一日目の夕方パートです。
「じゃあ、俺は白金さんたちと荷物の回収に行くよ」
考えた結果、俺は白金さんたちと一緒に荷物の回収をしに行くことにした。
俺たち六人分の荷物だ。
大きさはともかくとして、それを二人だけでというのはさすがに厳しいだろうし、そう思うと俺の判断は間違ってはいないはずだ。
「オーケー☆ じゃあ、よろしくね~☆」
「ああ、そっちも気を付けてな」
今井さんの言葉に頷き、俺たちはそれぞれの役割で分かれることになった。
俺はあこさんと白金さんの三人で道を歩いていた。
目的地は俺たちが目を覚ました海岸のような場所だ。
もし荷物があるのであれば、目を覚ました場所が最も可能性があると思ったからだ。
「あこちゃん、大丈夫……?」
「うん、平気だよ、りんりん。だって、あこにはりんりんと茂さんがいるから」
あこさんはそう言って笑顔を見せる。
その笑顔はとても可愛らしくて、思わずドキッとする。
「そ、そうか……」
「ふふっ、ありがとう……あこちゃん」
「うんっ!」
あこさんに釣られて俺も白金さんも笑みを浮かべる。
俺と白金さんの関係が始まったのは、オンラインゲームである”NFO”だった。
当時の俺は、まだプレイして間もない初心者プレイヤーであったのだが、そこで知り合ったのがRinRinというプレイヤーだったのだ。
RinRinさんは、始めて間もない俺に、色々と教えてくれたのだ。
その中で、当時NFOの一部のプレイヤーの間で(悪い意味で)有名だったあこ姫(本当はもっと長かったのだが、長すぎて覚えられないので、ゲーム内でもこう呼んでいる)とも知り合い、フレンドになった。
そんな俺達だが、リアルであったのはゲームの運営会社がイベントで催したオフ会だった。
たまたま相席になったのだが、最初こそお互いに無言状態だったが、お互いのプレイヤー名が分かったのがきっかけで会話を交わすようになった。
「ふふ」
「ん? どうかしたか?」
「いえ、ちょっと初めて会った時ことを思い出しまして……」
昔を思い出して笑う白金さんに俺は首を傾げる。
「そっか」
「まさか、”シゲ”さんが同じクラスの斎藤君だったなんて……思いませんでした」
「まぁ、それはこっちもですよ」
(あの時は、まさか同じクラスの子だとは思わなかったな)
そう、実は俺と白金さんはクラスメイトなのだ。
俺が知っている彼女は物静かで目立たない女の子だったので、こうして話すようになるとは思いもしなかった。
とはいえ、それからゲーム内だけではなく、現実でも彼女と関わるようになり、さらに白金さんとあこさんを通じて、色々あって湊さん達とも知り合うことになるわけだが。
そんなことを思いながら歩いていると、目的の場所である浜辺に辿り着いた。
「それじゃ、この辺を探してみようか」
「はいっ!」
「……はい」
俺の提案に二人が頷いて、俺達三人は荷物を探し始めた。
「うーん、なかなか見つからないね~」
「そうですね……」
探し始めてしばらく経つものの、荷物はなかなか見つからなかった。
それは当然だろう。
なぜなら、いくら冷静さを欠いていたとはいえ、見晴らしのいいこの浜辺で六人分の持ち物を見落とすのはありえないのだから。
「ま、そう簡単に見つかるわけはないか」
「ですね」
俺の言葉にあこさんは頷く。
俺は海の波の音を聞きながら、浜辺をいて荷物を探しながら歩く。
そして、少し歩いた時だった。
「……ん?」
俺は視線の先にあるものに気付き、足を止める。
そこにあったのは、見覚えのあるものに見えたからだ。
「どうかしたんですか? 茂さん」
突然足を止めた俺に、あこさんが不思議そうに聞きながら、俺の視線を追っていく。
「あれって……もしかして……!」
俺の視線を追ってそれを見たあこさんも気付いたようだ。
「ああ、間違いない……!」
俺とあこさんは慌ててそこにかけて行く。
「あ、あこちゃん。斎藤君。待って」
白金さんも、俺達から遅れて駆け出した。
「やっぱり……ッ」
近くまで駆け寄ると、そこにある物がよりはっきりと見えてくる。
「あっ、あたしのバック!」
「私のもあります……それに氷川さんと今井さんのも!」
そこには、俺たちが持ってきていたリュックサックやスポーツバッグなどの荷物が置いてあったのだ。
「二人とも自分の荷物の中身を確認してくれ」
「分かりましたっ!」
「は、はいッ」
俺の呼びかけに、あこさんと白金さんは相槌を打つと、自分の荷物の中を確認し始める。
それをしり目に、俺も自分の荷物の中身を確認する。
(えっと……三日分の衣類に、缶詰……あと懐中電灯。よし、全部そろってるみたいだな)
自分の荷物の中身がすべて残っていることを確認した俺は、ほっと胸を撫でおろす。
もしこれでなくなっていたらどうしようかと思っていたからだ。
俺は荷物の確認を終えると、二人の方を見る。
すると、ちょうど向こうも終わったらしく、俺の方を見ていた。
「どうだ? 二人の方は終わったか?」
「うん、こっちは大丈夫だったよ」
「私もです」
どうやら、二人の方も大丈夫だったみたいだ。
「そうか、よかった……」
それを見て安堵する俺だったが、ふと気になるところもあった。
「……? どうかしたんですか?」
「ああ。なんだかやけに、きれいだと思ってな」
俺の様子に気が付いたのか、白金さんが問いかけてくるので、俺は素直に思ったことを答える。
そう、俺たちの荷物は非常にきれいに置かれていたのだ。
まるで、”誰かがきれいに並べたように”だ。
(どういうことなんだ? 一体)
すべての荷物が、目を覚ました場所から死角になる場所にまとまって置かれているというのも、どう考えてもおかしい。
「あ、あの……斎藤君……」
その時、後ろから白金さんに声をかけられた。
振り返ると、そこには不安そうな表情を浮かべた白金さんとあこさんが立っていた。
「いや、なんでもない。とりあえず、荷物を運んじゃおう」
下手に二人を不安にさせるのもよくないと思った俺は、考えることを止めてそう提案した。
「……はい、そうですね」
「……そうだね。ばばーっと持って行っちゃいましょうッ」
二人は何か言いたげな様子だったが、それ以上追及してくることもなく提案に乗ってくれる。
「あ、私も荷物持ちます」
俺は自分のと今井さんと氷川さん、白金さんが自分の荷物に加えて、湊さんの荷物を持つことになった。
ここは俺が全員分の荷物を持っていけたら格好良かったのだろうが、大きい荷物の人もいるので、さすがに難しかったのだ。
そして、俺たちは拠点の場所へと戻るのであった。
「到着っと」
拠点である公民館に戻った俺達だが、中には誰もいなかった。
(皆、まだ戻ってきてないのかな?)
そう思いながら中に入った俺たちは、居間のほうに移動すると全員分の荷物を隅に置いた。
「それにしても、ちょっと埃っぽいな」
「そうですね……」
俺の言葉に白金さんも同意する。
いくら状態が良かったとはいえ、やはり無人島。
畳だけでなく机などが埃を被っているような気がした。
「じゃあじゃあ、あこたちでお掃除しましょうよ!」
あこはそんな俺たちを見て口を開く。
「うん、そうだね。あこちゃん」
「……そうだな、その方がいいか」
その言葉に俺達は頷く。
このままただみんなが戻ってくるのを待っていても暇だし、何より綺麗になった部屋で待つ方が気持ち的にもいいだろう。
ということで、全員で手分けして公民館の掃除をすることになった。
掃除用具は、これまた公民館に置いてあった箒などを拝借した。
窓を開けて畳を掃いて掃除をしている中、俺は今の片隅に置かれている年期を感じさせる棚にはたきを掛けたりしていく。
(うわッ、すげえ埃だ)
棚には何も置いておらず、埃をかぶっているポケットサイズの何かがあるだけだった。
さすがにそれを手に取るには抵抗があったので、放っておくことにして他の場所の掃除に取りかかっていく。
そうして公民館内の掃除をしていく中で、色々な発見もあった。
(お風呂は……さすがに今からじゃ難しいか)
ふと覗いたお風呂場内は、ほかの場所と同様に汚れており、掃除にはかなりの時間を要しそうだった。
お風呂の湯釜は、昔の外で薪を焚くタイプのもので、掃除をして材料さえあれば入ることはできそうだった。
もっとも、電気がないので、明るいうちに入らないといけないのだが。
トイレも水洗式で、外で水さえ汲めば流せそうだ。
とはいえ、下水道関係が不安だけど。
そんなこんなで、お風呂場などを除いた場所の掃除を終わらせた時だった。
「ただいま~☆」
「白金さん、宇田川さん、斎藤君、戻りました」
玄関のほうから今井さんと氷川さんの声が聞こえた。
どうやらみんなが帰ってきたようだ。
「おかえり~」
「おかえりなさい」
「お疲れ様でした」
俺とあこさん、白金さんは玄関の方に向かうと、戻ってきた二人に声を掛ける。
「あなたたち、何をしてたんですか?」
俺達の様子を見た氷川さんが、不思議そうな表情で尋ねてきた。
「見ての通り、掃除だよ。ちょっと手持ち無沙汰になったから」
「なるほど……そういうことでしたか」
あこさん達に代わって俺がそう答えると、氷川さんは納得したような表情を浮かべる。
「あの、皆さんのお荷物……居間の方に、置いてあります」
俺達のやり取りを見ていた白金さんが、おずおずと口を開く。
「そうですか……ありがとうございます」
氷川さんはそう言って笑みを浮かべながら白金さんにお礼を言うと、こちらを向いて口を開いた。
「斎藤君、まさかとは思いますが、勝手に私たちの荷物の中身を見てないですよね?」
「え? いや見てないから……なあ、二人とも」
(信用されてないんだな)
分かってはいたが、はっきりと分かると少しだけなんとも言えない気持ちになる。
ジト目でこちらを見つめながら言う氷川さんに答えながら、俺は隣にいる二人にも同意を求めるために声を掛ける。
「はいッ! 茂さんは紗夜さん達の荷物の中身は見てなかったです」
「はい、その……斎藤君は何も悪いことはして、ないです」
すると、あこさんと白金さんが俺の無実を証明してくれた。
「そうですか……疑ってすみません」
「あ、いや。別に気にしないでくれ。分かってもらえたらそれでいいし」
二人の言葉を聞いた氷川さんが申し訳なさそうに頭を下げるので、慌ててフォローする。
「そ、それよりも奥に行かない? アタシ荷物を確認したいし」
気まずい雰囲気を変えるためか、今井さんが話を切り出す。
「……そうね、行きましょうか」
今井さんの提案に賛同するように氷川さんが頷くと、俺達は居間に移動したのだった。
居間に戻った俺達は、改めてそれぞれの荷物の中身を確認していくと、食糧をテーブルの上に置いていく。
それは、氷川さんの食糧の確認をしたいからと言う理由の提案だったが、それを俺達が二つ返事で受け入れてのことだった。
「これで全部ですね?」
氷川さんの問いかけに、みんなが頷く。
俺達が座っているテーブルの上には、大量の缶詰やペットボトル(お茶やミネラルウォーター)が置かれていた。
「ええ、これで全部ね」
湊さんも頷きながらそう言う。
「それにしても、すごい量だね……紗夜が一番たくさん持ってきてるね」
机の上に置かれた缶詰の山を見ながら今井さんが思わず呟く。
彼女の言うとおり、ここに置かれている缶詰の大半が、氷川さんが持ってきたものだった。
「持ち物の項目に”非常食”と書いてありましたので、大事をとって多めに持ってきていたんです」
それに対して、氷川さんが当然だとばかりに答える。
「あはは……さすが紗夜だね」
そんな彼女の様子を見て、苦笑しながら今井さんが相槌を打つ。
「ところで、今後の方針を決めましょう。まず、私たちはここから脱出する……これは絶対です。その上でこれからどう動くのか……それを決める必要があると思います」
氷川さんの言葉に、俺達は無言で頷く。
「船か何かを探して、脱出できる方法を探すというのはどうかしら?」
「そうですね。ですが、私たちが乗れるような船は見当たりませんし……それに仮に船を見つけられたところで、運転出来るかどうか……」
湊さんの提案に、氷川さんが苦々しい表情で答えた。
確かに、俺もそんなに探したわけではないが船らしき物は見当たらなかった。
そもそもここがどこかもわからないのだから、船が見つかってもどうしようもないかもしれない。
むしろ、余計に状況が悪化する可能性だってある。
「それなら、手分けするのはどうですか?」
「それは良いかもだけど、問題は誰が行くかだよね」
あこさんの提案に今井さんが答える。
実際問題、手分けすればもしかしたら上手くいくかもしれないが、バラバラになって行動すると、その分リスクも高まる。
例えば、人手が必要な何かに遭遇した時とか。
手分けした事で逆に窮地に陥るというのは、さすがに笑えない。
「じゃあ、このまま待つ……とかはどうかな?」
「何を待つのかしら?」
そんな時、今井さんの提案を聞いた湊さんが首を傾げる。
「えっと……助けとか。アタシ達、行方不明になってるわけだし。そうなればアタシ達を探すはずだし」
「なるほど……確かにそうですね」
今井さんの答えを聞いて、氷川さん納得するように頷く。
俺は母さん達にこの旅行のことは話しているので、何日も経っても帰ってこなければ心配になって警察に連絡したりするはずだ。
そうなれば、俺達を探そうとすることは想像に難くない。
「でも、救助隊が来るとしてもそれがいつになるか……」
しかし、氷川さんの言葉で全員が沈黙してしまう。
それもそうだろう。
たとえ、捜索が始まっても、電話を掛けようにも、圏外で出来ないし、連絡手段がない状態で果たして俺達を見つけるのに、どのくらいの時間がかかるのか……。
「まあ、あんまり深く考えても仕方がないし、待ってみようぜ」
俺の言葉にみんなが俺を見る。
「……そうですね。斎藤君の言う通りね。幸い、食糧も十分あるようだし、しばらくは大丈夫でしょう」
氷川さんはそう言いながら、テーブルの上に置かれたたくさんの缶詰の山に目を向ける。
(これだけの量の食糧があればある程度は持ちそうだが……)
実際問題として、どのくらい持つのかが課題だった。
(一応、節約すればこれだけの量だしかなりは持つだろうが……)
とは言え、どれだけの期間ここに滞在することになるのか分からない以上、あまり浪費はしたくないというのが本音だ。
「とりあえず、ここを調べた結果を全員で共有しましょう」
「うん、そうだね」
氷川さんの提案に、今井さんが頷く。
「まずはアタシ達かな? 食糧になりそうな物を探してたんだけど、あまり良い物は見つからなかったよ」
最初に口を開いたのは今井さんだった。
それは予想できていた物だった。
さすがに、そう簡単に見つかるとは思っていなかったのだ。
彼女はそのまま言葉を続ける。
「でも、少し奥の方に森みたいな所があったんだ」
「奥の森、ですか……?」
今井さんの話に氷川さんは首をかしげる。
「うん。ちょっと中に入ってみたけど、もしかしたら山菜みたいなのは採れそうだよ☆」
それに対して今井さんは笑顔で頷いた。
今井さんの”山菜”という単語に、数名ほど表情が引き攣っていたが、気にしないことにした。
「山菜ですか……それは食べられるのでしょうか?」
氷川さんの表情は難しい顔をしていた。
彼女の言わんとすることは分かるし、その疑問は正しい物だ。
何しろ俺達にはどの山菜を採って良いのかと言った知識が全くと言っていいほどに無いのだ。
もし、それが毒草だったら、大変なことになる訳なのだから。
「それでしたら……本とかで調べてみるのはどう……でしょうか?」
そんな時、白金さんが控えめに提案する。
「なるほど、その手がありましたね」
白金さんの意見を聞いて、氷川さんが感心したように頷く。
「そういえば、ここのことを調べていた時に、図書館と思わしき建物を見ました」
「え? そうなのか?」
思い出したように言う氷川さんに、俺は反応する。
「ええ、間違いありません。建物にも図書館という文字が書かれていましたので」
俺の反応に対して、氷川さんは自信満々に頷いて見せる。
「それじゃ、そこで食べられるかどうかを調べられそうだな」
氷川さんの答えに、俺はそう結論付ける。
「……それじゃあ、次は私ですね」
すると今度は氷川さんが声を上げる。
「この島を歩いてみましたが、人の気配はないので、やはりここにいるのは私たちだけだと思います」
氷川さんの発言に、俺達は全員静かに耳を傾ける。
「そして、島には学校のような建物や神社と行った場所もありましたので、先ほどの図書館の件と合わせても、おそらくここは日本のどこかで間違いはないです」
そこまで言ってから、氷川さんは一度息を吐く。
「ですが、ここがどこなのかという情報はこれ以上は分かりませんでした」
(やっぱりか……)
それを聞いて俺は少しだけ落胆する。
もしかしたら、日本のどこなのかが分かるかと思っていただけに、残念な気持ちになってしまう。
「そっかー……」
それは俺だけではなかったようで、みんなは残念そうな表情を浮かべている。
「ただ、図書館に入ることが出来れば、ここの場所の情報を集めることはできるかもしれません。なのでそちらに行ってみて情報を集めるのも手ですね」
そんな中、唯一冷静な様子で氷川さんがそう言いくくる。
「なるほどな……」
その言葉に俺は小さく頷きながら呟く。
確かに彼女の言うとおり、情報収集という意味でも図書館に行く価値はあるだろう。
「あと、ここから少し歩いた場所に川がありました。見た感じ綺麗でしたので、煮沸さえすれば飲み水として使えそうです」
続けて口にした氷川さんのそれは、俺達にとっては朗報でもあった。
何せ、水源がなければ思いっきり詰むことになるのは確実だったからだ。
「ところで、もう一つ決めないといけないことがあるんじゃないかしら?」
そんな中、湊さんが口を開く。
「なんですか?」
湊さんの言葉に氷川さんが問いかける。
「今夜の寝る場所の事よ」
湊さんの言葉を聞いて、俺を含めた全員が黙り込む。
確かに、今ここで考えないといけないのは寝る場所だという事だ。
「当然、男女で分かれて寝るべきでしょうね」
と氷川さんが言う。
まあ、当たり前と言えば当たり前だよな……と思いながら俺も同意するように頷く。
と言うか、同じ部屋だと俺が寝れなくなる。
「それなら、向こうの部屋はどうだ? 広さ的にも十分全員で寝れると思うし。俺はここで寝れば十分だろ」
俺はそう言って向こうにある畳の部屋を指さす。
居間と同じ広さのある部屋なので、十分なスペースがあるはずだ。
しかも、掃除をしたので寝るのには十分な環境なはずだ。
「……そうね、それでいいと思うわ」
俺の提案を聞いて、湊さんが同意してくれる。
「そうですね……私も賛成です」
あこさんと白金さんも同意してくれたため、これで決まりとなった訳だが……。
「後は、明かりかぁ」
今井さんが顎に手を当てながらつぶやくように言う。
当然だが、電気が通っていないので、このままだと日が暮れればここは真っ暗になる。
懐中電灯を持ってきているにはいるが、電池的な問題でずっと使うのはまず無理だ。
「それなら、そこにある行灯を使えばいいんじゃないですか?」
「行灯って?」
そんな今井さんの言葉に、氷川さんが提案すると、あこさんが首を傾げる。
(というか、行灯なんて初めて見たぞ)
「確か、江戸時代に使われた油を使うランプのことだよ」
それに答えたのは白金さんだった。
さすがは本を読むのが好きなだけあって、こういう知識も豊富らしい。
「へぇ~、そうなんだぁ」
あこさんの相槌を聞きながら、俺は行灯を観察してみると、受け皿のような物に針のような物が取り付けられていた。
どうやら、蝋燭を使うようだ。
「これ、蝋燭が必要だぞ」
「あ、蝋燭だったらあこ持ってます!」
俺の言葉にあこさんが元気よく答えながら、蝋燭が入っていると思われる箱ともう一つ、小さめの箱を手にする。
箱を開けると、確かに中には大量の蝋燭が入っていた。
「こんなにたくさんどうしたんですか……?」
それを見た氷川さんが、驚いたようにあこさんに聞く。
「えっと、向こうの部屋の引き出しの中に入ってました」
氷川さんの質問にあこさんが答える。
どうやら、掃除をしている時に見つけたようだ。
「勝手に使うのはどうかと思いますが、ここは使わせて頂きましょう。後は、どうやって火を点けるかですが……いえ、大丈夫のようですね」
蝋燭が入っている箱のふたを閉じながら言う氷川さんは、もう一つの小さな箱のふたを開けて中身を見ると、言葉を切って言い直した。
「これは……マッチ?」
箱の中を見た今井さんが驚いたような表情を浮かべる。
そこには大量のマッチが入っていたのだ。
「これ使えたりするのかな?」
今井さんはそう言いながら、マッチをしげしげと観察する。
「そうですね……恐らく使えると思います。湿気っている感じはないので」
今井さんの質問に、氷川さんはマッチを一本手にしながら答える。
こうして、明かりの問題は解決した。
「あ、そうだ。掃除している時、お風呂とトイレの方を確認したけど、トイレの方は水を直接流せば使えると思う。お風呂も、薪があれば大丈夫だ。まあ、掃除は必要になるから今日は無理だけどな」
そこで俺は思い出したように声を上げる。
「斎藤君、報告してくれるのはありがたいのですが、もう少しデリカシーという物を気にしてください……」
俺の話を聞いて、氷川さんが頬を仄かに赤く染めて呆れたように言ってくる。
「ま、まあまあ。斎藤君も悪気があって言ったわけじゃないし、ね」
そんな氷川さんに、今井さんがフォローを入れる。
(なんか、悪いことをした気分だ)
俺としては、別に間違ったことを言ったつもりは無いのだが、それでも女性陣には不快に思われたかもしれないと思うと罪悪感を覚えてしまうのだ。
「とりあえず、お風呂は今日は諦めた方が良いわね」
「だね~。匂いとかしないか気になるんだけどね~」
そんな中で今井さんは苦笑しながら相槌を打つ。
下手なことを言うとまた怒られそうなので、俺は何も言わないことにした。
こうして、俺達は夜を迎えることになるのであった。
「ごちそうさまでした」
日が暮れ、あたりが真っ暗になった頃、夕食を食べ終わった俺達は、全員手を合わせる。
今日の夕飯は、缶詰一缶ずつだ。
正直物足りないが、居間の状況を考えて、ここはわがままを言うのは控えるべきだろう。
むしろ、食べられるだけありがたいぐらいだ。
ちなみに箸やスプーンといった食器は、あこさんが持っていた使い捨てタイプの物を使っている。
とはいえ、あまり数がないので何度も使っていく事になるわけだが。
「ゴミは私が回収するのでまとめて置いといてください」
そう言うと、氷川さんが立ち上がったのを見て、俺も立ち上がる。
「俺も、手伝うよ」
「ありがとうございます」
そして俺は、彼女と一緒にゴミである空き缶をまとめると、紗夜さんが持ってきていたビニール袋に入れていく。
みんなも手伝ってくれたので、片付けはすぐに終わった。
「それにしても、行灯って明るいですね」
あこさんが部屋の隅に置いてある行灯を見ながら言う。
その光はとても明るく部屋の中を照らしてくれており、俺達を安心させてくれる光源となっている。
「ええ……こうしてみると、昔の時代の方々の偉大さが分かりますね……」
氷川さんはしみじみとした様子で呟くように言う。
(そうだな……)
氷川さんの言うように、昔は電気もなくて不便だったんだろうな……と考えさせられる。
ちょっとした体験学習みたいな感じだった。
「それに、とてもホッとします」
白金さんがそう呟いたのを聞いて、思わず納得してしまう。
この明るさのおかげで、少なくとも今は安心して眠ることができるのだから。
だが、その白金さんの表情には、どこか陰りが見えるような気がした。
(まあ、そうだよな……)
俺はその様子を見て、心の中で納得する。
こんな状況でいつも通りの精神状態でいる方が無理なのかもしれない。
俺だって、内心では不安に駆られているのだ。
きっと、それはみんなも同じだと思う。
「さて、そろそろ寝る準備をするわよ」
食事を終えてしばらくすると、氷川さんが声を上げる。
今日は色々あったこともあり、体力を回復させることを優先したのかもしれない。
「じゃあ、あたし達はあっちの部屋に行くねー」
「おやすみなさい」
「お、おやすみなさい、です」
すると今井さんがそう言って立ち上がるとあこさんと、恥ずかしげに頬を赤くしながら言う白金さんを連れて、女性陣の寝る部屋に行く。
すでに寝る部屋には行灯の明かりが灯されていたりする。
「分かってると思いますが、覗いたりしないでくださいよ?」
そして、一番最後になった氷川さんが、俺に釘をさすように言ってくる。
「……分かってるよ。俺だって、この状況でそんなことしないし」
俺の答えに納得がいったのか、それとも言うべきことを言ったからなのか、氷川さんはスタスタと今井さん達が向かった部屋へと向かっていった。
「……寝るか」
少しだけ離れた場所で、異性がいるという状況に、変に意識しそうになるのを必死に押さえながら、俺は小さく呟いて行灯の明かりを消すと床に横になって目を閉じたのだった。
それから少しして……俺はふと目を覚ました。
辺りはまだ暗いままであり、縁側の窓から差し込む月明かりだけが唯一の光源となっていた。
(今何時くらいだろう……?)
そんなことを考えながらスマホを確認しようとした所で、俺はすぐに思いとどまる。
スマホは氷川さんったちとの話し合いで電源を落としておくことになったからだった。
”緊急時の電灯にもなるから”という理由だったが、どのみち圏外で使えないことに変わりないので、俺達は異論などあるはずもなく電源を落としていたのだ。
(うーん、眠れない)
どうやら変に目が覚めてしまったことで、眠気が遠のいてしまったようだ。
公民館内は、とても静かで耳を澄ますと女性陣の寝息が聞こえてくるような気がした。
(……っと。あまり考えないようにしないと)
変な事を考えてしまいそうになる頭をぶんぶんと振るうと、どうした物かと考えを巡らせる。
(ちょっと散歩に出るか……それとも考え事をして眠気が戻ってくるまで待つか、無理して寝るか)
散歩をすれば気分転換になるかもしれないが、今の時間だと真っ暗で危険だ。
何せ、ここは無人島。
何が起こるのかが分からないし、起ったとしてもそれに対抗する手段が、俺にはないのだ。
考え事をすれば何か妙案でも思いつくかもしれないが、いつ眠くなるのかは分からない。
というか、逆効果のような気もする。
無理して目を閉じて寝ようとすれば、そのうち眠れるかもしれないが、これも却って眠れなくなりそうな気がしなくもない。
(どうするか)
しばらく考えを巡らせた俺は――――
いかがでしたでしょうか?
未だにR-18要素が登場しておりませんが、ご安心ください。
ちゃんとエッチな話はあります。
とはいえ、物語の展開によっては、その頻度は増減すると思います。
そして、ここでまたアンケートになります。
主人公に取らせたい行動をお選びください。
得票数の多い選択肢の行動を主人公が取ります。
期限は二週間後の27日までとさせて頂きます。
*なお、今回のアンケートは選択肢によっては夜パートが発生します。
皆様の貴重な一票お待ちしております。
下記に現在のヒロインのステータスを明記いたしますので、よろしければご参照ください。
・湊友希那
【欲情】:通常
【親密度】:中立
・氷川紗夜
【欲情】:通常
【親密度】:緊張
・今井リサ
【欲情】:通常
【親密度】:中立
・白金燐子
【欲情】:通常
【親密度】:友人 ↑
・宇田川あこ
【欲情】:通常
【親密度】:友人 ↑
主人公の選択は―――
-
島の散策に行く
-
今日一日を振り返る
-
寝る