(やっぱり、真面目にやらないとダメだよな)
一瞬でも抜け出そうと考えた自分を、俺は戒める。
やっていることはただの調べ事でも、皆の命がかかっているかもしれないのだ。
ならば、適当にやるべきではない。
だが、それでも白金さんを待たせておくというのも出来ない
そう感じた俺は、解読の作業を早く進めて早く帰れるようにすることだった。
「あこさん、とりあえず解読進めよっか」
「はいっ」
こうして、俺とあこさんは再び作業に戻った。
黙々と本を読んでいく。
(う~ん……中盤からは読めるようにはなってるけど、これ日本語なのか?)
最初に解読を始めたとき、文章が掠れてたりして読めなかったのもあって、全部読めないかもしれないと懸念していたが、読んでみると普通に読める所もあった。
だが、文章の意味が理解できないのだ。
(何だろうこの感じ……なんだか古典の教科書を読んでるみたいだ)
俺は少しだけ、昔の古文の授業を思い出していた。
所々に『言ふ』や『―――といふものが~~~』といった感じの文章があり、実際に古典の授業で見たことがある感じの文がそのまま載っていたので間違いない。
(まあ、昔に書かれた文章っぽいし、読めなくて当然か……)
「あこさん、白金さんからこの本について何か聞いてたりする?」
「えっと……そういえば、この本は今の書き方と違うってりんりんが言ってたような気がします」
「そっか。しかし、どう違うんだろ?」
今の書き方と違うと言われ、俺はさらに困惑する。
昔の文章と今の文章が違うなんて、そんなことあるのか?
(こんなことなら、古典の授業ぐらい真面目に受けておくべきだったな)
「役に立てなくてすまん」
「そんなことないですっ」
俺が謝ると、あこさんは首を横に振りながら、俺に励ましの言葉をかけてくれた。
その表情は、とても真剣だった。
「茂さん、あこと始めてあった時のこと覚えてますか?」
「初めてって……NFOのことか?」
「はい」
俺の答えにあこさんはコクリと頷く。
「あこ、あの時はまだゲームを始めた頃でマナーとかルールとか全然知らなかったんです。そしたら、ギルドの仲間の人達が一緒にクエストに行ってくれなくなったんです」
「ああ。そういえば、あったなそんな時期が」
昔を懐かしむようにあこさんが離しているのは、初めて会った時……俺がまだNFOを始めて間もない頃のことだった。
「あの時、りんりんと茂さんが助けてくれたから、あこはひとりぼっちじゃ無くなったんです。だから、茂さんはとてもかっこいい人です!」
「あこさん……」
あこさんが真っ直ぐに俺を見ながら、そう言ってくれた。
その言葉は、俺の胸にじんわりと染み渡っていくようだった。
(かっこいい……か)
助けたのは白金さんで、俺はフィールドの敵の警戒をしていたので、何かをしたわけでは無いのだが、それでもあこさんの言葉に、俺はどこかむず痒いような、嬉しいような気持ちになる。
「あこさん……ありがとう」
俺は感謝の言葉を口にすると、あこさんはニコッと微笑み返してくれた。
俺は照れくさい気持ちを誤魔化すように、再び本に目を落とすと、解読作業を進めていく。
俺が主に解読をして、あこさんが気になった箇所にしおり(とはいっても、落ち葉とかだけど)を挟むという感じで進めていく。
相変わらず読み辛かったり、文字が掠れてたりで、なかなか進まない。
(でも、弱音を吐いてる場合じゃ無いよな)
俺は、自分自身にそう言い聞かせながら、解読を続ける。
あこさんの言葉にのせられてというわけではないが、それでもあこさんの期待を裏切りたくないというのは本当だ。
あこさんも隣で同じように本と睨めっこしながら、しおりを挟んでいく。
(あこさん、頑張ってくれてるしな……)
彼女の頑張りを見て、俺も負けていられないという気持ちが強くなる。
(そうだ、もっと気合い入れろ!!)
俺は自分自身にそう言い聞かせ、解読を進めていく。
「っ!?」
そんな時、ページをめくった俺はそこに書かれている内容に、思わず息を飲んだ。
なぜならそのページに写し出されていたのは、昔風の絵のような物で、男女がまぐわっている絵だったからだ。
(なっ……なんだよ、これ)
そのページを見た俺は、あまりの光景に唖然としてしまう。
「茂さん、どうかしたんですか?」
「いや、なんでもないよ」
俺の異変に気づいたのか、あこさんが声をかけてくる。
だが、俺は言葉を濁すことしか出来なかった。
昔風の絵だったことも幸いしてか、あこさんにはこの絵の意味が分からなかったようだ。
読んでいるページの文字は、まるで嫌がらせのように掠れて、この絵がどういう意図で載っているのかを読み取ることが出来なかったが、今読んでいるページのカテゴリーが『特産・文化』なのが、少しだけ気にかかった。
「あこさん、今日はこのくらいで切り上げようか」
ちょうど今日読み進める分のページを読み終えていた事もあって、俺はあこさんにそう提案する。
「え? でもまだ時間ありますよ」
「ああ。でも、あまり根を詰めすぎるのも良くないからな」
「わかりましたっ」
俺の言葉にあこさんは納得してくれたようで、頷いてくれた。
そして俺達は本を片付けることにしたのだが……
「あれ。持って帰るんですか?」
「ああ。ちょっと気になることがあってね」
俺は、今まで読んでいた本だけを持って帰ることにしたのだ。
(もしかしたら、この島について何か分かるかもしれないし)
正直、例のページを他の人に読ませるのは抵抗がある。
あこさんには、あの絵の意味が分からなかったようで良かったと思う。
なんとなく、いけないことを教えてしまっているような気がするからだ。
そんなわけで、俺達は少し早めに拠点へと戻るのであった。
「ただいま」
ついつい言ってしまう”ただいま”という言葉。
住めば都というわけではないが、五日も経っているからか、自然と口にするようになっていた。
「おかえり、なさい。斉藤―――」
そんな俺の言葉に反応するように、待機していた白金さんが笑顔で出迎えてくれたが、その言葉は俺の後ろにいるあこさんの姿を見るや否や途中で途切れてしまった。
「ただいま! りんりんっ」
「う、うん。おかえり、あこちゃん」
そんな白金さんの様子など全く気にせず、あこさんは元気に挨拶をすると、白金さんも、突然のことに動揺している様子でそれに返した。
「そ、そういえば今井さん達はまだ戻ってないのか?」
「う、うん。まだ、みたい」
俺は話題を変えるように、他のメンバーについて聞いてみたが、どうやらまだ戻っていないらしい。
「じゃあ、あこ達は中で待ってようよ。りんりん」
「え、あ……うん。そうだね……」
あこさんはそう言って、中へと入っていく。
(白金さん……やっぱり様子が変だな)
俺はその後ろ姿を見つめながら、どこか白金さんの様子がおかしいことに気づく。
なんというか、暗いというか……どこか怒っているような表情なのだ。
「白金さん、どうかしたのか?」
「……なんでもないです」
俺が声をかけると、白金さんは首を横に振りながらそう答えてあこさんのを追いかけるように居間の方へと入っていった。
(俺、何か悪いことしちまったか?)
考えてみるものの、結論など出るはずも無かった俺は、二人がいる居間へと向かうのであった。
「氷川さん。ちょっと良いか?」
夕食とお風呂を終えて、後は寝るだけとなった時間。
俺は、氷川さんに夜風に一緒にあたらないかと珍しく誘われたので言葉に甘える形で一緒に夜風にあたるべく外に出ると、俺は聞こうと思っていたことを氷川さんに話すことにした。
「どうしたんですか? 斉藤君」
「ちょっと、気になることがあってさ……これを」
そう言って、俺はあの本を取り出すと、件のページを開いて氷川さんに手渡す。
「これは……っ」
「この無人島……どう思う?」
俺の問いかけに対して、氷川さんは何かを考え込んでいる様子だった。
「斉藤君の意見を聞かせてください」
「そう……だな」
氷川さんの言葉に、俺はどう言おうかと考えを巡らせる。
言い方を間違えれば確実にやばいのは目に見えている。
「この島は、おそらくそういうことを生業にしてる場所だったんだろうな」
「ええ。私も斉藤君と同じ意見です。おそらく、この絵のような行為は、日常的に行われている……と見て、間違いないですね」
言葉選びが正しかったのか、氷川さんは特に咎めるでもなく冷静に答えるが、月明かりに照らされたその頬は明らかに赤らめていた。
だが、どうやら氷川さんも俺と同じ考えのようなのがわかったので、これで俺の仮定が正しいという可能性をさらに高めたと言っても過言ではないだろう。
(時代劇に出てくるそういった場所のような感じか)
名前は忘れたが、時代劇で地名が出てくるので、そういう感じだと俺は納得することにした。
「ところで、私も気になる箇所があるんです」
「気になる場所?」
氷川さんの言葉に、俺は首を傾げる。
「ええ。実はこの島の反対側はこれまで捜索をしてなかったので、今日そっちに向かったんです。
(なるほど、それでか)
俺は日中用があると言って図書館を後にしたことを思いだす。
「それで、何か見つけたのか?」
俺は氷川さんに問いかけた。
すると、氷川さんはなんとも言えない表情を浮かべる。
「それが、一人で向かうには少々敷居があったので……良ければ、明日一緒に向かってくれませんか?」
どうやら氷川さんは一人で行くには少々勇気がいる場所らしい。
(そうだよな、氷川さんも女の子だもんな)
いつもテキパキと仕切っているので、つい忘れてしまうが、氷川さんはどこにでもいる普通の女の子なのだ。
一人でそういう場所に行くのは抵抗があるのだろう。
「ああ、もちろん良いよ」
「ありがとうございます」
俺がそう答えると、氷川さんは安心したような表情を浮かべた。
「それじゃあ、そろそろ戻りましょうか」
「そうだな」
氷川さんの言葉に頷くと、俺達は中へと戻ることにした。
「そろそろ、もう寝ましょう」
戻ってから少し時間が経った後、氷川さんが俺達に向けてそう言った。
「そうですね。今日はもう休みましょう」
「うん。あこも眠くなってきたかも」
白金さんに続いてあこさんも頷き、他のメンバーもそれに続く。
そうして、俺は寝る準備をするべくいつものように布団を敷こうとした時だった。
「待ってください」
突然氷川さんの声がかかり、俺は手を止める。
「どうした?」
「斉藤君の寝る場所はそこじゃありませんよ」
「え……?」
氷川さんの言葉に、俺は驚きの声を漏らす。
「こっちです」
「え……ちょっと」
困惑している俺をよそに、氷川さんは俺を誘うように縁側を歩いていく。
俺は困惑しながらもそれに続いていく。
「あなたが寝る場所はここです」
そう言って氷川さんが案内してくれたのは六畳ほどの広さの畳の部屋だった。
特に何もない部屋だったが、寝るだけならば十分だろう。
そんな部屋の真ん中には、布団が敷かれていた。
「斉藤君が早く起きないと私たちが支度が出来ないので、今日からここで寝てください」
「とかなんとか言って、『いつまでも斉藤君を居間で寝させるわけにはいきません!』って言い出したのは紗夜じゃん」
素っ気ない様子で言う氷川さんに、からかうように笑いながら今井さんが口を挟む。
「今井さん!」
恥ずかしいからなのか、顔を真っ赤にしている氷川さんを見ながら、俺は苦笑を浮かべるしかなかった。
「とにかく、これからはこの部屋で寝てくださいね。いいですね?」
「あ、ああ……わかったよ。ありがとう」
取り繕うように有無を言わせぬ迫力でそう言う氷川さんに、俺は頷きながらお礼の言葉を言う。
「お、おやすみなさいっ」
そんな俺のお礼の言葉に、どこか慌てた様子でそう言うと、氷川さんは足早にその場を立ち去っていった。
「じゃ、アタシ達も寝るね。おやすみ~」
「あ、ああ。おやすみ」
そう言って、自分たちの寝室に向かう今井さんに挨拶を返すと、俺は襖を閉めた。
(本当に、俺は良い友人を持ったよな)
そんなことを考えつつ、俺は部屋を見渡す。
俺の荷物は氷川さん達が持ってきてくれていたか、部屋の片隅に置かれていた。
(そう言えば……)
俺はその荷物を見てあることを思い出し、カバンの中を確認する。
「あった……」
鞄の底に目的の物を見つけた俺は、それを取り出す。
一つは紫色の勾玉のストラップ。
もう一つはストラップのようになっていて、手首に着けるタイプの鈴だった。
いずれも、オカルト研究部に入部している悪友から、お守りとしてもらった物だ。
(正直、こういうのはあまり信じてないんだけどな)
そう思いながらも、俺はそれを手のひらの上で遊ばせる。
(さて、どうしたものか)
せっかくもらった物だし、一つくらいは着けて置いた方が良いだろう。
……というか、着けないと戻ってから文句を言われそうだし。
とはいえ、両方着けるのはさすがに気が引けたりするが。
しばし考えを巡らせた俺は――。
いかがでしたでしょうか?
気づけばすでに三分の一が終わろうとしています。
まだ”そういったシーン”がないキャラが何人かいますが、そっちの方にもスポットライトを当てなければと考えている今日この頃です。
さて、いつも恒例のアンケートに入らせていただきたいと思います。
主人公に取らせたい行動をお選びください。
得票数の多い選択肢の行動を主人公が取ります。
期限は二週間後の25日までとさせていただきます。
皆様の貴重な一票お待ちしております。
下記にヒロインのステータスを記載いたしますので、よろしければご参照ください。
・湊友希那
【欲情】:通常
【親密度】:中立
・氷川紗夜
【欲情】:通常
【親密度】:緊張
・今井リサ
【欲情】:通常
【親密度】:中立
・白金燐子
【欲情】:過敏↓-
【親密度】:緊張↓-
・宇田川あこ
【欲情】:過敏
【親密度】:友人↑
主人公の選択は―――
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勾玉を身に着ける
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鈴を身に着ける
-
両方とも鞄に戻す