※この作品はR-18です。

好きでもないアイドルに告白をしたらどうなるのか?   作:なおちー

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英国東洋艦隊潰滅 その3

美波はエコバッグを普通にキャッチし、中身を確認した。

 

「歯磨き粉買ってくれたんだ。ありがとー夕美ちゃん。

 ちょうど買い置きを切らしそうで困ってたの」

 

「……」

 

「ヤマザキの食パンも買ってくれたんだ。

 明日のお昼にハニートーストでも作ろうかな」

 

「美波ちゃん。その前に私に何か言うことないの?」

 

「なにかあったの?」

 

「は? もしかしてふざけてる?」

 

「え~~。ごめん。どうして夕美ちゃんが怒ってるのか分からないよ」

 

「その恰好は何なの!!」

 

「スクール水着だけど?」

 

「どうして家の中で水着を着てるのかって聞いてるんだよ!!」

 

「ちょっと最近むし暑…」

 

「今は2月で真冬だけど!!」

 

「ふふっ。もちろん冗談だよ。

 夕美ちゃんったら顔を真っ赤にしちゃって可愛い。

 私が水着を着てるのは彼を誘惑するために決まってるでしょ♪」

 

「そっか。そうだよね。美波ちゃんは嘘つかないもんね」

 

「夕美ちゃん。聞いて。

 私は別にあなたから彼を奪おうとしたわけじゃないの」

 

「は?」

 

「実は病気になってしまった彼を誘惑する実験をしていたの。

 フル充電の状態ではない彼でも果たして大人の女性の体に反応するかどうかを」

 

「……それで実験の結果は?」

 

「ちゃんと反応してくれたよ。

 キスした時に耳元で私の事好きだって言ってくれたの。

 きゃっ★ 言っちゃった(#^.^#)」

 

その次の瞬間、夕美がスリッパを脱いで美波に全力で投げつける。

美波は超人的な反射神経でしゃがみ込み、スリッパを回避した。

 

今のは高校野球で例えるなら150キロ級の剛速球に等しい一撃だった。

 

 

「危ないじゃない」

 

「よく避けたね」

 

「私ラクロスやってるから」

 

「それって関係あるの?」

 

「夕美ちゃん。落ち着いて話をしようよ」

 

「誰かさんのせいで落ち着けないんだけど、どうしたらいいかな?」

 

「それよりプロデューサーさんっ!!」

 

「な、なんだ?」

 

いきなり自分に話を自分に振られたので驚くプロデューサー。

 

「ちょっと夕美ちゃんがすごい顔になっちゃってるので

 プロデューサーさんから今日のことを説明してあげてください」

 

プロデューサーは美波の言ってることを理解しようと努力はしたが、

彼がどんなに考えても出てくるのは疑問ばかりであり

 

「……?」

 

首をかしげるのが精いっぱいだ。いったい何を説明すればいいのか。

誰がどう解釈してもプロデューサーと美波がやったことは浮気に違いない。

 

「プロデューサー……!!」

 

夕美が今度はプロデューサーの尋問を始めようとしたので

その前にアーニャが「待ってくださいっ!!」と怒鳴る。

あまりの声量に家中の窓ガラスにびりびりと亀裂が走るほどだった。

 

「夕美は勘違いしてます。

 プロデューサーは夕美のことを捨てるわけではありません」

 

「……は? 今さっきここで美波ちゃんと堂々と浮気してたけど」

 

「家族なら浮気じゃありません」

 

「家族?」

 

「私達4人はここで一緒に暮らしてますから家族です」

 

「ごめん、本気で意味わかんない。

 それってロシアとか外国では常識なの

 かもしれないけど日本ではそういうのないから。

 家族同士で陰でキスしてるとか気持ち悪いから」

 

「続きはプロデューサーから説明があるはずです」

 

(また俺かよ)

 

アナスタシアもPに謎のパスを渡してしまう。

この流れで妻に愛の告白でもして美波との一件は浮気でないことを

証明すればいいのだろうが、実際の浮気現場を見て激怒してる妻に

言い訳するなど火に油を注ぐようなもの。

 

「イライラが限界を超えて面白くなってきたよ。

 プロデューサーはどんな説明をしてくれるのか楽しみだなぁ」

 

プロデューサーは完全に追い詰められた。

精神的なストレスと恐怖に耐えきれず彼の顔はキツネザル

(アフリカ東岸のマダガスカル島に生息)のように変化した。

 

キツネザルは日本人にとっては奇怪な生き物だが

その顔をよく見ると可愛く思える。

 

「ねえってば。早く説明してくれる?」

 

「俺は」

 

彼がようやく口を開いた。一同が注目する。

 

「新田美波のことが好きになってしまいました」

 

深夜のリビングに衝撃走る。まさかの本音。

 

というか彼の本音などここにいる乙女は全員知っているので

今さらなのだが。しかし妻が激怒しているこの状態で

秘めた気持ちを暴露をする意味はあるのか。

 

「ふ~~~ん。そっかぁ。美波ちゃんのことが好きなんだ」

 

「でも夕美のことも好きなんだ」

 

「……は? 今なんて言ったの?」

 

「夕美のことも愛してます」

 

夕美が勢いよく腕を振りかざしたので美波が超人的な反射神経で

それを止める。夕美の右腕をしっかりと美波が握りしめていた。

 

「どうして止めるの」

 

「だって私はプロデューサーさんが怪我するところを見たくないから。

 それに彼は病人なんだよ? 夕美ちゃんが彼の奥さんだからって

 病人相手に暴力をふるうのってどうなのかな」

 

夕美は怒りが限界を超えたので今度は美波をお腹を蹴飛ばそうとしたが、

美波はキツネザルを思わせるフットワークの軽さで後ろに飛びのいた。

 

(当たらない)

 

夕美は歯ぎしりした。今の蹴りは美波が二度と子供が産めなくなるくらいの

強さで放ったものだった。普通の人間にかわせるわけがないのだ。

 

「夕美ちゃんは焦り過ぎだよ。まずは落ち着いて」

 

美波は汗一つかいてない。

 

「プロデューサーさんの言葉をちゃんと聞いてあげて」

 

「ちゃんと聞いた結果怒ってるんだけど?

 私が言ってる事って何か間違ってるかな?

 あとそろそろ服を着てよ。

 この季節でいつまで水着姿でいたら風邪ひくと思うよ」

 

「心配してくれてありがとう。私はこれでお暑がりな方だから

 屋内なら水着姿でも大丈夫なのよ。暖房も強めにかけてるしね」

 

「あのさ」

 

Pが突然割り込む。

 

「俺、やっぱりこの家を出て行こうと思うんだ」

 

「!?」 「え……」 「なにを……?」

 

プロデューサーは訳を説明した。

自分がこの家にいるとみんなが修羅場になってしまうので

責任を取って出て行く。

 

彼はこの家(部屋)の家主である。なぜ彼が出て行く必要があるのか。

 

そもそも一人で出て行くとは限らない。

彼が誰か他の女を連れてまた海外への脱出を考えてる可能性もある。

 

 

「すまん。もうみんなと一緒に暮らすのが疲れちまったんだ」

 

「なによそれ……。結局私のことは捨てるってことじゃない!!」

 

「待て夕美。出て行くってのは離婚するとかそういう意味じゃなくて、

 少しの間一人にしてくれないかってことだ。

 三日くらい近くのビジネスホテルにでも泊まって頭を冷やしてこようかと」

 

「だめだめ!! そんなのダメだよ!! 

 プロデューサーはそうやって逃げるつもりなの知ってるからね!!」

 

「だったら逃げられないように俺の貴重品をこの家に置いて行けばいいだろ。

 お金も全部置いておく。そうしたら俺はこの家に戻らざるを得ないだろ」

 

「そうやって私を騙そうとしてるんでしょ!!

 そんなウソに騙されないよ。プロデューサーはお金は電子口座に

 たくさん入ってるんだからどこに逃げてもお金には困らないじゃない!!

 ど、どうしてそんなこと言うの……。やっぱり私なんて口うるさいだけで

 ウザいと思ってたんでしょ……うぅ……やっぱり美波ちゃんの方がいいんだ……」

 

「いや美波さんもこの家に置いて行くよ。

 ぶっちゃけ夕美といると心が落ち着く暇がないので少し距離を置きたい。

 さっきも言ったけど別に離婚したいってわけじゃないからな。

 ただ充電できないと困るのでアーニャだけは連れていくが」

 

「なんですかそれ。そんなの認めませんよ」

 

と言ったのは美波だった。

先ほどのまでの余裕のある笑顔が消えて真顔になってる。

真顔になってる美波はこれはこれで人形のような美人だった。

 

「プロデューサーさん……さっき私の事好きだって言ってくれましたよね。

 なのに私を置いて逃げちゃうってそんなのひどすぎますよ」

 

「……新田さん、その件なんだが」

 

「美波っ……!! ですよね?」

 

「そうだったね美波さん。悪いね。ついいつもの癖で」

 

「今のってわざとっぽくないですか?」

 

「そんな馬鹿な。たまたま間違えたんだよ」

 

「もうっ。次私を名字で呼んだら本気で泣いちゃいますからね★」

 

(やべーたぶん殺される)

 

美波は今のセリフを真顔で言っていたのでプロデューサーの背筋が冷たくなる。

 

「俺は男だからね美波さんを見てるといけないことを考えちゃうんだよ。

 今だって君の水着姿がセクシーすぎて頭の中が真っ白になるのを

 必死にこらえながら話をしてるんだ。美波さん。君は魅力があり過ぎるんだ」

 

「そんな理由で私から離れちゃうんですか?

 プロデューサーさんが望むなら少しマニアックなプレイでも

 試してみようかなって思ってたのに残念です」

 

「にったさ、美波さん!!

 君はどうしてそうやって男の劣情を煽るようなことばかり言うんだ!!

 君の誘いに乗った俺も悪いとは思うが、君とここで生活してると

 いつまでも夕美との喧嘩が続くことになるんだよ。君はそれが分かってるのか!?」

 

「確かに、たまに口喧嘩することはあります」

 

「包丁を持ち出すのが口喧嘩のレベルなのかい!?」

 

「結果的に流血沙汰にはなってないので口喧嘩のレベルですよ」

 

「はぁ……。君はもっと賢い女性なのだと思ってたよ。

 君と話してると頭痛がしてくるぞ」

 

「それよりさっき私のことを新田さんと呼ぼうとしてましたね」

 

「今さら指摘することかよ……」

 

「指摘することですよっ!!」

 

「うわっ。びっくりした。急に怒鳴らないでくれ」

 

「謝ってくださいよ」

 

「な、なにを」

 

「私を名字で呼ぼうとしたことを謝ってくださいよ!!」

 

(さっきからおかしいぞ。この子は酒でも飲んでるんじゃないのか?)

 

「ごねんな? 美波さん。もう間違えたりしないから大丈夫だよ」

 

プロデューサーはつい抱きしめてしまった。

 

「あんっ」

 

なのに美波が無駄にエロい声を発してしまう。

 

(くそおっ……やっぱり色っぽいなこの娘は……)

 

すぐ近くに妻がいるのだ。背中から恐ろしい視線を感じるが、

その視線が夕美だけのものではないことも感じている。

 

「うっ」

 

プロデューサーが力を失い床に倒れこむ。

ついに背中を刺されたのかと思ったが、そうではなかった。

 

電池切れだ。アーニャに15分しか充電してもらえなかったので

深夜の長時間の修羅場に病気の身体が耐えられなかったのだ。

 

「ふっ」

 

夕美は笑う。

 

「あはっ」

 

美波も笑う。

 

「プロデューサーっ!!」

 

アーニャだけは可愛い顔で心配して彼を介抱する。

大きな彼の体をソファにまで運んでそこで毛布を掛けて抱き合った。

 

 

夕美が悪魔の顔でこう言った。

 

「ねえ美波ちゃん。提案があるんだけど」

 

「うん分かってるよ。

 彼を逃がさないようにするために同盟を組むってことでしょ」

 

「さっすが美波ちゃん。理解が早い」

 

「実は私ね、さっき彼に私を捨てて逃げるって言われた時に

 本気でイラついちゃったの。彼を刺したいくらいに憎んだのって

 あの時が初めてだったかも。ちょっと夕美ちゃんの気持ちが分かっちゃった」

 

「美波ちゃん、言っておくけど彼を逃がさないようにするための一時的な

 同盟だからね。美波ちゃんだけが抜け駆けして彼を独り占めしようとしたら

 問答無用で殺しちゃうからね」

 

「うん大丈夫よ。その時は私も全力で抵抗するから。

 むしろ夕美ちゃんが再起不能にならないか心配しちゃうよ」

 

「へー楽しそうな妄想だね」

 

「うん。楽しいよね。あはは」

 

「あははははっ。……次私を怒らせたらマジでぶん殴るからね。

 そんな馬鹿な事より彼の脱走を防ぐための具体的な方法を考えようか」

 

「それなら心配しないで。私はこんなこともあろうかと

 前からあらゆる事態を想定した計画を立てていたから。

 でも今夜はもう遅いからまた明日話し合いましょうか?」

 

「うん。美波ちゃんの意見を聞きたいんだけど、

 プロデューサーは今夜どうしたらいいと思う?」

 

「とりあえず手錠でもしておけば大丈夫よ」

 

「分かったよ」

 

 

などと殺伐とした会話を続ける大学生の女子二名。

 

恐ろしいことに二人は終始笑顔で会話をしていた。

 

プロデューサー、ついに絶体絶命か? 次回へ続く。

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