立香です」

 

少し笑いながらも迷わず藤丸へ手を差し出すカタセという男。

今の藤丸は胸もあるせいで女に間違う人……というか修正した方がややこしいことになりそうなので女と思わせたままにしておく。

手を握り返し挨拶すると、責任者は所長とかそう言うことの前に言わないといけないことが頭に浮かぶ。

 

「あの……」

「うん? なにかね」

「すいませんでした。俺達を信じてくれた人に何もできなくて。一緒に戦ってくれた人たちも誰も助けられず」

「いやいやいいのだよ。クサカベ一佐も理想に殉じた最期、彼なりに満足だったろう。ずっと見送るだけの逃避行を憂いてもいたからね。

さ、立ち話もなんだ。ひとまず仲間の方も共に中へ来るといい」

 

にこやかだがこちらの意見を聞かずに一方的に告げるとそのまま戻っていってしまうカタセという男。

笑っているが心が冷えている感じがする。なんというか一癖も二癖もありそう。

 

「……藤丸、少しこちらへ来たまえ」

 

歩きながらゴルドルフとダ・ヴィンチにヒソヒソと耳打ちされる。

 

「気をつけろ。あの老人の笑みは時計塔のバケモノ共と同じ類だ。我々に内心何を思っているか分かったものではない」

「同感。あんなに歓迎されるような存在じゃないもん私達。関門海峡のことでとんでもない難題をふっかけられるかも。責任はなくても私達だけ生き残ってるわけだからね」

「……了解」

 

守れなかった命。多多益善号に詰められた日本人。

救えなかった命。緊急離脱で見殺しにした街。

軍を預かる人間なら思う所があって当然だ。そしてその責めはマスターだった藤丸が受けて然るべきだと思う。結局何一つ勝てなかったんだから。

心配しなくても私達がいるさと肩を叩いてくれるダ・ヴィンチに少し感謝しながら館内へ。

 

◇

 

見た目に反して中身は馴染みある市役所って感じだった。

机に積まれた紙媒体の資料。

偉い人の判子待ちの決裁書。

白塗りの事務用電話。

カウンターの手前から親が色々職員の人と話していた光景がフラッシュバックする懐かしい景色だった。

ただ気のせいかがらんとしすぎている気がする。

先に行くカタセや藤丸達の脇を固めている兵士以外、全く人の姿を見ていない。シャドウ・ボーダーでこの市役所へやってくるまでだって一人もすれ違わなかった。

 

(鹿児島にはまだたくさんの人がいるって話じゃ? 

政治家の人たちも全然見ないし)

 

既にロギアが九州に侵攻したから家に閉じこもっている? 

こういう時は避難所に集まったりする方が一般的な気がするが。

思い出してみると港でストーム・ボーダーを囲んだ兵士たちの数も少なかった。それに防衛軍の司令官と言ったが政治家のトップが一緒にいないのも不自然。

だがその違和感や懸念を誰かに伝えようとした所で、歩きとエレベーターを経た後に最上階の部屋へ到着。

 

「さあこちらです。皆さんどうぞ入ってください」

 

開いた扉の先では奥に桜島が見える窓と大型の執務用机。真ん中に応接室みたいな机といすが複数。両サイドを何かのトロフィーとか盾が飾った、いかにも偉い人が普段仕事をしてそうな部屋。

執務用の豪華な椅子は何故か座る面が窓に向いて誰かが腰かけているみたい。

 

(あれ。でも指揮官はこの人だよな。

だったら誰があの椅子に━━)

「ようやく来たな」

 

カラカラ音を立てて背もたれが回る。窓を向いて座っていた人物の顔が明らかに。

ピンク色の髪。白い双角。肩口に見える黒い尻尾と金のバッチで留められた黒地のマント。

胴や手足はすっかり見慣れた露出の多い下着みたいな上と子宮の淫紋にミニスカートと前張り。

さもここは自分の部屋というように机へ両肘をついて指を組み、顎を乗せて笑うポニーテールが印象的な少女。

藤丸より早くサーヴァント達がその姿の正体に気づいた。

 

「先輩後ろへ!」

「貴様は!!」

「対馬で迎撃した少女の同種だね」

(また新しいリリスティアか!)

 

ソラエル、アズエルと似ているがもう少し落ち着いた雰囲気の少女。少し年上か? 

その見た目通りでマシュを始め、盾、剣、手甲と武器を構えだすのを見ても少しため息をつくだけ。先の彼女達とは別の意味で自身に満ち溢れているのが伝わってくる。

 

「騒がしい。貴様達も淑女ならお淑やかさを知ったらどうだ? 

乱れるのはご主人様のおちんぽ様の前だけでいい」

「その物言い、やっぱりソラエルの仲間っぽいね」

(この辺りはアイツら共通かよ)

 

敵対している方が恥ずかしくなるような発言は止めてほしい。

やや変な空気にはなったがダ・ヴィンチも杖を構えて応戦体勢。数はこちらの方が圧倒的有利。座ったまま少しも動かないのは誘っているのか。

 

「まずはよく来た。ナイオーロ様から挨拶は受けているが、改めて妹達を代表して私からも迎えよう。

ロギア帝国皇帝補佐及び皇帝直下リリスティア四姉妹(シスターズ)最高階位(グランドマスター)、淫隷剣姫リリスティア・リズエル」

「……それでアンタは何でここにいるんだ」

「ほう。私に物怖じしないくせに力の気配がない。それに可愛げもある。お前がカルデアのマスターか」

 

こっちが気にしていることを他人事みたいに言ってくれる。そもそもお前の妹がやったせいだろ。

 

「ほっといてくれ。そんなことより質問の答えは」

「理由なんて言うまでもないだろう。貴様達を捕らえ、ナイオーロ様の忠実なメス奴隷に変えてやるためさ。

━━だが私だけ注意しているのは甘かったな」

「え━━」

「うぉう!?」

「マスター!」

「動かんでもらおうか。君らが不思議な力を使えるのは知っているぞ。この若造が大事というのもな」

 

そばにいた所長が突き飛ばされ、首に腕がかけられて無理やり引き寄せられる。さらに混乱した頭へ硬い金属が押し付けられる感触。

これまでの特異点探索のせいで知ってしまった嫌な冷たさ。

確かめようと見てみれば黒光りする手に納まるサイズの拳銃が自分を捕まえた男━━カタセが握って頭に押し付けていた。

 

「カタセさん!? なにを━━う”っ!」

「君も静かにしたまえよ。まだ若い身空で死にたくなかろう」

 

銃床で黙れとばかりに殴りつけられる。口の中にするのは鉄みたいな嫌な味。慣れていてもやっぱり味わいたいものじゃない。

口に流れて溜まる血を目に吹きかけるかと考えると先にダ・ヴィンチが先に叫んだ。

 

「藤丸君止まって! ……分かったよ抵抗しない。マシュ、バーゲストとメリュジーヌも武器を下ろして」

「━━だ、ダメだダ・ヴィンチちゃん!!」

「静かにしろ!」

「あぐっ!」

「先輩!」

(何度も殴りやがってこのジジイ!!)

 

心の中でカタセへの評価が指揮官から横暴なジジイへ暴落。

見かねたバーゲストたちもそれぞれの武器を床へ。自分のせいで味方を不利にさせている申し訳なさでいっぱいになりそうだ。

だが一方で冷静な頭はこの状況を打開する術と事態への理解をしようと頭を回す。しかしこの場で日本の指揮官が自分に銃を向ける合理的な理由が思い浮かばない。

どう見たって有利なのはこの場ではカルデア側。リズエルが恐ろしく強いと知れ渡っているのか? 

 

「力を持っているくせにお優しいことだ。殺せばいいじゃないか、そんな愚図一匹」

 

リズエルのククッと喉を鳴らした笑いと問いかけを無視し、ダ・ヴィンチが両手をあげながら問いかける。

 

「……君は何が目的なのカタセ? 

ここで私達を脅すのは君がメリットが見えないんだけど。帝国に亡命でもする気?」

「ふん。まさか。私はもっと合理的だとも」

 

こちらの混乱を見て楽しんでいた様子のリズエルが後に続く。

 

「貴様達は遅すぎたのさ、カルデア」

「遅かったって、関門海峡が落ちたのは昨日じゃないか。鹿児島には軍勢もまだ……港にも兵士が……」

 

自分で口にしながら嫌な可能性に思い至る。

リズエルが防衛軍の指揮官が席に座っていること。

それを当然のように受け入れているカタセ。

少し早く彼女が鹿児島に着いていて彼を操る、もしくはすり替わる以外にこの状況が起こる理由。

 

(まさか……)

 

そんなはずはない。だって責任者がそんな選択肢を取るはずがない。

だが想像を確定させてやろうというふうにリズエルは容赦なく言葉をつづけた。

 

「私は昨日(……)、お姉様が関門海峡を訪れた時に鹿児島を襲ったんだ。そしてそこの防衛軍司令官殿はこともあろうに戦っている最中の味方を見捨てて私に国を売ったんだよ」

「な……んだって!」

「貴方は何を考えているんですか!!」

「……」

「最初は驚いたぞ。

この部屋を襲ったらいきなり他の人間を皆殺しにしてな。続けて私に命乞いしてきた。自分だけは助けてくれと。

……ふふっ、なら他の仲間も殺せといったらあっさり部下以外を殺し始めて。全く実に愉快で滑稽な景色だった。お前達も一日早く来れば見られたのにな」

 

綺麗に整えられた執務用の机に腰かけ、藤丸の窮地を嗤うリズエル。

だが藤丸は信じられなかった。カタセの人間性は知らなくても、なんでそんなことをしたのか。防衛軍なら人を守るために戦うことを選んだんじゃないのか。

 

「後は想像つくだろう。残っていた民間人は残らず捕らえて対馬島のファクトリーや島根のスクールに送ってやった。ああ見た目が良いのは帝都の奴隷用に送ったんだったか」

「……対馬島や島根って空想樹擬きがある所だよね。そこに君達の施設があるの?」

「なんだ、まだ知らなかったのか? 

レプリカ達にわざわざ寄せてここまで……とこれ以上は仲間となってからだ。

それにしても遥々助けにきておいて裏切られるとは、敵でもわずかに同情するぞ」

「君らも降伏したまえよ。折角の命、無駄にすることはないだろう」

 

リズエルはあくまで降伏勧告。だがそこに便乗するこの男のことは許せない。

死の間際でも国民を託して死んでいったクサカベの事を知っていれば尚更。

 

「なんでアンタは国を売ったんだ。関門海峡も負けたけど、それでもみんな必死に━━」

「頑張るだけで褒められるのは学生の内だけだ。甘えが抜けていないのではないかね」

「カタセ、君は自分が生き残る為に仲間を売って少しも後悔していないのかい? 

防衛軍なんて名前の集団にいながら」

「ハッ。防衛軍など名ばかりだ。国民に耳触りのいい名前をつけ、仕事をしているフリをしたがる政治家の得意技だよ。

そうとも。いつも涼しい部屋で偉そうに指示だけしている政治家の道具にさせられて……役目だからと勝ち目もない戦場で戦わされ、挙句自分たちの逃げる時間を壁になって稼げなどと!」

「……だから殺したのか」

「悪いかね? 

死を前にしてよく分かったよ。私は国民なんてどうでもいい、自分が生き残る為になんでもすることを誰が責められる? 

だから残りの国民も捕らえてリズエル様に引き渡した。君らもその延長さ。さあこれで話は━━」

 

続けられそうになった言葉が肉を打ち付ける鈍い音と強い風に遮られる。

 

「ぬぅん!!!」

「な、ぎゃあっ!!?」

 

虫が潰れたみたいな悲鳴を上げてカタセが吹っ飛ばされる。

そして彼がいた所には両手を握りしめたゴルドルフの姿があった。

 

「見下げ果てた愚か者め! 我が鉄の拳(ゴッフパンチ)で沈んどるがいいわ!!」

「ゴルドルフ君!」

「先輩!」

「大丈夫かマスター!」

「無事?」

「あぁ、うん……なんとか。殴られただけだしね」

(前だったらこんなに痛くなかったはずなのに。女の子に近づいてるせいなのか)

 

カランと金属質な音。

音の方向を見ると椅子から立ち上がったリズエル。さらにマントの陰から剣のような長さの刃を持つ槍を引き抜いた。

 

「ふむ見事だゴルドルフ所長。戦闘力は皆無と聞いていたが立ち上がる勇気、その価値は認めよう。ここまで生き残ってきただけのことはある。一人ではない強さ……ソラエルの見立て通りだよ」

 

こちらへパチパチと拍手しながら称賛。捕獲の失敗も気にした様子はない。油断と見下しからカタセがやられた後なのに少しも余裕を変えない態度はやはり強者の風格がある。

 

「それに比べて……」

「う、ぅ……ぎゃあっ!!!」

 

瞬時に壁際に倒れたカタセの側にゆっくり歩いて移動。ゴルドルフに殴り飛ばされた彼を労わることもなく顔を蹴って、仰向けになった胸を踏みつけた。

 

「使えん奴だ。もう用済みなことだし、さっさと」

「ま、待て! 私はまだ使える! 兵達も命令を私の命令しか聞かないぞ!」

「お前と一緒に裏切る兵士など必要ない。すでにギルツシードを埋め込み済みだ。大人しく部下共々帝国の為の怪人となれ」

 

リズエルがマントから取り出したのは触手の生えた植物の種子みたいなもの。中心には眼球みたいなのがついて、牙みたいな口まで生えている。

見た途端に思わずブルって寒気がする何かをそれは持っていた。

 

(なんだよあれ。っ首、熱が!?)

 

首につけられた紋様が呼応したみたいに熱を放って、思わず押さえると熱くドクドクと心臓を思わせる鼓動を打っていた。

そんな俺を見て満足気な笑みをしたリズエルがカタセの頭にその物体を落とした。

 

「━━うわぁあああ!!!」

 

ギルツシードと呼ばれたそれは彼の額に落下。ぶつかると同時に黄色い触手を額に埋め込みだし、ドックドク脈打って邪悪な気配を広げだす。

気配は魔力に、魔力は闇に変わりカタセの体を覆い尽くしていく。

筋肉が膨れ上がり、顔が細長く変貌、全身を頭髪以上の量をした剛毛が埋め尽くす。

爪が尖って牙が生え、スーツは内部から引き裂かれて背丈も変わる。

瞬く間にカタセだった男は見上げるような2mを超えた狼男へと姿を変えた。

 

「グルォァアアアアア!!!!」

 

だがこれもただの人狼ではない。所々に見える人間っぽさを残した気配。

さらにソラエルが関門海峡で投入してきた兵器や巨人達を考えればこの生物の正体はおそらく。

 

「ヤガ……!」

 

ずっと昔に折れそうになった自分を文字通り命がけで励ましてくれた、勇気ある友の顔がカタセだった存在とわずかに重なった。

 

(負けるな。こんな強いだけの世界に負けるな)

(パッシィ……ああ分かってる。負けられない。こんな、たくさんの人が積み上げた歴史を道具扱いする奴らには絶対!!!)

「私の下僕だ。可愛いだろう? 

そういえばそこのバーゲスト(お前)昔犬を連れたそうじゃないか。フフッ、気が合いそうだな」

「お前のような女と気が合うと言われても不愉快なだけだ」

「ふむ。それは残念だ。まぁ堕とした後にもう一回聞くからいい。

━━さて狩ろうか」

「グルアッ!」

「防ぎます!!」

 

すぐ前に出たマシュが牙を弾いてくれるがヤガ擬きはちっとも怯まない。ダラダラ涎を流して理性のない瞳で何度も壁や天井も足場にして飛び掛かってくる。

 

「マシュ! 今サポートを……」

「お待ちなさい」

 

前に出ようとした藤丸の肩が誰かに捕まれる。

 

「バーゲスト?」

「メリュジーヌ、マスター達とシャドウ・ボーダーの護衛を頼む。ここは私が引き受ける」

「いいのかい? 

君が一番彼との再会を━━」

「……だからこそですわ。貴方なら後事を託せますでしょう?」

 

口元だけを少し緩めて笑うバーゲストの視線に何かを感じ取ったらしいメリュジーヌは藤丸達へ振り替える。

 

「乙女の頼みは裏切れないね。分かった、任されたよ。

ダ・ヴィンチ、所長をお願い。藤丸は僕がカバーする。マシュも遅れずついてきて」

「ちょ、ちょっと待って! バーゲスト、なんで!!」

 

いきなり殿を買って出るような彼女の物言い。表情は険しく、妖精國で見た時以上に鬼気迫る気配を纏う。

こんな自己犠牲を選ぶような人ではないはずだ。

 

「冷静さを失いすぎですわ。思いや昂りでは戦争に勝てない。ブリテンで見せた貴方の冴えを取り戻しなさい」

「落ち着いてるよ! ここにいる全員で戦えば━━」

「奴が一人の保証はありません。おそらくはすでにストーム・ボーダーにも敵の軍勢が向かっているはず」

 

遠くを見つめる彼女の眼と言葉にまさかと窓の外を見る。

すると待っていましたというみたいに置いてきたストーム・ボーダーの辺りから煙が上がってきていた。

さらには他の場所からも次々黒煙が立ち上りだしている。学校、ショッピングモール、病院、ありとあらゆるところが火の海になってしまう。

更には地鳴りまでまだ弱いが足元に伝わってきた。

ハッと桜島のことが思い至る。

 

「まさか火山!?」

「魔力の一部を地脈に接続して活性化を促してある。まだコソコソ隠れている反抗勢力の残りカスを一掃にするには丁度いい。

妖精騎士ガウェイン、貴様の見立ては正解だぞ。すでにそちらの艦へも下僕達を向かわせている。大部分の戦力をここに集めた状態で何分もつか見ものだ」

「さりとて我々が戻ろうとすれば背後を撃つ……そこまで考えて焦らせるための火か」

「ふふっ。そこのマスターが言う通りに私と戦ってもいいぞ。例え束になっても私には勝てない。それにここで時間を消費してくれればそれだけ脱出の術を失う可能性も高まる。

敵の自滅を見届けるのも愉快だからな」

「……そういうわけだ。ここで取るべき最善は何か、話す時間も惜しい。

奴に後は追わせない。早くストーム・ボーダーへ」

「グルァァアア!!」

「━━セァッ!!」

 

焦れたのか飛び掛かってきたカタセだった生物がバーゲストの手で一刀両断。左右に半分こにされた死体が壁にべっちゃり赤い染みを産んで、その染みから流れた魔力がバーゲストの口へ吸収される。

直後にその身体が膨らむような幻覚。魔力食いで殺したヤガから魔力を吸収したのか。

 

「この通り、化け物相手は化け物が受け持つ。

━━どうか先へ。お行きなさいマスター」

 

ブンと音を立てて振り回された剣に押さて彼女以外が全員部屋の外へ吹っ飛ばされる。真っ先に着地したらしいメリュジーヌが他全員をキャッチして怪我無く立たせてくれる。

落ち着く間もなくバーゲストから放たれた魔力が炎へ転じ、扉を丸ごと燃やして塞ぐ。もう助けに戻ることも彼女の離脱もどちらもすぐにできることではなくなった。

まだ声は聞こえるかも。

だがすぐ離れないと。

彼女が覚悟を決めて送り出してくれたなら、いつまでも迷いや引き留めの言葉をかけるべきじゃない。

 

「~~~~っ妖精騎士ガウェイン(………………)!! 『必ず勝利を』!!」

 

あえて最後だけは真名ではなく彼女の誇りの名で。決して化け物なんかじゃないって伝わってほしかった。同時に令呪一画を切って魔力を送る。

もう爆音に遮られて返答はないがそれでいい。

きっと四天王を倒してくれると信じて自分は進むのが役目だ。

 

「とにかく急ごう! 至急ストーム・ボーダーに戻って離脱するよ! この規模の噴火なんてされたら鹿児島ごと吹っ飛びかねない!!」

「道は僕が切り開くよ。マシュは皆の守りをお願い」

「はい!」

「……分かった!」

「ええいとにかく脱出せんと! この異聞帯に来てから全く落ち着けん!!」

 

メリュジーヌを先頭にして脱出が開始。

途中の兵隊が作り変えられたヤガも排除しながら這う這うの体でシャドウ・ボーダーに乗り込む。

エンジンがスタートし、出発できるようになってもバーゲストが追い付く気配はない。代わりにリズエルが追い付くこともない。

躊躇った表情をしながらドライブモードにシステムを切り替えたゴルドルフの操縦で、シャドウ・ボーダーは母艦へ向けて走り出した。

 

「ごめん、ありがとうバーゲスト」

 

建物の中から吹き上がった爆炎が応答のように思えた。

 

◇

 

妖精騎士VS淫隷剣姫

「ふ、貴様が残ってくれたな。手間が省けて助かる」

「……追わない態度にその言い方。マスター達が目的ではないのか」

「分かりやすく訂正してやろう。妖精騎士ガウェイン、お前を捕らえるのが私の目的だ」

 

焔が広がり始めた部屋の中、剣を構えたこちらとは対照的にリズエルは槍を肩にかけて机に座る余裕ぶり。

内装が焼けて黒煙を放ちだすがそれを吸って死ぬような弱者はここにいない。

 

「奴らにはまだやってもらうことがあるのさ。全員で戦ってくるなら削ってお前だけを足止め、逃げてもお前だけ止めればそれでいい。

……可愛い可愛いソラエル(妹)が私と対になると推していたんだよ。姉ちゃんと気が合いそうだってな。確かに実際に会ってみてよく分かった。死を厭わない忠誠心、貴様もご主人様へのいい奴隷騎士となるだろう」

「……ふん」

「ん? 何か面白かったか?」

「過大評価だ。私に騎士として誇れるものなど何もない」

 

上に立つ貴族として民を思ってモルガン(主君)を裏切った。

本能に負けて愛した人たちを貪り食らった。

妖精の隠した嘘を見抜けずに多くの人間が殺されていることに気づけなかった。

そして最後には厄災に変貌して守ろうとした人間だって食らう罪そのものになり果てた。

守ろうとした何もかもが結局は守れなかったのだ。

だがそれでも召喚されて騎士として振舞おうと思ったのは……

 

「本当に優れているのは藤丸達(彼ら)だ。

獣の厄災(私)を騎士として介錯してくれた慈悲。人外だらけのかつての敵(我々)を信頼してくれた温かさ。ただ力があれば強いのではない、彼らこそがその体現者。

彼らがいたから私はまた騎士として振舞おうと思えたのだ」

「だから奴らのために命を捨てる覚悟か。無駄だが嫌いじゃないな」

 

槍を下ろしたリズエルが机から立ち上がる。

こちらもそれに応じて切り殺した人狼からの魔力を放出。必ず殺すと改めて覚悟を。

 

「元より貴様に褒められた所で嬉しくもない。そして私は慎みなくはしたない発言をする貴公が嫌いだ。

━━行くぞ、異聞の騎士!! 我が剣の下、マスターの未来を切り開く!」

「来い妖精騎士!! この果ての大地、貴様の血で彩ろう!!」

 

槍の刺突とガラティーンの一閃がぶつかり、余波で執務室の壁がはじけ飛ぶ。

どちらともなく、それが開戦を告げるベルとなった。

 

◇

 

部屋の狭さは長物と大剣どちらにとっても不利。しかしそれはあくまで一般的な人間基準。

人外の自分達に常識は通用しない。平地で戦っているような軽さでお互いの武器を振るう。

 

「ゼ……ァアアア!!」

 

壁紙ごと壁が切り裂かれ、コンクリートが豆腐みたいにスパスパ太刀筋を刻まれる。応接用の机と椅子は一瞬で木片に還った。

狭い部屋の中で最小限の動きで大剣を振り回す。一度、二度と敵の槍を弾いて首を刺し貫く軌道。しかし相手も柄で簡単に弾いて獲らせてはくれない。

 

「シッ!!」

「はぁああ!!」

 

リズエルがクルッと踊るように回って剣をかわし、柄尻でこちらの頭を狙った突きを放ってくる。籠手で逸らしながら鎖でマントごと拘束して窓枠へ叩きつけた。

 

「グッ、カハッ!!」

 

敵の体は窓枠を叩き割り外へ。

酸素が薄くなっていた室内に空気が流れ込むと一気に爆発。追って飛び出した部屋は瞬く間に爆発で消し飛んだ。

舞台は市役所前に。思った通りシャドウ・ボーダーはない。ちゃんと出発出来たようで何より。

これで巻き込む心配もない。

 

「グゥアアア!」

「ギャオオオン!!」

 

どこからともなく集まってくる人狼集団。彼らが身に着ける服の残りに元々の人間だった名残を見せる。

軍服やカタセの着ていたスーツ、とりたてて特徴のない私服も。

それは無作為に犠牲者を怪人に作り変えたと示している。

 

「邪魔だ!!」

 

上に立つ者にあるまじき無差別な使い魔を使役するやり方。

しかも犬に似た狼。

自分への嫌がらせでリズエルを送ったのだとしたら大した嫌がらせだ。

嫌な気持ちを飲み下して剣を振るい、炎の巨大な魔犬を形成。次々その顎で嚙み砕かせ、燃やし尽くしていく。

 

「そんな雑魚共より私を見ろ!」

「ぐっ!」

「いい一撃だったぞ。やはり同等以上に戦える相手は胸が躍る!」

 

槍から持ち替えた武器でガラティーンに打ち付けてくる。

脚が大地にめり込むような衝撃に歯噛みしながら睨めば、奇しくもリズエルが次に持っていた武器は同じく大剣だった。

両刃で赤色の大剣。その表面は多くの血を吸った金属しか持たない鈍い光を宿す。

どれほど罪のない存在を切り刻んだのか。そう思っただけで吐き気がする。

外に出たおかげで発動する〖聖者の数字〗の効果で力を引き上げて鍔迫り合いを解除。周囲も燃やす大炎を巻き起こし、ガードが崩れてがら空きになったリズエルの腹部目掛けて鎖を伸ばす。

 

「ハッ!!」

 

しかし今度は通じなかった。

翻ったマントで視界を封じられ、そのわずかな時間で鎖が避けられて逆に掴まれてしまう。そのまま引っ張られると信じがたいことにバーゲストの体が浮く。

 

「なっ!?」

「舐めるなよっ!!」

 

僅かに驚きで動きの鈍ったところを狙われた。回し蹴りの勢いで回転したリズエルのつま先が鎧にぶつかると、これもまた恐ろしいことに重厚な妖精の鎧が容易く壊されてバーゲストの肉体にまで突き刺さった。

 

「げ、がぅ……!」

 

豊満な胸ごと肺から空気の搾りだされる感覚。

120㎏を越える体がサッカーボールみたいに軽々吹き飛ばされて建物の外壁に激突。瓦礫から起き上がって追撃を警戒しているとすぐ狼を飛ばしてくる。

 

「チッ!!」

 

片手間に切り捨てながら魔力を吸収。自分相手に数は意味がない。魔力食いの特性でいくらでも吸収と回復はきく。

 

「ん!?」

 

一瞬眩い光が目を焼く。わずかに眩んだ隙を突かれるか……と身構えたもののリズエルは急になんだという感じで戸惑いの表情。

 

(奴の攻撃ではないのか? 

狼共の手助け……こちらへの対処も必要だ。少しでも長く時間を。マスターの下へ行く敵を減らさなくては)

 

更に遠巻きで囲んでいた人狼たちからも魔力を吸収。体内に負っていた傷も急速回復させる。

 

「させん!!」

「はぁっ!!」

 

回復を止めに大剣ごと突っ込んできたリズエルを受け止める。これも信じがたいことに魔力で強化してもまだ奴の力が上。じりじりと踏み込んだ地面に足跡をつけながら押し込まれる。

不意打ちに打たれた膝蹴りを鎧で受けるとまた亀裂が走り、次の瞬間には砕け散った。

 

「くっ!」

(半端な攻撃では傷もつかない私の鎧が……私に匹敵する膂力といい、四天王最高階位を名乗る手練れなことはある)

「早く降参しろ。諦めた方が気持ちのいい思いが出来るぞ」

 

歯噛みするバーゲストを嗤いながら無遠慮な視線が鎧の隙間からチラチラ見える鍛え上げられた肉体に向けられる。

鎧で窮屈だった胸に粘着質な視線が向けられ、まるで視線が生き物になって肌の上を這っているような錯覚。しかもそこから感じられるのは紛れもない快感。

 

(な、に……!)

「クク。鎧に隠れたその爆乳、この手で揉むのが今から楽しみだよ。とっても柔らかそうで鍛えたまんこにご主人様のデカチンポたっぷり咥えてかき混ぜてほしいと思わないか?」

「言っていろ!」

 

上がりだした息の理由は緊張か、それとも興奮? 

混乱する頭を振って意識を切り替えてリズエルからも魔力を吸って跳ねのける。

直接吸うとさしもの奴も効果があったようで片膝をついて息を荒げた。

 

「ぐっ……魔力食いか。お前の容量と私達全員の魔力、どちらが先に限界を迎えるか。試してみるのも面白い」

「だったら大人しく干からびて死ね」

 

強気に返すが内心では不可解と焦りが生まれ始めていた。

 

(奴から感じられる魔力の気配は通常のサーヴァントより少し多い程度。なのにかなり喰らっても動きに変化がない……どこかから魔力を補充しているのか?)

 

そもそも食ったと思った量も予想より少なかった。

奴が身に着け続けているマント。アレが吸うのを妨害しているとも思える。

バーゲストが負けないのは魔力食いで相手を弱らせ自身が強化されるからだ。もちろん武勇でも負ける気はないが強みが一つ潰された。

お互いに刀身へ魔力を流し込み、焔と黒の魔力が激突。植物や大地を余波が燃やして壊して焦土化させる。

 

(持久戦では兵の尽きない奴らが有利。火山の噴火が近づけば引くかもしれないがそれでは逃がす可能性がある。ここは━━)

「━━チェイル・ブレイザー!!」

 

飛び退きながら腕に巻いた鎖を空中に射出。直後に上空からリズエルを襲わせる。

 

「芸のない……なにっ!?」

 

狙いは本体ではなく足元。鎖を刺した地面に魔方陣を発生させ、回転する鎖の渦が四肢を固定してリズエルの動きを縛る。

 

「来なさい!!」

 

同時に使い魔の犬たち(ブラックドッグ)を召喚。さきほど狼を焼いた焔の大顎も召喚。敵が体勢を整え切る前に決める!! 

10を越える犬と同時に襲いかかる。

〖聖者の数字〗の加護に加えて魔力食いで人狼たちから吸収した魔力も総動員。宝具に近い威力まで貯めこんだ魔力を解放。

一気に距離を詰めて腰から肩口へ切り抜ける軌道で剣を薙ぐ。反対側からは大顎が敵の頭を喰らおうと口を開けている。

 

「はぁああああ!!!」

 

相手はまだ鎖で動きが止まっている。この距離ならば躱せない! 

爆炎を纏わせたガラティーンの一閃。これまで幾度となく敵を屠ってきた中でも絶大の一撃。

燃える市役所が小さく思えるような、天を衝く火柱が空へ打ちあがった。

[newpage][chapter:淫魔の宝具]

確実に当てた、そう確信した。

しかし。

 

(殺(と)った━━なっ!?)

「くぅあ!?」

 

バーゲストの炎に匹敵する勢いで別の炎が襲来。さらに大顎へは氷雪の群れが吹きすさぶ。たちまちに牙は凍結させられ、犬も竜巻のような吹雪に吹き散らされて次々消滅していった。

余波の暴風を自分ももろに受けて再び飛ばされ、半分以上燃えていた市役所の建物は吹雪を最後の衝撃にして脆くも崩壊していった。

 

「間一髪ってところね。姉さんにしては結構押されたんじゃないの?」

「そうでもない。お前が見えたから防がなかっただけだ」

 

かなり消費した後のせいで傷の治りも遅い。痛む体を押しながらどうにか立ち上がると、リズエルの隣にもう一人似たような容姿の女が立っていた。

 

「アンタとは初めましてね妖精騎士ガウェイン。

リリスティア四姉妹の次女アズエル。姉のピンチを救いに参上したわ。言っとくけど2対1でも容赦しないから」

「ピンチではないと……すまないな。人間だった頃は一騎打ちを壊されるのは嫌いだったんだが……今の私は主人に優れたメス奴隷を献上するのが最優先だ」

「勝ったら私が功績は貰うわよ」

「ちょっと待て。ここまで追い詰めたのは私だぞ」

「ピンピンしてんじゃない! 追い詰めるって言わないのよそれ!」

「実力を見ていただけだ!! お前が来なかったらすでに勝っていた!!!」

「……OK。どうせいつもみたいにお互い折れないんだし、公平にいきましょう」

「結局いつも通りか。いいだろう」

「じゃあ━━」

「では━━」

「「早い者勝ちだ」」

「っ!!」

 

アズエルと名乗った少女を交え、2対1に移行して戦闘が再開。魔力食いで補強していた戦力差の均衡が徐々に崩れ始める。

大剣と槍を使い分けてマントから取りだしてカウンターを狙ってくるリズエル。

後先考えずにバトルアックスと空を飛ぶ攻撃端末、火炎と吹雪の4種を織り交ぜて滅茶苦茶に振るってくるアズエル。

喧嘩していたのが嘘のように息が合い、片方を防ぐと同時にもう片方が攻撃を当ててくる。

更にどれもが鎧を砕き、凹ませるような破壊力。

彼女らから魔力を喰らって回復に回しても鎧のダメージは消えてくれない。

逆にあちらは深手を負うとこれも何かの能力で急速に傷が癒えていく。

また時々瞬いて目をくらませようとする光も鬱陶しく、力を十全に発揮できない。

バーゲストの頭にもじわじわ敗北の文字がちらつき始める。

それでもマスターは脱出したから負けていいとは思えなかった。

 

(まだだ……まだ終われない……! 彼らは今以上の困難を前にしても諦めなかったのだから!! 

このまま磨り潰されるくらいならば!!!)

「う、ぐ……うぉおおおおおお!!!!」

 

瞬間的に魔力を爆発。炎の勢いに任せて2人を遠ざける。

次々湧いてくる人狼やアズエルと共に出現した怪人達からも魔力を吸収。吸われた側が倒れる程度では済まさない。肉も骨も丸ごと魔力に置換して喰らう暴食の本能を爆発させる。

さながら竜巻のように周囲にいる生命から魔力を吸収。渦を巻く流れが風となり、リズエルたちをも寄せ付けない防壁に。

 

「これは……」

「どんだけ喰うのよコイツ!! ペラッペラの干物にでもしようっての!」

 

それでも2匹の淫魔は驚くだけで動きが鈍らない。

やはり魔力を吸うだけでは彼女達は倒せないようだ。

だからもう、全力で倒しきる他に選択肢はない。

そして今の霊基出力では倒しきれないのも明らか。

だから。

 

(倒す……たとえ私が私でなくなってでも、彼らの憂いを断たなくては。

どうか逃げていてくれ、マスター)

 

喰らった分の魔力を肉体へ回す。抑え込んでいた本能を解放。

ティアラのようだった頭の角は触角としての形を取り戻して長く伸び、王冠のような形に。

ボディを覆っていた鎧が弾け飛び、黒いタイトベルトが乳首や股間を隠す扇情的な格好。

両肩には赤黒い瞳型の球体を核にした、これも角のようなアーマーが左右に展開。アーマーからは両手両足に赤黒い鎖が伸びて巻き付き、元の鎧を壊しながら新しい籠手と具足が装着。

ガラティーンは鎖と魔力を飲み込んで巨大化しながら赤色化。騎士が振るうには余りに邪悪で不穏な外見に変貌。

止めに右目はため込んだ魔力の供給過多で破裂。肩アーマーと同じ赤黒く濁った球状パーツが納まってオッドアイ化。

バーゲストの騎士としての誇りを完全に踏み躙る怪物、化け物としての姿。

燃えてしまいそうな理性を保つため、無尽蔵に湧き上がる魔力を咆哮へと変えて宙に解き放つ。

 

「グルッ……ルァアアアア!!!」

「うるさっ!! 

ま、なかなかイカした趣味ね。牛みたいな乳も鍛えた腹筋もいやらしい♡」

「気が合うな。我々好みな暴力的で倒錯したいい服装。これがカルデアの霊基再臨という奴か」

 

封じた姿を解放しても敵には動じた様子がない。それを認識してまだ敵を敵と分かる意識が残っていることに安心した。

だが現在進行形で理性が燃え、捕食するだけの怪物になり果ててしまいそう。

ブリテンの時の様に。

巨人用かというほどに巨大化したガラティーンを握り、飛び掛かろうと身をかがめた所で今度はリズエル達の不穏な笑いを認めた。

 

「クク……」

「アハハ!」

(なん、だ……何か企んで)

「せっかく素敵な姿を見せてくれたんだ」

「私達も合わせてドレスアップしないとねぇ」

 

リズエル達がそれぞれ自分の下腹部に刻まれたハートの淫紋に触れる。

すると内部からトランプを少し大きくしたかのような長方形のカードが1枚ずつ出現。色は墨に落としたような真っ黒。

強化されたバーゲストの視力でようやく表面に何か絵や文字が描かれていると読み取れる。

 

「宝具━━」

「━━解放!!」

「「『虚構装填(パラレル・インストール)』!!!」」

(ここで宝具っ!!)

 

2人の姿を魔力の渦が包み込む。

卵のように彼女達をすっぽり覆い隠した黒く禍々しい魔力は、バーゲストでも喰らうのを躊躇するほど嫌な気配を発している。

コレは自分が手を出すべきものではない、そう本能が告げているみたいだった。

やがて内部から爆発する形でリズエル達を包み込んだ魔力球が破裂。

そこから姿を現した彼女達は呑まれる前とは明らかに違っていた。

 

「ふぅぅぅ」

 

まずはリズエル。

全体の雰囲気が可憐から優雅さを込めたものに変化。

胸から腰までは変化前からさらに露出が増え、上乳が丸見えの黒い甲冑。

下半身は逆に前張りだけだったものが黒色の高級そうな質感のショーツ一枚に変化。

手袋とフレアスカートだけだった装飾は腕回りが赤黒い血のようなヴェールを携え、腰のスカートはそれまで肩についていた赤と黒のマントがそのままスカートに変わって固定。

両肩にはそれぞれ狼の口が取り付けられて遠吠えを轟かせ、氷を纏った息吹で彼女の周りの地面を凍てつかせる。

額と首にはピンク色の眼球めいた宝石を付けたティアラと首飾り。首の方は瞬きをして本物だと自己主張。

腰の淫紋は外からさらに一段ハートが重なるようにして複雑化。

握っていた大剣は両刃から片刃に変わり、衣装と同じ血のように赤黒い禍々しいそれへ変貌。刀身にもぎょろぎょろと動く眼球がはめ込まれていた。

服やブーツなどの衣装は黒一色だがアクセントに金の縁取りや装飾がちりばめられ、一目で高級なものと分かる。

最後に開いたリズエルの眼球が白から黒に。瞳はピンクから金に。

まるで王妃のようなその姿にはバーゲストさえ威厳を感じずにはいられなかった。

 

「着装、殺戮戦姫リリスティア・リズエル。ここに再臨した。さあ今こそ我が主の敵に鉄槌を下そう」

 

さらにもう片方もうん~っと伸びをしながら息を一つ。

 

「アッハァァァ」

 

そしてアズエル。

こちらは全体のシルエットこそ似ているがやはり違う姿。

気まぐれな淫魔を象徴していた容姿はより可愛らしく、露出を抑えながら淫靡さを内包。

下乳しか隠していなかったのが胸を中心にX字に布を伸ばしてクリティカルポイントを隠しつつ、肌を大胆に晒したエロ衣装に変化。

腰の翼は小さな蝙蝠っぽい形になって頭にもティアラの様に装着。

スカートは短く縮められて可愛らしさを洗練したフリルタイプに。

秘所は伸びた布がハイレグ状に隠すが淫紋を見せつけるようにワレメすぐ上がハート型にくり抜かれる。

両手には装備した手甲から鉤爪が内へ展開。直後に離れて空中へ展開。元の4基も合わせて合計6基のビットが宙へ滞空。

刃が一回り大きくなったバトルアックスをガンッと地面に突き立て、こちらも黒く染まった眼球に金色の瞳でバーゲストを睨んだ。

 

「着装、リベレイター・リリスティア・アズエル。長い名前だけど覚えなくていいわよ。

どうせ敵にしか使わないし。アンタはここで終わるんだからさぁ!!」

 

両者から発せられる魔力はこれまでの実に数倍。

霊基再臨を果たしたバーゲストをも凌駕する莫大な魔力をその身に宿して平然としている。こちらがいつバラバラになるかも分からない意識を必死に縫い留めているのに。

 

(まだこんな奥の手を……ッグ、残していたのか……)

「グルル……!!」

「霊基再臨が貴様達だけの技術と思ってもらっては困るな」

「今までが全力だと思ってたぁ? 

こっちもまだ上があんのよ! アハハハハ!!」

 

どうするべきだ。

ここでぶつかり合ったとしても敵の方が有利。

今なら手数が増えた分、細かい連携で各個撃破を狙うべきか。

敵の魔力を再度喰らって宝具によるまとめての破壊を狙うか。

堅実な手を選ぼうとするが頭痛がそれを止める。

 

(くっ、急がないと……この姿で正気を保つのは……)

 

ガラティーンを強くもう一度握り直す。

悠長に戦っている時間はない。

宝具で一息に倒し、自我を失う前にこの姿を解除するか……もしくは自害するか。

瞬きほどの迷いの後に決断。

この霊基だから出来る無茶をする。大地、大気、大海、リズエルやアズエルに人狼や怪人達、ありとあらゆる全てから魔力を吸い上げていく。

更に自らを律する亜鈴触角をへし折ってガラティーンへ同化。

魔力を餌にどんどん巨大化する体で剣を構え、大上段から振り下ろす構えに

血のように赤い炎を纏った大剣は太陽の様に輝きを増していく。

肩のアーマーがカチカチ動いて内部機構を露出。はめられた球体も高速回転して魔力を循環させ、内包した炎を解放してさらなる延焼を引き起こす。

鎖を射出して大地に体を固定。五体が千切れてもこの一撃で奴らを両断する。

 

「あの構え、最初から宝具? 

ったく、もっとボッコボコにしてやりたいのに」

「気を抜くなアズエル。いくら私達でもアレをまともに食らえば無事では済まない」

「へーへー。今の私達を殺せるなんてお姉様くらいでしょうけどね」

「アズエル」

「……分かってるわ。気は抜かないっての。こっちもやるんでしょ」

 

リズエルがグランレクスの柄に槍を融合させて延長。2倍の長さになったそれを腰だめに背後へ隠すようにして構える。続いてアズエルも自らの前方へ円環状にビットを配置してバトルアックスを振りかぶる。

 

「抑制機構解除、グランレクス出力セーフティ解除、オロチ・レプリカの全魔力回路直列接続」

「ソンブレロ・レプリカからリリスティア・アズエルと炉心適合。ビットシステム・オーバーライド」

 

なにやら小難しい単語を並べ立て、言葉が続く度に彼女らが纏う魔力が膨れ上がる。

爆炎と灼熱と雷光とそれぞれが充填させた魔力の余波で周囲は燃え、火山へ繋がる魔力火災はいよいよ鹿児島の半分以上を吞み込み、怪人達もまとめて降り注ぐ雷がこの世の終わりかと言いたくなる景色を作っていく。

 

「全力を出すのは久しぶりだ」

「前は一年前? それとも一年半? まぁ何でもいいわよ! 

こいつにブッぱなして日本も終わりにしてやるんだから!!」

 

またチカッと目障りな光が見えるがもう気にならない。全員の集中したこの瞬間に些末事など障害ではなかった。

 

「妖精騎士の誇り! 人の未来を守るために!! 『捕食する(ブラックドッグ)━━」

「すべての抵抗は無駄と知れ!!! 『紅蓮断ち切る(クリムゾン)━━」

「全力全開よ! 食らって死ねぇ!! 『降り砕く(ライトニング)━━」

 

1つは空間さえ焼く勢いに巨大化した黒い炎を纏った獣の牙を象る斬撃。

1つは刀身が発する炎と熱線で長大に伸びて人の域を超えた剣閃。

1つは雷と炎と氷を宿したサークルで加速させて打ち放つ超出力の砲撃。

そして不思議なことに全員、解き放つタイミングは重なった。

 

「━━日輪の角(ガラティーン)』!!!」

「━━裁決の剣(パニッシャー)』!!!」

「━━陽氷の雷(パニッシャー)』!!!」

 

それぞれが相手どころか空間ごと消し飛ばす量で蓄えた魔力の攻撃が衝突。

三方からの衝突は眩い光を生み、バーゲストも相手が見えないままにガラティーンを振り下ろし続ける。

 

(止まれない。今手を緩めれば次を出す前に私の理性が消える。

その前に!!!)

「うぉおおおお!!!!」

 

巨大化した肉体でも押し切れない魔力。衝突から生まれる魔力も喰らい、自らの力に変えて粉砕するために全力だ。

何秒、何分、何時間……感覚を失う位の全力での衝突。

近づいただけで怪人や人間は塵になる。すでに背後や周りにあった建物も木々も燃え尽きて更地に還った。

それでも敵の力は止まらず、バーゲストも必死に殺しきろうとあがいた。

だからだろうか。

 

「クスクス、令呪を持って命令するわ。【宝具を止めなさいバーゲスト】」

 

鈴を転がしたように愛らしく、ゾッとするほど冷たい声の主に気づかなかったのは。

 

「なに……っあ!? ━━きゃあああああ!!!」

 

囁かれた途端にあれほど体内に湧いていた魔力が消滅。均衡を失った魔力の爆発に耐えきれず吹き飛ばされた。

 

(なぜ宝具が……いや今の魔力の気配は……くっ! ガラティーン! なぜ動かない!! 角は……こちらも手を伸ばせない!!)

 

宝具が強制解除されて巨大化した肉体も急速に元の大きさに戻っていく。自分の意思で体が言うことをきかない。

混乱する目の前にもう一人、今まで敵対していた連中と同じ髪色の淫魔が舞い降りる。

 

「とてもよく頑張ったわね。妖精騎士ガウェイン、そして真名バーゲスト。

私の妹2人を相手に互角だなんて、ソラエルが見立てた通りの脅威だわ」

「貴様……は……」

「淫魔聖姫ルクスリア。これから貴方のマスターとなる女よ」

 

身体が満足に動かない。特に宝具起動の為の角へは手に近づけと念じることさえできない。

ただこの目の前にいるルクスリアが何かしたはず。

しかしそれ以前にこの女、次元が違う。

 

(宝具を使った2人以上の魔力量……この女、本当に生物なのか……?)

 

生前敵対した時のモルガンを思い出す格の違い。今しがた放った全力の宝具でも彼女には通じる気がしない。

バーゲストが動けなくなったのを認めたのか、姿を元に戻したリズエル達もこちらに近づいてきた。

 

「お待ちしておりましたお姉様」

「ね! 私頑張ったでしょうお姉様! たっくさん褒めて!」

「こらアズエル! 挨拶もせずに」

「いいのよリズエル。首尾よくサーヴァントの1人を捕らえられたのも貴方達2人のおかげ。

ご褒美をあげないとね。んっ♡」

「あぁん♡」

「お姉様ぁ……♡」

 

ルクスリアが2人の妹へ軽くキス。それだけで彼女らの剣呑な雰囲気や騎士の風格は霧散し、主人に甘えてご褒美をねだる奴隷の表情に。

腰砕けに座り込む2人。魅了の魔術でも使ったのかと思うほど。

戸惑いと混乱で見続けていたバーゲストに向き直ったルクスリアはいたずらっぽく笑った。

 

「ふふっ。貴方もキス、して欲しい? 

欲しがりさんって聞いているわ」

「……貴様、一体何を」

「あらつれない。

でも何をしたかくらいは教えてあげましょうか」

 

ルクスリアは胸元の紋章を両手で見えやすく強調させると、分かりやすく紫色の濁った光が放たれる。それは今バーゲストを縛っている魔力の質と全く同じだった。

 

「〖淫刻令呪〗。条件を満たしたサーヴァントに絶対命令を下せてしまう私のスキル(力)。貴方の宝具を封じただけだけど面白い力でしょう?」

「疑似令呪……! そんなものまで」

「ただのお遊びよ。本物には及ばないわ。

でもリズエル達から沢山魔力と一緒に因子を取り込んでくれて助かっちゃった。おかげで貴方ももう私のお人形」

(くっ……奴らの魔力にそんな罠が……!)

「ご主人様のことが大好きな奴隷にしてあげる。サーヴァントやマスター君を一緒にお出迎えしましょうね」

 

状況は最悪。

令呪を持つ相手に英霊の気概や誇りは無意味。今も床に倒れて恍惚の表情を浮かべるリズエル達と同じ存在に堕ちる……想像しただけで寒気がする。

しかし宝具が使えない以上はリズエルやアズエル、ルクスリアを殺すのはほぼ不可能。

逃走しようとしても令呪で縛られるだろう。

そしてマスター達に仇なす存在として使われる。彼らを助けたかった自分がそんな風になるのは耐えられない。

 

(だとすれば━━!)

「私は……貴様らの思い通りにはならない!!」

「あら?」

 

床に落ちたガラティーンへ飛びつき、鎧もなく剥き出しになった自分の体へ。

残された手段は自害。

失敗すればこれも縛られる。

ここが最後のチャンス。

 

(すまないマスター。どうか貴方は━━)

 

しかし剣が肌に僅かに刺さった瞬間、

 

「おおっと! そうはさせないよん♪」

「この距離ならば効くでしょうなぁ!!」

「うっ……」

 

突如目の前に現れたリリスティア・ソラエルと球体みたいに真ん丸な身体をした似非紳士風の男。

その男の持つステッキの先端がバーゲストの目の前にピタッと当てられ、目も開けていられない光を放った。

そしてその光を直視すると急速に意識が沈み、自分で立っていることも出来なくなる。

 

(これ……は……)

「ふぅ……流石に肝が冷えましたよソラエル様」

「距離とって続けても効かないんだもの。しょうがないじゃん。

でもハイラギル君の催眠ってやっぱすごいね。あっさり眠らせちゃった」

「常人なら10回は眠らせる魔力を喰われましたがねぇ」

 

倒れ伏した地面から熱が伝わってくる。

もう指も動かない。顔を横向きに倒れた体は末端から中心に冷えた氷のように効きが悪くなっていく。

 

「まぁソラエル! この時のために隠れていたの?」

「万が一に備えるのがボクの得意技!」

「ふふっ。今日も助けられちゃったわね」

「さってとそれじゃこれを埋め込んで……アッハ! もう自害もさせないよ。

バーゲストちゃんも頭の中エッチなこととナイオーロ様で一杯な僕らと仲良しのメス奴隷にしてあげるから楽しみにしてて☆」

(マ、ス……た……)

 

そんな悪夢のような囁きをされても動けない。わずかに怒りで眉を持ち上げるのがせいぜい。

だが薄れる意識の中、ソラエルの頭に残したキーワードが一つの解に結び付く。

 

(メス、どれい……皇帝を、討つ……)

 

愛玩奴隷にするつもりならまだ打つ手がある。

この身に宿る魔力食いと対をなすあの呪いを使えば。

そうして自分を覗き込む4体の淫魔の悪辣な笑みを見ながら、バーゲストは僅かな希望を見出しつつ意識を闇に喰われた。

 

◇

 

バーゲストの敗北後、桜島は噴火。魔力を与えられて破壊兵器と化した火山噴火の被害は鹿児島全域を襲い、カタセの裏切り後も隠れ潜んでいたレジスタンスの成りそこないを蒸発させた。

関門海峡、鹿児島、大分、長崎、主要な防衛拠点は陥落。さらに防衛軍の要である政治部はカタセがリズエル襲撃時に自ら殺害。軍部も唯一生き残りだったカタセが死に、動かせるような兵器もルクスリアを始めとした帝国軍の侵略行為で壊滅。

こうして事実上、日本国は消滅した。残るはまだ日本があったと知っているわずかに生きる人々だけ。彼らが語り継げなくなった時、日本は元からロギア帝国だったと人々に受け止められるようになる。

 

◇

 

バーゲストの決死の時間稼ぎによりカルデアはストーム・ボーダーとの合流に成功。

彼女の見立て通り、彼らが戻った時にはヤガ軍団の波状攻撃を受けてかなりの損害を負っていた。

シャドウ・ボーダーを回収し、モルガンとバーヴァン・シーとメリュジーヌが辺りの敵を一掃することでどうにか退路を確保。

そのまま浮上して距離を取ったことで桜島の噴火には巻き込まれずに済んだ。

ちょうどバーゲストとリズエル達の宝具が激突した辺りの話。

結局味方を1騎失い、守るためにやってきた人間に裏切られた鹿児島での一件。これがまた藤丸の心に影を落としていく。

 

◇

 

どうにか離脱に成功した一行の船はクサカベの遺したもう一つのキーワード、北海道を頼りに北東へ進路を取る。

しかしすでに彼らの動きは予定調和。

次なる戦い、日本海ストーム・ボーダー防衛戦に続いていく。

 

 

〈つづく〉

 

◇

 

幕間 裏切り者達が辿る藤丸調教録

時系列を少し戻し、まだ鹿児島へ向かっていた間の話。

ストーム・ボーダーの船内で堕ちたネモは適当に体調不良のフリをして自室にこもった。

今までのように本当に体調が悪いわけではない。異聞帯攻略(雑用)よりメス奴隷調教(大事なこと)に時間を割くための方便。平たく言えばサボりである。

船を預かる船長にはありえない怠慢。

しかし今更どうでもいいことなんてやってられない。どうせご主人様の手で藤丸達も堕ちるのは決まっているのだから。

自室で窮屈だった擬態を解き、角と尻尾の生えた怪人態の姿を取りながら同じ分身と話を続けていた。

 

「昨日、僕らがお姉ちゃんに可愛がってもらった間に藤丸達へ施された調教の調べはついた?」

「ええこちらでー。監視カメラをハックしてあるので調べるのも楽勝でしたー」

「トリスタンさん、藤丸さん、マシュさん。皆さん、今朝医務室に来てくださいました。すぐにでもご主人様に献上したくなるメス顔で私、つい……ふふっ」

 

プロフェッサーとナースとベーカリーが報告を述べる。皆ネモと同じ角や尻尾が生えた怪人態。一度回収してから再度分身すると、全個体がネモと同じ洗脳後の思考基準になっていたので手間が省けた。

3人以外にも部屋の中は複数のネモ・シリーズがそろい踏み。

マリーンズ以外がネモと共にデスクの周りで今後について話し合う。

ではマリーンズはというと。

 

「進みというならあっちもいい感じだと思うな。あんなに乱れちゃって♪」

 

ベーカリーが邪悪さを隠しきれない笑みで見つめた先。ベッドの上では小さな少年たちと囲まれている少女の痴態が繰り広げられている。

 

「あっは♡ロリロリのキツキツまんこ気持ちいいー!」

「だよねー! ピッタリ吸い付いて離れないんだもん! ご主人様ちんぽの形覚えるまで犯してやるぞー♡」

「そうだそうだー! 口まんこももっと喉まで使うの! ダ・ヴィンチは頭いいんだから覚えてよ!」

「ちゅぶ、ちゅれる、むちゅう!! ちゅぶぶぶぶぅぅぅっ!!!」

「あーヤバ! バキュームの覚えとってもいい! 僕ちんぽ、全部コキ出されちゃう!!」

「早く代わってってばー! 僕らもダ・ヴィンチで遊ぶんだい!」

 

マリーンズ6人に囲まれて口、膣、アナルに肉槍を突きこまれ、それでも足りないと両手にまで握らされているのは哀れな技術顧問、レオナルド・ダ・ヴィンチだった。

しかし無茶苦茶なプレイに付き合わされてその顔は不満そうでこそあっても、嫌悪感や恐怖の負の感情はまったく籠っていない。かといって発情しているわけでもなくて、頬を赤らめながらも嬌声が漏れては来ない。

 

「彼女の洗脳進行度は?」

「50%って感じですかねー。理性は完全にコントロール下ですが感情がまるでダメです。そもそも戦闘中も外に出ないせいで因子の侵蝕率は最低。性行為への抵抗感を下げて今みたいに快楽を覚えさせるのが限界ですー」

「AIのウィルス感染で思考を奪うまでは上手く行ったのにね」

「焦ることはありませんよ。艦内設備のシステムは掌握済み。彼女の記録や情報収集デバイスも確認した限り私達に気づいた様子もない。マリーンズで犯していけばいずれ発情しっぱなしのメスになってくれるはず」

「職員もまだ怪しんでる様子はありませんしー」

「目の前だけで忙しいしね。溜めてる感じのには声かけてキッチンで私もヌいてあげてる」

「もし気づかれても私がいます。医務室で一人二人、事故に見せかけて始末も容易いですよ」

 

以前の面々からは想像できないような物騒な会話。

しかしすでにナイオーロへの忠誠で固まった彼らの思考では余計なことに気づく=悪であるため、排除することにもまるで躊躇いがない。

 

「~~~っぷは! 

マリーンズのちんぽ、ちょっと張りすぎじゃない? 

こんなにいるのに一人3度射精しても収まらないんじゃキリがないよ」

「えー!」

「ダ・ヴィンチも楽しんでるんだからもっと吸ってよー!」

「そりゃ、これが仕事だからいいけどさぁ。んっ、あっ、まんことケツまんこのちんぽも張ってきたね。

我慢せずにビュルビュル出してしまいたまえ」

 

マリーンズのちんぽを手と口とマンコとアナルで奉仕しながらザーメンを浴び続けるダ・ヴィンチ。性処理が大事な役割と信じて疑わない姿は説得力が増して、逆にそういう仕事があったような気にさせてくれる。

まだ義務感が表出しているがこのまま犯し続ければプロフェッサーの言う通り、奉仕活動を喜んでやるようになるはず。

 

「バーヴァン・シーの対処は?」

「私が。今日医務室に来たので把握しています。モルガンが期待していると言っておいたので触手服のことは言えないでしょう。クス、一人であの快楽に溺れるしかありませんね」

「逃げ道断つとかナース黒すぎですねー」

「マシュさんも今日一つ目を与えられちゃったみたい。ずっと口を気にしてた」

「後は今朝の藤丸が膨らんだ胸の原因を……」

「それでしたらミニソラからビデオを預かっていますー。

キャプテンが欲しがると思っておられたみたいでー」

「さすが気を聞かせてくれるね。早く見せて」

「少々お待ちをー」

「まぁキャプテンたら。オナネタにしたいだけならそう言えばいいのに」

「船長は藤丸にメロメロだもんねぇ」

[newpage][chapter:猫猫おっぱいづくり調教]

いつか放り込まれた闇の空間。

体にまとわりつく粘度の高い空気を感じて藤丸は目を覚ました。

 

「ここは……ってお前だよな。やっぱり」

「やぁん♡登場前からボクに気づいてくれるなんて嬉しいよ♡」

 

いつものやたら露出の多い格好を惜しげもなく晒したソラエルがピースしながら登場。

緊張感というのを誰かコイツに教えてやるべきじゃないだろうか。

 

「それにしても何だか前と……」

「あ、ベッドが出来てるのに気づいた?」

 

彼女の語った通り、前は平らだった床がふかふかのベッドに寝転がされていた。

やっぱり体は大の字に固定されて動けず、得意げな顔をムカつきながら見るしかできない。二度目ともなると裸で敵の前にいることにも羞恥心は薄くなって気にしなくていいのは利点だろうか。

 

「これはキミとボクの縁が深まったってことなんだよ。楽しませたいな~ってボクの気持ちがキミにも影響を与えてるのさ!」

 

すごいでしょと語る顔を張り飛ばしてやりたい。

ただソラエルよりも置かれた状況が不味いと頭は冷静に分析。夢に囚われているのは以前と同じでも、前ほど目の前の彼女に敵意や忌避感を持てなくなっている。

これが彼女の縁が深まったという意味なら回数を重ねるほど心が彼女と近く━━

 

(とにかく今日も耐えるしかない。前もアズエルの名前以外は何かされたことしか覚えてないし。早く朝になれ!!)

 

そこへまたソラエルではない別の足音が近づいてきた。

軽めの足音。ソラエルの胸辺りまでの背の高さで珍しく長い髪の少女だった。

緑のラインを入れた彼女と同じ服装。

 

(リリスティア……ソラエルの妹?)

「アズエルの言った通りパッとしない顔だな」

「あ! 来てくれたんだ!」

 

パッと笑ったソラエルが飛びつくと愛玩動物みたいに胸に抱きしめて頭にスリスリ擦りつける。

 

「はぁ~いい香り~。なんだか落ち着くんだよね」

「子ども扱いするな」

 

ムスッとした顔でソラエルを押しのける少女。姉のスキンシップを鬱陶しがる妹みたいな構図。

正直このちゃらんぽらんなソラエルを見習わない方が妹の為だと思う。

 

「ん~、何か怒ってる?」

「別に。今まで出番がなかったことを気にしてなんかいないぞ」

「あー……ひょっとしてずっとお留守番だったから……」

「そんなわけないだろう。私は子供じゃない」

「ふぅ良かった。そうだよねユリね━━」

「男だったお前がプールへ行く時、私をハブったことだってちっとも気にしていない」

「それリズ姉ちゃんが来たばかりの話だよね!? もう2年以上前じゃん! 

メチャクチャ根に持ってる!」

「女を待たせた男の罪に時効はない」

「そんな格言ぽいことを……それならボクも今女の子なんだけど」

「……姉ちゃんを泣かせるのか? 

悲しいぞ」

「立場使い分けてきたよこの人……この淫魔? 

ごめんってば~。もうすぐ出番だから許してよ」

 

前のアズエルよりぐだぐだの気配。この妹もクールっぽい外見のわりに結構奔放そう。

自分も大して動揺しなくなっているのはやはりマズいはず。

 

「おい。茶番に付き合ってる暇ないんだ。早く帰らせてほしい」

「……精神を捕らえられているのにふてぶてしいなこの男」

「ソラエルのせいでお前達との距離感が掴めないんだよ。特に今みたいなの見せられると」

 

なんというかもっと明らかに隔絶した気配を出してくれればこちらも緊張を保てるのに。

命をなんとも思わない。平気で人を踏みにじる。それだけなら敵視も楽。倒してきた外道と同じなら。

だがやっていることは非道なのに、こうして人間味ある関わりの中に取り込まれると敵意が鈍る。どこにでもいる女の子たちなんじゃって気持ちにさせられる。

多分それがソラエルの狙いだとも思われるがどうしようもない。ただ敵なんだと強く頭に言い聞かせる。

 

「それじゃ紹介するよ。こちらはボクの一つ上のお姉ちゃん」

「リリスティア・ユリエルだ」

「これで3人……あと1人が一番上か」

「そそ。リズエル姉ちゃんがトップでこの前のアズ姉ちゃんが2番、ユリエル姉ちゃんが3番だね。今日中に藤丸クンは皆と顔合わせすると思うよ」

「━━待て。今なんて? その子どもが3番目?」

「誰が子供だ」

 

不機嫌を隠さずにユリエルが睨んでくるが信じられない。淫魔だから外見年齢も自由自在とか……と思った瞬間殺意が籠った視線で睨まれる。

 

「言っておくが若作りじゃないからな」

「ユリ姉ちゃんは昔からずっとこの体型なんだよ。小学校に連れてったら同級生扱いされるし、昔旅行に行った時はボクの妹って勘違いされるし、いい加減子供キャラになってもいいんじゃない?」

「バカ言うな。私は大人だ」

「どう見ても背伸びしてる子どもが言うことじゃん。ね、藤丸クン?」

「こっちを巻き込むな!」

 

まぁこんなバカなことをやっている間に時間が経てば好都合ではある。

しかしあちらもそこらへんは分かっているみたいで、ふっと息を吐くと気配を変えてそれぞれ左右から体に近寄ってきた。

 

「それではこの男のちんぽを」

「待った。ユリ姉ちゃん、アレ使わないと」

「……本当にやるのか?」

「やるって言っておいたでしょ。ほら早く」

「ぐぅ……仕方ないか」

 

それぞれ魔力を集めると植物の種みたいなものを形成。眼球までついた醜悪で不気味な見た目のそれを躊躇わずに自分の口へ入れる。

飲み込むと同時、2人の肉体に変化が起こる。

瞳が2人とも金色に変わり、瞳孔は切れ目の縦長のアーモンド形。

ソラエルは黒、ユリエルは白に髪色も変化。

口からは八重歯が尖って少し鋭い牙に。

つるつるハートの先端をした淫魔の尻尾は髪と同じ色のふさふさした毛に覆われて2股に。

両手両足も体毛に覆われて肉球や鋭い爪が生えそろい、人から半獣の手足へ。

最後に髪を押しのけて大きな三角形の耳が2つ頭に生える。

出来上がったその姿は━━

 

「に、にゃあ……」

 

少し頬を赤くしたユリエルの鳴き声から明らかな猫怪人に2人は変貌していた。

 

「藤丸クンに甘える可愛い猫になってみたよ。

にゃあにゃあ♪ 藤丸のおっきくて美味しそうなちんぽ、ぺろぺろしたいにゃあ♡」

「くっ、屈辱だ……ご主人様以外にこんな姿を……にゃあ」

「にゃんこのお姉ちゃんもボクは好きだよ? 

ほらちっぱい舐めさせて。ちゅる、れるれ、んちゅる♡」

「んうっ♡こ、こらソラエル! 私の胸はびんか、ふにゃあああ♡」

 

黒猫怪人へ変わったソラエルがユリエルに舌を這わすと電流が走ったみたいに彼女は痙攣。絶頂一歩手前の気持ちよさを味わっているらしい。

 

「……っと藤丸クンを放っておいちゃダメだったにゃ。さ、ユリ姉ちゃん一緒に」

「あ、ああ。れろ、ちゅる、れれぇ」

「ぴっちゃ、ちゃれる、れれぇろ♡」

「っ!!」

 

そこまでふざけていたのが一転、2色の猫がペニスへ奉仕を開始。

不意打ちのような舌に思わず声が漏れた。

 

「れろぉ……勃起するといいチンポだ。確かに私達が舐める価値もある。んれろ、ぴちゃぴちゃ」

「先走り美味し♡ボクらの猫舌、気持ちいいでしょ♡

ピッタリ吸い付くみたいにこうやって下から上までぇ……にゃろろろぉって♡」

「うっ!!」

 

変化した彼女らの舌は実に気持ちいい。

人間とは違って微細な棘みたいなのが表面を満遍なく覆っており、舌で舐められるとブラシで触られるような感触。

敏感にさせて発情させる淫魔の唾液が合わさってただのフェラも。

 

「すんすん……ふふっ、この臭いたまらないな。女を発情させるオスの香りだ。真面目な顔のわりに興奮しているとは嬉しいぞ。

この世界に生まれていたら間違いなく私達の性処理怪人になっていただろうな」

「これから妹になるんだもん。損した分も取り返さなきゃ。

れろ、りゅれろ、ちゅろぉ……はぁぁ、この臭い好きぃ。ご主人様の次に太くて大きいちんぽ♡早くボク専用にしたいよぉ」

 

前の尻尾でぐるぐる巻きにされた時とは違う。

ねっとりいやらしい舌が肉棒に絡みつく刺激が心地いい。

肉竿をアイスにするような下から上まで唾液をたっぷり塗って舐め上げるソラエル。

特に臭いを気に入ったらしいユリエルは亀頭へキスの雨を降らしてくる。

 

(無視だ無視。深呼吸して、少しでもこいつらのいい様には……)

「もっとこっち見てよー」

「せっかく姿を変えてやったんだ。見ないならちんぽに噛みつくぞ」

「う……」

 

美味しそうに肉棒へ口を触れさせる彼女ら。しかし本質は人間とまるで違う。もし機嫌を損ねれば有言実行で肉棒に嚙みついてくるだろう。

仕方なく目線を2人へ向けると満足した顔でこちらを上目遣いに見つつフェラを再開。

タマタマを唇で甘噛みするソラエルと喉奥まで使ったディープスロートを始めるユリエル。

 

「はむはむ、ちゅう、むっちゅ、ふふ、タマタマも美味しいにゃあ♡れろれろ、んっちゅ♪ 中に溜まった濃厚精子ちゃん達、早く外に出たいよーってドクドクしちゃってるにゃー♡」

「んっぶ! じゅっぶ! じゅりゅりゅろ! ぐっぷぷぷう!!! ……ああたまらん。この頭がくらくらする濃厚ちんぽ臭♡咥えがいもあっていい♡」

 

興が乗ってきたらしい二人のペースがアップ。ユリエルの方は少しヤケになっている気配もあるが。

彼女達が出す淫気にあてられて張り詰めたペニスの鼓動も高まり、一際深くユリエルがしゃぶりついた瞬間に弾けた。

 

(う、イクッ!!)

 

たっぷり2人に作られて溜められた精子が溢れた。射精の気配を察したユリエルが口をすぼめて竿に密着。一滴も零さないとばかりに肉棒を咥え、子どもっぽい外見からは想像できない激しいバキュームで吸い上げる。

 

「んっぶ!? ……んっ、っコク、ゴッキュ、ジュルルルッ!! ブジュルルウ!! 

……ふふっ味も申し分ない。私達のお眼鏡に叶う素敵なちんぽだ♡」

 

口からこぼれた精子まで舐めとってみせる。

小柄な体型も合わせて本当に子猫みたいな愛くるしさ。

敵と分かっていても思わず抱きしめたくなるような衝動が胸にこみあげる。そしてタイミングを見計らったようにソラエルが耳元へ。

 

「子猫には白いミルクって決まってるからにゃー。

━━ほぉら気持ちよくしてくれた猫は褒めてあげないと♡ユリにゃんは撫でられるの大好きなメス猫なんだからにゃあ」

「誰がユリにゃんだ。お前はいい加減私を━━んっ♡ふふっ、中々慣れた手つきじゃないか」

 

ソラエルに導かれて片手をユリエルの頭へ。耳の周りをくすぐり、サラサラのストレートヘアに指を通すと目を細める仕草は本当に猫っぽい。

昔近所に住んでいた人の飼っていた猫がちょうど撫でるとこんな感じだった。

自然ともう片方の手も伸びて顎の下へ。

ユリエルから手に頭を擦りつけてくる仕草がまた可愛らしい。

本来は思い浮かばないような敵を可愛いとか思っている時点で罠にはまっているのだが、ここで気づくことはできなかった。

また片手にスリスリ頭を寄せるユリエルがこちらを見上げて一言。

 

「にゃん♡」

 

猫っぽく小首をかしげて笑う仕草にハートが撃ち抜かれる。というより魔術的な何かで心が奪われたと気づく。

意識はあるのにどこか現実が遠く、上手く思考を回せない。

まるで糸の切れた人形になってしまったみたいだ。

 

「可愛いね。愛おしいよね? だったらこうして撫でてあげるのも当然だよ。

━━褒めてあげた後は子猫にミルクあげないとね?」

(み、るく……?)

「そうミルク。ほらユリにゃんがキミのおっぱいに」

「ちゅっ、ちゅう~」

 

合図を受けたユリエルが今度は胸にしゃぶりついてきた。

舌が触れた途端にピリッと感覚が繋がり、肉棒の亀頭を舐められたような快感が襲う。そのままチュクチュクっとたっぷりの涎を塗られながら舐められ続け、あっという間にちんぽ以上の敏感な器官として性感を得てしまう。

 

「乳首の感度は前に開発したもんね! だから遠慮なく感じていいんだよ♡じゅるる~ちゅっぱちゅっぷ♡」

 

ソラエルも反対の乳首に口を寄せ、こちらはフェラみたいにすぼめた口でしゃぶってくる。肉棒は1つだが乳首は2つ。流れ込んでくる快感は単純に2倍となって、しかしペニスとも違う妙な快感が体の中にドクンと生まれる。

 

(ぅ、頭がなんか上手く……ユリエルの力か? 

気をしっかり持たないとまた━━)

「小難しいことを考えるな……にゃ。お前はもっと気持ちよくなればいい。

ほら私達にミルクを、おっぱいミルクをくれ……にゃん」

 

たどたどしいながらも囁いてくる猫の声。

そしてチロチロ覗く赤い舌と見上げてくる仕草を見るとまた思考がぼやけ、耐えるとか我慢とかの考えが浮かんだ瞬間に霧散してしまう。

 

「可愛い猫ちゃんを撫でてあげよ。ユリにゃん可愛いね~って」

 

促されるまま乳首を吸うユリエルの頭にまた手を当てる。

ふわふわの猫耳が触るとヒクヒク動いて可愛い。腰から生えた尻尾もフリフリ揺れて気持ちいいとアピールしている。

本当に猫を飼っているみたい。

 

「にちゅる、ちゅぺろ……そろそろ大きくしてやらないとな。お前のおっぱい」

 

舌が触れた部分が熱を放つ。

舐めて吸う動きとは逆に、彼女らの舌から藤丸の胸に何かが流れ込んでくる。

分かっていても動けないでただいい様に舐められるのみ。

閉じた空間をこじ開けられるみたいなむず痒さが胸の中に広がる。中を満たす力がゆっくり表に出ようとして、彼女達の存在に吸い寄せられるみたいに胸へ上がってくる。

 

「大きくにゃあれ、大きくにゃあれ♡」

「ミルクを出すに相応しいおっぱいになれ」

 

少しずつ胸が膨らむ。

男の筋肉質なそれからAAAカップ、AAカップ、Aカップ。

良くない何かが流れ込むと胸が膨らみ、空気を満タンにした風船みたいに張り詰める。

Bカップ、Cカップ、Dカップ。

Eに差し掛かったところで膨らむのは止まり、今度は中に何かが熱く熱くため込まれる

舐められてぷっくり大きくなった乳首は舌で巻き付けるくらい固く大きく。ザラザラの舌がフィットするクリトリスみたいな乳首。

特にソラエルが嬉しそうにむしゃぶりついて口一杯に含んでしゃぶってくる。

 

「んっじゅる! ちゅっぱ! ぶっちゅう! ……こんなに固くしちゃって♡

女の子に舐められて嬉しがるスケベ乳首だにゃーん♡」

 

すっかり板についた喋り方で舐めまくってくるその仕草。

まるで肉棒にされるようなそれに反応して、ペニスもまた固く屹立する。

 

「あはっ♡ちんぽまた勃起してるー♡

それじゃあまたボク達の尻尾で……」

「気持ちよく射精したいだろ。心から快楽を受け入れろ」

 

2又4本の尻尾がペニスへ回る。

滑らかの表面をしていた淫魔の尻尾とは違う無数の毛が肉棒全体に巻き付く感触。サラサラきめ細かい毛がペニスに塗られた唾液で張り付き、動く度に何百もの毛の先端で突かれているみたいな刺激。

痛みは少しもなく、それよりまた初めてな気持ちよさが射精感をこみ上げさせる。

 

「髪の毛コキの感触に近いかにゃ? 

でもその顔は絶対気持ちいいって嬉しがってるよね♡」

 

楽し気に尻尾を絡ませるソラエルと対照的にユリエルは本物の猫みたいに乳首をチュウチュウ吸ってくる。

両手で強く握られると中に溜まったナニカ、射精の直前に似たもどかしくも気持ちいいあの感覚が胸と肉棒の3か所で感じられる。

 

「ソラエルに劣らないドスケベなおっぱいだ。あむっ! ちゅう! 

ほらミルクをよこせ、マ・マ♡」

「……っ」

(ださないと……ミルク、あげないと……もうすぐ、出る……!!)

 

体の中に生まれた熱が発散する場所を求めて集まり、舌から注がれる魔力が胸を少しずつ男から女の胸に変えていく。

もう破裂寸前

 

「早く、早く出せ!! お前のおっぱいミルク私に飲ませろ♡にゃあ♡」

「ボクも欲しいなキミのおっぱいミルク。付け合わせにザーメンミルクのお代わりも頂戴ねえ♡」

(ああ……またイク……!!!)

「あ、うわぁあああああ!!??」

 

カリっとユリエルの立てた牙の刺激を引き金に溜まっていたミルクが噴出。

同時にグツグツ煮えたぎったマグマみたいなザーメンも肉槍から迸る。2度目とは思えない射精が2人の尻尾や顔まで降りかかって白く汚した。

プッシュウゥゥゥと射精がずっと続くような感じと快感をさせながら、おっぱいから本当にミルクが流れ出す。

ここまでずっと舐めていたユリエルはやはり離すわけもなく、吸い付いたままでミルクを全て飲み干そうとばかりに力強く吸う。胸から絞り出されるような刺激もまた性感に変わり、気持ちのいい男で味わえない感覚が頭にしっかり刻まれるのに抗えない。

 

(これ……やば……♡)

「んんじゅううう♡♡来たな♡男のくせにおっぱいミルクだしながらイクのか♡

ふふ、だがいいぞ。ザーメンに劣らないこの濃厚こくまろミルク。甘くてこちらもクセになってしまいそうだ」

「れぇろ……んっく。ふふ、雄汁射精も順調だね」

 

しっぽに付いたザーメンを自らの口へ垂らしたソラエルが妖しく笑い、射乳を終えたおっぱいをさらに啜る。黒猫怪人の体はザーメン塗れで所々白く光り、それがかえって彼女の色気を引き立たせる。

尿道に残った精液まで絞られる感覚と似ていて、敏感になっている乳首にはこれも凄まじく強烈な刺激。ちんぽにも尻尾が絡みつき、シコシコ残り汁を搾ろうと運動。

ふわふわの柔らかい刺激が射精したばかりのペニスを優しく刺激し、ぴゅるぴゅる射精。

あわせて魔力にのって肉棒とおっぱいから精子や乳以外も抜けていく。顔からはこれまでの旅で培われた精悍さが、心からは理性が、わずかずつでも抜けてソラエルの口に吸われていく。

そしてそれを全て口に含んだソラエルはグチュグチュ音を立てながらかき混ぜ、ピンク色の魔力に変色させてからキスで藤丸の口に戻す。

 

(そろそろキミからも積極的になってほしいから下準備♡

よく聞いてね藤丸クン。この夢で逢う時だけはボクは敵じゃない。夢の中のボクには正直になっていいの)

(てきじゃ、ない……しょうじきに……)

(そうそう。気持ちよくなったら気持ちいいっていうのは当然だよね。それと同じ。

ボクとキミはこうして気持ちいいことをする仲なんだから。何もおかしくないんだよ)

(おかしく、ない…………)

(夢の中ではボクが言うことを疑わない)

(ゆめ……ソラエル……うたがわない……)

 

頭の中に刷り込まれていく暗示。

射精と射乳の快感で蕩けた頭は既に思考もままならず、壊れたラジオみたいにソラエルの言葉を繰り返す。

首に刻まれた刻印がさらに強く光り、胸にまで紋様が広がって女性そのものの胸を彩る。

 

「にゃはっ! いい感じにおっぱいまで淫紋も成長したね♪ 

射精で余計な男成分も少し抜けて可愛い顔になってきたし……この可愛い顔と凶悪なちんぽのアンバランスさ! 優秀なオスをメスに変える時の醍醐味だよねぇ♡」

 

そして表情が少し翳り、今までの明るさが嘘のように暗くて邪悪な顔に。

 

「まだまだ。現実のメス化が進むようにおっぱいでイかせ続けてあげる。

……ふふっ。ボクだけがキミを救ってあげられる。キミに必要なのはボクだけなんだって早く気づいてよ」

「ソラエル……?」

「あ、ごめんユリ姉ちゃん。もう少し藤丸クンで遊ぼうか」

 

そしてまたおっぱいと肉棒に2匹の猫は顔を埋めていく。

 

◇

 

所代わってストーム・ボーダーの船内。

眠り続ける藤丸の体。首の淫紋がまた光って影の掌が出現。

彼の顔や胸に分裂して沈み込み、闇の魔力をまた少し浸透させていく。

顔からは険が取れた中性的な顔。髪も肩口辺りまでの少し伸びた大人しい髪型。胸が就寝用のシャツを押し上げて膨らみ、より不可逆的な変化を起こしてしまった。

翌日、体の異変を把握した藤丸とカルデアスタッフで一悶着あったのだが、結局女性マスター用の服なんて持ち込んでいなかった為に男用のまま鹿児島へ向かうこととなった。




Q:猫プレイと猫語は必要だったのか?
A:ソラエルにいろいろな格好をさせたかった。後悔はしていない。

今回で九州は陥落しました。日本おしまい。
正直戦闘シーンとかいらんだろと思いつつ、妖精騎士達も好きな人はいるわけなんでちゃんと敗北するところは書きたくてこうなった。
リズエルとアズエルの宝具については作中通りです。
それぞれの出演作での悪堕ちした自分の姿を重ねることで力を増す宝具。
プリズマ☆イリヤの「夢幻召喚」と大体似たようなものと思ってください。
彼女らの場合ここに加えて空想樹に繋がってるせいで出力無制限なのがもっとヤバいけども。

次回はバーゲスト調教・悪堕ち回の予定。
ストーム・ボーダー防衛戦でもう一人脱落予定ですが、エロがメインでない回が続いてもつまらないですし。
ネモについてはルクスリアがふたなりアナルメス堕ちさせましたが、バーゲストには本格的に怪人が調教で関わってきます。
どんな怪人が関わってくるのか皆も想像してみてね。
後バーゲストが自分の呪いで秘策を練ってますがそれが何かも。
ではまた次回。
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