※この作品はR-18です。

好きでもないアイドルに告白をしたらどうなるのか?   作:なおちー

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「英国東洋艦隊潰滅」
(えいこくとうようかんたいかいめつ)は、日本の軍歌(戦時歌謡)

1941年(昭和16年)12月10日、
日本海軍の陸上攻撃機隊がイギリスの戦艦『プリンス・オブ・ウェールズ』と
巡洋戦艦『レパルス』を撃沈したマレー沖海戦を称える歌


※本作はヤンデレ恋愛劇のため英国海軍との戦闘は発生しない。
ただなんとなく迫力のありそうなタイトルを使用してみたかった。


英国東洋艦隊潰滅(マレー沖海戦)その1

プロデューサーがまずおかしいと思ったのは、アーニャの意見の変わりようだ。

少し前まで美波との浮気を許さないと言っていたのに今はどうだ?

 

女心は秋の空といわれるが、それにしても変わり過ぎだろう。

 

「あれから色々と考えたんです。

 他の人は嫌ですけど美波とだったらあなたを分け合ってもいいと」

 

「お、お前は何を言ってるのか分かってるの?」

 

「私は本気です。私はプロデューサーの事と同じくらい美波のことが好きです。

 美波は私の友達です。昔の仕事仲間です。そしてお姉ちゃんもである。

 だから同じ人を好きになりました」

 

(なにが『だから』なんだ?)

 

サントリーの『DA・KA・RA』シリーズ。国内での売り上げが好調。

通期では過去最高益を達成したことが報道された。

そんなことは本編とまるで関係がないのだが。

 

「プロデューサーさん。こんな時間にごめんなさい。

 どうしてもお話しておきたいことがあるんです」

 

「に、新田さん? いつからそこにいたんですか」

 

プロデューサーはアーニャと抱き合っていた。

今は深夜の充電時間。プロデューサーは夜2時過ぎに

夫婦のベッドから抜け出してリビングでアーニャと密会していたのだ。

 

夕美の決まりでは夜は寝るだけで体力を使わないのだから

充電は禁止となっているのでバレたら大変なことになる。

 

美波は無防備にもブラもつけてないパジャマ姿で彼の前に現れてしまった。

繰り返すが今は深夜である。リビングでは暖房運転のエアコンが

強めに効いてるので寒くはないが。

 

「プロデューサーさんはまだ一度も私のことを下の名前で

 呼んでくれませんでしたよね。私はずっとそれが不満だったんです」

 

「……下の名前って、何を言ってるんですか。

 その言い方だとまるで新田さんが俺に気があるみたいに取れますよ」

 

「そう受け取ってくれて構いませんけど」

 

「……え?」

 

上目遣いで顔が赤くなる新田さん。

普段から明るく言動も愛らしいが、彼女がこんな顔を見せるの初めてのことだ。

 

(なんだよこれ……こんな都合のいい展開があるわけが……

 いやしかしこれは……マジっぽいぞ)

 

プロデューサーは今すぐ大好きな美波を抱きたくなってしまう。

好きなのは彼だって同じだし好きな気持ちでは負けるつもりはない。

しかし妻のいる身ではそんなことが許されるわけがない。

 

 

だがしかし……。

 

 

「新田さんが名字呼びなことをを気にされていたとは全然知りませんでした。

 それではさっそく今から呼び名を変えて見ますね」

 

「はい。どうぞ」

 

「美波さん。これでよろしいでしょうか?」

 

「さん、はいらないかもです」

 

「で、では。美波」

 

「はい」

 

「美波っ!!」

 

「はいっ!!」

 

プロデューサーは自然と美波と握手してしまった。

豪州に出張した時に若くて綺麗な女性と挨拶した時のことを思いだしたからだ。

もっともここは外国ではないのだが。

 

 

「これからもよろしくね。美波」

 

「こちらこそ、よろしくデス。プロデューサーさん」

 

 

何がよろしくなのか。しかも美波は途中で噛んでしまっている。

事情を知らぬ外野からしたら意味不明なやり取りだった。

 

特に最初からその様子を陰から見守っていた夕美にとっては。

 

 

「で? そこでさっきから何してるのか説明してくれる?」

 

花柄の可愛らしいパジャマ姿の夕美は腕組みしながら言った。

 

 

「……」

 

プロデューサー、沈黙。もう言い訳は不可能だ。

 

日本海軍の陸上攻撃機の波状攻撃を受けて沈没する戦艦皇太子の気分だ。

 

 

「ねえあなた。説明できないの?

 説明できないのなら浮気を認めたってことになるけどそれでいいの?」

 

「……」

 

「ねえってば。黙ってたら何もわからないじゃない」

 

「……」

 

「それとも朝までそのまま黙ってるつもりなの?

 だったら私も朝まで起きてるからそのつもりでいてね」

 

「……」

 

Pは宿題を忘れてしまい先生に叱られている男子中学生の顔をしていた。

そこにはかつて日本一の資源商社で勤務していた男の貫禄はない。

 

 

「美波ちゃんも同じだからね」

 

今度は美波をにらみつける夕美。当然の流れだ。

 

「深夜に人様の旦那と密会するとか

 安っぽいドラマの脚本じゃないんだからやめてくれる? 

 そんなことされたらこっちは嫌でも美波ちゃんが新しい

 浮気相手なんだって思っちゃうじゃない」

 

「いたっ」

 

夕美は美波の返事も聞かずにビンタした。

続いてアーニャにも一撃を食らわせる。こちらはすごい音がした。

アーニャが横なぎに吹き飛ばされるほどの威力があった。

 

「アナスタシアは私との約束を破った罰ね。

 深夜に充電禁止だから」

 

「どうして……すぐぶつんですか」

 

「あんたが悪いからだよ」

 

 

夕美はキッチンから本格的な出刃包丁を持ってきた。

その気になればアナスタシアや美波の肉を骨ごと削ぐことができるかもしれない。

 

夕美の濁った瞳は、これ以上人の夫を誘惑するつもりなら

容赦はしないと訴えているかのようだった。

 

「美波ちゃんには失望したよ。どうして……? どうしてなの?

 ずっと私の恋を応援するふりをして実は陰で彼のこと狙ってたってこと?」

 

「そんな前から彼の事を想ってたわけじゃないよ。

 この家にお呼ばれしてプロデューサーさんのお部屋を除かせてもらったりして

 彼のことを知るたびにどんどん惹かれていったの」

 

「こんなことになるなら美波ちゃんを家に呼ぶんじゃなかったよ」

 

「夕美ちゃん……ごめんっ。許してなんて言えないよねっ……。

 こんなの私のわがままだもん。分かってるよ。

 でも私も彼の事、本当に好きになっちゃったの……」

 

「彼を狙ってる人はもうこれで何人目になるだろうね。

 数えるのも面倒になってきちゃったよ。美波ちゃんは今この瞬間から

 このマンションに出入り禁止ってことで良いかな?」

 

美波が涙を流しながら下唇を噛む。それだけは嫌だと言わんばかりに。

夕美からしたらこれでも最大の譲歩をしたつもりだ。

アーニャの時は問答無用でひどい暴行を加えるのに。

 

「もし美波ちゃんが首を縦に振ってくれないんだったら、

 私は自分の夫を泥棒猫から守るために最後の手段に出るしかなくなるよ」

 

 

その次の瞬間、美波の首が飛んだ。

横一文字に薙ぎ払われた出刃包丁が、

美波の首を付け根から切断してしまったのだ。

 

骨まで露出した首の部分から、血のシャワーが噴き出てあたりを濡らす。

 

(ち、違う!! 今のはただの妄想よ!!)

 

そう。先ほどの描写は真実ではない。

美波が夕美の殺気を感じた瞬間に思い描いた悪夢だ。

人は時に悪夢を現実の出来事と錯覚してしまう。

 

「あ、あのね夕美ちゃん」

 

「うん」

 

美波は、自分の首がまだついていることを確認しながら

 

「今すぐここから出て行きますから殺さないでください」

 

「本当に出て行くの?」

 

「本当です……」

 

「ふーん? 意外と物分かりが良くて安心したよ。

 私だって昔の友達を手にかけることはしたくなかったからさ」

 

美波は持参していた大きなキャリーケースに荷物をまとめる。

外は寒いので上着(アウター)をしっかりと着てから玄関の扉に手をかける。

 

そんな彼女の様子を、アーニャとPはただ哀しそうに見つめていた。

美波が一度振り返ると鬼の形相の夕美がいる。

少しでも彼女の気分を害すれば包丁で刺されるのは確実。

 

(さようなら。プロデューサーさん。

 短い間でしたけど、一緒にいられて幸せでした)

 

美波は震える手で玄関を開けようとしたが

 

「君は出て行っちゃだめだ~~~~~~~~!!」

 

プロデューサーが吠える。

 

「美波ッ!!」

 

「プ、プロデューサーさん!?」

 

「君はもう忘れたのか? 俺達はここで4人で暮らすって決めたじゃないか!!」

 

「そんな約束しましたっけ? どっちかというと私が勝手に住み込んでるような気が」

 

「うるせえ!! 約束したんだよ約束!! なあ約束しただろ!!」

 

「は、はいっ。そうでしたっ。今思い出しましたよ。約束しましたね!!」

 

「そうだよなっ。だったら美波が出て行く必要ないよな!!」

 

「そ……それをはっきり言っちゃうと大変なことに……」

 

 

夕美が、大好きなはずのプロデューサーの胸ぐらをつかんで

彼の背中を壁に押し付けた。凄い怪力だ。

身長差が10センチ以上あるのに夕美の細腕のどこにこんな力があるのか。

 

「浮気相手が帰っちゃうのがそんなに嫌?」

 

「浮気相手じゃない。家族だ」

 

「家族? 完全に赤の他人だよね」

 

「違う。それは違うぞ夕美。俺達は四人とも家族なんだ」

 

「……」

 

「……」

 

夕美はこの時本気で夫を刺し殺してしまうかと思った。

どうやら夫が本気で美波に事を好きになってるのは間違いなさそうだ。

前からそんな予兆はあったのだが、事態は夕美が思っていた以上に深刻化している。

 

「困ったよ。美波ちゃんに帰ってもらうように頼んだのに帰ってくれないし

 あなたは美波が家族だって言い張るし、ねえ私はどうすればいいのか教えて」

 

「夕美。争いからは何も生まれないんだ」

 

「は? 自分から浮気したくせに何を言ってるの!?」

 

「ごめん……」

 

「とりあえずちひろさんに連絡するから」

 

「ちひろに?」

 

「ここでの生活で困ったことがあったら連絡するように言われてる。

 今日のことは全部隠さず報告するからね」

 

 

夕美はプロデューサーを解放してベッドに戻った。

戻る途中でキッチンにより、手当たり次第にコップをぶん投げて割っていく。

床が割れたコップの破片でいっぱいになった。

 

寝室の扉を壊れるくらいの勢いで閉める。

 

玄関に残された三人は、まず命拾いしたことを喜び合いながらも

手分けしてガラスの破片を拾い集めてから寝た。

 

プロデューサーが夫婦の寝室に戻る。するとあんなことがあったばかりなのに

夕美が体を寄せて来て甘えてきた。彼女は、まるで子供のように泣いていた。

 

プロデューサーはその時にこう思った。

ああ、相葉夕美はもう、自分無しでは生きていけないのだと。

美波との一件を知った時も本当なら嫉妬で夫を刺し殺してもおかしくなかった。

でもそれができなかったのだ。

 

夕美を救いたいと真に思うのなら

プロデューサーは新田美波との縁を切ってしまうべきなのだ。

それができないのは、自分がエロゲの主人公のように優柔不断で惚れっぽい性格だからだ。

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