最近捕まえ……保護したオラーシャのウィッチ、ニーカについてのろけるリッサちゃんにジェラシー将軍。その後はいつもの歳の差不倫セックスです。
将軍の設定は某戦車映画ベースなので終始ふんわりしてます。ファンタジーです。
<注意が必要な描写>
・アナルセックス
・40近い歳の差+不倫
・希死念慮
・某将軍が攻です お察しください
今夜も私は将軍閣下にあてがわれた部屋に呼びつけられ、もてなしを受けていた。たっぷりとミルクと砂糖が入れられ甘くされたコーヒーと、とりどりの茶菓子。鈍った味覚の中でも楽しめるようにと気を回してくれたのだろう。彼はそういう婦女が好むものに疎いから、恐らくここにいるウィッチの誰かに選ばせたのだと思う。子ども扱いされるのは厭だと跳ね除けるたびに彼は、「聞き分けの悪い小娘だ」と私をからかう。
彼ははるか高みへ坐す存在ながら、何かと私のことを気にかけてくれる。煩雑な書類仕事に追われる日常から暫し離れて、彼の側で過ごすひとときに、私は安らぎを感じていた。以前はこんな風にはいかなかった。私は常に厳格な、規律正しい軍人であろうとした。たとえ後方に退こうとも、心は前線の緊張感を忘れない。だがそれは差し伸べられた優しさを頑なに振り払い、手前勝手な理由で相手の善意を踏みにじる、ひどく子どもじみた強がりに過ぎなかった。
あの夜も私は彼の温かい腕を払い除けて、拒絶の言葉をひどいやり方で投げ掛けた。幾ら家族ぐるみの付き合いがあるとはいえ、相手は将軍閣下だ。何らかの懲罰や鉄拳制裁があってもおかしくはなかった。眼前で怒りと苛立ちを滲ませる彼に、むしろほっとしていた。私は許されざる存在で、彼の寵愛を受けるべき人間などではないのだ。こうして平穏を享受している間にも、戦場に立つ同胞たちは傷つき散っていく。こんなところに居るべきではないのに。私は一日も早く前線へ、死の側へと戻りたかった。
売り言葉に買い言葉だった。死に魅入られた私を連れ戻すために彼が様々な根回しをし、自身の立場を最大限利用して庇ってくれていることを、頭では理解していた。いつか彼も失うのではないかという想像が、恐ろしくて仕方がなかった。頑なに聞き入れずに「子ども扱いは厭だ」と駄々を捏ねた私に、「大人扱いをしてやる」と彼は囁いて、私を抱いた。
かつて戦場で負った傷は消えない傷痕となって、私の体に敗北の証を刻んだ。不名誉な負傷。血の味と硝煙のにおいに染まった舌。痩せ細った四肢。切りすぎた髪。そんな醜く見窄らしい私を、彼は綺麗だと言った。情熱的なキス。激情家の彼らしい、乱暴の寸前に留められた苛烈な愛撫。熱をはらんだ太い指先が肌に触れるたびに、私は彼の下で体を震わせ、強張らせ、火照らせては喘いだ。そのまま女にされてしまうのだと思った。私には男性経験がなかったけれど、この行為の果てにあるものが何なのかはきちんと知っていた。彼から与えられるものが屈辱や苦痛ではなく快楽であると気付き始めていても、私はあくまで懲罰を受けているつもりでいた。親子ほど、あるいはそれ以上に歳の離れた年上の男に、ひどい抱かれ方をする想像をした。あの冬の日からたった一人で抱え続けた罪に、彼によって罰を与えられることを望んだ。
だが、彼は私の純潔を奪わなかった。挿入へは至ったものの、使った場所は性器ではなかった。排泄の器官をくじられて広げられる感覚は、はじめこそ屈辱的で苦痛に満ちていた。だがそれは、慈悲深く慎重な愛撫に蕩けさせられる内に快楽へ変容した。
逞しい腕の中で暴力的な熱によって後孔を穿たれた私は、彼にしがみついて与えられるもの全てを享受する以外、なす術がなかった。私を傷つけないようにと中頃までの挿入に留めた彼は、口淫で一度果てたから十分だと言って、私が絶頂へ至るまで、いや至った後も、腰を揺するのを止めなかった。足を絡めて獰猛な熱情を受け止めていると、屍のように冷えた四肢に血が通って、体じゅうに心地の良い熱が行き渡っていく感覚があった。
あの夜から彼と私の関係が変容したのは言うまでもない。勿論、彼の愛する人になれないことはわかっている。彼には立場があるし、家庭もある。それでも、あれが私を死から遠ざけるための手段に過ぎないとだとしても、彼が私を求めて愛おしみ、安堵と悦楽を与えてくれたのは嬉しかった。
★ ★
「ボルドー、といえば葡萄酒であるが……清澄化に卵白を使う過程で余る卵黄をどうにか使えないか、ガリア人はたいそう知恵を絞ったそうだ」
「さようでございますか」
今日の茶菓子はガリアから取り寄せたカヌレという菓子と、チョコレートだ。彼はいつも用意した菓子についての蘊蓄を語りたがる。私はいつもそれに耳を傾けながらコーヒーを口にする。それが数ヶ月に一度、司令部に定期報告へ訪れた私と彼が会って話す時の習慣になっていた。
「芸事にかまけがちな奴らがいかにも考えそうなことだな。うむ……悪くはない」
髭をたくわえた、厳めしい武人然とした彼が、口調は普段通りの皮肉屋であるのに、無骨な指先で可愛らしい形をした焼き菓子を摘んでいる姿がおかしくて、私はつい微笑みを浮かべた。つられて一つ口へ運ぶ。ずっと舌の上に留まり続けていた戦場の残り香は、最近はようやく和らいで、微かなラム酒の芳香と甘みを運んできてくれた。味覚が少しずつ戻ってきたきっかけには心当たりがある。軍医によると、私の味覚を鈍らせ狂わせているのは心の傷だそうだ。かつての戦場で私の命を救ってくれた彼女と奇跡的な再会を果たせただけでなく、同じ陸戦ウィッチとして切磋琢磨できていることが、なんらかの良い作用を齎しているのは明らかだった。
「以前より笑うようになったか。顔色も良いと見える」
伸ばされた手が私の頬を撫ぜた。彼の、大きくてあたたかい手で触れられるのが好きだった。目を細めると指の腹で顎の下を擽られた。行儀よく躾られた獣になった気分だ。猫ならごろごろと喉でも鳴らしているところか。けれど頭を撫でられるのは気恥ずかしい。さり気なく体を引くと、「こら」と叱られた。まだまだ子どもだと思われているらしい。もう十八になるのに。
「もしや好きな相手でもできたのか?」
「ええ」
彼の問いかけに、私は誇らしげに胸を張った。いつまでも色恋沙汰に疎い、青い小娘だと思っているのなら、それは大きな間違いだ。私にだって相手のことを想うと胸が苦しくなるような、そんな恋に身を焦がす時だってある。必ず守ってみせると心から誓える人ができた。相手は私と同じ女だけれど。
促されるままに私は語った。彼女――ニーカ・イヴシュキナがいかに優秀で勇敢な陸戦ウィッチであるかを。かつては第一線を駆けた戦車兵として、今は装甲兵育成を監督する立場として活躍している彼ならば、彼女の真価をすぐさま見抜くことだろう。そうすれば私はきっと堂々と彼女の手を取り、肩を並べることができる。保護者と難民というままならぬ関係ではなく、気楽に言葉を交わし合える同僚同士として。
「なんだ、わしではないのか。妬けるな」
「閣下は……私にとって、父のようなお方ですから」
心を閉ざして周囲を遠ざけがちだった私に、新しい友人ができた。彼の顔に安堵の表情が浮かぶのを見て、これまで心配をかけてきたことを改めて申し訳なく思った。何度も肌を重ね愛を交わし合った彼の前で、堂々と好きな人の話をする私は、一体どう思われているのだろう。彼は、そういう意味で私を愛しているのではないと思う。それはあくまで保護者として、父代わりとして、私を見守る庇護の愛だ。そんな彼ともう何度も体を繋げている。彼を責めるつもりなど毛頭ない。彼にそんな決断をさせるほど荒んでいた私に問題がある。だから早く立ち直って、自分ひとりの足で歩いて行けるようにならなければ。
「私は、許されぬ存在なのでしょうか」
膨らみ続ける不安と躊躇いが表情を曇らせていく。彼を困らせるつもりなどないのに。少しでも気を抜くと誰かの肩へ寄りかかることを己に許してしまう私は、きっと心の弱い人間なのだ。
「ならば問おう、クラリッサ。おまえを許さぬものとは一体なんだ?」
椅子に座っていた彼が立ち上がって、私の前へ来た。真っすぐで強い眼差しに刺し貫かれ、視線を逸らしたくなるのをぐっと堪える。彼は臆病な振る舞いを好まない。適切な答えを見つけられない。私は何に許されたいのだろう。彼との禁じられた関係か、それを都合よく利用していることか、はたまたあの日の敗北と喪失についてだろうか。いずれも許されるはずのないもの。社会の秩序が、規範が、失われた命たちが、私にそれを許さない。せめて彼といる間だけは考えないようにしていたのに。
私は口籠った。無責任なことを口にしたと思った。気を緩めすぎたと閉ざした瞼に、そっとあたたかいものを押し付けられた。ちゅっと吸い付く音と額に触れる髭の感触に、それが彼の唇であったことを知った。とうとう目を逸らした私は、「立て」と言われても視線を元に戻すことだけはできなかった。
「お前はもう十八だ。大人なら答えられるであろう?」
「それ、は」
「綺麗になったな、リッサ」
こういう時にその呼び方を持ち出してくるのは、ずるいと思う。許されないことをしているとわかってはいた。許されるつもりもなかった。私に必要なものは許しなどではなく、このひとときの安らぎを享受する強さだ。とっくにそう理解しているのに。
傷だらけの体。痩せ細った四肢。切りすぎた髪。そんな醜く見窄らしい私を、彼は綺麗だと言う。屈んだ彼から接吻を与えられそうになり、私は顔を背けてそれを拒んだ。
「おやめ下さい、閣下。こんな……傷だらけの、痩せぎすの小娘のどこが」
「いいや、お前はもう立派な大人の女性だ」
──嘘だ。私は心の中で呟いた。彼の振る舞いはとても大人に向けるものとは思えない。自分で自分の始末もつけられず、いつまでも駄々を捏ねてばかりの小娘に手を焼いているのだろう。性交も、私が怖気づくせいでいつも半端なものに終わってしまう。私は彼に相応しくはない。こんな関係が許されてはならない。
つつ、と指先が腹をなぞった。性感帯ではない場所に触れる動きに意図が掴めずに戸惑う。擽ったくて身を捩らせていると、とんとん、とそこを指で示されながら耳元に囁かれた言葉に、私は耳まで赤くなった。
「ここに新たな命を宿すこともできる」
「……っ!」
腰に腕を回されて抱き寄せられ逃れることは叶わない。あたたかい掌でそこを撫で回されるのが堪らなく恥ずかしくて、どんな顔をすれば良いのかわからなかった。あからさまに行為を想起させる触れられ方だった。彼の手の下には火照り始めた肌があり、白い骨があり、大切な臓腑が収められている。いずれ男を受け入れ、子種を受け止め、子を孕み育てるための大切な器官。女である証。
ああ、もし本当にここで彼を受け入れ、避妊具のない交わりを行ったのなら。強く逞しい武人の遺伝子を、猛り昂ぶる屹立の挿入と煮え滾る白濁の放出を以て与えられる悦び。ついいやらしい想像をしてしまった私は、足をがくがくと震わせていた。
気がつくと彼は後ろに回り込んでいて、抱き締められながら接吻をされた。後頭部に、耳に、首筋に。唇の熱と煙草の甘い香りが纏わる。彼の手つきはますます大胆なものになり、予感に背筋がぞくぞくした。ほんのあと少し手が下へ伸びれば、〝秘密〟を知られてしまう。忙しなく内股を擦り合わせるたびに、きゅんと下腹部に走る疼き。湧き上がる劣情。知られるわけにはいかない。
「年上の男は厭か、クラリッサ」
「……歳が、離れすぎています。それに、貴方には家族が」
「職場に家庭の話を持ち込むな。これはあくまで上官と部下の間での話だ。それとも……」
抵抗むなしく、情熱的な指先によって暴かれていく私の全て。じんわりと熱を持った部分を摩られて、妙な声が出そうになり奥歯を噛み締めた。彼は私を悩ませぬように、これは職務の延長線上にあるものだと言う。彼はすぐに肝心な場所へは触れてくれない。たっぷりと焦らして私から求めるように仕向ける。初めての夜もそうだった。
「許されぬ恋の方が、興奮するか?」
振り向き顎を上げて求めれば、すぐさまに与えられるもの。接吻は徐々に深くなって舌を差し入れられた。だがそこまできて彼は体を離そうとした。拒絶ではなかった。欲しいのならば求めてこいという挑発だった。踵を上げ爪先立ちになった私は、彼の首に手を回して縋り、貪った。頭がくらくらして、彼の体に身を預けていないともう立っていられなかった。
「ん……ぅう……閣、下」
酸欠に陥るほど長い接吻の後、唇が離れていくとき彼は「甘いな」と呟いた。私は譫言のように、「カヌレには蜜蝋が使われているのでしょう」と答える。彼は私の興味が少しでも食へ向くように、口にした物が何によって出来ているかを一つ一つ言って聞かせてくれる。ラム酒、バター、卵黄、砂糖に、小麦粉。蜜蝋は熱して液状にしたものを、焼き型に塗って使うのだという。滑らかな表面の舌触りを、私がそれを口に運んだ時の、彼が頬を緩ませる様子を思い出す。次第に損なわれてゆく理性。首元を飾る綬を解かれ、ボタンを一つ一つ慈しむように外され、彼の手によって寛げられてゆく野戦服のように。熱されて次第に形を失い、甘い香りを放ちながら蕩けてゆく蜜蝋のように。
「触れて下さい」と言って、私は裾を捲り上げた。蓮っ葉な誘惑に彼は頷いて、大胆にもズボンの中へ手を入れてきた。ジリジリと炙られ続けた体は、期待ともどかしさにすっかり焦れていた。ろくにいじられていないのに、そこはまるで粗相をしたようにぐっしょりと濡れていて、彼の指先に涎を垂らした。
「ひ、っ……や、ぁあっ!」
「我慢しなくていい」
くぱ、と二本の指で広げられると、とろとろと粘ついたものが流れ出てくるのを感じて、耳から湯気が出そうになった。彼の腕を払い除けたくなるのを、裾を握り締めることで必死に堪えていた。太い指がぬるぬると溝に沿って行き来する度に、心地よさと不安が同時に訪れて身を硬くしてしまう。彼はここに入れるつもりはないと言う。だが、もし彼が私に一欠片でも性的な魅力を感じているなら。いや、全く感じていなかったとしても、目の前に女体があれば抱きたくなるというのが男の性だろう。ペニスどころか自らの指すら受け入れさせたことのない、ぴっちりと閉じた場所。幾重にも重なる庇護の腕によって大切にされ、守られてきた証。かつての私が否定し冷たく払い除けてきたもの。
それゆえ私は、何かの弾みに危うい均衡が破られてしまうことを望んでいた。少しでも彼が指の位置をずらせば、少しでも力を入れたのなら。柔く綻んだそこは指の形そのままに広げられてしまうのだろう。恐ろしくも甘美な想像にぶるりと体が震える。彼はそれを快楽と受け取ったのか、熱が集まって腫れた突起を粘ついた指先ですりすりと擦り上げた。
「ふぁああ!あっ、あぁ……くううぅんっ!」
最も敏感な場所を直接刺激されて、私は思わず彼の腕に爪を立ててもがいた。指先は容赦なく動き続けた。ぐちゅぐちゅと足の付け根が奏でる粘ついた水音と、ズボンに恥ずかしい染みがじわじわと広がっていく感覚に、気が遠くなりかけた。せめて乱れて緩んだ表情は見せたくないと顔を隠した腕を、手首を掴んで強引に退かされた。「見ないで下さい」と懇願をしても彼は「何を今更」と言って聞き入れてはくれない。頬を濡らすものはもはや汗だけではなかった。両の眼から止め処なくこぼれ落ちる滴を舌先で救い取られて、そのまま目元にキスを落とされた。
「いけ、クラリッサ。わしの指で上り詰めてみせろ」
体に染み付いた習慣というものは厄介だ。自らの意思で武器を取り戦場に立つと決めた日から、私はカールスラント軍人として自らの全てを国に捧げることを、神と皇帝陛下に誓った。軍隊は秩序と統制により成り立つものだ。軍隊において上官の命令は絶対である。士官学校の頃から繰り返し心身に叩き込まれてきた習慣が、意思よりも先に私を彼の言葉に従わせようとする。
「はぁっ……イ、きます、閣下……ぁっ!」
きつく閉じた瞼の裏側でばちばちと火花が散る感覚。全身を痙攣させ絶頂を享受した私は、呼吸を落ち付かせながらゆっくりと瞳を開いた。ぼやけた視界の中でズボンから引き抜かれた彼の指は、濡れそぼっていやらしく糸を曳いていた。敬愛する男の指に愛撫され、高められ、果てたという事実をまざまざと思い知らされた私は、遂にその場に崩れ落ちた。
★ ★
彼はしばらく私の体を捕まえていた。落ち着いた頃合いで「立てるか」と声を掛けられたが、腰が抜けたのか下半身に全く力が入らなかった。「立て」と命令されたのならきっと上手くやれただろうに。「仕方のない奴だ」とため息を吐く彼に、以前の私ならば失望されてしまったと落胆していたことだろう。今ならそれがねぎらいの言葉であると知っているから、屈んだ彼の腕が背中と膝裏に添えられる動きに取り乱すこともない。子ども扱いされていることを不服に思う気持ちはあるけれど。
抱き上げられた私は、そっと男の胸板に身を預けた。逞しい胸筋に耳を押し当て、彼の鼓動に耳を傾けているのが好きだった。下ろされたベッドは年を重ねてきた男が纏う香りに満ちていた。ひとたび瞳を閉じればこのまま深い眠りに落ちてしまえそうな安らぎがあった。
私は首を振って眠気を振り払った。彼にばかりさせられない。いつまでも、じっと与えられるのを待っているだけのか弱い存在では居たくない。私は足からブーツを引き抜くと、胡座を掻いて坐る男の前へ平伏した。瞳を伏せたまま震える声で「させて下さい」と囁くと「よく聞こえなかった」「もっとはっきり言え」とからかわれた。わかっている癖に──私は顔を上げ唇を尖らせて抗議の意思を示しつつも、渋々彼の言葉に従った。
「僭越ながら……御奉仕させて頂きます、グデーリアン将軍閣下」
ふたたび頭を垂れて、尊い言葉をじっと待った。濡れたまま放置され気化熱で冷えた足の付け根に、また熱が集まってくるのを感じる。内股を擦り合わせるとそこにすら粘つきがあった。股まで垂れるくらい濡らして、自分ばかり愉しんでいたことがわかって恥ずかしかった。早く脱いでしまいたい。彼の目の前に、彼によって齎された全てを晒してしまいたかった。
ベルトを引き抜きジッパーを下ろす。下穿きから取り出したものはまだ僅かに首をもたげただけであったが、もう既に巨きかった。まだ私が幼い少女であったころ時折父と入浴したことがあったから、そのものを視界に入れるのは初めてではなかった。しかし、そこが性交の為に存在していると知ったのはずっと後であった。様々な人に大切にされ守られてきた、無知で、愚かな子どもであった。
形を確かめる様に触れて、彼に教えられた通りに手で輪を作り上下に動かした。はじめは辛うじて手の中に収めてしまえる大きさだったのに、それはどくりどくりと脈打つたびに質量を増していった。慌ててもう片方の手も添える。「落ち着いてやれ」と命じる彼の声が失いかけた冷静さを傍へ連れてきてくれた。ふう、と一呼吸置くと、私はそれに頬を擦り寄せた。傷痕は敏感になっていて、ますます性欲がかきたてられた。まるで娼婦の様だ。彼は私を蔑むだろうか。それでも構わない。これから私の体を散々に震わせ、強張らせ、火照らせるものへの畏怖と憧憬。上官と、妻子持ちの男と交わることへの躊躇いと興奮。やはり私は許されぬべき存在なのだと知る。
熱に揺れる視界。私が口を開けると、彼はすぐさまに意図を理解して、「やらなくて良い」と手で遮ろうとした。けれど止められなかった。私は彼にも満足して欲しかった。私だって与える側になりたかった。そう意気込んで咥えてみたものの、今日もまた上手く口に収めることが出来なかった。濃厚な雄のにおいが口から鼻へ抜けるときに思わず咽せてしまう。吐き気はなんとか押し留めたものの、じわりと涙を浮かべてしまった。顎が外れそうだ。まるで嫌悪感を露わにしているようだ。そんなつもりなど無い。弁解のつもりで顔を押し付けるも、舌を絡める余裕などなかった。
「う、ぐ……ふっ、う」
「よせ、クラリッサ。そんなことをしてもお前が苦しいだけだ」
強引に引き剥がされ、自由になった口と痙攣する喉が酸素を取り入れようとした。げほげほと咳き込む無様な姿を晒しても、出過ぎた真似をしても、頭を撫でる手つきはどこまでも優しい。だからこそ泣きたいほど惨めになる。私は鼻を啜り、「お気に召しませんでしたか」と拗ねたような言葉を吐いた。
「では、どのように」
「小鳥が啄むようにやれ」
唾液と彼の体液に汚れた口元を優しく拭う指先。言われるがまま唇を寄せ、ちゅ、と吸い付いた。赤黒く張り詰めた屹立。その表面に浮き出た血管を差し出した舌で辿る。拙く手を動かすと「上手だ」と額を撫でられた。上手くやれているわけがないのに。縫い閉じられた傷痕に触れられて、びくりと肩が跳ねた。結局、満足させる前に「もう良い」と言われてしまい、私はため息をついて口を放した。
よく頑張ったと抱き寄せられ、纏っていた衣服を脱がされた。肌寒くてぶるりと体を震わせると、床に落とされていたブラウスをそっと肩に羽織らされた。きめ細やかな気遣いは、やはり私に相応しくないと感じる。タイツに手をかけられズボンごとずるりと膝まで下ろされると、布地に染み込んでいたものがにちゃりと糸を曳いた。
「焦らして済まなかったな。存分に可愛がってやろう」
「そのようなことを……っ、あぁ……仰らないで下さい」
逃れようとする体をシーツへ横たえられた。ああ、ついに隅々まで暴かれてしまう。伸ばして隠そうとした手は払い除けられて空を切った。吐息が触れるほどに顔を近づけられ、そこを舐られる想像に私はぎゅっと目を閉じたが、待ちわびていたものが与えられることは無かった。ついさっき、もう焦らさないと言った癖にと、子どものようにべそをかいてしまう。
「お許し下さい、閣下……んあ、ぅっ!」
「お前が本当に欲しいものはなんだ、クラリッサ。許しなどではないのだろう?」
男の舌は下生えと臍の間を執拗に行き来した。かくかくと揺れる腰。舌のぬるつきと肌へ触れる口髭に擽られる感覚。潤んだ視界の先の輪郭は、懐かしい香りを纏って揺らぐ。瞳を
私が欲しいものは何なのだろう。彼女と、ニーカと再会してから、少しずつ見えてきた気がする。だがまだはっきりとは解らない。今は目の前にいる、安らぎと居場所を与えてくれるこの男に包み込まれてありたい。「貴方が欲しい」と嗚咽混じりに告げた声に、彼は確かな意思を持って肯き、今度こそそこへ顔を埋めてきた。両足を彼の肩の上にのせられた恥ずかしい格好にされて、いくらもがいても快楽から逃れられなかった。分厚い舌で最も敏感な場所を舐り回され、吸い付かれ、時には舌先すら捻じ込まれ、散々に乱れさせられた。私は堪え切れず、自ら胸を弄り回しながら、彼から与えられるもののすべてを享受しようとした。
★ ★
「ん、んん……はぁ、あっ」
「リッサよ、大丈夫か?」
彼の膝の上へ乗せられた私は後ろから愛撫を受けながら、彼を受け入れるための場所を解されていた。膝裏を抱え上げられた格好で、性器ではなく排泄に使う場所を掻き混ぜられる羞恥。彼の巧みな指遣いによって呼び起こされる快楽。額にじっとりと汗を滲ませながら、私は深く息を吐き、肯いた。
指はもう二本入っていて、根本まで埋められても然程苦しくはなかった。隙間にもう一本捻じ込まれて、私は呻いた。そこは性器のように濡れはしない。塗り付けられた油が上がりすぎた体温に熱されて香った。甘い香りを放ちながら蕩けてゆく蜜蝋のように。
「大丈夫、です……ふ、ァんッ!」
滑りがよくなるよう油を纏わせた指で、かりかりと乳首を掻かれ、きゅ、と摘まれた。傷痕の目立つ平坦な胸は骨張った体も相まって、揉みしだいても触り心地の良い物ではないだろう。彼の手によって性感帯へ作り替えられた場所が胸への愛撫を受けて、ぎゅうと飲み込んだ指先を締め付ける。私は未だに、与えられるものを受け取るだけの存在なのだと知る。
後ろとは違いまだ表面を擦られたことしかない性器も、行為への期待からかとろとろと愛液を溢れさせていた。後ろへ伝ったそれと油が混じり合ったものを、彼の指によってなかへ塗り込められる感覚。こりこりと指の腹で転がされた乳首は痛い程に勃起して、じんじんと切ない感覚を生んだ。
やがて緩く口を開けたままになるほど、解され蕩けさせられた場所から指が出て行き、代わりに滾った熱を当てがわれた。逞しい彼の一物を痩せぎすの体に埋めることは何度されても慣れることがなく、つい身を硬くしてしまう。念を押すように「大丈夫か」と囁かれて、耳朶に接吻をされた。右頬の傷痕を辿る指先。肌の薄くなった場所は敏感になっていて、体の力が少しずつ抜けていく。「大丈夫です」と私は答えた。
「ふっ、うぅ、あうっ!閣下、閣下ッ、あっああっ」
ぎしぎしと軋むベッドの上で熱の杭を下から穿たれた私は、はしたない声をあげていた。初めての時は先端を僅かに受け入れるだけで精一杯だった場所は、弛まぬ努力と重ねた情事によってそれを根本まで受け入れられるようになっていた。ずんっ、ずんっ、と深い場所を貫かれるたびに、擦られた内側は火傷のように熱を持ち、絶え間ない快楽を生んだ。息苦しさは無くならないのに、どうにかなってしまうほど気持ちが良かった。
彼は、行為の間はあまり話さない。しかし時折苦しげに息を詰める。締め付けがきつ過ぎるのかもしれない。私は力を抜こうとするが、うまくいった試しがなかった。硬く太いものが行き来するたびに、そこをぎゅうぎゅうと締め上げてはよがってしまう。何もかもが上手くいかない。苛立ちと口寂しさに、私は指先を咥えてぎりぎりと噛んだ。
すると、腰を掴み上げられて引き抜かれてしまった。何かまずいことをしたかと私は不安になった。早まる鼓動。浅くなる呼吸。彼は取り乱す私に「落ち着け」と言って、私の体を反転させてゆっくりとシーツに倒した。
「ひ、ッああっ!?」
がばり、と股を割り開かれて、今度は正面から挑まれた。手を口に持っていかないようにと、まるで恋人のように指を絡められた。ぱん、ぱん、と、汗ばんだ肌がぶつかり合う音に、後ろでとはいえ彼と性交をしているという事実を突きつけられる。許されぬ罪。否、この上ない至高の快楽と幸福。クラリッサ。立派に蓄えられた口髭の下で、愛しい口元が私の名を呼ぶ。リッサと、親しい間柄での呼び方で、何度も私を呼ぶ。彼女にも、ニーカにも、いつかそんな呼び方をして貰える日が来るのだろうか。嗚呼――今、私を愛し求めてくれているのは、目の前の彼であるのに。
「はあ、はあっ、閣下っ、私、もう……ッ!」
「構わん。存分に果てるがいい」
頬傷に労るような優しいキスを落とされ、私は必死に腕と脚を絡めて彼にしがみつき、絶頂に溺れた。そうしていないと自分というものが散り散りになって、やがてどこかへ消えてしまう気がした。もはや何も解らなかった。煙草の甘い香り。懐かしい輪郭。いつかの私の傍に確かにあったぬくもり。そして永遠に失われてしまったもの。私が欲して止まないものは、その隙間を埋める〝何か〟なのかも、しれない。
避妊具を被せられたそれが、精を吐き出す感覚はなかった。引き抜かれていくそれは熱と質量を失わないままだった。半端な性交は、今夜もまた私だけが満足して終わった。「気にしなくていい」と彼は何度も頭を撫でてくれた。びくびくと痙攣が止まらない下腹を無骨な武人の手で撫でて、落ち着くまで待ってくれた。先にそれの処理を済ませてからでも構わないのに。
クラリッサ。徐々に遠退いていく意識の中で、声は私の名を呼び続ける。クラリッサ。パイプを咥えた口元が、優しく私の名を呼ぶ。脳裏をふと懐かしい情景が過った。咲き乱れる小手鞠。春の日のうららかな陽射し。在りし日の、
やがてそれが焼け落ち、崩れ去り、損なわれてしまう前に。駆け寄り、振り返そうと伸ばした手に、指を絡められる。涙に濡れた視界の中でその背中が遠ざかる。もうあの日には戻れない。戻れないのだけれども。お前の居場所はここだ。ここに居ていい。ここに居ろ、と言う声は、悲痛な叫びにすら似ていた。
父様――声を詰まらせながらそう呟きかけた唇をそっと塞がれ、私はぬくもりを伝える様に寄せられた彼の肌を感じながらゆっくりと瞼を閉ざした。瞼の裏側で私とよく似た色をした瞳は、一度だけ私へ笑いかけ、ふわりと愛しい残り香のみを残して、消えた。
ふと陸魔女を触りたくなったのでふらっと復帰しました。
これは、影響を受けているかもしれない映画の時間軸、つまり1944年ごろの話です。
デレデレだけどやっぱり死にたがりのリッサちゃん。命の恩人であるニーカのことが大好きなので、再会後は推し活で少しずつ元気になっていきます。ただしニーカにはツンツン塩対応されています。この辺の話もいつか公開しますね。