※この作品はR-18です。

好きでもないアイドルに告白をしたらどうなるのか?   作:なおちー

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夕美がプロデューサーに言いたいこと

(うっ) 

 

プロデューサーはバランスを崩したが倒れることはなかった。

夕美は父親に余る赤ん坊のようにプロデューサーにしがみついて

離れようとしない。おかしいと彼が思ったのは、夕美の手がかすかに

震えていることだ。心なしか息遣いも荒い。

 

「お、おねが……いし……す……で……ください」

 

「ん? なんだい?」

 

夕美の声があまりにも小さすぎて密着した状態でも聞き逃すほどだった。

 

「夕美。今なんて言ったんだ?」

 

「捨てないでください」

 

「捨てる……? はは。いきなり何言ってんだよ」

 

「わ、私より美波ちゃんの方が、可愛いから……、

 こんな嫉妬深くて可愛くない女なんて、

 いつかプロデューサーさんに飽きられて捨てられちゃうんだぁ!!」

 

それからが大変だった。

 

夕美は大粒の涙を流しながら自分が不安に思ってることを何でも口にした。

プロデューサーは、今になって初めて、夕美があそこまでプロデューサーを

監禁することにこだわっていた理由、その心の不安の正体を知った。

 

夕美が話を始めて実に15分に及び、その間、プロデューサーは大好きな人に

何時飽きて捨てられるかもわからない複雑な女心を知り、なぜだか

お尻のあたりが妙に涼しくなるのを感じるのと同時に、胸が締め付けられた。

 

同時にこうも思った。

 

(おっぱい触りたいな)

 

夕美は全く意識してなかったが、

前開きタイプのパジャマの胸元からばっちりと乳房が見えていた。

 

プロデューサーのあそこが勃起する。

 

 

「夕美。そろそろ言いたいことは全部話し終えたかな?

 夕美の話したいことはちゃんと伝わったよ」

 

「そんな……私はもっと私の考えてることをあなたに知ってほしくて……」

 

「なら少し外に出ようか」

 

「えっ……外に出るの?」

 

「外の空気を吸いながら話そう。いつまでもマンションの中に

 いたら良い考えも浮かばないと思うぞ」

 

「で、でもでも、美波ちゃんの許可もなくお外に出ちゃったら大変なことになるよ」

 

プロデューサーは夕美にキスをして黙らせる。

 

耳元で「愛してるよ?」とつぶやくと、夕美は子猫のようにおとなしくなった。

さりげなくパジャマ越しに胸を揉んでやる。

夕美は乙女の顔でぼけっとしていて特に何の反応も示さなかった。

 

大音量でブザーが鳴る。

 

美波の許可なく玄関を開けてしまうとこうなるのだ。

その5秒後、鬼の形相をした美波が飛び起きて来てプロデューサーに壁ドンした。

 

「そんなに怒った顔するなよ。綺麗な顔が台無しだぞ美波。

 俺はこれから夕美とその辺を散歩したいなって思っただけだ」

 

「……それはどういう意味なんですか?」

 

「言葉通りの意味だが?」

 

「散歩というと聞こえはいいですよね。

 でもそれってここから逃げ出す口実では?」

 

「そう思うのか?」

 

「はい」

 

「美波。俺はついさっき君に誓ったはずだ。

 もう二度と俺は美波を置いて逃げて行ったりしないと」

 

「夕美ちゃんだけ、特別扱いですか……」

 

「……ん? 何か言ったかい?」

 

「そうやって、夕美ちゃんが悲しんでる時はお姫様みたいに優しく

 抱きしめてあげて、それにお外にまで出してくれるんですか。

 いいなぁ。夕美ちゃんばっかり。夕美ちゃんは最初の奥さんとして

 選んでもらえた人だから、やっぱりプロデューサーさんの中で一番ってことなんですね」

 

「あのな、美波……。はぁー。……どこから説明したらいいのかな」

 

「私だって自分がめんどくさいことを言ってることくらい分かってます。

 でもつい言ってしまうんですよ」

 

「ならお前も一緒に来なさい」

 

「え?」

 

「美波も散歩に付き合え。それなら文句ないだろう?」

 

プロデューサーが美波を虜にするような笑顔で言うものだから、

結局美波は手を引かれるがままに玄関から外に出ることにした。

通路を歩き、エレベーターに三人で乗る。

 

密室だ。

夕美は一言も話さないがプロデューサーの腕にしっかりとしがみついていた。

美波は折れ曲がった視線で床を見つめている。

旦那と手を握りはしないが、自分の頭を彼の肩に預けて甘えていた。

 

エレベーターが1階に着いた。エントランスを抜けると遠くでゴロゴロと

雷の鳴る音がする。暗闇の中、わずかに見える月の光から、

上空では激しい速度で雲が移動しているのが分かる。

 

 

「夜明け前に落雷になるかもしれないな」

 

 

プロデューサーが誰に言うでもなくつぶやく。返事をする者はいなかった。

本来ならプロデューサーは自力で歩けるほどの余力はないはずだが、

美波がそんな彼のことを気遣い、そっと彼の手を握ってくれている。

 

本当なら美波は彼に力を補充するつもりはなかった。

いつものように充電切れに追い込めば脱走される心配がないのだ。

しかし今日の彼は、なんとなく逃げないような気がした。

理由ははっきりしてない。あえていうなら女のカンだ。

 

 

美波の手は、絶対に彼を逃がさないと言わんばかりの強さだ。

8月の強烈な湿気の中で手が汗ばんでいるが美波に気にした様子はない。

彼女のシャンプーの香りがすぐ近くでするのでプロデューサーはまたしても勃起していた。

 

 

「ねえプロデューサー、キスしよ?」

 

 

夕美が頬を赤く染めながらそう言った。

 

一行はちょうど近所のコンビニを横目に通り過ぎようとしていた。

深夜の2時過ぎでもコンビニは営業しており駐車場はガラガラだ。

 

 

「分かったよ。夕美。目を閉じなさい」

 

「はい。あなた」

 

 

車道で車が1台通り過ぎる。ライトの光が彼らを一瞬だけ照らした。

 

 

(やっぱり、あなたって人は……)

 

 

美波が不快そうに鼻を鳴らす。

つないだままの彼の手を折ってしまうかとさえ思った。

 

(夕美ちゃんの時だけはそうやって頭を優しく撫でてあげて、

 甘い言葉をたくさんかけてあげて、私には全然そんなことしてくれないのに、

 私にだけはお説教ばかりして傷付くことをたくさん言ってたくせに……)

 

実は美波にだってほぼ同じことをプロデューサーはやってきたつもりなのだが、

嫉妬に狂っている美波には、夕美に比べて自分は愛されてないのだと感じてしまう。

 

彼が自分に向ける愛情は偽り。だから愛されていない。

不安になる。嫉妬して狂う。

恋愛において選ばれる側である女性特有の劣等感だ。

 

男性とは女性を照らす太陽の光であり、太陽の光によって

照らされることのない月に価値はないのだと感じてしまう。

これは日本人も英国人も関係なく世界各国の女性に共通する心理だ。

 

 

「あなた、ありがとうございました。もう十分です」

 

「もういいのか? 夕美はまだしてほしそうな顔をしてるじゃないか」

 

「はい。そうなんですけど、美波ちゃんがさっきからちょっと」

 

「新田さ……美波。ご、ごめんな?」

 

美波は瞬間的に彼を殴ってやろうかと思った。

なぜ、彼は今この瞬間に自分を名字で呼ぼうとしたのか。

新田さんと呼ぶのは彼女にとって最高の侮辱なことは知っているはず。

 

怒りで拳が震えている美波をよそに、

 

「それより夕美!!」

 

プロデューサーがわざとらしく声を張る。

 

「は、はい。なんでしょう!?」

 

「君が急に敬語を使ってくるからびっくりしたよ。何か理由でもあるのか?」

 

「そ、それはちょっと……。話すと長くなるんですけど、私は今までプロデューサーさんを

 束縛しすぎたことを反省してるんです。よく考えたらプロデューサーさんって

 私よりずっと年上だし、職場では尊敬してる上司だったわけだし、そんな人を

 虐待するような真似をしてしまって、申し訳ないなって思ったからです」

 

「はは。なんだそんなことか。俺は昔の事なんて気にしちゃいないよ。

 今はこうして仲直りできたんだからいいじゃないか。な? 夕美?」

 

プロデューサーが頭をなでてあげると夕美はまた涙をぽろぽろと流した。

猫というより主人に捨てられるのにおびえてる子犬のような態度だ。

 

夜の暗闇の中で涙を流す夕美の姿はそれはもう美しかった。

今まで嫉妬で狂ったヒステリー状態の夕美ばかり見ていたものだから、

プロデューサーは衝動的に夕美が愛おしく思えて仕方なかった。

 

プロデューサーが夕美の背にそっと手を伸ばして顔を

使づかせたものだから美波がヒステリーを起こしてしまう。

 

 

「私の前でイチャイチャするのやめてよ!!」

 

 

今までに聞いたことのない叫びだった。ムンクの叫び。

ではなく美波の悲痛な叫びだった。

 

「やっぱりプロデューサーさんは夕美ちゃんだけいればいいんだ!!

 私の事なんて最初から捨てるつもりで抱いてたんでしょ!!」

 

「み、みなみ。ちょっと落ち着け」

 

「嫌いなら嫌いだってはっきり言ってよ!!

 私の事なんて新田さんって呼んじゃうくらい、

 あなたにはどうでもいい存在なんですからね!! 

 ねえ、そうなんでしょ!!」

 

「俺は君と結婚して…」

 

「うちのことを捨てて夕美ちゃんと逃げるつもりなんじゃろ!!

 こがいなたいぎい女と一緒におったって楽しゅうないのぉ。

 こがいなたいぎい性格でごめんなさいのぉ!!」

 

「ん……? 待て。なんて言ってるんだ?」

 

「あんたがうちの体を愛してくれんさってるこたぁ知っとる。

 でもそれって体だけの女ってことじゃのぉ。最初からうちのことなんて

 体目当てで他のところはどがぁでもええ人形みたいなものじゃったんじゃろ!!」

 

「ちょっと待ってくれって!! 広島弁のネイティブやめろ!!

 マジで何言ってるか分かんねえよ!!」

 

「広島弁?」

 

「うん。出てたよ。自分で気づいてないのか?」

 

「い、いえ……全然」

 

美波は顔を真っ赤にしたが、それも一瞬だけ。すぐに怒りが込み上げてきた。

美波は恐ろしいくらいの早口でまくし立てる。

 

「私も夕美ちゃんのようにお花が好きになってインテリアのセンスもあって

 紅茶が趣味になれば好きになってくださいますか? 

 あとこの髪型も気に入りませんか? でしたら私も夕美ちゃんと同じように

 ショートにしましょうか? あ、もしかして私の声も気に入りませんか?

 さっきは汚い広島弁を聞かせてしまってごめんなさいね!!」

 

(おぉ、すげえ迫力だな。美波さんってブチ切れるとこうなるのかよ……)

 

「アーニャちゃんの時もそうだった!! 私はアーニャのおまけみたいな

 扱いされて、口うるさい小姑でしたから迷惑でしたよね!!

 すみませんね!! 私ったら普通の女より嫉妬深くて自分に自信がないせいで

 プロデューサーさんに迷惑ばっかりかけちゃって!! ねえどうしたら

 いいんですか私は?! あなたのそばから消えたらいいんですか!!

 私が居たら新婚さんの二人にとって邪魔者でしかありませんよね!!」

 

(と言いながら美波さんが本気で地団太を踏んでいる。

 こうして怒る姿は19歳の娘なんだなと感じさせる。

 俺は彼女の父親でもないのにマジ切れを見せられており不思議な心境だ)

 

プロデューサーも外国で本物の妻がいた身だ。

小娘の戯言など軽く聞き流せるほどの経験をは持ってる。

美波が取り乱しすほどには彼はショックを受けていなかった。

 

「ねえプロデューサーさん。あなたにとって私ってそんなに魅力ないですか!?

 自慢じゃないですけどこれでも結構男子にはモテた気がするんですけど、

 人気アイドルの夕美ちゃんやアーニャちゃんに比べたら私なんてブスってこと!?

 ねえブスなんでしょ!? こんな性格まで醜いブスと一緒に暮らしてたんですから

 プロデューサーさん、ほんっとうに迷惑でしたよね!! そうですよね!?」

 

プロデューサーは美波の超早口のスペイン語(おそらくアルゼンチン方言)

まがいの恨み言をしっかりと聞きながら彼女の観察を続けていた。

言葉遣いは標準語だが、ところどころ地元のイントネーションが混じるので

外国語っぽく聞こえる。

 

(何ってんだこいつ? まず全国にいるブス共に謝れよ。

 ブスのハードル上げすぎで吹くわww

 お前レベルの美女がブスだとしたら、この国にはブスしかいないことになるぞ)

 

彼の隣にいる相葉夕美嬢はあ然としている。

 

夕美もまた新田美波の激おこ姿を始めて見たのだ。

それより夕美にとっておかしかったのは

 

(美波ちゃんも私と同じようなことで不安を感じてたのね)

 

そう。女なんてこんなもんなのだ。

 

自分にはないものを他人は持ってると信じてる。

 

客観的に見て超美人でスタイルも良く色気がやばい新田美波が、

他の女の子に比べて劣ってる点などそうないのだが、

残念なことに本人にはそのことが全く分かってない。

 

プロデューサーは、怒りのあまり本気で自分の髪を短くすると言い出した

美波嬢に対し、「そろそろ落ち着きなさい」と言って抱きしめた。

 

「そうやってすぐ私を騙そうとするのやめてよ。

 いや!! 離して!! もうそんなのに騙されないから!!」

 

「美波。今日は不安にさせちゃってごめんな。すまなかったと思ってる

 俺は本当に君のことを愛してるんだよ。だからどうか落ち着いてれないか」

 

「はぁ? 愛してるですって!? そんなこと今さらよく言えますね!!」

 

「美波。俺はな。君のことを愛してるんだ。それに美波は綺麗だし可愛いと思ってるよ」

 

「なにを言って……!!」

 

「美波はとっても魅力的で、素敵な女の子だよ。嘘じゃない」

 

「……っ。ど、どうせ口から出まかせよ!!」

 

「愛してる」

 

「……」

 

「美波。好きだ。俺は君のことを一生守りたいと思ってる。

 ほら。俺の目をちゃんと見てくれ」

 

そして唇が重なった。

 

もはや彼の必勝パターンとなってる。

野球で例えると打率5割の打者が

観客の期待に応えてスリーランホームランを打ったような感じだろう。

 

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