私、エミリア・カールレラにとって今世はとても退屈なものでした。
前世、神様のミスだとかである日突然人生を終えた私は、恵まれた第二の人生を約束され、エミリアとしてこの世界に生まれ変わったのです。名前から分かる通り私の両親は欧州の出身で、その娘である私も日本人離れした容姿をしていました。
腰まで届く銀色の髪に宝石の様な青い瞳。肌はどんな色白の日本人よりも白くて美しく、整った顔はまるで妖精の様に可憐でした。その美貌は私の自惚れでなければハリウッド女優にも負けていないと思います。恐らく神様が償いとして世界最高峰の美しさを与えてくれたのでしょう。そのお陰で私は周囲の大人達から大変よく可愛がられました。
神様が与えてくれたのはこの容姿だけではありません。
例えば頭脳。今世の私は前世とは比べ物にならない程視野が広く、頭の回転も早かったのです。両親の母国語と日本語だけでなく英語などの主要言語をいくつも習得してみたり、前世では解けなかった難解な問題を瞬時に解いてしまったりと天才という言葉が相応しい頭脳を持っていたのです。生まれてから受けたすべてのテストで満点を取ることなど私にはとても容易い事でした。
例えば財力。個人の努力ではどうする事も出来ない"生まれ"についても神様は最良のモノを与えてくれました。私の生まれたカールレラ家はフィンランドに古くからある名家だったのです。現当主である祖父は欧州に広く影響力を持つ大企業のトップであり、その息子である私の父は日本支社の社長。つまり私は社長令嬢という事になります。前世の私の両親の年収を僅か数日で稼ぎ出してしまうその財力は私の人生を途端にイージーモードに変えてしまいました。
美貌・頭脳・財力。その3つの大きな力を持つ私ははっきり言って無敵でした。
両親の意向で入学した由緒ある女子中学を一年足らずで掌握した私は、近隣の中学・高校にも干渉する事にしました。"
所詮は子供の集まりでしかありませんが、その影響力は馬鹿に出来ません。"
ちなみに私が"
ただ暇だったから。
どこまで出来るのか気になったから。
その程度の気持ちで私は近隣の学校を間接的に支配しました。
最初に言った通り、私にとって今世はとても退屈なものなのです。だから意味もなく派手な事をして遊んでいる訳ですね。
全てを与えられた人生。最初は楽しく感じていましたが、慣れてみるとこれほどつまらないモノも無いかもしれません。たとえるなら一人だけズルをしてゲームをプレイしている感覚でしょうか。最初は圧倒的な勝利を重ねて楽しめるかもしれませんが、達成感もなく何の刺激も得られないとなると長続きはしないでしょう。それと同じで私はこの人生を十分に楽しんでしまったので、後は惰性で続けるしかないのです。それに加えて転生者という事も私から楽しみを奪いました。人生で一度きりの筈の学生生活も二度目ともなれば新鮮味なんてありませんし、将来への期待だって一度体験しているのですから抱きようがありません。
全てを与えられるという事は、全てを奪われる事と同義なのです。だから私は神様から"人生を必死に生きる機会"を奪われたと言えるかもしれませんね。
────そんな風に考えていた私に転機が訪れたのは中学三年の春でした。私の"
最初に被害を受けたのは隣街の高校に通う"
そんな彼女がある日、電車内で痴漢に遭遇してしまいました。"
"夾竹桃"それが彼女達のコミュニティの名前です。彼女達は個人ではなく組織であり、そしてターゲットを選ぶと何日も掛けて調査し事に及ぶプロの女性痴漢集団でした。ターゲットの名前・住所・行動パターンに人間関係。──そして弱み。それらを時間を掛けて調べ上げた彼女達は絶対に逃れられない状況に追い込んでから痴漢を行うのだそうです。
香澄さんの場合水曜日だけ学校の委員会で用事があり、同行する取り巻きの数が少なくなります。痴漢達はその日を狙い、守りの少ない彼女に手を出しました。本来ならそれでも香澄さんは痴漢くらい撃退出来た筈でした。私が選んだ"
しかし、結果的に彼女は"夾竹桃"の餌食となってしまいました。後から話を聞いた所、痴漢達は香澄さんの弱みとなる写真を所持しており、それを見せ付けて彼女を脅迫したのだと分かりました。駅のトイレで排泄を行う自分の写真。それを見せられた彼女は抵抗らしい抵抗も出来なかったそうです。
香澄さんはこの出来事を"
私は直ぐに仕掛けられたカメラの捜索をメンバーに指示しました。付近の駅やショッピングモール、そして各学校のトイレを徹底的に調べさせ、当然警察にも相談します。しかし、既に回収済みだった様でカメラは一台も発見する事が出来ず、また外聞を気にした香澄さんが痴漢被害を届け出る事を嫌った事もあり警察もほとんど動いてはくれませんでした。
しかし、この数日後。事態は大きく動く事になります。海外にサーバーのある動画投稿サイトに痴漢される香澄さんを撮影した動画が投稿されたのです。その動画は男子校生を中心に広まり、投稿された翌日にはコミュニティにも伝わってきました。報告を受けてその二時間弱の動画を確認した私は、大きな衝撃的を受けます。
痴漢され最初は嫌悪感を露わにしていた香澄さんが僅かな時間で下着を濡らし、秘所から淫らな音を立て始める様子。その際我慢出来ずに漏らしてしまう甘えた様な声。そして脚を大きく広げて何度も絶頂させられる姿。
"
この時私が抱いたのは自分のテリトリーが侵され、仲間が襲われた事に対する怒りではなく、自分も同じ目に遭ってしまうかもしれないという期待と高揚でした。勘違いして欲しくないのですが、私は別に痴漢そのものに惹かれた訳ではありません。私が惹かれたのは成す術もなく痴漢に弄ばれ、これまで築き上げてきた地位や評価を失ってしまう事の方でした。この動画一本でカーストの頂点から転がり落ち、それまで向けられていた羨望の眼差しが憐れみや蔑みの目に変わってしまった香澄さん。それを自分に置き換えてみた時、私の胸はドキドキと高鳴ったのです。
痴漢に秘所をかき混ぜられ、床に恥ずかしい汁を撒き散らし、情けなくも果てる自分の姿。その後、男子からは厭やらしい目で見られ、女子からは見下され、遂には両親からも失望される光景。それを想像する事は意外にも容易でした。
痴漢に屈してしまった私に女子は着いては来ないでしょう。これまで築き上げてきた地位なんてあっという間に失ってしまう筈です。それは何かを失った経験のない今世の私にとって初めての挫折となるでしょう。暇つぶしに作ったコミュニティとはいえ"
この気持ちを破滅願望と呼ぶのでしょうか。ぬるま湯の様な人生に刺激が欲しい。上手く行きすぎる人生を台無しにされたい。周囲が期待する私という存在を徹底的に貶めてもらいたい。そんな自分でもよく分からない感情を抱いた私は"夾竹桃"の動向に注目する事にしました。
私の期待に応えるかの様に彼女達は犯行を繰り返しました。香澄さんの痴漢事件は始まりに過ぎなかったのです。その後、同様の手口で何人もの"
2人目の被害者は創設メンバーの茜さん。私より一つ年上の彼女は女子高生に人気のインフルエンサーで、SNS上での影響力は私を凌ぐほどの人物でした。それだけの影響力を持ちながら、「エミリアさんが少し本気を出したら私のフォロワーなんて一瞬で抜いてしまいますから」と言って従順な彼女の事は私も気に入っていました。
そんな茜さんもまた痴漢達に囲まれ、屈辱的な姿を撮影されてしまいます。電車内で豊かな胸を露出させられ、弄ばれた彼女はバストのサイズや自慰の頻度などを答えさせられていました。香澄さんの時と違い、その様子をネットに投稿されると知っていた彼女でしたが、それを気にする余裕がなくなるほど"夾竹桃"のテクニックは凄まじかったのでしょう。
3人目の被害者となった穂乃果さんは新規のメンバーです。私をライバル視していた彼女は"
駅のトイレで取り巻き2人と一緒の所を襲われた彼女はその場で全裸にされ、足腰が立たなくなるくらい弄ばれてしまいました。そうしてプライドを粉々にされ涙を流す姿を撮影された後、取り巻きの子達も服を脱がされ、最後には3人仲良く痴漢達に犯されてしまいました。
その後も"夾竹桃"の活動は止む事なく、10人のメンバーが被害に遭う頃には一連の痴漢行為は《妖精狩り》と呼ばれるようになっていました。学生達の憧れの存在だった"
日本人離れした美貌を誇り、傘下も含めれば500人以上の人間が所属する大派閥をまとめ上げ、時には学校に圧力を掛けて問題を解決する事もある規格外の中学生。ドラマや漫画の中でしか見たことのない完璧な存在。それが私に対する周囲の人の評価です。きっと、彼等は私がいる限り"
警察ですら捕まえる事の出来ていない彼女達を、中学生でしかない私がどうこうするなんて不可能に近いというのに。ですが、だからこそそんな彼等の期待を裏切って無様な姿を晒す瞬間を私は楽しみに感じていました。敗北する私の姿を見た時、コミュニティのメンバーやその取り巻き達、そして"
────そして、その時は遂にやってきたのです。