※この作品はR-18です。

好きでもないアイドルに告白をしたらどうなるのか?   作:なおちー

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アナスタシアよりも、ちひろをどうするべきか

プロデューサーはタイトルに書かれていることを思った。

 

「むぅ~~~~」

 

ほほを膨らませるアナスタシアはこれはこれで子猫のように

愛らしくはある。しかし本気で怒ってるのは間違いなさそうだ。

 

アーニャは大好きなプロデューサーに対して従順な女の子だったが

嫉妬の強さでは夕美に劣らない。それは美波も同じことなのだが。

 

「アーニャ、怒ってるのか?」

 

「はい!! 怒ってまーす!! すごくすごく腹が立ちまーす!!」

 

(珍しく認めたな)

 

「私と充電したのは、ふたりとお楽しみをするためー、だったのですか!!」

 

「・・・・・・いやなんて言うかさ、ただ成り行きでこうなってしまっただけで」

 

「もう充電してあげませんから」

 

「アーニャ……」

 

「浮気者のプロデューサーは、充電切れになってのたれ死ねばいいんです」

 

「はは。野垂れ死ぬなんて、そんな言葉よく知ってるな。アーニャ」

 

プロデューサーが仲直りするためにアーニャの肩を抱こうとするが、

軽くはたかれてしまう。

 

(マジで怒ってるな。前にも同じやり取りがあった気がするが、

 えーっと、こういう時はどう対処すればいいんだっけか)

 

事務的なやり取り。彼は夕美と美波が古風な日本人女性のように

従順になってくれたので性的には大変に満足していた。

 

むしろ千川と組んで自分の財産にまで手を出してきたアーニャを

うっとおしいとまで思っていた。そんな彼の心の変化を

乙女のアーニャが察しないわけもなく

 

「もうプロデューサーなんて知りませんから、さようなら!!」

 

玄関前で大往生している千川事務員(本業はヤミ金融)

をわきにかかえながら立ち去ってしまうアナスタシア15歳。

 

 

これにて一件落着になるわけがない。

 

まず彼の健康。何話か前に千川の言っていたことが事実だとしてアナスタシア

依存性の症状はさらに悪化していることだろう。

二人の妻では彼の症状が治せない可能性が高い。

 

それと資産。野村証券への株式の移管が済んでいない。手続きの

途中で妻たちが大暴れするなどして千川さんを半殺しにしてしまう。

当然その流れでアナスタシアの住むマンションへの引っ越しは

なしになったが、3,000万を超える資産が宙に浮いてるのは痛い。

 

メタだが、筆者の記憶力も問題だ。千川のサイバーテロを

描いたのは1ヶ月以上前のことである。

作文を書くのには記憶力だけでなくその場のノリや勢いも大切であり、

このように執筆期間に間が開くと自分でも何を書いてるのかよく分からなくなる。

 

よく分からないのは製薬業界の研究費用や金融市場の値動きだけで

たくさんなのだが、愚痴を書いても仕方ないので物語を続けよう。

 

 

その翌日。

 

 

「信じられないことに普通に体が動くんだが・・・・・・、

 俺、まさか夢を見続けてるわけじゃないんだよな」

 

「ああ・・・・・・なんて素晴らしいことなんでしょう。

 私の素敵な旦那さま・・・・・・昨日よりも顔色が良くなってます」

 

字面だけでは誰なのか大変にわかりにくいが美波とプロデューサーの会話だ。

なぜか美波と夕美が途中から敬語を使うようになったので会話文だけで

キャラの差別化を図るのに苦労する。

 

「これってさ、美波や夕美でも充電できてるってことだよな?」

 

「そういうことだと思います。昨日お風呂に入るときはすごく

 苦しそうだったのに一晩寝てここまで回復されてますからね」

 

昨夜は夜中に旦那さまの体調が悪くなったら大変なので

二人の妻が寄り添って寝ていた。同じベッドに三人も並んだものだから

狭くて仕方ないが、その分密着していたので充電効果はあったようだ。

 

(充電効果があったのは、私じゃなくて夕美ちゃんかしら?)

 

これが美波にとって最大の懸念であり、もしそうだとしたら非常にまずい。

彼は性的に意識している女性に対して充電効果を発揮しやすい傾向にある。

しかしまあ、美波もまたプロデューサーにいろいろな意味で愛されていることに

変わりはないはずなので考えすぎだとも思ったが、

 

 

「く……だめだ。胸が苦しい」

 

「急にどうされましたか!!」

 

「いや今さっき美波と手を離した瞬間にな。急に胸が締め付けられる

 ような感覚がした後、目の前が暗くなったんだ。こう視界がかすむって

 言ったら伝わるかな? とにかく息が苦しいので手を……」

 

美波は彼を全力で抱きしめた。痛いくらいに。

 

「あぁ……美波の体って暖かいんだな。すごく楽になったよ」

 

「旦那さまのお体は……失礼かもしれませんが冷たいんですね」

 

「言われてみれば、なんだか寒気がするな」

 

「……これはちょっと体温を感じなさすぎますよ。

 まるで死んでる人みたい」

 

「死んでる……人か。ふっ。そうかもしれないな」

 

「あ、今私失礼なことを!!」

 

「思ったことは口にしてくれていいんだよ。変に気を使う方が疲れるし

 関係がぎくしゃくするだろ。ははっ。俺はもうある意味死んでるようなもんだな」

 

それからプロデューサーはぶつぶつと愚痴を言い始めた。

彼の声があまりにも小さくて自信のない様子だったから、

彼の姿が生前のカート・コバーン(ニルヴァーナ)に重なった。

 

作品と関係ない話になるが、伝説のギタリスト、カートやジミは共に

27歳で自殺しているので伝統の「27クラブ」に所属している。

興味のある人は調べてみるといい。

 

「独身時代に一生懸命に稼いで貯めた資産を失った。

 自由に動き回れる体を失った。この状態じゃ頭も回らねえから

 今から新しい仕事を見つけることも難しい。

 たとえ在宅ワークだとしても同じことだ」

 

カート・Pは暗い顔で続ける。

 

「健康はもう諦める。だが金だけは返してほしいもんだ。

 なあ美波。俺にとって金とは家族とも全然違う価値のあるものでな、

 俺にとっては命そのものだったんだよ。ギタリストにとってギターが

 命なら俺の場合は資産だよ。金のない俺に価値はない。

 でもなぁ。千川の奴をボコボコにしちまったからなぁ・・・・・・。

 今更株式の移管手続きをしてくれと頼めるわけねえし、状況はマジで最悪だ」

 

「私と夕美ちゃんがついカっとなってあの女を叩いたりしてすみませんでした!!」

 

「叩いたって表現できるレベルじゃないと思うが、美波が謝ることじゃない。

 ほら。顔を上げてくれ。そもそも俺の金を勝手に盗み出した奴が全面的に

 悪いんだ。あいつのことだからこうやって俺たちがもめる原因を作るのが

 目的だったのかもしれない。だとしたらとんだ策士だがな」

 

生前のカートは母親似なのか米国人にしては童顔で

美しい女性顔だが、普段は口数が少ない内気な青年だった。

 

 

「美波にお願いしたいことがあるんだが」

 

「はい」

 

「俺を殺してくれないか」

 

「……今なんておっしゃいましたか?」

 

「いや今のはなんでもない。すまん。忘れてくれ」

 

 

繰り返すが、ニルヴァーナの伝説的なボーカル兼ギタリスト、

カート・コバーンは人気の絶頂期に自殺している。

自分の頭をショットガンで撃って死んだのだ。

人気アーティストの例に漏れず麻薬の常習犯であったが、

麻薬が原因で死に至ったわけではない。

 

あえて言うなら、今のプロデューサーはのような心境だったというべきか。

 

 

美波は旦那さまと手をつなぎながらダイニングへ。

夕美が鼻歌を歌いながらウインナーを焼いている。朝の朝食の時間だ。

テーブルには目玉焼きやサラダが並べられている。

 

 

「おはようございま……」

 

夕美は笑顔で振り返ることができなかった。

そこには大衆音楽(資本主義)に対する怒りと絶望を感じていた

生前のカート・コバーンにそっくりな男がいたからだ。

 

カート・Pは、美波に介護される形で椅子に座らされた。

 

「夕美ちゃん。今日から旦那さまに凶器になりそうなもの、

 例えばナイフとかフォークを渡してはダメよ」

 

そのセリフだけで状況を察してしまう夕美ちゃん。

 

「男の人って」

 

夕美が語る。

 

「夢や希望をもって人生ですごい成功を収める人ほど、

 本気で落ち込む時にどこまでも気分が沈んじゃって

 自殺する人が多いらしいね」

 

「そうかもしれないわね。海外の有名なアーティストさんは自殺する人が多いもの」

 

「国内の経営者とかもそうじゃない?

 コロナで資金繰りがうまくいかなくなった小規模事業者とか」

 

「ええ。そうね。一時期流行した高級食パンとかひどいわね」

 

「旦那様が今にもマイクをもって歌いだしそうな顔をしてる」

 

「どんな曲を?」

 

夕美はこう答えた。

 

「スメルズ・ライク・ティーン・スピリット」(Smells Like Teen Spirit)

 

90年代前半に全世界に衝撃を与えたヒットソングであり、

何よりもカートが毛嫌いする商業主義の音楽だった。

この曲に込められた魔力が彼を死に至らしめたといっても過言ではない。

 

 

美波が無言でスマホに触れ、ユーチューブでその曲を検索する。

その様子を見てプロデューサーの顔がわずかに険しくなる。

 

「食事中なのにスマホをいじるのは……あまりよくないかもしれないな」

 

「す、すみませんっ!! 私ったら行儀が悪かったですよね」

 

「怒ってないよ。あとでニルヴァーナのCDを聴かせてあげるから、

 今は食事にしようよ」

 

「CD、持ってらっしゃるんですか」

 

「……まあな」

 

美波はそれ以上この話をしないようにした。

おそらくだが、旦那さまはニルヴァーナについて良い思い出がないのか

明らかに不快そうな顔をしている。美波にとって何よりも怖いのが

彼に嫌われて捨てられること。彼に嫌われないためなら奴隷にだって

喜んでなるつもりだった。ここまでくるとヤンデレラガールだが。

 

 

彼が自殺未遂をしたのは、次の日の朝だった。

 

 

「うそっ、こんなことっ……う……う~~~~~ん」

 

 

夕美はおびただしい量の血を見て頭が真っ白になり、倒れてしまった。

 

 

いつものように朝ごはんの支度をしようとキッチンに行ったら

なぜか彼が先にいて、自分の手首を包丁で切り裂いて大往生していたのだ。

彼の体を中心に血だまりが広がっており、鉄臭いにおいが充満している。

 

「朝起きたら旦那様がいなくなってるわ!!」

 

ベッドで飛び起きた美波が現場を駆けつけて衝撃のあまり言葉を失う。

彼女の場合は夕美のように気を失うことはなかったものの、

パニックになり、すでに彼が死んでいるものと判断してしまった。

 

そう思うのも無理はない。

 

素人目に見てもこの出血量はやばい。

実はプロデューサーはどうせできもしないのにお腹にも

包丁を刺していたのでそちらからも出血していた。

そちらは中途半端に刺しただけなので内臓を痛めるほどではない。

 

 

「あ、あぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁ。死んじゃったぁ。

 私の大好きな人が死んじゃったよぉぉおおお!!」

 

 

美波は千鳥足で部屋中を行ったり来たりした。

途中で壁に頭をぶつけたり、寝転がっている夕美を蹴ったりしてしまう。

蹴られた衝撃で夕美が目覚める。

 

「どうしてもう死んだと言い切れるの!?」

 

夕美には知恵があった。

 

そう。自殺した人というのは、死ぬまでにわずかに生きている時間がある。

プロデューサーがいつ自殺をしたのかはわからないが、仮に朝方だとしたら

まだ助かる見込みはある。夕美はためらいなく救急車を呼ぼうとしたが、

 

 

バタン!!

 

 

「だれ!?」 ←夕美の驚いた声。

 

 

玄関にて侵入者あり。その者は見慣れた顔。

でれますキャラで唯一の名字不詳のキャラ、アナスタシアだった。

 

 

「あきらめないでください!! 

 たとえふたりはダメだとしても、私ならまだ助けられまーす!!」

 

聖アナスタシアには特殊な能力があった。

それは主にちひろによって授けられたものだが、

アナスタシアがプロデューサーに触れた瞬間、奇跡は起きる。

 

 

「ん……なんで俺は意識があるんだ?

 おかしいな。アナスタシアに美波……?

 夕美もいるじゃないか。ここはあの世じゃないのか」

 

ただ目が覚めただけじゃない。信じられないことに彼の傷口までふさがっていた。

血だまりはそのままなので彼の衣服(上下スエット)は真っ赤に染まっているが、

新出ないことが分かっただけで十分。

 

美波はアナスタシアを突き飛ばしてから彼に抱き着いてわんわん泣いた。

 

「わ~~~~ん。プロデューサーさ~~ん!!」

 

「美波。ごめんな……なんか死ねなかったよ」

 

「どうして謝るんですかぁ~~!!

 死ぬだなんて……そんな残酷なこと、二度と口にしないでください!!」

 

「で、でもな。俺はもうこの世に未練が」

 

ちらっと横を見ると、アナスタシアが夕美に蹴りを入れられていた。

もう用は済んだから邪魔者は帰れと言わんばかりに玄関から外に出されてしまう。

夕美は二度と侵入者が入ってこれないように玄関のロックを確実に閉める。

 

 

「ねえ、あなた。体はもう痛くないんですか?」

 

「ゆ、夕美? どうした顔が怖いぞ」

 

「いいから答えて。自分で切った部分とか、もう痛くないんですよね?」

 

「あ、ああ。痛くないよ。アーニャに治してもらったから

 もうすっかり元気な体に戻ってる」

 

「それはよかったです。旦那様は情緒が不安定になってるみたいなので

 しばらく私たち妻がしっかりと管理させていただきますね」

 

そうしてプロデューサーに手錠がはめられるのだった。

 

 

 

 

 

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