※この作品はR-18です。

好きでもないアイドルに告白をしたらどうなるのか?   作:なおちー

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(´-ω-`)

また途中で金融の話が出ます





シュラバヤ沖海戦 その3 新田美波 (金融の話あり)

たわいもない話をしていたら18時を過ぎていたので夕飯時となる。

 

「もうこんな時間になってたのね!!

 長居しすぎちゃったみたいでごめんなさいね」

 

「美波ちゃん、今日は夕飯も食べていくでしょ?」

 

「ええっそんな夕美ちゃん。夕飯までご馳走になったら悪いよ~~」

 

「むしろ大歓迎だよ。今日は美波ちゃんがいてくれたから一日楽しかった。

 夕飯は私が人数分作るからテレビでも観ながら待っててよ」

 

「そう? じゃあお言葉に甘えてご馳走になります。

 寮の管理人には遅くなるって電話しておくね。

 夕美ちゃんはお料理は一人で大丈夫?」

 

「もちろん大丈夫だよ。美波ちゃんの寮ではお世話になったから

 これはお礼。今日は自分の家だと思ってゆっくりしてちょうだい」

 

「うん。ありがと~~!!」

 

と明るく振舞う美波。実はこれは演技であり、彼女は今日の長いお茶の時間に

夕美とアーニャが一度も目を合わせてないのを確かに見ていた。

またプロデューサーが精神的に疲れ切ってるのも確かに見た。

病気とは関係ない心労の色が確かに浮かんでいた。

 

(夕美ちゃんの言ってた通りね。ここまで関係が悪化しちゃったら

 もう話し合いで解決するのは無理そう)

 

美波は結論を出しに来たわけじゃない。

そもそも彼女はアーニャの親友であり夕美とも親友になりつつある。

そのどちらかに対して「あんたが出ていきなさい」など言えるわけがないのだ。

 

「おほん」

 

美波は咳払いする。あくまで興味があるのはプロデューサーだ。

これは異性としての興味ではなく、あのちひろが執着するほどの彼が

どれほどの人物なのか試してみたくなったからだ。

 

英語のメモを片手にプロデューサーに勇気を出して声をかける。

 

「え、エクスキューズミー ミスターP?」

 

「おや? どうしましたか新田さん」

 

「サムアワーズアゴー、あー…えっと、アい、トージュう ザット

 レミシー よあ ほーむオフィス イン ディス マンション 

 ビコーズアイ……えっと アイ リリィ ワント トゥシーヨア 

 ジョブ わっと カインド オブ イズ イット」

 

「俺の仕事部屋が見たいんですか?

 見ても面白いものなんてないと思いますけどね……。

 ノートパソコンと書類があるだけですよ」

 

「すごい!! 今のでたらめな発音の英語でも通じるんですか?」

 

「まあそれなりに。新田さんが一生懸命に話そうとしてるのは

 伝わりましたよ。新田さんは英会話のご経験があるのですね」

 

「私は大学の英会話コースで少し学んだんです」

 

「そうですか。ふふ……」

 

プロデューサーは少し面白くなってきた。

この女性は、彼が昔の思い出として置いてきたものを

いちいち思い出させてくれる。

 

「Well...listen, pretty girl miss nitta.

the invest is my home work now.

Or should I call that as an asset management

like a professional? OK, follow me nitta, if you want to see.」

 

「え? え? 今の英語ですか?

 フォロミー? すごく早くて聞き取れませんでした」

 

(最初の方でプリティ…って言われたような気が?)

それは彼の本音だった。日本語で言えないから英語でさらっと言ったのだ。

 

プロデューサーは美波に仕事部屋を見せてあげることにした。

美波が最初に見たのは机に山のように積まれた決算書類だった。

 

2月の第一週から第二週にかけて東証プライム市場の大企業の決算が

集中している。また米ナスダック、英FTSE、独DAXなどを構成する

世界的大企業の決算の時期とも重なる。

 

プロデューサーが今月中に読まなければいけない金融関係の書類は

枚数にして1万枚以上はあった。ここまでくると証券アナリストのレベルだろうか。

決算書類を全部印刷していたら印刷代だけで貧乏になってしまうので

難しい内容や問題のある企業だけを狙って印刷したが、

それでも300枚はくだらない。

 

 

今回の決算シーズンは科学系(素材)の企業にとって厳しいものになった。

 

住友化学は国内首位級の化学系メーカー。

対中向け出荷数の減少や市況価格の下落を反映して、

販売数量の減少や棚卸資産の評価額を著しく引き下げざるを得ず、

23年3月末までの通期見通しにて減損損失を計上した結果、

通期での純利益がゼロに転落することになり決算後に株価は暴落した。

 

減損の要因を分析すると会計上は非計上的な項目であり

あくまで現時点での経営陣の悲観的な思惑を反映したものである。

 

また株価にとって重要なのは今期ではなくFY23(次年度会計)

の見通しである。半年先の夏場までの市況の回復を考えるなら

株価は長期的に上昇に転じる可能性が高い。

10年単位で当該株式の評価を考えるなら一過性の損失にすぎないだろう。

 

 

美波は、彼の机に貼ってあるメモを見た。

 

――住友化学、投資判断は積極買い。

  暴落後から1週間かけて2,000株集める。

 

同じように旭化成やJFEホールディングス、任天堂にも同じような

メモが残してあった。どうやら元プロはなぜか暴落した株を買い集めるらしい。

それらの株を全部買ってしまうと普通車の新車が買えるくらいのお金が

必要になるので大学生の美波にはまだ買えないが。

 

 

「プロの人って見てる内容が全然違うんですね。

 私は株のチャートを分析されてるのかと思いました」

 

「明日の株価がどう動くか予想するのは実は意味ないんです。

 金融市場とは半年から一年先を見越して動くものですが、

 重要なのは今から半年先を見てそれがどう動くかを見通すことです」

 

「じゃあ素人さんがチャートの本とかを買って勉強するのは意味ないんですか?」

 

「それは人によるので何とも言えませんが、我々トレーディング部門

 にいた人間からしたらあまり意味はないかもしれませんね。

 プロと素人では資金力が圧倒的に違いますし、プロは絶対に負けるわけには

 いかないので信用によるレバレッジを利かせた取引や、

 価格下落によるリスクをヘッジをするためにオプションを使います。

 だから資金力に限りのある人は相場では不利なんです」

 

「プロデューサーさんは今もその複雑な取引をされてるんですか?」

 

「今は現物で買って長期で保有するだけです。

 家族(妻と愛人)がいる身ではそんな危険な取引はしませんよ。

 短期での利ザヤを狙うのは結構リスクがあるんですよ。

 それにここでは職場と違って入ってくる情報が少なすぎる」

 

「なるほど。プロの人じゃなくなるとそんなもんなんですか。

 プロデューサーさんのパソコンに映ってるこの画面は何ですか?」

 

https://en.sse.net.cn/indices/ccfinew.jsp

 

↑China Containerized Freight Index

(興味のある人は上のURLをコピペしてください)

 

「中国輸出コンテナ運賃指数といいます。

 コロナの供給混乱から生じたインフレは、主に海運運賃の上昇から

 始まったものでした。今度は中国が経済再開をするので

 今後のコンテナ市況がどうなるかを判断するのに使います」

 

「英語のページなんですね。

 これって全体的に海運運賃がすごい下がってきてませんか?」

 

「はい。海運運賃によるバブルは終了してます。

 ですから各国でインフレが鈍化し始めてると世界中のアナリストは

 判断してるんです」(それでも海運銘柄は売る必要がないけどな)

 

「こういうのを読んでる人って経済の先行きが分かっちゃうんでしょうね。

 理解できるようになるまでが時間が掛かって大変そうですけど。

 分かるようになったら世の中の見方が変わって面白そうです」

 

(女子大生には難しすぎる内容のはずだが、むしろ興味を示すか。

 アイドルにしては変わった子だ。

 英語や数字にも抵抗がないし金儲けに興味があるようだが)

 

プロデューサーは美波のことを冷静に観察していた。

海運企業の商船三井や川崎汽船の決算資料に目を通す美波。

数字がいっぱい並んでいて訳が分からない。

 

アーニャは金融の話に全く興味がないので

部屋の隅でつまらなそうにしている。

 

 

「ご飯ができましたよ~~」

 

夕美の声。エプロン姿が様になっていて若奥さんの風貌だ。

 

 

3人は和やかな雰囲気で夕食のシチュー(和風)を食べ終え、

いよいよ美波がお暇するべき頃になる。

 

やはりというか、この食事の間もアーニャと夕美は

一度も目を合わせなかった。食後のお茶を飲み終えた夕美が言う。

 

「美波ちゃん。やっぱり今夜は泊って行ってよ」

 

「本当は私もそうしたいけど、

 明日はお仕事の予定はないけど大学の授業があるのよ」

 

「大学生なんだから自主休校にできるでしょ。

 何ならこの家から通えるじゃない」

 

「確かに大学はここからあまり離れてないから通えるけど」

 

「だったらいいじゃない」

 

「……アーニャちゃんとプロデューサーさんはどう思います?」

 

ふたりは構わないと言ったので美波はお礼を言う。

夕美が恐れているのは美波が帰った後にまた三人だけに

なって喧嘩が始まることだ。

 

美波は不本意だったが泊まることにした。

もしかしたら数日帰してもらえないのかとさえ思った。

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