※この作品はR-18です。

好きでもないアイドルに告白をしたらどうなるのか?   作:なおちー

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英国東洋艦隊潰滅 その4

(あんな馬鹿なことを言ってしまったばっかりに俺は……)

 

おもちゃのプラスチック製の手錠をされたプロデューサー。

片腕ずつ手錠をされ、一方は夕美へ、

もう一方は美波の腕へとそれぞれ繋がれていた。

 

つまりプロデューサーは両手に花のような状態で自由を奪われていた。

今は朝の食事の時間である。

アーニャとの短い充電の時間(たったの10分)を終えて時刻は7時半。

 

椅子に座らされたプロデューサーは、

その両隣に座る夕美と美波によってご飯を食べさせられていた。

 

「はい。あーんしてくださいね」 ←美波

 

「うん」

 

「今日はプロデューサーさんの大好きな卵焼きですよ。

 プロデューサーさんは確か砂糖のたっぷり入った卵焼きが好きでしたよね?」

 

「そうだよ。美波さんは俺の好みをよく知ってるね」

 

「はい。プロデューサーさんの好みは何でも知っておこうと思ってるです」

 

「……」

 

「あ~~ん。そんな顔しないでくださいよぉ~~。

 困ってる顔のプロデューサーさんも素敵ですけど、

 朝から辛気臭い顔してたら一日がつまらなくなっちゃいますよ?」

 

Pは思った。自分の横にいる人物は新田美波ではなく

武内君が担当してるアイドルの佐久間まゆなのではないか。

佐久間さんの魂が一時的に美波に宿ってるのではないか。

 

武内君がたまに愚痴をこぼすのが、佐久間さんの嫉妬がすごすぎて

他のアイドルとの接し方が分からなくなるということ。

たまに業務に支障が出るので本気で怒りたくもなるが

売れっ子アイドルなのであまり強くは出れないのだ。

 

今のプロデューサーは、強く出ることはもちろん、

もう彼女達に口答えすることさえ許されない家畜となっていた。

 

 

アーニャが昨夜の残りもののシチューにパンをつけて食べながら歌を口ずさむ。

 

「か~ちくの安寧♪ 虚偽のはんえい。しせる餓狼のじゆ~を♪」

 

それは進撃の巨人のオープニングテーマだった。

アニメ史に偉大な歴史を残した最初のシーズンの放送が終わってもう10年経つ。

 

「とらわれった、くっつじょくは~~♪ 反撃のぉのろしさ★」

 

「アーニャ。さっきからうるさい」

 

「挟撃の~~そぉのかなた、獲物を屠る、イェーガー♪」

 

「うるさいって言ってんだよ。聞こえないの?」

 

 

夕美が反対側の席に座るアーニャを椅子ごと蹴り飛ばした。

アーニャがシチューを床にぶちまけながら転倒する。

彼女の親友の美波が駆け寄ろうとしたが左手の手錠が邪魔だった。

そのため声だけで心配することにした。

 

「アーニャちゃん。大丈夫!?」

 

「少しお尻を打ちましたが、怪我はしてないので大丈夫です」

 

「ちょっと夕美ちゃん!! 暴力は禁止だって言ったよね?」

 

「うちの家では食事中に歌を歌うのは禁止だから」

 

「そのルール、今作ったんでしょ」

 

「ぶっちゃけ彼の服からアーニャの匂いがするからイラついたの」

 

「それは我慢しないとダメよ。

 アーニャちゃんが朝一で充電しないと彼は座ることもできないのよ」

 

「嫉妬臭い女は嫌いです」←アーニャ

 

「今何か不愉快な発言が聞こえたんだけど空耳かな?」

 

「すぐ暴力をふるう女は嫌いだって、プロデューサーが言ってました」

 

「ふーん。そうなんだ。じゃあ本人に訊いてみようか」

 

プロデューサーは吐息がかかるくらいの距離にいる夕美の殺気を感じ、

さっきまでに食べたものをモドしそうになるのをこらえた。

 

「みんな、食事は楽しくしようぜ」

 

引きつった笑顔でそう言うので場がしらける。

 

重苦しい数秒間の間を置いた後、

 

「だそうだけど? アーニャ。楽しく食事をする努力をしてよ」

 

「夕美が悪いんじゃないですか」

 

「いやあんたが不快な歌を歌ったのが悪いから」

 

「私は歌を歌っただけです!! 蹴られる理由なんてありません!!」

 

今度はアーニャが切れてしまったようでお茶の入った湯呑を

夕美にぶん投げてしまう。夕美だけでなくプロデューサーの

服までお茶がかかってしまった。

 

夕美はよく熱したフライパンでアーニャの頭を叩いてやろうかと

立ち上がろうとするが、プロデューサーと手錠をしてることを思い出した。

 

「痛い。痛いよ夕美」

 

プロデューサーの腕に血がにじむ。手錠を無理に引っ張ったからだ。

 

「あっごめん。ちょっとカッとなっちゃって」

 

「さすがに手錠しながら食事するのは不便だよ。

 そろそろこれ外してくれないかな?」

 

「は? なんで?」

 

「ごめん。なんでもない。聞いた俺がバカだったよ」

 

「何よその顔。私が悪い女だって言いたいんでしょうけど、

 手錠することは美波ちゃんも賛成したんだからね」

 

「それよりアーニャを蹴ったりするのはやめてくれよ。

 あの子がいないと俺は物理的に生きていけないんだぞ」

 

「そうやって、いつもいつもアーニャって……」

 

「もうよしなさいよ夕美ちゃん」

 

美波が夫婦の話に割って入る。

 

「夕美ちゃんのやってることはアーニャちゃんへのいじめだよ。

 そんなにアーニャちゃんを目の敵みたいに思うことないじゃない。

 ちょっと異常だと思う。あの子が直接夕美ちゃんに何かしたわけ

 じゃないんだから充電くらい見逃してあげればいいじゃない」

 

「……」

 

「夕美ちゃん。怒らずに聞いて。私の目をちゃんと見て。

 プロデューサーさんにとって手錠されることよりもアーニャちゃんが

 傷付けられることの方がよっぽど許せないことなんだよ。

 自分の夫に心底嫌そうな顔で見られてる事にも気づいてないの?」

 

「それは分かってるってば。

 美波ちゃんは私に何度も同じこと言うんだね。

 それってお説教のつもりなの?」

 

「お説教だよ」

 

「私と一つしか年が違わないのに偉そうにしないでよ」

 

「夕美ちゃんが最初に私をこのマンションに招待したのは

 私にアーニャちゃんとの関係を相談したいからだったよね?

 だから私は夕美ちゃんが悪いって言ってるの。夕美ちゃんが

 我慢してもう少し大人になれば家が平和になるんだよ」

 

「……」

 

夕美は怒りで震えていたが言い返すことはなかった。

美波の言ってることが正しいことを知っているからだ。

 

いつもの喧嘩なのでそんなやり取りを気にもせずにアーニャは

自分の食べた分の皿洗いをしていた。アーニャは何気なく

彼の汚れた服の予備を用意しようかと思ったがどうせ夕美に怒られるのでやめた。

 

その時、プロデューサーの携帯が鳴る。

着信メロディが「ヴィーナスシンドローム」だったので夕美が歯ぎしりする。

 

「俺の携帯が鳴ってるよ」

 

「そうだね」←夕美

 

「そうだねって、緊急の用事かもしれないから出たいんだが」

 

「あなたの携帯は寝室の鍵付きの引き出しに入ってるの。

 アーニャ、携帯を取って来て」

 

「ダー」

 

アーニャは言われたとおりにした。

着信は5分間も鳴り続けていたが切れることはない。

何となく相手が想像できてしまう。アーニャが彼に携帯を渡す。

美波の指示でスピーカーホンにさせられた。

 

「おはようございます。ちひろです」

 

「ちひろか……。今さら連絡よこしやがって。すげえ久しぶりだな」

 

「連絡が遅くなってごめんなさい。それで今の状況はどうですか?

 なんとなくあなたのそばに夕美ちゃんがいそうな感じがしますけど」

 

「夕美なら俺の隣にいるよ。悩みはたくさんあるが、

 まず夕美とアーニャの仲が悪いことで困ってる。どうにかならないか」

 

「仲が悪くても家族なんですから何とか我慢して暮らしてくださいよ」

 

「本人たちにはそう言ってるけどな。

 つかもっと気の利いたアドバイスはないのかよ」

 

「新田さんとの関係はどうなってますか?」

 

「新田さん? 新田さんとはまあ何ていうか普通に仲良しだが」

 

「そうじゃなくて、男女の関係になったんですよね?」

 

「そ、そうだが……」

 

「ずばり新田さんのことは好きですか?」

 

「……なんで聞く? それって重要なことなのか?」

 

「質問に答えてくれないとこちらは困ります」

 

(なんでだよ。意味わかんねえ)

 

「そこは大人として察しろよ。嫌いだったら男女の関係にならねえよ」

 

「そんな言い方じゃダメです。ちゃんと気持ちを込めて行ってください。

 新田さんの事、愛してますか?」

 

「俺は美波のことを愛してる。もちろん本人にも伝えてあるよ。

 どうだ。これで満足したか?」

 

「はい♪」

 

ちひろは仕事が立て込んでいるらしく、それ以上の会話をする時間はなかった。

また何か大きな変化があったら教えてくださいとだけ伝えて一方的に電話を切る。

 

(なんだったんだ。電話した意味あるのかこれ?)

 

 

夕美はその日は大学があるので歯を磨いた後にすぐに出て行った。

 

家に残されたのは完全にオフの美波と暇人のアーニャだけ。

 

アーニャは夕美が出て行ったので安心してプロデューサーに寄り添った。

束縛する趣味はないので手錠はしない。

アーニャはそもそも彼に文句すら言ったことがない子猫のように純情な女の子だった。

 

三人は仲良しなので一緒にソファに座ってテレビを見ていたのだが、

新田美波がふと報道番組を見ながらこう漏らした。

 

「プロデューサーさんは、さっきのちひろさんとの電話で

 私のことを新田さんと呼びました」

 

「え……」

 

「すごくショックでしたよ」

 

「あ、その。うん。ごめん」

 

「もう新田さん呼びはしないって約束したはずです」

 

「だからごめん。

 向こうが最初にそう呼んできたから俺も流れで呼んじゃったんだよ。

 

最後は美波さんのことを愛してるって言ったよね」

 

「愛してる……ですか」

 

「疑ってるのかい?」

 

美波はその問いには答えなかった。

 

「もし。もしですよ。私とアーニャちゃんと三人でこのマンションを出て

 他の場所で暮らすとしたら、あなたは賛成してくれますか?」

 

「俺には夕美がいるんだからそんなことできるわけないよ。

 俺は夕美と結婚した以上は彼女のそばを離れない。

 結婚といっても事実上のものだけどね」

 

「私とは結婚してくれないんですよね」

 

「したくてもできないよ。

 日本はムスリムの国と違って一夫多妻制じゃないんだ」

 

「そうじゃなくて、夕美ちゃんと別れてくれたらうれしいんですけど」

 

「……最近の君は言うことがどんどん過激になってるよ。

 聞いてるこっちが怖くなりそうだ。美波さん。君は夕美と違って

 激情家じゃないようだが、裏で考えてることが黒すぎないか」

 

「女なんてこんなもんですよ。好きな男性の前では

 猫かぶってても裏ではいろんなことを考えてますから」

 

美波は妖艶に笑い、彼に身をさらに寄せる。

大きな胸が彼の腕に押し付けられる。

手錠をしてることもあり密着のし過ぎで二人の体は一体化してるかのようだ。

 

「と、ところでさ、その恰好は目の毒なんだ。服を着てくれ」

 

「服なら着てますよ」

 

「朝の食事中からキャミソールに下着だけの姿じゃないか」

 

つまり美波のなまめかしい太ももは全開だった。

プロデューサーはあえて見ないようにしていたが限界がある。

 

「実は私、あなたと身体をくっつけてからアソコが濡れちゃってるんです。

 嘘じゃないですよ。どうです? 確かめてみますか?」

 

「くっ……」

 

美波の甘い吐息が鼻先にかかる。

プロデューサーは自由な方の手で美波の体に

触れようとしたが美波に手を押さえつけられる。

 

「まだ駄目ですよ。アーニャちゃん。あれ持ってきて」

 

「本当にするのですか?」

 

「もちろんだよ。今やらないでいつやるの。こういうのは

 さっさと済ませてしまった方が後々楽になるんだよ」

 

「美波がそう言うのでしたら……分かりました」

 

(何をする気だ……?)

 

アーニャは一枚の紙を持ってきた。

それは市役所に提出するタイプの婚姻届けだった。

 

(そう来たか)

 

美波の体に振れたいならサインしろと迫るのだろう。

Pはすぐに反論を思い付いた。

 

「正式な婚姻は無理だよ。

 俺は君も知ってると思うがロンドンに本物の妻がいるんだ」

 

「一応日本での戸籍を調べましたけど、プロデューサーさんは

 国内では婚姻の登録をしてませんね。外国ではどうか知りませんけど

 日本に住んでいる限りあなたは独身ですよ。仮に独身でなかったとしても

 向こうの奥さんとも3年も連絡を取ってないので直ちに離縁することも可能ですよね」

 

(やはりこの娘は頭が良いな)

 

「仮に俺がサインしたとしよう。

 そうすると君は親友の夕美を裏切ることになるわけだけど、

 そんなことをして胸が痛まないかい?」

 

「はい。全く痛みません」

 

即答だった。プロデューサーは言葉を失う。

 

「むしろ逆じゃないですか。私はあなたをこの牢獄から

 助け出してあげようって提案をしてるんです」

 

「ここは牢獄かもしれないけど一応俺の家なんだよ。

 悪いけど今すぐ届書にサインしろと言われても即答はできないんだ。

 俺にも少し考える時間をくれないかな」

 

「分かりました。プロデューサーさんに無理強いして嫌われたら

 元も子もないので今日はここまでにします。

 でもあとで同じお願いをする時があるかもしれないので

 その時はちゃんと考えてくださいね?」

 

プロデューサーは頷いた。

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