※この作品はR-18です。

エクスティア×FGO 異界魔導帝国ロギア・アース~堕ちた人理の希望~   作:王天君

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エクスティア×FGO第7話です。
鹿児島から逃げ延びるカルデア。残された希望は何かがあるかもしれない北海道。しかしそれを簡単に帝国が通すわけもなく……
そしてまた藤丸の調教が進みます。


第7節 藤丸の奉仕調教/ストーム・ボーダー防衛戦

北海道への逃避行

鹿児島から離脱したカルデア一行。種子島、硫黄島付近の島陰に隠れて光学迷彩を展開。束の間の休息をとりながら今後の方針を話し合うことになった。

ここまでに得た情報や希望となるものは全て失った。託された日本人救出は出来ず、助けようとした人間の裏切りにあってしまった。

さらにカルデアにとって大切な仲間であるバーゲストが鹿児島で殿となり消息不明に。藤丸とマシュは最後まで彼女が追い付くのを待つと主張するも、ゴルドルフの所長権限による出航強行で置き去りにしてしまった。直後に起きた桜島噴火で九州南部が消滅して彼女の退場が確実となる。過程と結末から一部の心には『人間を助けようとして仲間を失った』と最悪の記憶が残ることとなった。

以上の結果を踏まえ、ゴルドルフと一部の職員は現時点での日本異聞帯から脱出を主張。

反対に藤丸やマシュ、ダ・ヴィンチとネモはまだ攻略の手がかりがあるかもしれない北海道へ向かうべきと主張。

(妖精國の面々はあくまで自分たちは力だけと積極的な意思表示を避けた)

議論は白熱するも脱出したところで状況好転の糸口はない事実と時間的余裕も残っていないために北海道行きが決まる。

考えられた航路は3種類。

①長崎県や対馬島の側通る西側迂回ルート。

②直線距離を重視した四国や本州の上を通る直線ルート。

③西側と逆に本州の南から回り込む東側迂回ルート。

西側はセイファート擬きの側と関門海峡に残っているはずの敵勢力からの攻撃を受ける恐れ。

直線は敵地のど真ん中を通ることによる危険。

東側は本州から距離を取れるが敵の本拠地である千葉県の付近を通らなくてはならない。

どれをとっても簡単な道ではなく、苦難は必至

そして選ばれたのは━━

 

◇

 

裏切り者達の悪だくみ

ネモ用のマイルームの中。

ネモ・ポセイドンは襟に忍ばせた通信機でダ・ヴィンチの改造を進めるプロフェッサーと会話をしていた。こっそり拝借した藤丸の制服を抱いてベッドに横になり、思う存分その匂いを堪能している。

 

「すぅー、はぁぁぁ……藤丸、藤丸ぅ……好き…好きだよぉ…匂いだけで僕のメス穴がキュンって…それでプロフェッサー、状況は?」

『各ブロックシステム正常。未だに私達が裏切ってると気づいた人員無し。大好きな藤丸さんへの侵蝕も続行とすこぶる順調ですねー。女になっていく彼を見るのは飽きないので助かりますー。

ところでキャプテン、本気で北海道に向かうんですかー?』

「お姉ちゃんからの命令通りだよ。向かわないわけにはいかない」

『私としてはもう反乱起こして全員取り押さえてしまうのもアリと思うんですがー』

「だめだ。迎えと言われた以上、やるなら北海道についてから」

『だからって一番襲われる可能性が高い直行ルートですよー。九州の侵攻軍から離れる分警戒は薄い……なんて説得しましたけど本気です?』

「まさか。陛下のお力に四天王もいるんだ。間違いなく僕らへの警戒をしているはずさ。やられながら上手く一人か二人、またお姉ちゃん達に引き渡したい」

『了解ですー。適当にやられてもらいますかねー。

……ところで私達がいるからって手加減してもらえる可能性は?』

「ないよ。手を抜いて疑われたらその方が問題だってさ」

『ですよねー。命がけにならなきゃいいんですが』

 

◇

 

ルクスリアの心蝕

いつもと同じ闇の中。

目覚めると出現していたベッドの上だと藤丸は気づいた。

さらに侵蝕が進んでしまったせいなのか、今度はベッド以外に床と壁まで出来上がっている。床はフローリングで壁は白い壁紙で覆われている。どことなくカルデアに来る前の自宅の部屋と似ていた。

 

「これは」

「貴方にとってこちらも居場所になりつつあるということよ。マスター君」

「……その声は」

 

声でようやく自分が誰かの胸を背もたれ状態にしていると気づく。

メロンみたいに大きくて、ふにょんと存在を疑うレベルで柔らかい胸が背中に触れる感覚。簡単に形を変えて、それでいて体を支える反発力も持ち合わせている。乳房の貴賤なんて知らない藤丸でも分かる最高級のおっぱい。

そして心まで飴みたいに溶かしそうなこの優しそうな声。酔っ払いそうな甘さある匂い。

 

「ルクスリア」

「うふふ、名前覚えてくれたんだ。お姉ちゃん嬉しいわ」

「誰が姉だよ!」

「クスクス、面白ーい。ただの人間が私に怖気づかないんだもの。やっぱり君も特別ね」

 

口で反論しても今他の人に姿を見られたら子ども扱いを嫌がる弟とその姉にしか見えないだろう。後ろから抱きしめられつつ膝の上に座らせられているのでは。

 

「前は声だけだったのに顔も可愛らしくなって……ふふっ、ほっぺも女の子みたいに柔らかい」

「うっ、や、やめろよ!」

「おっぱいもいい感じに育ってるわね。ソラエルと同じくらいの巨乳なのは君の趣味?」

「ひゃうっ!!? ちょ、揉むな!!」

 

いつも通りに裸で追いやられた空間。

両手でもにゅもにゅと作られた胸を揉まれると、使っていなかった回路が起き上がるように少しずつ痺れや疼きが生まれだす。

 

「女の子みたいな反応するのね。くすくす、照れる相手は久しぶりで新鮮♡」

「嫌だ、んひっ、って、うぅ、言ってるんだよ!」

「嘘はダァメ♡」

「んぁっ♡乳首ぃ!」

 

みぞおちからつつぅっと撫で上げた指が固く勃起した胸の先に触れる。一度離れ、そのまま釘付けになった視線の先で近づいて離れてをくり返した後にキュッと摘ままれる。

 

「あうっ♡」

「もう声も女の子。男なのにおっぱいで感じる恥ずかしい子なのかしら? 

でも女の子なら胸で感じるのも当たり前だから変じゃないわよね」

 

今度はカリカリと両胸の先端が爪で引っ掛かれる。細く白いルクスリアの指が乳首を弾くと求めていた刺激を与えられた満足感。しかも掌全体で胸を揉みこむ仕草も慣れたもので胸の快感を呼び起こす巧みさ。

程よく気持ちよく乳首が張ると見逃さずに爪でピーンと弾かれる。たったそれだけの動きが言葉を発することさえできない快楽。

 

「ふっ、くっ! あっ!!」

(ソラエル達より……上手いっ! 身体が反応するのを止められない!)

「乳首コリコリさせちゃって。もうすっかりメスの肉体。

マスター君の正直者乳首を……えいっ!」

「う……あああああっ!!?」

 

勃起していた乳首が胸に埋まるほど強く押し込まれた。敏感さが高まっていた乳首の快楽だけでなく、胸の中に生まれていた熱まで連鎖的に発火。いつもよりずっと強い熱を抑えきれず、ビクビク体を震わせて絶頂させられてしまう。

何故か射精の感覚は訪れず、代わりに全身から力が抜けて動けない。もたれかかる形でルクスリアに体を預ける形になってしまう

 

「あらもうイっちゃった? 

思ったより敏感になっていたのね」

(う……くそ……あ、れ……)

 

彼女を包む甘い蜜の香りがより強く体内へ。難しいことを考えようとしても意識が繋がらず、ぼやけた夢を見ている気分。

 

「うふふ、気持ちよさそうな顔。

それじゃあ始めましょうか。今日のメインディッシュ♪」

 

ルクスリアの指が首の淫紋に触れる。そこから魔力が流し込まれると紋様が形を変えて既に開発された胸や手を妖しく彩り、更に下腹部まで網目模様に肌の上を覆っていく。

上にも紋様は手を伸ばし、触手にも似た先端が女性化の進んだ藤丸の顔へ浮かぶとそのまま肌の中まで犯してくる。

 

「ソラエルの淫紋も順調。さぁマスター君、もっと楽しい夢を見ましょう」

 

紋様が顔を覆い尽くして額にはひし形の結晶が出現。そこに指で触れられると頭の中まで直接触られているような不思議な感覚が襲ってきた。

 

(あ……ああ……)

 

ルクスリアが広げた翼から触手が生え、先端を男性器の形にしたそれが目の前に突き出される。

 

「マスター君、今君の前にあるのは何かしら?」

(何って、ペニスで……ちんことか……)

「違うわ。これはちんぽ。私達が大好きなオスの象徴であるおちんぽ様。

君も大好きでしょう?」

(そんなわけ……)

「本当? 

よく見てみなさい」

 

ずいっと目の前に突き出される触手チンポ。匂いや形、どれも自分の体についているのだから見せられるまでもない。

そう、こんなもの━━

 

「すっごくエッチな形をしてるわよね、ちんぽって。まんこをかき回すエラもあるし、亀頭は女の子宮を抉ってやるって征服感に溢れて鋭いし」

 

耳元に囁かれる言葉を意識して見ているとだんだんと見え方が変わってくる。

 

「亀頭から滴るカウパーを塗ってあげるとすごくエッチ。漂う臭いもメスを孕ませてやるって男らしさを振りまいているの。

吸ってみましょう。大きく息を吸いなさい。ほら━━」

「すぅ……」

 

人間とは違う男性器の臭い。何なのか分からない磯臭さや生臭さと好きになれるわけがない。

なのに。

 

(体の奥が……熱くなってくる……)

「ちんぽの臭いで興奮したのね。やっぱり素質があるわ。

もっと吸いなさい。今度はもっと近くで」

 

近寄ってきたちんぽが顔に触れる。カウパー液を鼻っ面に塗り付けてペチャペチャ両頬も口も額も汚されていく。

そんなオスの臭いで汚される行為に怒りが湧かない。

呼吸の旅に体の奥まで入っていくちんぽ臭。男の濃い部分を煮詰めたようなそれが肺から手足にまで広がるようだ。スンスンと鼻を押し付け、深呼吸で吸い込むと体の感覚が目覚めていくような気さえする。

 

「クスクス。ちんぽの魅力に目覚めたみたいね」

 

ルクスリアの言う通りだった。

一度気になってしまったちんぽの臭いを受け入れた体はより進んで取り込もうと近づく。

嗅ぐとカッと下腹部が熱くなり、体温は上がって息もどんどん早くなる。海水をがぶがぶ飲んだみたいに喉が渇いて苦しいのに、ちんぽ臭で感じる興奮や熱は頭を犯してやっぱり体はくっついたまま。

嗅げば嗅ぐほど悪化するのに離れるなんてできそうもない。

でも苦しい。嗅いでいるだけでも十分魅力的だがこの飢えを満たしてくれるほどじゃない。

 

「だったらしゃぶりなさい」

(しゃぶるって……ちんぽを……それは……)

「どうして? 

欲しいものを求めてなにが悪いの?」

(だって……俺は男で……)

「うふふ。おっぱいでイったのに男の子なの? 

ちんぽで頭一杯になっているのに男の子だっていうの? 

━━欲しい気持ちを自覚しただけで上出来ね。サービスしてあげるわ♡」

(んぼうっ!?)

 

ルクスリアが笑ったかと思えば口の中に無理やり触手チンポが入り込む。

拒絶や動揺より早くたっぷりのカウパーで汚れたちんぽの味が口の中に。

 

「まずはカウパーから。まだ飲んじゃダメよ。たぁっぷり舌でかき混ぜながら口全体で味わうの」

 

言われるままに体が動く。

舌に乗った亀頭をぞりぞり擦り、溢れてくる先走りを舐めとりながら口の中に塗りたくる。べっとり口内粘膜も歯茎も舌の裏にまで汚汁がついてニチャつく感覚。汚いと分かっている一方で、粘っこいその感触が口の中に広がるとまた下腹部が熱くなる。

 

「先走りの味はどう? 

ちょっとしょっぱくてクセになるよね」

 

分かる。分かってしまう。

彼女の言う通りで少ししょっぱくて美味しいとは言い難いのに不思議とまた口にしたくなる味。飴を舐めるみたいに鈴口に触れるとまた中からとろりと流れ出てくれる。

 

「よく味わったわね。いいわ、飲みなさい」

 

頭を撫でられながらそう言われてごくりと喉の奥へ。涎との混合液を飲み下すと匂いの何倍もの濃密な味と匂いが鼻にまで逆流。

食道も喉も胃も、頭の中までちんぽでシェイクされているみたい。口から今での消化器官でちんぽを味わう感触は思わずクラクラしてしまいそうなほどの甘美な感覚。

汚れの広がる感じが自分という存在が穢されていくようで拒むべきでも何もできない、

だからたっぷり味わってから呑み込み、唐突に浮かんだ感想も当然のもの。

 

(……ちんぽ汁、おいしい……♡)

 

それまでの男だからって残っていた小難しい見栄や倫理観の発想が頭から消える。

すっかり頭の中まで熱に浮かされて気づくと自分からちんぽに吸い付いていた。

 

「んんじゅっ、じゅっる、じゅっぷ、ぐっぽ、ぬっぽ!!」

 

頬肉を窄めて口を密着させ、唾液を潤滑油にして頭を動かしながら前後に扱く。ソラエルとユリエルにやられたフェラのせいでどうすればちんぽに気持ちいい刺激となるかは分かっていた。

 

「うふふ! ちんぽに本気しゃぶりしちゃうんだ。その調子。君の全部でおちんぽ様に奉仕するの。こんなに美味しい先走りをくれる感謝を示さないとね」

 

また頭に声がすんなりとはいってくる。

もっともっとご奉仕しないと。

あの美味しいちんぽ汁をたくさんくれるのだから、気持ちよくなってもらうのは当然の事。

丹念に心を込めて口を犯す肉槍に奉仕していく。

触手も昂ってきたのか太さと固さが増し、元の倍くらいに膨れ上がる。

 

(すごっ……顎が外れそう……でもしゃぶりがいがあって……なんだろ、立派っていうの? 

……すごい)

「良かったね。触手ちんぽも君が頑張ってしゃぶってくれて喜んでるよ。もっと熱心にしゃぶらないと。

それにそろそろ子宮(ココ)感じてきたんじゃない?」

「へ? ……ふひぅ♡」

 

指で下腹部を押された途端、ルクスリア達と同じ淫紋がそこに浮かぶ、さらにまるで性感帯に直接触れられたみたいな強い快感。たまらず声まで出てしまう。それほどの快感。

わけも分からず見ている先でゆっくりとルクスリアの指が下腹部の淫紋に触れる。一撫でされるだけで射精するような快感に襲われて、震えながらそれでもちんぽだけはしゃぶり続ける。

 

「やっとここまできた。君の中に架空の子宮を感じるでしょう? 

もちろんまだまんこはないから入れられないけどね」

 

確かに舐めているだけで下腹部に熱が集まっていく気がする。

喉奥まで亀頭が触れる感触も粘膜や舌をカリ首がこそぎ取っていく感触。美味しいと感じるだけだったのが今は確かな快感につながっている。

頭を揺さぶる衝撃。

鼻まで抜けてくるオス臭。

もう忘れられない先走りの味。

しゃぶってもビクともしない頼もしい固さ。

子宮が脳へと繋がってもうちんぽなくして生きていけないと叫んでいるみたいだ。

 

「欲しくてたまらないわよね。

君は知っているもの。ちんぽを頑張って気持ちよくすれば中から何が出てくるか」

 

そうだ。先走りで終わりではない。

ちんぽからはもっと濃いオスの猛り。ザーメンが出る。

 

(ま、また子宮がキュウンって……♡)

 

口に出してもらう光景を想像しただけで子宮が響く。期待と興奮に彩られたそれがもし現実にあったら愛液を垂れ流して迎えていたことだろう。

 

「欲しい? 

熱くて臭くてでも先走りよりずっと気持ちいいオス汁精液。胃までたっぷたぷにしちゃう射精を受けてイきたい?」

(欲しい……ザーメンをたくさん注がれたらもっと気持ちよく……子宮も)

「じゃあおねだりしなさい。

私にご主人様のご褒美ザーメンたっぷり出してください。喉で感じてイキたいんですって」

(ご主人様の、ご褒美ザーメン……たっぷり、出してください。喉で感じて……い、イキたいんです!!)

 

最後は絶叫みたいだった。すっかり色に支配された頭で子宮の感覚に流されるまま媚びたセリフを口にしてしまう。

正気であれば絶対に言わない言葉も思考を支配された今は軽々と口にしてしまう。そして例え誘導されたとしても一度口にした言葉は頭の中で自らを縛る楔であり呪縛となって魂に巻き付いていく。

 

「うふふ!!! 夢で意識を奪ったにしても上々ね♡奉仕の喜びも刻まれたでしょうし。

━━受け取りなさい。それは君が頑張ったご褒美なんだから」

 

ぷくっとさらに一回り触手チンポが膨らみ、射精を期待した口はより喉奥まで咥えて受け止める準備をする。

それからほどなくして熱々の迸りが一気に流れ込んできた。

 

「んっぶ!? ぶむぅ! んんぶおおおおお!!!」

 

一瞬で口は満タン。

しかし吐き出すなんて思い浮かびもしないで必死に嚥下。ごっきゅごきゅ喉を鳴らしながら初めての白濁液の感触を味わう。ベタベタでヌチャネチャと糸を引くゼリー状の液体。ダマになった飲みにくい部分が歯に絡みついて喉に流すのも一苦労。

一つもいい印象なんて持てないはずなのに口にしていると胸が高鳴る。

ミルクサーバーから直飲みしているようにドプドプ尽きない精液が喉も胃も犯していく。

飲んでも飲んでも終わらない。最初は流し込まれるから飲んでいたのに、いつの間にか鈴口を舌でほじって求めてしまう。

内臓が火傷しそうな熱さが内臓を犯して広がる感触。邪悪で気持ちのいい侵蝕される悦びを受けた子宮は激しく鼓動。自身のペニスに触れないまま射精時のような快感がこみあげる。

 

「イキなさい」

(イク、ザーメン飲まされただけで俺━━私(・)……イク、イっっっっくぅぅぅぅぅ…………♡)

 

飲精しながら軽く体が震える。それが女性の軽い絶頂だと本能で理解して、飲みながらイき続けた。

触手の射精は終わり知らずで、止まった時のは5分後。

全て飲み干した立香(……)のお腹は胸と同じようにポッコリ膨らみ、ザーメン臭いげっぷまで漏らす始末。

余りに無様な姿でも、この時の藤丸の中にあったのは体中に満ちてくるザーメンを飲まされて絶頂した心地いい虚脱感だけだった。

 

(ちんぽ……気持ちいぃ……♡)

 

◇

 

意識がぼやけ、もう起きているのか寝ているのかも分からない藤丸を抱いて妹達にするようにルクスリアは頭を撫でた。

ソラエル(末妹)がバーゲストの調教準備で忙しいので代行した次第。ナイオーロ以外のオスは家畜にしか見えないが、藤丸の様な男をじっくり調教してメスに堕とすのはやはり楽しい。自分が最初に目を付けた相手でないのだけが残念。

 

「どんなに高潔な意思も積み重ねた経験も下ろせない責任感も快楽の前では脆い砂の城。

それでもここまで時間がかかるのはやはり特別、そういうことなんでしょうね。ふふっ、君が私達の仲間になってからがまた楽しみになったわ」

 

更に輝きと深みを増した淫紋がなぞる。既に半分以上侵蝕済み。彼が真の意味で堕ちる日も遠くないはずだ。

もっともまだ課題が残っている。

 

「まだまだ完全体には程遠いわね。理性を奪った状態だから当然でしょうけど、本心でご主人様に抵抗する意思は消えていない」

 

その心の強さは美点だけど今は面倒ねと自身の頭に手を添える。射精懇願の言葉も理性の制御をかなり緩めたが故の成果。素面で主人に会わせても確実に敵対する。

今のうちに少し手を打っておいてもいいだろう。

そしていたずらを思いついた子どもの様にクスっと笑う。

 

「頭の中にもう少し手を加えましょうか」

 

彼女の両手が藤丸の頭を抱いて耳元に口を近づける。

 

「教えて頂戴。君はどうしてこれまで旅をしてきたの。なんで折れずに戦ってこれたの?」

 

促されるまま、藤丸の中の答えが返る。

 

「まだ……終われないから……終わっていいも諦めていい理由も見つけてない。

俺は生きる為に……多くの人に支えられて、ここまで来た、カルデアのマスターだ」

「始まりは君の責任でもないのに?」

「……それでも、選んだのは俺だから」

 

実に清々しい回答。他人が生きる世界を救うための行動を自分の為の動機でやっている。

だからこそこんな歪な彼を妹は救ってやろうとしているんだろう。主人に選ばれて眷属となったソラエルと、選ぶしかなかった藤丸立香。

やはりどこか妹と重なって見えるところがある。

そんな子だから、ルクスリアも堕として(救って)あげたくなる。

 

「終わる理由が欲しいなら与えてあげるわ。負けてしまえばいい。

ここまで頑張った、自分は精一杯やった。でも勝てなかった、それでいいじゃない」

「敗北……」

「そして敗北した君に手を差し伸べてくださるお方こそ我らの主、偉大なるナイオーロ様」

「ないおーろ……」

「ナイオーロ様は君の敵じゃない。いずれ誰よりも大切になるお方。大事な大事な後輩さんよりも。

目が覚めた時には今の話は忘れているわ。でも君にとってナイオーロ様は敵じゃない気持ちも心に残り続ける。そして因子がもっと染み込めば……んっ」

 

奉仕の快感を馴染ませ、一層少女に近づいた藤丸の頬に軽くキス。

因子の侵蝕でまた軽く絶頂した彼の頭を抱いて笑った。

 

「心の奥底で君はあの方と繋がっている。君を救ってくれるのはナイオーロ様だけ。

そして君が堕ちた時、忌々しい異星の神も消えるわ。うふふ……あはははははは」

 

どこまでも最上位淫魔の笑い声だけが闇に響き続けた。

 

◇

 

強行突破

明朝。

種子島近海から浮上したストーム・ボーダーはそのまま一気に加速して直行するルートを選んだ。

途中に通過する四国に本州とリスクは高いが完全な警戒態勢が敷かれる前に突破するとの考えだ。

しかしそんな攻めの姿勢な作戦とは逆で船内の空気はかなり悪くなっている。侵入直後なら何が何でもというやる気で満ちていたカルデアスタッフ。しかしあの頃に比べて士気は嫌でも下がってしまっていた。

成すすべなく逃げ惑い、頼みの綱だった妖精騎士も敵に敗れたときたのだから当然だ。体調不良を理由に部屋へ閉じこもった職員もいる。

それでもブリッジで胸を張れるゴルドルフはやはり所長として優れた能力を持つ人物だと藤丸は思う。

 

「キャプテン。問題なければどの程度で北海道に着くのかね?」

「本来の速度なら15分。ただこの異聞帯の影響で性能ダウンしている面も考えると1時間は」

「ふむぅ。果たして何事もなくたどり着けるのか……」

「さぁね。僕らはどんな時も自らの役割を最大限実行するだけさ。

ダ・ヴィンチ。対戦闘用意は?」

『モルガン、バーヴァン・シー、メリュジーヌ、3騎ともいつでも戦えるように準備OK。空中戦の警戒もしてるよ。

マリーンズ、見張りよろしく!』

『アイ・サー!!』

 

周りはいつも通りに戦いへの準備を進めていく。バーゲスト一人の離脱も痛くはあっても致命的ではないから当然の事。

一方でそれを見ていた藤丸はいつもほど意思が持てないのを感じていた。理由はやはりまた昨日の夜に見た夢のせいだろう。

体が女性に変えられていくソラエルの呪い。その影響だけでなく、彼女らの訪れで心が少しずつ暗く澱んできているのを無視できない。

 

(ダメだ。バーゲストも俺達の未来を守るために戦ってくれたんだ。もっと頑張らないと)

『元気ないねー藤丸クン』

「お前ほど呑気でいられないんだよ」

 

隣に座ったミニソラが気軽に語る。こちらが言い返しても反応してもらえたことに喜ぶのでタチが悪い。

隣で椅子に座って顔を赤くしているマシュの様子もおかしい。昨日は口元を押さえていたのが今日はずっと腰のアーマーの後ろを時々触っている。何かを思い出すみたいにゆっくり熱の籠った手つきで。本人も夢を見ているみたいな表情をしているのはどんな心なのか。

マシュが夢で何かの影響を受けているのは藤丸も知っていた。ネモ・ナースから患者同士の心を近づけるためにと教えてもらったのだ。同時に解呪の方法はかけたソラエルの言葉に従うしかないとも。

 

「……そうだ勝たないと、勝って」

『本気で勝てると思ってるの?』

 

ミニソラの言葉が頭を巡る。

未来の自分への不安がなぜこうも頭に浮かんでしまうのだろう。ただの誘惑を振り払えない自分の弱さが嫌になる。

 

「藤丸?」

 

いつの間にか傍に来ていたネモが心配そうな表情。こちらの顔を覗き込むために体を傾けた彼から長い髪がさらさらとこちらにかかり、女性のような透き通る美しさに一瞬誰だと脳がバグる。

 

「どうかしたかい?」

「いや……ううん、隠し事しても仕方ないよな。ちょっと考えちゃってさ。

このまま勝ったとしてその先は……って思っちゃったんだ」

「藤丸……」

「わかるものか。それでもやらねばならんのだ」

 

参加せずとも聞いてくれていたらしいゴルドルフが言い切ってくれる。

そうだ。やるしかない。

やらない選択肢はない。

でも……勝ててもそれでどうしたらいいんだろう。

 

(もしソラエルにもルクスリアにも皇帝にも勝って……異星の神にも勝って……その後、どうすればいいんだ?)

 

失意の庭でも見せつけられた自分の中にある絶望。

乗り切りはした。

それでも完全に拭い去れたわけじゃない。

どこかから誰かの声が聞こえた気がする。

 

(終わる理由が欲しいなら与えてあげるわ。負けてしまえばいい。

ここまで頑張った、自分は精一杯やった。でも勝てなかった、それでいいじゃない)

 

そんなもの望んでいない。そう言いきろうとして振り払えない自分。

こんなの思っちゃいけないのに、頭のどこかで堕落へ誘う声がするのだ。

 

(マシュ……)

 

こういう時、一番意見を聞きたいのはマシュ。しかし彼女はというとお尻を抑え、荒い息で盾を重そうに構えている。これ以上の心配はかけられない。

バーヴァン・シーも体調不良が続いてモルガンが付きっ切りになっている。一体何が起こっているのか。状況は悪くなるばかりで心も曇る。

そんな不安を吹き飛ばすように少し明るい笑顔でネモが隣に座る。

 

「ネモ、指示は……」

「ちゃんと気は配ってる。それにマスターの体調管理も怠れないさ」

「ネモのマスターはシオンだろ」

「君をマスターと思っちゃいけないのかい?」

「そんなことは……」

 

藤丸の反応を見たネモがクスッとからかうみたいに笑ってみせる。口元に手を当てて笑う仕草も驚くほど様になっている。男の視線を惹きつける笑い方、まるで淫魔のリリスティア達みたいな。

まさかな。

彼は鹿児島の近くになってから時々女性以上にエロチックな表情を浮かべるようになった。

性器の名前を言ったり、夜這いしたりしてくるわけじゃないのだ。ただペンの尻を口元に当てる仕草や椅子に座りながら片膝を抱く姿が妙に艶めかしい。それも藤丸が見ている時にわざとこちらの視線を誘うように足を組み替えたりしてくる。

ソラエル達に性欲を刺激されている身としてはかなり危険だからやめて欲しい。ホットパンツから見える足のラインだって十分に性的。どうしてあんなに素知らぬ顔が出来るのか。

 

「っ」

「藤丸(マスター)……他のサーヴァントは知らない。でも僕は君のサーヴァントだ。君の決断を優先する。もし諦めたいなら……楽になりたいなら言って。どんな答えを出しても僕は君を見捨てない」

 

そばに来ていたネモの瞳が妖しく光って体を寄せてきた。膝に乗せた手にそっと彼の掌が重なる。

外を警戒して誰も見ていない2人の主従の位置。

ネモの唇が動けない藤丸の首筋へ近づいていく。ネモの口から尖った牙が光るのも、金色に変色した瞳も死角になった藤丸からは見えない。

 

「藤丸…………(苦悩に揺らぐその表情も可愛い……欲しい……君の傷ついて折れそうな心、僕が包んであげたい……キスくらいしても…)」

 

首筋にその牙が突き立てられようとした時、ブリッジの窓の外が視界を潰す白一色に染まった。

追って凄まじい振動が襲い掛かって船体がガクガクと揺れる。緊急事態を知らせる非常灯が点灯。警告音まで鳴りだして嫌でも何かとんでもない事態が起きていることを伝えてきた。

 

「ええい今度は何だ!」

『正体不明の高エネルギー体が船体スレスレを通過! 直撃は回避してる! でも!』

『後方に高エネルギー体着弾! 種子島が消失!!』

「な、なにぃ!?」

『あー……そろそろと思ったけどやっぱり撃ってきたか』

 

後方カメラが映されると観測班の言葉通り、隠れていた種子島のあった場所が円形に抉られて跡地へ海水が流れ込んでいる。

島を丸ごと消し去る砲撃。

宝具としてもここまで出来るような英霊はそうそういない。

一体何がと思ったところでプロフェッサーからの報告が入った。

 

『解析完了。今のは高濃度の魔力砲撃ですねー。各ブロックからの被害報告収集中ですー』

「……せっかく」

『キャプテン?』

「なんでもない! こちらネモ! エンジン、状態は!?」

『駆動問題なし! 故障、損傷共になしだ!』

「プロフェッサー攻撃してきた相手の位置は!」

『座標特定完了ですー。本艦より距離約1500km! 東経139.38.33、北緯35.26.52……汎人類史で神奈川県庁が位置する座標ですねー』

 

やはり異聞帯側の勢力下の地点。

しかしそこでプロフェッサーの報告におかしな点があることに気づいた。

 

「待って、おかしくない? 

俺達は鹿児島の近く。神奈川から鹿児島は狙えないでしょ」

「無理ですねー。普通だったら」

『……いや、どうやらその普通じゃないことを可能にする用意があるみたいだよ』

「ダ・ヴィンチちゃん?」

『光学カメラの限界まで望遠で捕捉した。対象は上空500kmにいる。

全員確認して。北海道へ到着するまで、もしくは到着しても私たちはアレの脅威にさらされ続ける』

 

そしてメインディスプレイへ全員が共有できるよう写真が表示される。

 

「ア、レは……」

「アトランティスの……」

『ボクらの切り札の一つ。果たして誰も欠けずにいられるかな』

 

呑気なミニソラの補足が最悪の可能性を完全なものにする。

覚えのあるその造形に、誰もが思わず息をのむ。

弓引く女性のようなそのフォルムには嫌な思い出があった。

さらに追い打ちをかけるように一方的な通信回線が開かれた。

 

『こちら帝国四天王リリスティア四姉妹が三女、リリスティア・ユリエル。聞こえるか、汎人類史の逃走者たち』

 

◇

 

最後のリリスティア

時間を少し巻き戻し、カルデアが鹿児島近海の海で息を潜めていた夜。

ルクスリア、リズエル、アズエル、ソラエルはバーゲストを捕獲して帰還。

洗脳調教の開始や代わりに調教の引き受けなど役目を追う彼女らと入れ替わりで帝都を出た人影があった。

他のリリスティアと同じ翼と尻尾と淫紋。

同じく細見の槍を構えた少女の名はリリスティア・ユリエル。

四姉妹の三女にして姉妹達の留守を任されていた最後のリリスティア。

一際小柄な体で空を飛んだ彼女はほどなくして横浜に生えた空想樹擬き、メイオール・レプリカへと到着。

深夜にもかかわらず、麓に作られたコロニーで働く怪人達と責任者が出迎えた。

 

「お待ちしておりましたユリエル様。躯体のメンテナンスと戦闘用分化は終了しております。いつでも起動していただいて問題ございません」

「助かる。管理している奴隷たちからのPP搾取は?」

「委細滞りなく。今月もノルマを達成させております。『下賜』による帝国人化実験も順調でございますれば」

「島根とここが適正化では拠点だ。対馬のように工場化できるように研究を続けろ」

「御意」

 

進捗確認と戦闘準備を終えさせ、自らはレプリカの下へ。

メイオール・レプリカの下にあるコロニーでは住民たちが怪人に管理される。

しかしそこには暴力や罵声はない。ただ穏やかな植物のような生活が続いているだけだ。

中国異聞帯を複製したこの場所では住民たちは常に満たされた状態で生活することが許されている。

ただ第一次産業に従事させ、帝国人の生活を支える為の労働が喜びと洗脳されて働かされる。同時に置かれた環境によるPP抽出量変化計測の為のモデルケースでもある。

 

(やはり安定した環境で働かせる方がPPの出はいい。無駄な労働力なら使い道もあるし、やはり今後は怪人化以外に帝国人化も視野に入れるべきだな。

……さて本番だ)

「【虚構装填(パラレル・インストール)】」

 

懐から取り出したカードで宝具を発動。

リリスティア共通の衣装が弾けて闇の魔力があらたに衣装として再装着されていく。

肩から展開されるロング手袋。太ももからつま先まで覆うブーツと一体化したタイツ。どちらも緑色をアクセントにしていたリリスティアと違って紫色地に赤色のアクセント。

胴体部は全て手袋等と同じハイレグスーツで露出なく隠し、胸、首、肩、手、太ももに赤いレンズを嵌めた結晶パーツが装着。

腰回りには翼が再度生えて尻尾も尾てい骨から出現。股間回りの布は一部消滅して元通りのハートの前張りを装着。

最後に頭へ同じく赤色のバイザーがはめられて変身終了。

黒い眼球に金色の瞳を嗜虐的に歪め、はるか遠くの敵を見つめながらニヤリと笑う。

 

「着装エクスレイヴ・ユリエル……さぁ狩りの時間だ。起動しろ【聖駆】」

 

ブンっと主の声に従って起動音が鳴るとコロニー上空に影が出現。直径1㎞を優に超える巨大な影。

光も透過する完璧な光学迷彩が剥がれ、内部から超大型の球体が姿を現した。

いくつもの機械を繋げて構成される球体。機能美などとは無縁な必要なものを次々に取り入れて巨大化させた不格好ですらある姿。

しかしそれを知る者が見れば一目でわかっただろう。

これは中国異聞帯で始皇帝が本体としていた巨大頭脳の聖駆。そのレプリカだと。

聖駆から管がいくつも伸びてユリエルのバイザーへ接続。さらに全身の増加装甲へもケーブルが繋がれて規則的な光のラインを装甲表面から放ち始める。

 

「外部情報入力凍結解除。弾道軌道予測演算処理システム【帝宝】駆動開始。プライオリティをユリエルに変更。狙撃型星間戦闘機へのデータリンク開始」

 

同時刻、空想樹もストーム・ボーダーも超えるはるか上空。

地上500㎞の位置に存在していたソレもアイラインに薄緑の光を灯し、静かに目覚めの時を迎える。

地上に向けて弓引く流線形。おどろおどろしく、同時に神秘的な雰囲気を纏う汎人類史に存在しない金属で組み上げられた星を狙う戦闘機。

その名は。

 

「主の敵を狙い撃つ。狙撃型星間戦闘機(アルテミス)・レプリカへと同調。照準システム、火器管制システム、オールグリーン。聖駆との周辺環境データの相互通信完了。射撃精度98%。

━━仮装再現宝具【汝、星を穿つ黄金(偽)(シューティングスター・オルテュギュアー)】発射」

 

アルテミス。

かつて大西洋異聞帯にてカルデアを襲った宇宙よりの刺客。最後は違う世界の恋人の手によって愛に失墜した悲しき無双の砲台。

それは再びロギア帝国の手でカルデアの敵として蘇った。

彼ら彼女らの中にあった思いは一切顧みない悪の手で。

これより数時間後、種子島はアルテミス・レプリカより発射された光を受けて地図上から永遠に姿を消した。

 

◇

 

メリュジーヌ出撃

『私からの要求は一つだ。降伏しろ。譲歩は認めない』

「何を━━」

『そして妹や駄姉のようにベラベラ議論もしない』

 

言葉と共に再び上空から光が発生。ストーム・ボーダー目掛けて殺意の籠った光が落ちてくる。

 

「取り舵一杯! 機関全速!! 高度を下げて少しでも着弾までの時間を稼ぐんだ!!」

『キャプテンこのまま四国の上へ! 領土上なら砲撃を躊躇うかも!』

「ちょっと待て! 鹿児島も吹き飛ばした連中だぞ!?」

『あくまでお祈り! 少しでも鈍るのを祈ってるだけ!』

「こんな時に神頼みか! ええい!!」

「全船員に通達! 最高速度で北海道へ向けて前進する!! 非戦闘員は着席して加速に備えて! 

モルガン以下戦闘要員はいつでも応戦できるように待機!」

「うぉっ! 速すぎないかよネモ!」

「ペパロニ君も椅子につき給え! 舌を噛むぞ!」

「ムニエルですって! いつぶりだよこのネタ!」

 

藤丸も含めたサーヴァント以外の人間は急いで着席して体を固定。

異聞帯突入時に匹敵する最大推力で進むストーム・ボーダーは一気に四国の西端、高知県へすぐに差し掛かる。どこまでも青一色だった海を抜け、緑と灰色の人が住む大地に戦場が変化。

狙い通りなのか、空からの砲撃は今のところ襲ってこない。

だが安心しそうな心理を読んだように冷徹なユリエル声が入る。

 

『高度を下げただけで安心か?』

『地上より無数の生体反応が急速発生! これ全部敵なの!? 

レーダーに表示する! とにかく急いで駆け抜けるしかない!』

 

猛烈な加速に耐えて見つめたレーダー画面には高知県、四国、そして本州に次々発生する赤い光点の数々。

100や200では収まらない。アレ全部がこちらを攻撃しようとしている敵だというのか。

だとしても止まれるわけはなく、仲間達も心は同じだった。

 

「相手をする必要はない! このまま目的地まで進めばいいんだ!」

「キャプテン・ネモの言う通りだ! 苛烈なまでの妨害が我々の北海道到達を避けたい気持ちの証明だ! やはりかの地には何かがあるとみてよかろう!!」

 

追い詰められたことで逆に士気が上がる。艦内に少しずつだが希望を見た力が集まりだしていた。

それにゴルドルフの言う通り、ここまで徹底的な包囲網を敷いているのはやはり北へ進ませたくない気持ちもあるのではと思わされる。

 

『ゴルドルフ君鋭いね』

 

多くを語らないミニソラの言葉も後押しになる。

まだ、まだおわってはいないのだ。

そんな心を揺るがすように足元から突き上げる衝撃。

 

「ぐっ!!」

『地上部隊からの砲撃! クリロノミアの反応!!? ……そうかこの近くに大西洋異聞帯の空想樹擬き……量産オリジン達を使って砲撃を……!』

「研究心は分かるけど無視だ! 回避に足を止めたら━━うわぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

 

船体をこれまで以上の爆発が押し包む。寄ってたかって周囲からハンマーで殴りつけられるような衝撃。

座っている藤丸の所までネモが飛ばされてきてどうにか受け止めた。

 

「ネモ!」

「あ、ああ。ありがとうマスター(……今じゃなかったらよかったのに)

━━ダ・ヴィンチ今のは!?」

『滞空機雷! ご丁寧に進路上へ大量に浮遊させてある! 霊子砲で破壊しながら進むよ!!』

「まさかこちらの進路を予想したのか!?」

「違う! 誘い込まれたんだ! 動きを誘導するために砲撃と敵を配置して!!」

『こうなったらキャプテン迂回を……』

『させると思うか?』

「ッ、取り舵30°!! 避けろ!!」

 

僅かに傾いた船体の隣を光が貫く。ネモの判断が一瞬でも遅れていればストーム・ボーダーに穴が開いていたと分かる精度。

種子島を消した時みたいな大爆発は起こらず、代わりに地表へ黒々として表面を赤熱化させた大穴が開いていた。

さらにそれで終わらず、第2射、第3射が飛来。大地に穴を開けてジリジリ間合いを詰めるように禍々しい光が迫ってくる。

どれもネモの指示でかわすことことに成功しているが紙一重。直撃した場合は考えたくもない。

 

「大西洋の機体より発射間隔がずっと短い!」

『出力を調整してるんだ! 破壊力を下げた分連射性が……来る!! 

━━もうすぐ本州、大阪に入るよ! そこを抜ければ日本海に出られる! 地上からの攻撃は無視できるようになるはずだ!!』

 

ほぼ横宙返りのような動きで攻撃を回避。速度を落とさないまま艦は高知を抜けて徳島へ。さらに先には淡路島と大阪府の街並みが見えている。

地表から次々に魔術砲がストーム・ボーダーへ発射。直撃した魔力弾に船体が弾かれ、スピードが落ちた所へ上空からアルテミスの砲撃が飛来。

間一髪これも避けきるが接近警報が鳴り響く。

 

『地上から上昇を開始した生体反応を複数検知。ストーム・ボーダーへ直接乗り込んでくる気ですねー』

「正気かね!?」

「火器管制マリーンズに一任!! 僕は操舵に集中する!」

『アイ・サー!! 魚雷バンバン落として倒しちゃえー!』

『待った! 上空にも機影! さらに生体反応多数!! ……落下傘降下だって!?』

 

ダ・ヴィンチの驚きの声が上がると共に船体へ軽い衝撃。

ブリッジの外を見ると甲板へ何体もの怪人が着地して蠢いていた。

口が伸びたような長い管を生やす緑色の怪人。手足こそあるがどちらも指は3本。さらに長い尻尾を生やし、極めつけに顔には目も口も存在しないのっぺらぼう。

リズエルがカタセを怪人化させたギルツシードが顔に貼りつけているせいで一つ目の妖怪みたい。全身を何かの液体で光らせているせいもあって不気味極まりない容姿だった。

空を見上げながら高らかに吠えている声が窓越しでも響いてきた。

 

『エッエッエ──!!!!』

「なんだねアレは!」

『分かるわけないでしょ! どう考えたって友好使節じゃないことは確か!!』

「何重にも用意された警戒ライン、速度を落としたところへ戦力投下、最後は完全制圧目的? ……オデュッセウスを思い出して嫌になるな全く! ダ・ヴィンチ、モルガン達で甲板の敵の迎撃は?」

『この風じゃ無理! 何かのミスで落っこちたら二度と戻ってこれない!』

『私が出る』

 

通信に割り込む形で酷く落ち着いて冷静な声。

誰もが戸惑うなか、藤丸だけはいち早く誰が喋ったかに気づいた。

 

「メリュジーヌ!」

『私なら後からでも追いつける。任せておいて』

「……仕方あるまい! だが妖精騎士ランスロット! 無茶だけはしてくれるなよ! すでに一人行方知れずのだ!」

『分かってる。無茶はしないさ』

 

外へ繋がる隔壁が開き、メリュジーヌが外へ。

藤丸はその背中に嫌なものを感じずにはいられなかった。

バーゲストと同じように、彼女ももうどこか遠くへ行ってしまうような気がして。

そしてそれは間違いではないことをすぐに知ることになる。

 

◇

 

一の最強と無限の雑魚

メリュジーヌが甲板へ上がると既に怪人達は体から生やした管を次々足元へ突き刺し始めていた。

 

『これ、は……!!』

『艦内のエネルギー保有量が急速低下! 間違いない! そいつらがストーム・ボーダーのエネルギーを吸ってる!!』

「考えごとの時間ももらえないか」

 

小柄な体と空気の流れを見切る目で怪人達の脇を駆け抜けながら次々管と肉体を切断。純白の船体が汚く汚れてしまうことが不愉快だ。

しかしそんな内心はおくびにも出さず、まだ残っている敵を睨む。次々に降ってくるせいで数は減らず、パッと見ても50体以上。さらに緑色怪人に加え、鍔広の帽子をかぶった人形遣いのような怪人も無数に出現。

 

『アブソギル、マニピュギル共言っておいた通りだ。その銀髪が今回の標的、命に代えても捕まえろ』

「エッエッエッエ。いい、いい女だぁ!」

「ヒョヒョヒョヒョ。狩らせていただきますよぉ、麗しの騎士!」

(やっぱり殺意を感じない。バーゲストが戻らなかったのと関係あると見た方がよさそうだね)

 

ストーム・ボーダーは用意された滞空機雷を破壊しながら進んでいる。船体にへばりついたこの怪人共を撃破する余裕はない。そして緑色は船のエネルギーを吸収している。人形遣いも似たような能力持ちだろう。

メリュジーヌが踏ん張らないとストーム・ボーダーが落ちるのだ。

 

「やってみせる!」

『琵琶湖の上空を突破! 北海道までまだ遠い! 後15分で能登半島から日本海へ出る! そうすれば地上からの攻撃もなくなるはずだから!!』

「了解した!」

 

両手の鞘を構え直し、襲い来る怪人達の最初の一匹を半分に切り裂いた。

 

◇

 

━━神奈川県 ユリエルサイド━━

 

戦闘開始から10分経過。

もうすぐ福井県へ差し掛かろうとしているが、ストーム・ボーダーはまだ落ちていない。

観測衛星で見る限りでは相変わらず戦闘が続いており、妖精騎士もいまだ健在。

大して怪人達は100体はいたのに今しがた最後の1体が切り倒された。

 

「チッ」

『この程度。時間稼ぎにもならないよ』

 

映像で見る例の騎士の落ち着いた表情は少しも変化がない。100体抜きを果たしても涼しい顔とは忌々しい限り。

しかしこちらも無策ではない。

 

「見事だな。聞いていたスペックではそれくらいはやるだろうと思っていた。だが━━」

「エッエッエッエ!!」

「ヒョヒョヒョヒョ!」

『……なるほどね』

 

更に上空に用意させた補充部隊から新たに同種の怪人達を投下。せっかく彼女がスッキリさせた甲板が再び醜い怪人達で埋め尽くされていく。

 

『そいつらは欲望を統制して作り出した量産型怪人。代わりはいくらでもいる。

好きなだけ倒せ。疲れてなにもできなくなったお前の前で船を沈めてやる』

「吸う、吸ってやるぞぉぉ。エクスティアのようにぃ!!」

「いいえ彼女はお人形になっていただく。私の持つ最高のコレクションになるでしょう!」

『どちらでもいい。ご主人様の前に連れ出すまで生きていれば。遠慮なく死ぬまで戦え』

(どうせ洗脳には向かない連中だ。ここで使い潰せた方が何かと助かる)

 

捕縛した奴には調教を思いのままと言ってあるがどうせほぼ全員妖精騎士に殺される。ベストとしてはあの量産部隊が相討ちにする形。

 

(船体のエネルギーと破損効率も順調。読み通り、船の移動中に戦えるサーヴァントは妖精騎士ランスロット一騎のみ。北海道到達ラインへの残り時間計測……)

 

バイザーに繋いだ管から聖駆へデータを転送。周辺環境や残存エネルギー量、射撃補正を計算させる。

高度500㎞に浮かぶアルテミス・レプリカ。いくらレプリカといえど神の技能を一介の研究者であるユリエルには使いこなせない。

そこで超巨大スーパーコンピューターである聖駆に演算と操作を分割させて一人でもここまでのパフォーマンスを可能としているのである。

そんなアルテミス・レプリカによる砲撃も継続中。行動不能にならない程度に各所へ射撃を命中させる。これなら戦闘が手引きの上で起きていることも疑われないだろう。

だが本来の目的はまだ別。

 

(そろそろ海の上。第3予備部隊を動かすか。

━━妖精騎士ランスロット、捕らえさせてもらう)

 

北海道への逃避行は計画の内。

真の狙いはここで妖精騎士ランスロットを捕縛すること。

そのためなら他のことは些事。

どれだけ怪人を消費しても大したことではないのだ。

 

◇

 

━━石川県能登半島沖 カルデアサイド━━

 

『下から何か来る!! 全部生体反応ありとか準備いいね全く!!』

 

海中から発射された人の大きさくらいの球体。次々船体へ衝突してその度に失速。当然球体は速度差で接触と同時に肉塊になるのだが、破れた球体をクッションにして内部からクラゲを被ったような頭をした怪人が這い出す。

ねっとりした粘液を吹き散らしながら飛び掛かってくる怪人。そいつの頭を鞘から出現させたアロンダイトで撃ち抜き沈黙させる。しかしこちらも後続で同じような怪人が途切れずに上ってくる。

 

『ここからはお前達もだクラケギル』

「げへへへへ~。可愛い子見つけたんだなぁ~!」

「気持ち悪い!」

 

ようやく海へ出ても状況は好転しなかった。

切り捨てた怪人共も肉塊状態でも動き回る。赤い染みになる個体の中で一部だけがなおも動いて向かってくるのが面倒。全方位警戒しないといけなくて神経がすり減らされる。

さらに。

 

(まだ動くのか!!)

 

肉片に変えた怪人達が次々立ち上がる。腕や足、頭を無くした個体まで起き上がってくるのを見て背筋に冷たいものが。

近くの個体へ近寄りながら四肢も残らないほど切り刻んでどうにか1体。消費魔力の少ないアロンダイトはこの手の物量で立ち向かってくる敵と相性が悪い。

 

「バーゲストがいれば……って、私らしくないね」

『貴様一人ではない』

「陛下?」

 

空中に突然出現した大槍が何体かを吹き飛ばして船の外へ。

傍には見慣れた女王が半分透き通った体で杖を構えていた。

 

『分身だ。生前ほどの数は出せないがな』

「……感謝するよ。一度裏切った僕にまだ手を貸してくれるんだ」

『貴様の為ではない。全てはカルデアのマスター、彼への借りを返すため』

「そう」

 

モルガンの援護を受けながら攻勢に移る。

全員襲ってきてくれればいいものをアブソギルはメリュジーヌよりストーム・ボーダーを優先するのが何体かいた。管を艦に伸ばしてエネルギーを吸引し続ける事態が発生。そいつらにはこちらから飛び掛かるしかなくて、作られた隙を他の怪人共がついてくる。

何本目か忘れたがマニピュギルの腕から伸びた針を捌き損なって肩へ突き刺さる。

 

「ぐっ……」

(こんな程度の奴らに!)

 

針についた糸を引っ張り、引き寄せた個体を両断。すぐ針も引き抜いたが気怠さが襲ってくる。手足の感覚に他の指令系統が入ってくるような嫌な感覚。

いくら妖精國最強の命も半包囲された状況で敵の方が多いとそう簡単にはいかない。

首を刎ねても、心臓を貫いても、真っ二つにしても中々死なない。再生能力がないのだけがせめてもの救い。

強くはないが面倒。アブソギルの管、マニピュギルの飛ばす針とわずかでも接触する度に体から力が抜けていく。

 

(エネルギーの吸引に人形遣いは麻痺毒? 

消耗戦ってだけで苦手なのにこれ以上は)

 

ストーム・ボーダーへの攻撃と相手の弱体化に特化した能力。ユリエルという奴の用意のいやらしさだ。

 

「んっ……ふふっ」

 

いつの間にか切ったらしい唇の血を舐めとる。そこで自分の酷い有様に気づいた。

鞘はいくつもの返り血で真っ赤。生前から使っている鎧も同じように汚れてしまって騎士道とはもう真逆の血まみれの装備。

 

(私にはお似合いかな。忠誠も恩義も捨てた裏切りの騎士には)

『メリュジーヌ! 大丈夫!? 

怪我してない?』

 

藤丸の声だ。動きが止まったから心配しているんだろう。

妖精國の時も今も、弱いままなのに自分より弱い誰かのためにもがいている存在。

その在り方を何より尊くて愛しいと思える。

彼のことが気になったから今回も召喚に応じた。

 

「なんでもないよ。ちょっと疲れてきただけさ。

……まだやれる」

 

例えどれほど血に塗れても戦うに足る理由がここにはある。

だから。

 

「【レイ・ホライズン】!!」

 

内包した魔力と制限礼装を一括解除。真の姿、境界の竜の残滓たる姿を取り戻す。

鎧とドレスを破棄し、代わりに展開されていく純黒の装い。

鞘は身長の2倍はあるツインブレードに。

両手両足には本来の竜としての鉤爪やクローが出現。

髪も毛先が黒く代わって背中にはブースターのような翼が生える。

霊基を改変して体中の魔力を攻撃用配列に切り替え、同時にテイクオフ

 

(全部まとめて倒す! 

━━広域焼却兵装展開。ストーム・ボーダーを覆う敵対象。総勢113体マルチロックオン)

 

両腕のブレードを振り回し、艦にまとわりついた怪人達を血風に変えつつ飛翔。高速で飛ぶ艦と並走しながら生体活動をしている敵の反応を全て照準。両翼に集めた魔力でサークル状の砲身を複数生成すると一気に発射。宝具以外では最大火力の高出力レーザーで焼き尽くしていく。船体に傷をつけないようギリギリを狙いつつ、特にアブソギルの管とマニピュギルの腕を優先的に狙った砲撃。

文字通り甲板を焼き払った後には黒焦げの塊になった死体がいくつも転がるだけになる。

 

「これでボーダーの脅威は排除。続いて上空の敵の掃討に移る」

 

海中からメリュジーヌへ狙いを移した攻撃が飛んでくるが遅い。泥の中を進んでくるようなスピードで避けるのもわけない。

分身のモルガンの砲撃も合わせて一息に上空の敵を光線で撃滅。

どうにか活路が見えた気がした。

 

『ありがとうメリュジーヌ!! キャプテンこのまま一気に北海道へ━━』

『甘いな』

 

直後光の雨が降りそそぐ。

正体は当然アルテミスからの魔力砲撃。しかしこれまでのような出力を絞った連射や原典級の強大な一撃ではない。文字通り幾本もの雨粒の様に無数の魔力光線が何本も同時にストーム・ボーダーとメリュジーヌを襲ったのだ。

10本、20本、30本、大体それくらい。1本はせいぜいサーヴァント一体を呑み込むくらいだが大地に穴を開ける威力。

既に海中の攻撃でダメージを負っているストーム・ボーダー。あれが命中すれば確実に撃墜されるだろう。

 

(やらせない!!)

 

そこまで考えるのも、考えてからの反応もメリュジーヌは早かった。

並走していたストーム・ボーダーの上へすぐに移動。魔力を張り巡らせて翼を拡大させつつ砲撃へと割り込む。

直後、脊髄を焼くような猛烈な熱と痛みが背中へ。

 

「う、ぐっ、ああああああああ!」

 

艦を抱きとめるようにしながら砲撃を受け止め続ける。厄介なことに今回は光を発射したまま射線が動いてきた。ボーダーを追う光を逃さないためにずっと受けて飛び続けるしかない。

最後の竜の鎧をもってしても軋み痛む、極大化した魔力砲撃。もしメリュジーヌが守るのを止めれば仮に艦が無事でも内部のマスター達がどうなるか分からない。

 

『っく、貴様一人には!』

 

僅かに全身へかかる衝撃が軽く。いくつもの防御術式が背後に展開され防いでくれていた。見れば甲板にいるモルガンの分身体が杖を掲げて障壁を張ってくれる。

しかし少しの気を抜く暇すらなく、緩んだ衝撃が再び増加。

 

「ぐうえっ!?」

(まだ威力が上がるの!?)

 

モルガンが張った術式に対応して出力が増大。輝きが増したかと思うとさらに強まった光線が障壁を一瞬で砕き、メリュジーヌの身体を貫通しようと熱量を増やしていく。

術式をやり直そうとした分身たちも魔力の限界を超えたのか消滅。いよいよまた一人きり。

耐久限界を超えた熱に装甲が赤熱化。ツインブレードや四肢の爪など排熱処理が追い付かない部分から融解が始まってしまう。

 

(まだか……何時間も続けられるはずは……うっ!?)

 

ここに来て下方向からの衝撃。

小癪にもまだ艦の陰で海中に残っていた雑魚怪人達が針やら管やらを伸ばしてきていた。皮肉にも仲間を守るとその下にいる敵たちまで守ってしまう状態。

そしてストーム・ボーダーを守るメリュジーヌに今度は避けるすべがない。伸ばした翼や手足に敵の管や攻撃が次々命中。動きがさらに悪くなっていく。

 

「シュシュ!」

「エッエッエー!!」

「しつこい!」

(せっかく回復させた魔力が……手足の感覚も遠く……痛っ!!)

 

蓄積したダメージに耐えかねて片翼がもげる。

庇いながら片翼から砲撃を発射してアブソギル達を一掃するが、後から後から管と針が海から伸びて体に張り付いた。当然また吸収と麻痺が巡りだして、真体でもいつまでも耐えるのは不可能。

翼を失ったせいもあって急速に力が抜けて失速。

更にモルガンの分身も数を頼みに上がってきた怪人共によって撃破されてしまう。

そう遠くなくストーム・ボーダーを守り切れずに墜落するのが予想できた。

 

(マズい……早くなんとか……)

 

熱を受け止め続け、翼ももがれた背中。痛みは口で説明できないほどに深く精神を焼き焦がされているみたい。

雑魚怪人の攻撃を防ごうとすればその分ボーダーの守りが薄くなるので無視。意気揚々とドレインされていくエネルギーと麻痺毒が体から自由を奪っていく。

なにが出来る。

魔力を吸収され続けて遠からず消滅が必死。

それまでにできること。

 

(この砲撃をせめて━━)

 

本来の武器たる両手のツインブレード、テュケイダイト。ジョフロワとフロモンと名のついたそれらを連結。体に刺さった針や管も抜けずに追い詰められたまま、最後の一手を打つためになけなしの魔力を核に集中させる。

本体がまるで見えないほど遠くても光の先に射手がいるのは必定。

左手の感覚はすでに燃え尽きた。

右手にテュケイダイトを装着。全魔力を砲身に変えつつ懸命に射角を脳内計算。

両脚が光の熱に負けて砕けたタイミングでようやく計算が完了。

 

「━━飛べ、飛んでいけカルデア! 君達の終わりはブリテンでもここでもない! だから!!!」

 

彼らの旅はまだ続く。続かなくてはいけない。

自分より弱い命を守れる藤丸のような人間が生きていける世界こそ楽しく、そして美しいのだから。

 

「遥か先、まだ見果てぬ世界へ届け━━誰も知らぬ、無垢なる鼓動(ホロウハート・アルビオン)!!!」

『━━チッ!!』

 

残っていた片翼からも魔力を振り絞って一瞬だけ砲撃を相殺。

更に上下反転して見上げた空へ連結したテュケイダイトを投擲。

破滅的な光を切り裂きながら黒い槍が空へ。

宝具接近に気づいたらしいアルテミス。それでも攻撃中では動けない。誰もが見上げた大空にロストテクノロジーの戦闘機と最後にして原初の竜の槍が衝突。

僅かな衝突光のあと、異聞帯の空を明々と照らす大爆発。爆炎や煙を噴き上げ、破片が落ちてくるのが捕捉できた。ポチャポチャ水柱を立てながら海に敵を討ち破った証拠が降っていった。

 

(これ、で……うあっ!!)

 

再び海から管が出現して次々肉体に突き刺さる。全魔力を出し尽くした後の彼女にもう避ける体力は残っていなかった。

更に上空から最後の一撃とばかりに飛来した細い光がこちらへ。艦を貫く威力には程遠いそれは動きの止まったメリュジーヌの脇腹と残りの片翼を貫く。

 

『アルテミス・レプリカが破損したか。だがこれで貴様も終わりだ』

「メリュジーヌ!!!」

(さよなら……カルデアのマスター……どうか君達の世界を取り戻せるように)

 

見れば無理矢理甲板に出てこようとしているマスター。必死にこちらへ手を伸ばして顔を赤くしている。

まったく。人間は体を出すだけで危ないっていうのに。

 

(ふふっ、本当に変なマスターだった)

 

全身から力が抜けて視界も暗くなっていく。そして闇に閉ざされそうな視界を飛翔していく白亜の巨艦。

妖精國と同じだ。また彼らを後へ繋げることは出来た。

だったらこれでいい。

役目は果たした。

手足も砕け、翼も失った。

魔力も残っていない。

このまま海面へ激突すればそのダメージで消滅するだろう。

 

(妖精國の最後(あの時)よりは……いい終わりかな……)

 

それがメリュジーヌの最後の意識だった。

 

◇

 

━━秋田県沖 カルデアサイド━━

 

「メリュジーヌー!!」

「ダメです先輩!!」

『戻って藤丸君! 彼女が遺してくれた好機を無駄にする気!!?』

「妖精騎士ランスロットは殉職した! 

後追いが今すべきでないことぐらい分かっとるだろう!!」

 

外部ハッチ近くでマシュに取り押さえられながら必死に外へ手を伸ばそうとして空を切る。

あっという間に後方へ置き去りになって海へ落ちていくメリュジーヌを見届けるしかできなかった。マスターとして令呪でのサポートの一つくらいできたのではと思ってももう意味はない。

バーゲストの時も同じ。令呪での即時呼び出しが効かないのだ。魔力で妨害しているのか偶発的なのかはわからないが、確かなのは彼女を助けることが出来ないということ。

 

『なんだ、あれは……』

『キャプテン今度は……え……ゴルドルフ君、藤丸君達もすぐブリッジへ!!』

「まだ何か起きるのか!? いい加減少しは心を休ませろというのに!」

「先輩……とにかく行きましょう。ここでは安全性も確保できません」

「メリュジーヌ……ごめん……また仲間を犠牲に……」

 

無力感に打ちひしがれながらマシュに連れられてブリッジへ。

そこで斃れた彼女との記憶に思いを馳せる間もなく新たな衝撃が襲う。

 

『後5分となく北海道内に入る距離……つまり今見えているのは現在の北海道方面の光景と思ってくれていい。映像にも何の加工もしていない』

「なんだねこれは……とびっきりに非常識な……」

「獅子王の聖槍にも似て……でも感じる魔力は空想樹のような……」

「黄金の、壁」

 

藤丸が口にした通り、望遠カメラの先に現れたのは海面から空まで覆いきる巨大な金色の光で出来た壁、バリアだった。

一枚の大きな壁ではなく無数の人間1人分サイズの正六角形をしたパネルが組み合わさって壁を織りなしている。壁そのものは半透明で向こう側にあるはずの北海道の大地がうっすら見えている。範囲と方角からして北海道を丸ごと覆っていそうな超大型のドーム状。

海面の波がバリアに跳ね返されている辺り、見た目だけじゃない遮蔽性も含んでいるらしい。

 

『あと3分くらいでぶつかるよー! どうすんのさキャプテン!』

『我々だけ通してくれる可能性に賭けて突っ込みますかー?』

『耐久度未知数だけど霊子砲と魚雷のありったけ撃っちゃう!?』

「推進機関逆噴射! 衝突を避けろ! 

……(なるほどね。お姉ちゃんが隠していたのはこれか)」

 

自動車で言う急ブレーキを掛けながら船体が減速。慣性でじわじわ進む船の振動に耐えながら壁を見据えていると突如窓の外が発光。

巨大な爆風と水柱が船体に押しかかって衝撃が突き抜けた。

 

『無駄な健闘ご苦労。さて━━2機目はどうする(………………)?』

 

ユリエルの宣告と一緒にブリッジの画面には無傷で滞空するアルテミスの姿。メリュジーヌの決死の攻撃前から変化なく傷一つ、壊れた跡一つない。

 

(そんな、メリュジーヌがやったのに……!)

 

周囲の海に破片が散らばっているから攻撃を防いだわけじゃなさそう。本当に別個体が用意されていたのか。

しかも一機予備があったならまだ複数ある可能性も。

皆同じ結論に思い至ったんだろう。ブリッジ内に絶望的な雰囲気が満ちていく。

 

「どうすれば……」

「なんとか、なんとかならんのか!」

「先輩……」

『モルガンとバーヴァン・シーも合わせた徹底抗戦……でもこの物量相手じゃ……』

「……ふふっ、ここで藤丸を」

『終わりだ。カルデアの者たち』

 

また何本も同時に光りが降り注ぎ、ボーダーへジリジリ近づいてくる。当然藤丸達に逃げる場所はないし、マシュが盾を手に飛び出そうとするも制止。

完全に万事休す。

前は光の壁。

後ろには迫りくるアルテミスの傘とそこに続く海面を埋め尽くす量の怪人達。

完全に手詰まりなのは疑いようもない。

それでもやっぱり諦めるって選択肢は出なかった。

 

「まだ━━」

「━━待ちなさい!!」

 

背後の光の壁に異変。

無音のままパネルが動いてバリアに空白のスペースを作り出し、中から青白い光の球が発射されたかと思えば甲板に着地しようとしていた怪人達を次々屠って片づける。

残らず殺し尽くした後にバリアの中から現れた人影が飛び出し、ストーム・ボーダーの甲板へ着地すると細身の青い銃剣を構えて名乗りを上げた。

 

「闇が世界を覆う時、光の翼が悪を討つ━━光翼戦姫エクスティア見参!」

「エクス、ティア?」

(ルクスリアやソラエルと似てる……いや同じ?)

 

青い髪に何度か見たことのある顔の美少女。全身が青と白の衣装で構成されて、短めのスカートや太ももまで覆うロングブーツと手首から二の腕まで覆うロング手袋。

手慣れた様子で怪人達を殲滅したエクスティアはキリっとした表情でさらなる怪人や遠くにいると思われるユリエルを睨む。

 

『エクスティア……卑しくもお姉様と同じ顔をして』

 

通信からスピーカーに切り替えたユリエルの声。こちらはこれまでの淡々とした喋りではなく苛立ちや不快さを含んでいる。明らかな怒気や負の感情が籠っている。

ユリエルの声を聞いたエクスティアがこちらは怪人に向けるものよりずっと憂いを帯びた表情で答えた。

 

「百合先生……」

『黙れ偽物め。お前と話す口なんてない』

(知り合いなのか? でもユリエルの反応は明らかに敵に対しての……どういうこと?)

 

驚きが尽きないままにさらに壁の中から人影が飛来。展開していた怪人を屠りながら甲板へと着地。

それは色合いが違ってもエクスティアと統一感のある衣装を身に纏った少女達。

大剣、ビット、大砲とそれぞれの武器を構えて名乗りを上げた。

 

「闇が世界を覆う時、光の刃が悪を斬る! 光翼戦姫エクスティア・シュヴァリエ推参!」

「闇が世界を覆う時、光の翼が雷撃となる! 光翼戦姫エクスティア・マギカ、ここに参上ってね!」

「闇が世界を覆う時、可憐な花が舞い踊る。光翼戦姫エクスティア・フローラ、ここに起動」

 

赤、黄、紫、色とりどりの可憐な少女達。船員が降って湧いた味方らしき彼女らに喜びのムード。数分前まで満ちていた緊張感が急速に弛緩していく。

その中で藤丸だけは少女達全員の顔に見覚えがあった。

 

(リズエル、アズエル、ユリエル……全員夢や現実で見た顔と同じ。

姉妹なのか……それにしては敵対してるみたいだし、雰囲気も……)

「百合先生! もう止めてください! 自分が何をしているか分かっているんですか!」

『黙れ影の分際で』

 

明らかに険悪。立場だけの敵対以上。

異聞帯で向けられたことのある世界を害する敵への悪意。アレに似ている。

とにかく立場不明でも味方らしい人影がいるなら状況は好転。こちらも甲板へ出るべきか、そこまで考えた所でユリエルが再び冷静、冷酷に感じられる声音で言葉を発した。

 

『全軍後退しろ。第一目標は達成した。(海上で捕縛したメリュジーヌには拘束具を着けておけ。魔力供給装置に繋げるのも忘れるな)

……お前達の相手はまた今度だ』

 

本当にその言葉通り、驚くほどあっさり怪人達が撤退していく。空や海に展開していた影が距離を取っては去っていった。

アルテミスの光も止まって雲にその姿が隠れ、不意打ちで撃ってくることはなさそう。

残ったのはメリュジーヌが守ったおかげでボロボロでも轟沈を免れたストーム・ボーダー。そして甲板に立つ4人のエクスティアを名乗る少女達。

静止した甲板へモルガンを連れ立って藤丸やゴルドルフ達が向き合うと、彼女達は思い思いの表情を浮かべつつ手を伸ばしてきた。

 

「ついてきてください。信じて……なんて信じられないと思うんですけど、私達は味方です」

「この壁の向こうには帝国の手も届かない。とにかく貴方達も一度休息を取れる場所だとは保証する」

「アンタ達もどうせ行くあてないんでしょ。一緒に来なさいよ」

「お前達がカルデアなんだろう? 真実を知りたいならついてこい。

ああ、信じてとは言わないぞ。判断するのはお前達だ」

 

◇

 

この後ストーム・ボーダーはエクスティアに守られつつ壁の向こう側へ。

どうにか辿り着いた北海道。そこは光の壁に守られた明らかな異変の起こる北の大地には同じく黄金に光る空想樹が聳え立ち、それを世界樹と崇める人々が住まうもう一つの日本だった。

なぜか帝国の内情を知る彼らから告げられる異聞帯の真実。

北海道を包む光の壁の謎。

現れたエクスティア達の正体。

時同じく墜落し、捕らえられたメリュジーヌを襲う堕落洗脳調教。

生まれ落ちるロギア帝国の淫魔竜騎士。

事態は急転を迎え、終盤へと加速していく。

 

 

〈つづく〉

 

◇

 

おまけ 出番のなかったソラエルin風呂女子会

━━帝城 ユリエルによるカルデア追撃が始まった頃━━

 

「━━ハッ!!」

「どうしたのよ急に立ち上がって。ちゃんと身体にタオル巻きなさい、冷えるわよ」

「あ、うんありがと……じゃなくて! また藤丸クンとたぶらかそうとするメスショタの気配を感じた!」

「どんな感覚してんのよ。のぼせたんじゃないの。

もう上がる?」

「えー。もうちょっとこのまま一緒に入ってたいかな~。バゲちゃんの調教で忙しくなるし、アズ姉ちゃんと一緒のお風呂は久しぶりだし! 

はふぅ~。帝都と海と空想樹を全部見ながら入れるこのお風呂最高~」

「ふはぁ……ホテルもいいけどやっぱりお城のお風呂が一番快適。

後は北海道とカルデア残党をまとめて片付けるだけ。そうしたら毎日一緒に過ごせるわね」

「━━もう入っていたのか」

「あら姉さん」

「リズ姉ちゃん! 仕事終わったの?」

「部下が優秀だからな。留守中に大きな問題も起きていないし簡単だ。報告書の処理が溜まっている以外問題ない。

ソラエル、隣に失礼するぞ……ふぅ」

「あ! 湯舟にタオルは浸けちゃダメなんだよ! マナー違反!」

「む、そうなのか?」

「姉さんは髪も長いしタオルで纏めたら? 

いちいち入浴用のリボンも面倒じゃない」

「それもそうだな。次回から検討しよう」

「明日からソラは調教、姉さんは治安維持。私はどうしようかしら」

「功を焦って一人北海道に行くのだけは止めろよ」

「誰が行くか!!」

「地下に潜ってるレジスタンス(ドブネズミ)狩りは? 

どこにいるか教えてあげられるよ」

「帝都の中じゃぶっ放せないし燃えないっていうかさぁ。何も知らずに暴れる雑魚って魅力ないし。防衛軍みたいな熱いのとヤらないとつまんない。

しばらくはプールで泳いでるわ」

「調整忘れないでよ。リズ姉ちゃんも。ソンブレロとオロチの魔力メチャクチャに使っちゃって」

「減るものでもないし構わないだろう」

「難しいこと考えずにぶっ放すのってストレス解消になっていいのよねー」

「もう! 管理する側のことも考えてよね」

「私達より奴はどうなんだ? 

ずいぶんと目をかけて配下にしたがっているようだが」

「フジマルって奴ね。あーそうか、姉さんだけお楽しみ味わってないのよね。

あはは! のけ者にされてかわいそー♪」

「搾るぞ」

「何をよ!?」

「全く。どう楽しもうと勝手だが……奴を我々の世界樹への供物に使う計画、本当に大丈夫なのか?」

「どうだろうねー。思いつきだし、保証はないし」

「おい」

「ちょっと!」

「でも成功すれば一番楽しいことになるよ。陛下に不足している優秀な部下も、ボクらの異聞帯を固定化するのも全部上手くいく。そう藤丸立香(キミ)を捧げて全ては完成する。

我らが空想樹━━モンスター(…………)は」




というわけでメリュジーヌ捕縛回でした。
バーゲストの時よりかなりあっさりですが楽しみな部分より長くてもいけないしね。

ユリエルの宝具、アルテミス・レプリカはルクスリアがマゼラン・レプリカから生み出した個体です。当然魔力が続く限り量産も出来ます。さすがに消費魔力が多いので何体も予備はないですが。
また本編でも書いた通り、ユリエル一人では使いこなせないので始皇帝の聖駆を投入しました。
滅茶苦茶ですがメリュジーヌを捕まえるとなるとこれくらいは必要かなって考えからこうなりました。

次回はメリュジーヌが洗脳されてオルタ化する回。
とりあえずオーロラから寝取る描写は絶対入れなきゃ。
あと大体洗脳構想固まっているので少しネタばらし。エクスティアシリーズ皆勤賞の怪人を含めた3種が出てくる予定です。
具体的にはこいつ等、「アナルこそ至高ですぞ~」「ふしゅしゅしゅ!やってやるんだなぁ」「私の解析力を活かす場面が来た。」
最終的に眷属化が決まってますがどんな風に調教されるのかお楽しみに。
問題はナイオーロをどこで混ぜるか。
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