※この作品はR-18です。

好きでもないアイドルに告白をしたらどうなるのか?   作:なおちー

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専門的な金融資産の運用の話が含まれます。
お金の話が苦手な人はプラウザの戻るを押してください。




(;´・ω・) だったらこんなの書くなよ。

(^○^)   サーセン。


プロデューサーの在宅ワーク(※金融の話)

「俺は馬鹿だったよ。ちくしょう。

 どうせ海外に行かないんだったら資産を現金化しなければ良かった。

 タラレバを言ってもしょうがないのは分かってるが、 

 今さら場中で株を買い直すのクッソめんどくせえ」

 

プロデューサーは毎日机にかじりついて

資産運用のことで頭を悩ませていた。

彼は仕事でストレスがたまると爪を噛む癖があり

35歳になってもそれが治らなかった。

 

1月の末。

彼のマンションで夕美とアナスタシアを交えた三人暮らしが

始まってから2週間以上が警戒していた。

 

「東証の優良銘柄は年初から上昇してる。

 今さら買い直すにしても時期が悪い」

 

印刷済みの決算短信をくしゃくしゃに丸めてゴミ箱へ

ぶん投げるが、狙いがはずれて床に落ちた。

 

「プロデューサー、そのお仕事はそんなに大変なのですか?」

 

アナスタシアがそっとゴミを拾ってゴミ箱に入れてくれた。

 

「別に急いで買い直す必要はないんだけどな。

 ただ売る必要のないものを安値で売っちまったのがすげえ悔しくてさ」

 

可愛いアーニャの前なのに不機嫌なのを隠そうともしない。

アナスタシアはそんな彼の手をそっと握ってくれる。

 

暖かい手だ。アーニャの匂いを近くで感じる。

プロデューサーは不思議なくらいに気持ちが落ち着いたので

やっぱり捨てた決算書をもう一度持ってきてくれと言う。

アーニャは従った。それはとある銀行の決算書だ。

 

 

1月の末に三井住友フィナンシャルグループの第3四半期決算が発表された。

同行は三菱UFJに次いで国内第2の規模を誇り、資産総額は260兆円を超える。

 

https://www.smfg.co.jp/investor/financial/latest_statement/2023_3/2023_3q_01.pdf

(詳細が読みたい人向けに決算短信↑を貼っておきます)

 

三井住友FGの従来計画に対する進捗率(最終利益)

は8割を超え、次の本決算で過去最高益を達成することはもはや規定事項であり、

すでに昨年からその内容が株価に織り込まれて上昇している。

その上昇は年が明けても続いていた。

 

日銀のさらなる実質利上げの思惑も銀行株の躍進を支えている。

 

日銀の黒田総裁が12月に開催された金融政策決定会合で

長期金利の変動幅の拡大を容認したことで(従来の0.25%から0.5%へ)

債券市場では日本国債のパニック売りを誘発し、一時は長期金利が

日銀の誘導目標の0.5%をわずかに上回る水準まで上がってしまう。

 

これまで10年間も大規模金融緩和を続けてきた日本の金融当局の

突然の路線変更によって外国為替市場で大混乱を巻き起こし、

各国のあらゆる通貨に対して円高となり、そして日本株が大量に売られた。

(12月の金融政策決定会合後の黒田ショック)

 

 

三井住友FGは連結だけでなく単体(単行)でも利益率が高い。

純利ザヤ収入は、従来の大手企業向け0.4%、中層企業向け0.7%の

超低金利だが利益増加が続いていた。これは貸出先企業の件数が

毎年増加してることによる。これから日銀の利上げが行われることを

想定するとさらに収入が増える見込みだ。

 

上に張りつけた決算短信の第3四半期連結累計期間の損益計算書より

資金運用収益(うち貸出金利息)は前期比で増益。

 

1,357,126 → 2,529,341(単位百万円)

 

金額にして1兆円以上も運用益が増えていることを意味している。

これは連結決算での例だが、単体での成績も同様に増益となっている。

 

海外法人が行う貸出業務による利益も前期比で増益となり、

子会社の日興証券が起こした不祥事(株価操作疑惑)の例外を除けば、

海外資産運用ビジネス、国内ホールセール、クレジットカード手数料など

(コンシューマーファイナンス含む)全セグメントで増益となっていた。

財務状態は極めて健全であり10年以内に倒産する確立はゼロと断言できる。

 

(こんなに悔しいのは久しぶりだな……決算前に売らなきゃよかったなぁ……)

 

プロデューサーは三井住友FGを800株持っていたが、

サハリンへの旅費や生活費を捻出するためにその内の500株を売却してしまった。

 

他にも総合商社の丸紅(かつてのライバル企業)や双日の株式も保有していたが、

正月明け(東証の大発会後)に保有枚数の7割を売却してしまった。

 

いずれの銘柄も2013年~2015年にかけて買い集めたものであり、

そこから約10年が経過して含み益が大量にあったので売り出しやすかったが、

もし今も持ち続けていたら3月末期末配当の権利が確定して

6月に配当が入るはずだった。

 

死ぬまで売らないと決めていた豪州やシンガポールの不動産投資信託は

全部売却してしまった。これらは各国中銀の利上げの影響で価格が

低迷しているので今すぐにでも買い戻しができるのだが、

なんだか悔しいので買い戻せないでいた。

 

「プロデューサーはおうちでパソコンをやるようになってからずっと

 イライラしてます。怖い顔してます。お仕事大変なら少し休んだらどうですか」

 

「いやこんなの家計のお金の話だから、しょせんはママゴトだ。

 ただちょっと色々考えることがあってね。

 俺なりに自分の気持ちの整理をするのに時間が掛かりそうなだけだ。

 心配してくれてありがとうね。そして迷惑かけてごめん。アーニャ」

 

「いええ。私は全然気にしません。

 あのよかったらアールグレイのお代わりを淹れてきましょうか」

 

「すまないね。よろしく頼む」

 

彼が頭をなでてあげるとアーニャは子猫のように目を細める。

今の彼にとってアーニャ以上の癒しなど存在しなかった。

 

プロデューサーが商品先物市場のチャートを見た後に

自分の決済履歴を確認し、またため息をつく。

 

SPDRゴールドシェア。

円換算した金地金価格(ロンドン金値決め)と連動するETF

(上場投資信託)だ。彼はこれも売ってしまったのだ。

年末からFRBが利上げをまもなく停止するとの思惑があり、

年初の国際金価格は1,900ドルに迫ろうとしていた。

 

彼はこの金地金に値する資産を全額である220万円も決済(売り)してしまった。

結果的に彼は上昇第一目で売ってしまったようなものだ。

これは、トレーディングを生業にする者にとって致命的な

機会損失となり、年間の投資パフォーマンスを下げる一番の要因となる。

 

投資の世界では結果が全てであり、プロの世界では年間で

損失を出してしまうトレーダーは年末時点で解雇されても文句は言えない。

 

プロデューサーはモニターを見つめながらまた爪を噛む。

 

(現役時代と違って短期での利益を求めるわけじゃないので

 先物でヘッジをする必要もないしオプションも使わん。

 個人投資ならただアホ面して現物を握り続けてれば資産が増えるからな。

 次の就職先の当てもないのに金の卵を産む鶏を売っちまったのは痛かったな……)

 

金の卵を産む鶏とは、配当金のことだ。

 

これは金融機関で働いたことのない素人に多い発想だが、

株式とは売買を繰り返して稼ぐものだと思っている。

チャートを分析すれば市場に勝てると思っている。

 

短期での取引は危険だ。それはヘッジファンドを初めプロのトレーダーが

無限の資金力と情報力を駆使して暴れ回る「戦場」に参加することを

意味するのだから。そこに素人が参加したところで負ける。

運よく一度や二度は勝てても長期では絶対に負ける。

 

有価証券の運用で得られる本来の利益とは「金利」であり、

その利益を得るために証券は保有し続けるのが最適なのである。

 

株は金利を生まないが配当はある。したがって配当利回りが高く

また財務が健全な企業の株を選定するのが正解への近道となる。

 

例えば銀行、保険会社、年金基金など顧客の巨大な財産を預かる

プロは銘柄の選定をする際に市場環境や企業の事業内容を

徹底的に分析してから買う(アナライズ)

 

大手運用期間は、その分析した株を安値で買い集めたら、

あとは企業の経営方針や財務に不安がない限り絶対に売らない。

(ポートフォリオのリバランスは別だが)

 

長期の運用において素人なら平均利回り(金利)は3%でも十分すぎる。

全世界のトレーダーのリターン平均は7%(SP500指数をベンチマークとして)

これはプロの場合だ。それを知らない人はリターン20%も

取れると平気で思っている。株はパチンコや競馬とは違うのだ。

 

素人投資家は株が暴落するたびに狼狽売りをするが

そこはプロ連中が喜んで株を買い集める場面だ。

プロデューサーは暴落時以外に株を

買うことはないので逆に今の相場では買いにくいのだ。

 

「今は現金が1,600万も残ってるんだよな。

こんなの持ってたところでタダの負債だぞ」

 

現預金とは資産ではなく負債であると、

銀行など金融機関の貸借対照表(バランスシート)ではそう記される。

 

なぜなら遊んでいるお金は(金利を除いて)何の価値も生み出さないからだ。

21年から全世界でインフレが高進して物価が上がった。すると

相対的にお金の価値(物の交換比率)が下がっており、この状況を知りながら

お金を遊ばせているのは自ら現金の価値を目減りさせているのに等しい。

 

プロデューサーの証券口座には運用するための現金がある。

それは数か月先まで生活に必要のないお金を残しておいたものだ。

彼は家賃を中心とした当面の生活費は会社のお給料で支払っていた。

20代の若い時から余計に貯めていたお金は投資に回していたのだ。

 

「しかし会社を辞めちまったから収入らしい収入がなくなっちまった。

 やっぱり現金は今後の生活費のために眠らせておいた方がいいのか」

 

現在の運用資産(株、債券、不動産)から

年間での配当金(含む分配金)が225万円は入る。

そこから課税される約2割の税金を引くと、手取りが約180万円。

世間一般の非正規労働者の年収並だろうか。かつて高給取りだった

プロデューサーからしたらお小遣い程度であり、ストレスで頭をかき乱す。

 

今住んでいるマンションの家賃は高い。

都内の一等地に近いし4人暮らし用なので間取りが広すぎる。

彼は五体不満足ゆえに会社での収入がない。

まず固定費(家賃)を削減するためにより安い物件へ引っ越すべきかと考えた。

 

そのことをちひろに相談したら

 

「お引越しの相談ですか? 引っ越しだなんてそんな……、

 プロデューサーさんが家賃の心配なんてする必要はありませんよ」

 

「しかしだな。ここで3人で暮らしてるわけだし食費や光熱費だって

 それなりにかかるんだぞ。君だって今月日銀が発表した

 コアCPIの見通しは見てるんだろう? 

 日本の電力やガスの値上がりはまじでシャレにならんぞ」

 

※コアCPI。消費者物価指数(CPI)のうち、すべての対象商品によって

算出される「総合指数」から生鮮食品を除いて計算された指数のことを示す通称。

 

「お気持ちはわかります。インフレ率はしばらく高止まりしそうですものね。

 双日や丸紅の決算が来月ですよね? 丸紅の柿木社長は

 直近の3月末までの資源価格の見通しをどう示すでしょうか。

 プロデューサーさんはどう思います?」

 

「んー。そうだな。先月までの先物価格の推移を見た感じでは、

 おそらく非鉄金属の胴やニッケルは底打ちしたのでまだまだ上がるな。

 鉄の材料となる原料炭は下がってきてるがまだ油断できねえ。

 どこの国も電力のひっぱくがやばいから電力卸売り価格は横ばいだろうな。

 ブレント(北海の原油先物)も中国の経済再開の効果で上がるだろうから、

 そう簡単にインフレが終わるとは思わるとは思えねえな」

 

「さすがプロデューサーさんの分析は的確ですね★

 元プロは違います」

 

「それは皮肉かい?」

 

「いえいえ!! 本当にすごいと思ってるんです。素敵です★

 心から尊敬します」

 

「そりゃどうも。前から聞きたかったんだけど、

 君の方こそよく25歳なのによく専門的な話ができるもんだ。

 まじで君はいったい何者だ?」

 

「前にも言ったと思いますけど、私は色々な人と顔見知りなので

 その人らの影響で雑学をたくさん知ってるんですよね」

 

「雑学なのかこれは……?

 俺は昔勤めてた会社の関係者以外とこんな話ができた覚えはないんだが」

 

「まあまあ。それよりプロデューサーさん、明日がFOMCじゃないですか」

 

「そうだな」

 

「私は仕事で忙しいんで代わりにパウエル議長の発言を聞いておいてくださいよ」

 

「そんなの翌朝のニュース記事で読めばいいだろ」

 

「いいえ。私はリアルタイムで知りたいんです。

 今金融について勉強してる最中ですから」

 

「FOMC(米公開市場委員会)って日本時間で朝4時とかだよな。

 俺病気なんだから冬場のその時間に起きてるのしんどいぞ」

 

「アーニャちゃんがそばにいれば大丈夫でしょ。

 今のプロデューサーさんは働いてないんだからその辺はお願いしますよ」

 

「じゃあ何か見返りをよこしてくれよ」

 

「毎月少しだけ家賃を補助してあげますから」

 

「まじかよ?」

 

「まじです。私最近株の方でもそれなりに利益を出してますから」

 

「会社の福利厚生みたいに女の人に家賃補助してもらえるのかよ……。

 個人なのにすげえな。君はいったいどんだけお金をもっ……」

 

「あーすみません、もうすぐお昼休みが終わっちゃうのでまたあとでお願いします」

 

逃げるように電話を切ってしまう。

ちひろは、他人の過去は詮索するクセに自分のことを話したがらない女のようだ。

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