デレ始めたリッサちゃんがおずおずと愛を受け入れていきます。
将軍の設定は某戦車映画ベースなので終始ふんわりしてます。ファンタジーです。
<注意が必要な描写>
・40近い歳の差+不倫
・挿入なし
・某将軍が攻です お察しください
「クラリッサ、もう良いぞ」
「はい」
浴室の扉の前で落ち着きなくそわそわしていた私は、向こう側から聞こえてきた彼の低い声に飛び上がりそうになった。ここは司令部の、彼に宛てがわれた部屋である。数ヶ月に一度の定期連絡の為に訪れるたび、私はいつも彼の部屋に呼びつけられ、二人きりの時間を過ごしていた。
以前までは、砂糖とミルクをたっぷりと入れられ甘くされたコーヒーと茶菓子を、鈍麻になった味覚の中で平らげる苦行を強いられることが辛かった。小娘と侮られているのだと思うと厭だった。本当は、厭ではなかった。そこには部下たちを失っておきながら自分だけは生き残り、挙句に無様な敗北を喫した役立たずのウィッチが、こんな傷だらけの、痩せぎすの、愛想のない小娘が、将軍閣下の寵愛を恣にするなど到底許されないと思う気持ちがあった。
頑なに心を閉ざし、全てを拒み続けた私を、彼は叱ってくれた。与えられたのは懲罰ではなく、苛烈にして深い愛情だった。私は彼の、逞しい戦車乗りの腕の中で、女として愛でられ、可愛い奴だと囁かれ、悦い部分ばかりを責め立てられて、歓喜と畏怖の中で何度も上り詰めた。
綺麗になったと言われて、私はそれを何度も否定した。そんなことを言うのは止めてほしいと、懇願すらした。だが彼は私の言葉を聞き入れてはくれなかった。自らを自らの手で貶めるやり方を繰り返し否定されながら、熱く硬く育ち切った剛直に胎を貫かれるたびに、私は彼の言葉が、その激情的な愛が、嘘偽りのないものであると確信した。
彼とは既に何度も肌を重ねた。私の処女は未だ守られている。彼は嫁入り前の私を気遣って後ろでしかしない。本来受け容れる為に出来ていない場所を巨きなもので拡げられるのは恐ろしかったし、苦しかった。けれども、私を傷付けまいと丁寧に馴染ませてくれる彼の指先に、私は震えた。恐怖でなく、快楽によって。
で、あるからにして。彼と共に湯浴みをするのはこれが初めてではないのだが、これから彼と二人きりで、生まれたままの姿で火照った肌を寄せ合うのだと考えると、無性に気恥ずかしかった。そもそも彼は妻子持ちであるし、私とは親子ほど年が離れている。この関係はどうしようもなく倒錯している。今さら何を取り繕う必要があるのだろうか。
後でいいという私の申し出を問答無用で却下した彼は一足先に浴室へ入り、浴槽を湯で満たして室内を温めてくれていた。いくら気遣いであるといえども、入浴の支度で将軍閣下のお手を煩わせるのは本意ではない。本来は私がすべきことなのに。申し訳が無かった。
ならば、いつまでもまごついて短気な彼を待たせるわけにはいかない。私は平静を装って返事をし、身に纏っていたものを脱ぎ去っていった。やがて一糸纏わぬ姿となった私は、足裏に伝わるひんやりとした床の感覚に緊張しながら、おずおずと浴室へ足を踏み入れた。
「どうしたリッサよ。随分と時間がかかっておったようだが」
「いえ……申し訳ございません」
初めて彼の前で、買い言葉に売り言葉で脱いで見せた時は見られても恥ずかしくない体だと強がっていたというのに。今は痩せて貧相な上に、女らしい膨らみを持たない体を彼の前へ晒すのが恥ずかしくて堪らなかった。ついつい手で平らな胸を隠すそんな私に、彼は微笑んで手招きをした。優しい灰緑色の瞳が私を映し、いかめしい髭を蓄えた口元が笑みの形を作る。「何でもありません」とだけ答えて、私は石鹸と壁に掛けられたボディブラシを手に取った。
背中を流して差し上げている時は、まじまじと身体を見られずに済むのでほっとした。厭な訳ではない。体を重ねるたびに何度も見られているのだから。頭では解っていても、恥ずかしいものは恥ずかしい。もう私は子どもではない。父親と共に風呂に入る時期はとうに過ぎ、男性経験もある。大人の女性らしく恥じらいを持つようになったと思えば、良い変化なのかもしれない。
「ああ……気持ちが良いぞ、クラリッサ」
無心で手を動かし、石鹸の良い匂いに包まれていた私は、ふと目の前の広い背中に抱き付きたくなった。私が幼い少女ならば許されただろう。あの春の日、どうしても戦車に乗りたいとせがみ、彼の腕に抱きかかえられて
今は違う。だが、彼がいる。私を慕う副官や、新たな部下たちもいる。私は一人ではない。ならば、少しだけなら求めても許されるだろうか。湧き上がる恋慕と衝動をぐっと抑えて、私はシャワーヘッドを手に取った。水音と共に排水溝へ流れていく石鹸の泡を見送る。彼はいつか、私を娘のような存在であると言った。私たちが
しかし、彼と好き合うのもまた許されないことだ。妻子持ちの、親子以上に歳の離れた上官との許されぬ恋。禁じられた私たちの関係。汚い物だとは思わない。思いたくはない。けれども清い関係とは言い難い。言い訳ばかりが頭を満たしていく。彼の愛の前に、私はいつも怖気付いていた。
「クラリッサ」
私は返事をせず、拗ねたような顔を背けて彼から受け取ったスポンジを手に体を洗い始めた。戸惑いを孕んだ声色が私の名を呼んだ。彼を困らせてはならないのに、臆病な心が邪魔をして素直になれないでいた。気まずい沈黙の中、私は「大丈夫です」とだけ答えて、短く切り過ぎた髪を洗い始めた。
★ ★
「それでは、お先に失礼します」
「これ、待たぬか」
どんな顔をしていれば良いか分からず、ろくに目も合わせないまま浴室の扉に手を掛けた私は、彼に呼び止められて仕方なく振り返った。咎めるような眼差しに私は俯いた。説明を求められてもうまく言える自信がない。「甘え方が解らない」だなんて言えるはずがなかった。
「ちゃんと体を暖めていけ」
ぱしゃぱしゃと水面を叩く音。浴槽に半身を沈めたままの彼は肌を火照らせていて、濡れた胸板の逞しさもあいまってドキドキしてしまう。ぎこちなく傍へ歩み寄っても、彼が浴槽から出る気配はなかった。それどころか腕を掴み、言外に共に入ることを求めてきた。厭だ。もう幼い少女ではないのに。
むずかる私を宥めるように彼は唇を寄せてきた。本当は厭ではない。本当は彼に身を寄せて、そのぬくもりを体じゅうで感じたかった。ずっとこれが欲しかったから。
「少しばかり、肉がついたか」
「……ええ」
根負けして浴槽へ入った私は、二人分の体積に溢れ出す湯を眺めながら、彼の腕の中へすっぽりと収まった。腰回りを撫でられ、もじもじと体を捩らせずにはいられない。彼に貧相な体を検められていることが、恥ずかしかった。
包み込んでくるぬくもりから抜け出た私は、彼と向き合うように座った。彼は不服そうな顔をしていたが、何となしに股座へ視線を落とせば、少しだけそこが首を擡げている様が目に入って、顔が耳まで赤くなるのを感じた。
目敏くそれに気付いた彼は、まるで悪童が悪戯を思いついた時のように口元を吊り上げ、意地悪そうに笑ってみせた。見せ付けるように股を開かれては視線の遣り場に困ってしまう。これは異性の裸体を目の前にした自然な反応だ。責め咎めるつもりなどない。反応すればするほど、彼の劣情を煽ってしまうと解っていた。
「なんだ、わしのペニスが気になるのか?」
「そのような、ことは……」
「触れたいのならば好きにするがいい」
私はゴクリと唾を飲み込んだ。浴槽の中でこんなことをしてはならない。あまり熱い湯の中にいては上せてしまう。「せめて外へ出てから」と縋るように口にした言葉は却下された。
本当は触れたくて仕方なかった。こんな私を愛するに値する対象として見てくれる、いつも気遣ってくれる彼のことを、私は愛していた。たとえ許されなくてもこの今だけは、彼の逞しい腕に抱かれ、悦楽と安堵を思いのままに享受していたかった。
湯の中に手を入れそっと触れた彼のものは、硬く熱く育ちつつあった。ゆるゆると扱くと、彼は熱情の篭ったため息を吐きながら私の名前を呼んだ。ずくんと体が疼いた。浴槽の中ではだめだ。堪えなければ。
「ふぐりにも触れてみろ。具合はどうだ?」
「とてもきつく、張り詰めています……普段とは、違うのですね」
「それはお前を想えばこそだ、リッサよ」
嗚呼。どうかそんなことを仰らないで欲しい。懐かしい呼び方をされると、もはや元へは戻らぬしあわせの形を思い出して胸が苦しくなる。しあわせを繰り返し与えてくれる彼の優しさに、泣いてしまいそうになる。
低く呻き、矢庭に浴槽の中で立ち上がった彼は、戸惑う私を横抱きにしてタイルの上に足を踏み出した。浴室の扉を開かれ、予め用意していたタオルで全身を包まれた私は、まだ水分の残る体をベッドの上に横たえられた。性急な手つきでシーツに縫い付けられ、湿った肌に覆い被さられながら、額へ、頬へ、唇へと、接吻を繰り返される。きちんと体を拭かねば、湯冷めをして風邪をひいてしまう。頭の片隅でそんな事を考えつつ、私は彼のされるがままになっていた。
「閣下……なに、を」
「可愛いリッサよ。何をそれほどまでに遠慮することがある?もっと素直になれ」
「いいえ、遠慮など……ああっ!」
ちろりと首筋をなぞった厚い舌が、性感帯を辿るように火照った肌の上を滑る。興奮から尖った胸の頂点を突き、臍を抉り、いよいよ股へと顔を埋める寸前で、彼は顔を離してしまった。
どうして欲しい?と彼は問う。湯ではないものでしっとりと濡れ始めた場所を、もう隠せなかった。彼の好ましい香りがする。甘い葉巻の匂い。髪油の匂い。湯や石鹸では落とし切れない、煤とガソリンの匂い――戦車兵の輪郭。
お出で下さい、閣下。観念して、掠れた声でそう囁いた私の上で、彼は灰緑色の瞳を優しく細めた。その奥底に仄暗い獣の猛りを灯しながら、躊躇いなくそこへと舌を這わせてきた。
「閣下、将軍閣下……ふぁっ、あ、ああ――っ!」
ツンと勃起をした陰核を舌先で押し潰され、ひくひくと震える溝を舐られる刺激に、溢れ出した蜜を啜られる感覚に、私は随喜の涙に咽びながら彼の愛情を受け容れ、ずっと待ち侘びていた快楽に溺れた。それは私が求めるだけ与えられ、私が満ち足りるまで続けられた。
短いので寝る前にサクッと手直ししてアップしました。
以前アップした「ぬくもり」はアリャニカお風呂ネタなので対になってるかもしれない。
「ぬくもり」が愛を拒絶する話なら、こちらは愛を受け容れる話ですね。(とはいえリッサちゃんはビビりまくりですが)