あの熱い夜から、三ヶ月が過ぎた。ハルキとリアにとっては三回目の仲直り記念日である。
「リア~♡」
「ハルく~ん♡」
夕刻、今日も満員のサ○ゼリヤ。
筋肉もりもりのマッチョマンとお嬢様風の美女が、ソファ席に隣り合ってべったりくっついていた。
人目も気にせずイチャイチャベタベタ、周囲の客もお構いなしである。
(おいおいおい何だよアレ……)
(アホ丸出し……ていうか超美人じゃん……)
(あのマッチョ、見覚えあるな……どこだっけ)
(うへぇ、おっぱいぐにゃってしてんじゃん……うらやましーなぁ……)
「やだあ、見られてるぅ♡ 恥ずかしいよう♡」
「いいじゃんか別に、リアのこと、自慢させてくれよ♡ こんなに素敵な俺のリアを♡」
「やぁん♡ 嬉しいぃ♡ でもちょっと怖いなぁ♡ ハルくんかっこいいもん♡ モテちゃったらどうしよ♡」
「俺はずっとリアだけさ♡」
「やん、やんやあん♡ 嬉しい~♡」
((((アホくさ……))))
リアが甘えるようにしなだれかかって、豊満なバストを押し付けてくる。周囲からの視線も気にせず密着して、女盛りの豊満な肉体をアピールするからたまらない。
「ふふ♡ ハルくん♡ あーんして♡ あーんしてぇ♡」
差し出されたスプーンからミラノ風ドリアを食べてやると、とろけるような笑顔で微笑むリア。そんな彼女を見ていると、食欲より性欲だ! という気分になってくる。
「ねえ、次何食べたい? 私、デザート食べたいなぁ……♡」
「俺のデザートはリアだよ♡ 今夜は一緒にお風呂入ろうな? 全身洗ってあげるぜ♡」
「はぅう……うれしい……♡♡♡ でも、今はティラミスをあーんっ♡ してほしいかなぁ……♡♡」
リアの左手には、婚約指輪が光っている。
そして机の上には結婚情報誌。その表紙にはデカデカとこう書かれていた──
『新婚旅行はどこに行きたい?』と。
「リア~♡」
「ハルく~ん♡」
リアのお腹には、新しい命が宿っていた。
ハルキは仕事を変えた。この街で活動する議員の秘書だ。
筋肉と根性とスタミナには自信がありますと言って押しかけたら、その日から祭りで太鼓を叩かされた。
『何やってんだハルキ、〇〇さんのコップにビール注いでさしあげろ!』
『押忍、先生! 失礼します!
地元の名士に酒を注ぎ、名刺を配る。朝は街頭に立つ議員の旗を持ち、昼も夜もなく街中を駆け回って市民の声を拾い集める。
過酷な職場だ。給料も決して高くない。
『おはよう追田くん』『おはようハルキん!』『今日も頑張れよ!』
『押忍! おはようございます!』
だがステータスの高さは抜群だ。街頭に立てば立つほど、走り回って人と会うほどに、街に自分が浸透していくのが分かる。
もう自分は孤児ではない、この街のみんなが家族で、リアの隣りにいて恥ずかしくない男なのだ───そう思えるまで、死ぬ気で働くつもりだ。
『俺も孤児だった! お前は若い、今のうちから人脈を作っておけ! そして勉強するんだ! いずれ必ず報われる日が来る!』
『押忍、先生!』
将来的には自分も立候補するつもりだ。訴える政策は、もちろん子育て関連である。愛するリアと我が子のために、住みよい街を作るのだ。
『俺みたいにモテモテウハウハになりたければ、必死でやれ! いいな!?』
『押忍、先生! 粉骨砕身の覚悟で頑張ります! でもモテモテはいいです! 彼女が美人すぎて死ぬほど幸せなんで!』
『『ワハハハハハハハハ!!』』
リアの実家にも既に土下座した。気配り上手なリア先生は手回しが上手く、彼女の両親は結婚式の費用まで用立ててくれた。
後でリアに聞いたら、ハルキが仕える議員の名前を出したらしい。できた嫁である。
「リア~♡」
「ハルく~ん♡」
こうして二人は、末永く幸せに暮らす道を見出した。金回りも良くなったし、もうどこでも好きなレストランに行ける。
それでも、サ○ゼリヤでのデートはずっとずっと続けるだろう。ここは、ハルキにリアを孕ませる力をくれた大事な場所なのだから。
「ねぇハルくん……お部屋、帰ろっか……♡」
「ああ……帰ろう……! いっぱい可愛がってあげるからな……」
「……うん♡」
そうしてまた今夜も、ラブラブカップルとしての夜が始まるのだ。
めでたし、めでたし。