好きでもないアイドルに告白をしたらどうなるのか? 作:なおちー
その日、相葉夕美は三限の講義を自主休校して帰宅することにした。
理由はいつものように嫌な予感がしたからだ。
夕美は今朝の占いの運勢が最悪だったこともあり
何か起こるのではないかと懸念していたが、
最後に役に立ったのは女のカンだった。
帰宅したのは13時半。
おかしいと思ったのは玄関の靴置き場が乱れていること。
棚の引き出しにしまったはずの彼の靴がないこと。
そしてなにより、夫婦の寝室から女のすすり泣く声が聞こえてくること。
美波はベッドの足に手錠でつながれていて、
相当に暴れたのか手錠をかけられた部分から血がにじんでいる。
(あの人が脱走したんだ)
夕美はすぐに事態を把握し
(これは……)
不愉快なものも見つけた。
くしゃくしゃにされた婚姻届けである。
おそらく夫婦の寝室にあったものを美波が勝手に取り出したのだろう。
夕美が大切にとっておいた届出用紙を美波はなぜか知っていたのだ。
美波は涙の流し過ぎで目が真っ赤に腫れている。
涙の通り道の部分の化粧が落ちてしまっている。
「夕美ちゃん……ごめんね。私の不注意で彼を逃がしちゃったの」
「その前に聞きたいことがあるんだけど、
どうして美波ちゃんが私の婚姻届けを勝手に取り出したのかな」
「それは……」
「もしかして美波ちゃん。私に内緒で結婚しようとした?」
「……」
「私はまだ事実婚だから美波ちゃんが先に婚姻届けを出せば先を越せるもんね。
私は大学を出てから結婚しようと思ってたから正式な結婚は
まだ早いかと思ってた。あとで親にも相談しないといけないしね。
でも美波ちゃんがそういうつもりなら私もモタモタしてられないね」
夕美はキッチンからガスバーナー(キャンプ用品)を持ってきた。
「ねえ美波ちゃん。彼の脱走の件もそうだけど、私を騙して
彼と結婚しようとしてたことも含めてどう説明してくれるの?」
「は、はは……やだなぁ夕美ちゃん!!
そんなのただの冗談に決まってるじゃない」
「私の目を見て話してくれる?」
「うっ……」
「今あなたがどういう状況なのか分かってるんだよね?」
夕美がカセットガス式のバーナーを美波の顔の前に向ける。
美波は恐怖のあまりガタガタと震えて漏らしそうになった。
「このバーナーで美波ちゃんの顔をあぶってしまえば、
もう美波ちゃんの女としての人生は終わりだね」
「あ……あ……ご、ごめんなさい……許してください」
夕美はさらにお花の手入れをするための頑丈なハサミを持ってきた。
手慣れた様子でカシャン、カシャン、と空を切る。
その音が美波をさらに恐怖させる。
「このハサミで美波ちゃんの目をつぶしてあげることもできるよ」
「ひぃ~~~~!!」
美波はついに失禁してしまう。
美波の足の周りに黄色い液体が広がっていく。
「臭いよ。それに床が汚れちゃったじゃない。
あとでちゃんと自分で掃除してよね」
「ごめんなさい、ごめんなさい。ちゃんと掃除します。
掃除しますからこの手錠を外してください」
「いやだよ」
夕美が見下ろしながら言う。
「今回はちょうどいい機会だから美波ちゃんにたっぷりと教育してあげるよ。
私の夫を横取りしようとしたらどうなるかを、たっぷりとね」
「あ……あ……いやぁ……助けてぇプロデューサーさ~~ん!!」
それから1時間後、夕美は文香の携帯に電話をかけていた。
ちょうどプロデューサーと文香がホテルで情事を済ませて
昼寝をしてるタイミングだった。
文香が長い髪の毛を横に払いながらスマホを手に取る。
「相葉夕美からのメールのようです」
「な、なんて書いてあるんだ」
メールの内容
『文香ちゃんが私の夫を連れ去ったのはもう知ってるよ。
人様の旦那様を拉致するなんて立派な犯罪なんだからね。
あとで文香ちゃんには相応の報いを受けてもらうから楽しみにしててね』
『追伸。次は文香ちゃんがこうなる番だよ』
画像が添付されている。
美波は全裸で四つん這いになり、お尻をこちらに突き出した状態で
写真を撮られていた。腕は後ろ手に縄で縛られている。
顔のアップもあるがアヘ顔である。
何度もイかされた後のようだ。
元々目元が垂れているのでなんともエロい表情だ。
まるでマニア向けのAVのジャケットのようである。
「これは……なんと汚らわしい写真ですか。
相葉夕美には同性愛の趣味でもあるのでしょうか」
「しかもこれ、床にお漏らししてるように見えるのは気のせいか?」
「わざと見えるように電動バイブも床に置いてあります。
意外でしたね。あなたを逃がしてしまった罰として
物理的な拷問でもするのかと思ってましたが」
「新田さんとは親友同士だったから拷問するのは抵抗があったんじゃないか。
新田さんは性欲の強い人だから拘束プレイはむしろ
ご褒美になっちゃったかもしれないな。
それより夕美はレズだったのか。失望したよ」
「……そういうあなたはこの写真を見て
トランクスの部分が盛り上がってるようですが」
「ご、ごめんっ。これはな……」
「ふふっ。分かってますよ。新田さんのあられもない姿を
見てしまったら普通の男性はそうなるでしょう。
プロデューサーさんが私に愛を誓ってくれたのでもう
疑ったりはしません」
「ありがとう。さすが文香は大人だな。理解があって助かる」
「いえいえ。相葉夕美は新田さんのいやらしい姿を
見せることでプロデューサーの情欲を刺激して
家に戻るように仕向けたのかもしれませんね」
「うーん。あの人とは正直もう会いたくないな。
見た目は優しそうなんだけど陰で考えてることが黒すぎるんだよ」
「ふふっ。どちらにせよ私がもう二度とあの女達とは合わせませんけどね」
これからどうするか考える。
今夜はこのホテルで過ごしてもいいが、文香は今日の件を同盟を
組んだアナスタシアと蘭子に知らせる義務がある。
同盟には様々な細かいなルールがあり、さいしょのひとつに
『抜け駆け禁止』があるのだが、文香はその約束をさっそく破ってしまった。
なお、ルールを作ったのは文香である。
(まだ作ったばかりの同盟ですが、さっそく破棄しますか)
文香はアナスタシアの番号を着信拒否に設定した。
同盟を表面上は継続しながらギリギリまで彼との関係を
とぼけることもできるのだが、すでに夕美に事実(脱走の件)
が知られてるようなのでアナスタシア達にも連絡がいくのは確実。
(であれば……)
逃げるしかない。
この時、文香は致命的なミスをしていた。
蘭子の番号を着信拒否にしなかったのだ。
神崎蘭子は14歳の少女。
その性格は人見知り傾向にあり中二病の患者でもある。
取るに足らないと見下していたのだが、それが甘かった。
ちょうどその時、夕美からアナスタシアに連絡が入り、
彼が文香に誘拐されたことを知り、さすがのアナスタシアも怒り狂う。
同じくアナスタシアのそばにいた蘭子もその事実を知り泣きそうになった。
「アーニャ。これから話し合いをするから今すぐマンションに戻って」
「分かりました。あの、私からお願いがあるのですが」
「なに?」
「……」
「ほら早く言って。こっちは急いでるの」
「蘭子も連れて行ってもいいですか?」
「蘭子ちゃんを……? なんで?」
「本人がどうしても行ってみたいと言ってるのです」
「余計な人を連れてこられると困るんだけど」
「蘭子を連れて行くのダメでしたら、私は行きません」
「……っ。分かったよ。許可する。じゃあ早くしてね」
アーニャはすぐに支度をするように蘭子に言う。
あの男の人のマンションに行くことができると
知ると蘭子はウキウキした気持ちが止まらなくなる。
(我を新たなる次元へと導く、深淵なる城へいざ参らん)