※この作品はR-18です。

好きでもないアイドルに告白をしたらどうなるのか?   作:なおちー

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プロデューサーは蘭子がお気に入りだった

「次に蘭子ちゃんをいじめるようなことがあったら、

 もう美波とは話してあげないからな。分かったか?」

 

「は、はい……」

 

美波は血の気が引いてしまい、その場に座り込む。

いつもの女の子座りなのだが、ショートパンツから覗く

白くてつやの良い太ももがなまめかしい。

 

「蘭子ちゃん。今お茶を用意するからテーブルに座って待っててくれ」

 

「そんな、悪いですよ。私も手伝います」

 

蘭子はプロデューサーの腕に当然のようにしがみつきながら

一緒に冷蔵庫の中を覗き込んだ。蘭子は意外と胸が大きい。

プロデューサーの目線が、冷蔵庫の中にあるカルピスの原液ボトル

(アサヒ飲料)ではなく蘭子の胸元へ行ってしまう。

 

「触りたいのでしたら、触ってもいいですよ?」

 

「蘭子ちゃんは14歳の女の子なのにいいのかい?」

 

「プロデューサーさんでしたら嫌じゃないです」

 

「ありがとな。でも今は美波もいるし。

 もうすぐ夕美も帰ってくるから、続きはまた二人きりの時にしような?」

 

「そうですか……。分かりました」

 

蘭子は不満そうに頬を膨らませる。

 

その様子をドア越しに眺めていた美波は、例によって嫉妬で気が狂いそうになるが、

旦那様に嫌われるのが何よりも恐ろしいことなので、なんとか自分を抑えていた。

 

 

「ただいま~~。あっ、この靴は蘭子ちゃんかな?」

 

相葉夕美が帰って来た。ハンドバックを片手にリビングへやってくる。

 

「おかえり。夕美」

 

「はわわわっ……」

 

「ん? そんなに慌ててどうしたのかな。夕美?」

 

「ええっとですね……べ、べつにぃ?」

 

夕美は顔を真っ赤にして顔を横に向けてる。

ミニスカートの裾をぎゅっと握りながら。

 

「別にってことはないだろ。どうして俺と目を合わせてくれないんだ?

 もしかして……俺の事、嫌いになっちゃったのか?」

 

「全然そんなことないですっ!! 大好きですっ!!

 ただ、私は……旦那さまがあまりにもかっこよくて素敵だったので

 お顔をまっすぐ見つめることができなかったんです」

 

「ああ、そうだったのか。あまりにも素敵すぎて…って。はぁ!?」

 

 

バラエティ番組の企画か、346の事務所の皆と考えたドッキリか? 

プロデューサーは最初そう思った。

 

しかし夕美は顔全体をにやつかせ、プロデューサーをチラチラと見ては

照れている。どう見ても演技じゃないのは元Pでしかも元商社マンなのでわかる。

 

 

「はぁー。私の旦那さま。今日もすごくかっこいぃ……」

 

「褒めてくれてありがとな。夕美。でも俺、もう35歳だし、

 こんな行き遅れのおっさんなのにカッコいいって言ってくれてうれしいよ」

 

「旦那さまはおっさんなんかじゃありませんよ!!

 すごくすごくお若いです!! それに優しくてカッコいいです!!」

 

「そうか。ところで俺、久しぶりに小説に登場するから

 自分で自分の年齢を忘れちまったんだが、35歳であってたっけ?」

 

「36歳でしたっけ? 私にとって細かいことはどうでもいいですよ。

 あと台本を読者から見えない位置に置いてくださいね」

 

短い茶番を終え、

 

「私、こんなにカッコいい男性と結婚出来て幸せです~~」

 

「はは。何度も褒められると照れるな。夕美だってすごく綺麗だし、可愛いよ?」

 

ビクッと夕美の肩がもちあがる。内心でも飛び上がりたいくらいにうれしかった。

夕美はさらに満面の笑みになり、プロデューサーの腕を両手で抱いた。

 

 

「私ね、久しぶりにあなたと一緒にお出かけしたいなって思ってるんです」

 

「お出かけか。どこか行きたいとこあるのか?」

 

「行き先は特に決めてないけど、あなたと一緒にいられるなら私はどこでもいいです」

 

 

と夕美は笑う。アイドルの時のお客様向けの笑みではなく、心からの笑みだ。

 

 

「んーそうだな。俺も久しぶりに出かけるからなぁ……」

 

プロデューサーが子供時代のくせで人差し指を口にくわえながら考える。

ふと、すぐ近くにいる美波と目が合う。美波は内心の怒りでプルプル震えていた。

 

美波は彼に従順になった身だが、夕美とふたりだけのデート

まで許したわけじゃない。もちろん自分も連れて行ってくれるのだと信じていた。

 

「4人で行くとしたら、やっぱりショッピングとかになるのかな?」

 

プロデューサーが美波の目を見ながらそう言う。彼女を安心させるように

笑顔で言ったものだから、美波の顔もぱあっと明るくなって両手を胸の前で重ねた。

まるで神様に祈るような仕草だ。

 

「あのっ!!」

 

「どうした蘭子ちゃん?」

 

「私は行きたいところがあります!!

 それは、私の実家です!!」

 

プロデューサーは思わず腰を抜かしそうになった。

蘭子の実家は熊本県の田舎である。実家に何しに行くのか。

このメンツで行くのか? 行って何が起きるのか。

 

もちろんただ遊びに行くわけではあるまい。

まさか蘭子の両親に挨拶にでも行けと言うのか?

 

今さら言うまでもなく、プロデューサーは美波さんと夕美さんが

独占している旦那さまである。蘭子の宣言は、

自分が正式にPを奪い取ると宣言したに等しい暴言と受け止められた。

 

(こいつ……!!)

 

「だめよっ!! 夕美ちゃん!!」

 

蘭子の首根っこをつかもうとした夕美の手が、その寸前で止まる。

今美波が止めてくれなかったら蘭子を後ろ向きに引っ張って

床に突き飛ばしていたことだろう。

 

「おい夕美?」

 

プロデューサーの声がいっそう低くなる。

 

「は、はい!?」

 

「なあ、まさかとは思うんだけどな。

 夕美は今蘭子ちゃんに手を出そうとしたのか?」

 

「ううん違うよ。そのね? これは違うの……違うんだよ」

 

「何が違うんだよ。なあ?」

 

「うぅっ……そ、そのぉ……」

 

「ちゃんとしゃべってくれよ。言い訳があるなら聞くからさ」

 

「だ、だって、蘭子ちゃんが自分の実家に行くとか言うから……。

 私や美波ちゃんの立場を全然考えてないし、

 ちょっと生意気だなって思っちゃって……」

 

「蘭子ちゃんは実家に行ってみたいってちょっと口にしただけだろ。

 別に本気で言ってるわけじゃないと思うんだが。なあそうだよな?」

 

「へ? あ、はい!! 今のは冗談です!!」

 

と蘭子が必死に答える。もちろん本気だったのだが。

 

プロデューサーの手が、夕美の頭に置かれる。

なでてくれるわけでもなく、その力は強い。

 

「夕美、俺はな。さっき美波のことも叱ったばかりなんだよ。

 蘭子ちゃんをいじめたりしないようにってな。お前はどうなんだ?

 お前はささいなことで蘭子ちゃんを傷つけてしまうような、

 そんなひどい女だったってことでいいのか?」

 

「ぐすっ……うっ……」

 

「どうなんだ」

 

「ひぐっ……うぅっ……よくないですっ……」

 

「夕美ッ!!」

 

「ひっ!!」

 

急に怒鳴られた夕美は、ぺたんとその場に座り込んでしまう。

プロデューサーに本気で怒られてるのが恐ろしくて漏らしてしまいそうだった。

 

(き、嫌われた……私はいらない子なんだ……捨てられる……)

 

視界が暗転し、もう目の前すら見えなくなった。

夕美が想像してしまったのは、彼に別れを告げられて蘭子と幸せそうに歩く彼の姿。

こんな19歳の女子大生のおばさんよりも、14歳の女の子の方が彼にとっても

魅力的に決まってる。そう、自分は結局いらない子だったんだ。

そう思うと吐き気さえ込み上げる。

 

 

「もうしないよな?」

 

「へ?」

 

「もうしないって、約束してくれるよな? 

 約束してくれるなら俺はお前を許してあげようと思うんだ」

 

「誓ってもう二度と蘭子ちゃんに手を出したりしません!!」

 

「良い子だな。夕美」

 

今度は頭を優しくなでてくれた。

 

「あ……」

 

「どうした。まだ泣いているのか?」

 

「いえ、これはうれしくて……」

 

「さっきは怒ったりしてごめんな?」

 

「謝らないでくださいっ。全部私が悪いんですから!!」

 

「ふふ……。そっか。夕美、もっとこっちを向いて」

 

「んっ」

 

ふたりの唇が重なった。夕美は彼の首の裏に両手を回して

一生懸命にキスをしてる。それに胸も押し付けている。

はたらかたみたら、なんともいやらしい格好だ。

 

(いいなぁ……)美波と蘭子は同じことを思っていた。

目のハイライトが完全に消えていることも同じだ。

 

始めから良い子の蘭子はともかく、美波はプロデューサーに対して

高圧的になろうが従順になろうが根がヤンデレであることに変わりなく。

ここ最近では蘭子にもヤンデレの傾向がみられるようになる。

 

 

これは彼女達が異常なわけではなく、プロデューサーには妙な色気があって

女達を虜にしてしまうのが原因だった。彼とて意識して何かしてるわけではないのだが、

元エリートで知識が豊富でお金を持っており、何よりも清潔感のある

洗練された容姿が、他の男とはまるで違うと彼女達に思わせてしまうのだ。

 

すごいのは蘭子のことだ。神崎蘭子は14歳で彼とは21歳も離れてるわけだが、

それでも彼は蘭子からして魅力的な男性に見えてしまうのだ。

 

女性アイドルとは、女性としての性を売る仕事である。

女性として特に魅力のある人だけがステージに立てるわけで、その彼女らを

ここまで夢中にさせてしまうプロデューサーは罪作りなどというレベルではない。

 

 

「プロデューサーさん。お楽しみの最中にごめんなさい。

 今日は私のわがままを聞いていていただけないでしょうか」

 

と美波が床に三つ指を突いたではないか。

 

「美波ッ!? 急に土下座なんかしてどうしたんだ?」

 

「私は今日、レッスンを遅刻した件でトレーナーさんに謝りに行かないと

 いけないのです。そこで勝手なお願いなのですが、

 プロデューサーさんにも私の職場に着いてきていただけないでしょうか」

 

 

まさかの……爆弾発言だった。

 

プロデューサーの背中がざわつく。

 

(美波は一度辞めた職場に俺を連れて行くつもりなのか?

 それって俺に何のメリットがあるんだ?

 職場には愛梨や文香もいるかもしれないし、

 元上司の三城常務にあったらなんて説明すればいいんだよ……)

 

「さ、賛成」

 

夕美が震えながら右手を上げる。

 

「私も今日の午後からレッスンがあるので、プロデューサーさんに

 指導してもらいたいです。指導じゃなくてもいい。

 ただ遠くから見てもらってるだけでもうれしいです」

 

「夕美もそう思うのか……」

 

「うちも賛成す」 

 

どうやら蘭子もだ。熊本弁なので何を言ってるのか分かりにくいが。

 

「みんながそう望むなら仕方ないな。俺も久しぶりに事務所に顔出して

 見たくなったからいいよ。美波。いつまでそうしてるつもりだ?

 時代劇の撮影じゃないんだから顔を上げてくれ」

 

「は、はいっ!! ありがとうございます。旦那さま」

 

プロデューサーは従順な美波の態度が妙に可愛らしくなったので

頭をなでるだけではなく、ハグしてあげた。

 

(あーたいへん。心臓の鼓動が……止まらないよぉ……)

 

彼のたくましい腕に抱きしめられて、しかも彼が胸元の空いたシャツを

着てるのがセクシーだ。美波の顔の目の前に彼の胸元があったので濡れてしまう。

 

(さっきは私を抱きしめてくれたのに……)

 

分かってはいることだが、納得できても感情の制御はできない。

夕美は拳を握り締めて小刻みに震えていた。

蘭子は感情のない瞳で突っ立っている。

 

「本当は美波とキスしたいけど、

 これから出発するからまた帰ってからにしような?」

 

「はいっ、楽しみに待ってますね!!」

 

 

そして4人の男女は、346プロダクションのあるビルへと足を運ぶ。

そこで一体何が起きるのかも知らずに。

 

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