ハイスクール DRAGON&DEMONS 作:十色十光十一月
※オリジナル敵組織&設定、キャラ崩壊注意
春、それは出会いの季節。
新しい学校、新しいクラス、新しい先生。毎日が初めましてであっと言う間に終わってしまう春。
そんな春だというのに、まだ"春"が来ず浮かない顔をする男が3人。
2年生の松田、元浜、そしてこの男―――兵藤一誠だ。
「はぁ……おっぱい揉みてぇ…」
漏れ出した願望は空中に少し漂ったあと、虚しく消えていく。言うな、悲しくなるだろとサイド二人にツッコまれる一誠。
彼は変態のレッテルを張られ、高校2年生になるというのに一度も彼女ができず、酷く落ち込んでいた。
しかも、共学になりたてで女子生徒の数の方が圧倒的に多いこの駒王学園でだ。
一誠はそれを目当てに死にものぐるいで勉強し、そして見事に合格した。下心を原動力に自分の限界を突破する、それが兵藤一誠という男である。
だが、どれだけ限界突破をしても恋の女神が気まぐれでも起こさない限り、彼女はできない。それぐらい、兵藤一誠の恋愛事情は壊滅的だった。
決して性格が悪い訳では無い。だが、「変態」という重い枷と、とあるイケメン男子生徒によって今の状況が作られている。
「キャーッ!木場くん!!」
一誠達の居る場所から少し離れた場所で黄色い声が響いてくる。
その声が向けられている人物こそ、金髪色白王子系イケメン男子生徒―――木場 祐斗である。
木場のイケメンパワーは一誠以外の男子生徒にも影響を及ぼし、同年代の大半の女子生徒は彼に釘付けである。
「あの金髪クソ王子さえ居なければ…俺達のバラ色スクールライフが築けていたというものをォォーッ……!!」
松田が愚痴を漏らす。松田、元浜の二人もあのイケメン王子の被害者であるが、この二人は女子更衣室を覗いた前科があるので、自業自得と言えるだろう。
非モテ三兄弟は今日も今日とてイケメンを妬み、美女に囲まれる生活を夢見るのであった。
―――だがしかし、ある日、突然転機が訪れた。
「あの…兵藤一誠さんですよね…?」
夕日に照らされる通学路を通って家に帰っていた一誠に一人の女子高生が話し掛けて来たのだ。
突然のイベントに少しテンパる一誠だったが、なんとか落ち着いて返事を返す。
「え、あぁそうだけど…」
「私、天野夕麻って言います。あの…私………」
「(これは…もしや?いやいや、そんなラブコメ漫画みたいな展開…)」
「あなたの事が好きで……付き合って下さい!」
「………」
その言葉を身体が受けきれ止めず絶句してしまう一誠。
そして数秒間フリーズした後、嬉しさと驚きと、あらゆる情緒を混ぜ込んだ声でその告白を受けた。
「こ…こ……こちらこそ!!!!!」
その日から一誠は思いっきり勝ち誇った。これで俺も勝ち組の仲間入りだと。かつての同志たちもこれには本気の殺意が芽生え、一誠はボッコボコにやられた。
―――だが、幸せな時間は長くは続かなかった。
休みの日、一誠と天野夕麻はデートをする事になった。
一誠は直前に歯を磨き、万が一の為に勝負下着を履いて準備万端。待ち合わせ時間の3時間前から集合場所に着いて「全然待ってないよ」と言うイメトレをする徹底ぶり。天野夕麻は時間通りに待ち合わせ場所に来た。
「ごめんなさい、イッセーくん…待たせちゃってた?」
「え?いや、全然待ってないよ」
イメトレ通りの台詞が言えて満足げな一誠。
その日は日が暮れるまでファミレスに行ってご飯を食べたり、ゲームセンターで遊んだり、アクセサリーショップでお揃いのアクセサリーを買ったりなど、特に奇抜な事をするわけでも無く仲良く過ごしていた。
そして別れ際、立ち寄った公園で二人っきりになる。
「今日は楽しかったね」
一誠の天使が微笑みかける。なんとも言えない充実感を噛みしめる一誠。あぁ…これがリア充なのだ、これが勝ち組の生活なのだと改めて実感する。
「ねぇ…イッセーくん。私のお願い、一つ聞いてもらってもいいかな?」
君のためならどんな願いでも聞こうと受け止める姿勢となる。
「私の為に―――死んで?」
え?思わず聞き返したくなる様な恐ろしい言葉が耳に入り、その姿勢を崩した。
これは聞き間違いだ。もう一度なんて言ったか聞き直そう。
「聞こえなかった?私の為に、死んでくれないかな?」
さっきよりも殺気が込められた言葉と、槍の形をした光が、同時に一誠の心臓を貫いた。
「え……?」
「恨むなら、神があなたの身に
そう言うと、天野夕麻の背中から黒い
一誠の身体からはおびただしい量の血がドバドバと流れ続け、一誠が倒れ込んでいる地面を真っ赤に染めた。
「(あぁ…俺…このまま死ぬのか?……訳わかんないまま…初めてできた彼女に刺されて…)」
刺されたところに手を当て、真っ赤に染まった手を見てこう思う。
「(赤…紅い……あの
紅髪の女性を頭にくっきりと思い浮かべる。
それは三年生で、学園一の美女とも名高いリアス・グレモリーであった。
一誠は直接会って話した事は無い彼女を、旧校舎の窓辺にいるのを見かけた日から不思議と惹かれ、憧れ、そして畏怖していた。
「(あぁ…どうせ死ぬなら……リアス先輩の胸の中で…死…に………)」
薄れゆく意識の中、一誠は最後にそれを願った。
―――そして、その願いは聞き届けられた。
一誠のポケットから一枚の小さな印が出てきて、真っ赤な光を帯びる。
光から声がする。
「―――あなたのその命、拾ってあげるわ。この私のもとで、私の為に精一杯生きなさい」
「リ…あ……」
光は一誠の身体を包み込んだ。一誠がその時起こった事を知る事になるのはもう少し先の話である。
〜〜〜〜
ここは、駒王町の人里離れた場所。
そこには、世界の完全征服を目論む悪の秘密結社「デビルショッカー」の日本支部本拠地が構えられていた。
強化人間を生み出す部屋であり、幹部たちがブリーフィングを行う場所にて今日も新たな怪人が誕生しようとしていた。
「大首領様。こいつが
『よくぞやってくれた。大幹部の一人、死神博士三世。』
「ありがたき幸せ…」
新しい怪人を壁に描かれたデビルショッカーの紋章に仕掛けたカメラ越しに見て喜ぶ大首領。
この日本支部を現在指揮しているのは、
『早速この怪人を使い、上位存在をこちらへ引き込むのだ』
「大首領様、この死神博士三世、以前より目をつけている者が居ます」
『ほう、それは誰なのだ?』
「―――リアス・グレモリー」
『だが、その者の捕獲は大鰐が失敗したではないか』
「あれは、"'仮面ライダー"が邪魔立てしたが故の事……次こそは奴を捕獲してご覧に入れましょう。行け!大百足型強化人間!!」
「グオオオオオ!!!」
〜〜〜
「坊主、俺はお前が気に食わん…!!」
「いきなり何なんだよベイル」
駒王学園から少し離れた場所にある古いアパート「常磐荘」
家賃二万円、トイレ、シャワー兼用で小さい冷蔵庫とテレビラジオがある一室に雲田ヒロと相方の悪魔――ベイルは住んでいた。普段は雲田のデモンズドライバーの中に入っているが、この部屋だけでのみ実体化を許されている。
「俺はもっと悪魔らしく、欲望に忠実に生きるのが望みだ。だがお前はベルトの中で俺を縛り続け、挙げ句の果には契約外の理由で変身して戦いやがる!悪魔を舐めてるのか貴様ァーッ!!」
「舐めてない!僕は一年前から散々言ってたハズだ!"後悔しない選択をする"って!!それに僕は君の帰り道だってちゃんと探してるんだぞ!あっちこっちのデビルショッカーの観測拠点に潜入しては調査、潜入しては調査。最近ちょっと学校の出席率悪くて特待生から外されそうなんだからな!」
「うるさいよアンタたち!!喧嘩するなら外でしな!!」
大家に止められ、気を鎮める二人。
恐ろしい怪人をバッタバッタとなぎ倒す二人を一言で黙らせる大家こそ人類最強なのかもしれない。
一息ついてお茶を啜るヒロ。再びベイルと面と向かって話をする。
「ベイル、一つ気になっていたんだが、ただの残留思念であり、"本体"とはまた別の君が…どうしてそんなに元の世界に帰りたいんだ?」
ベイルは口を開く。
「俺にはお前とは別の宿主が居る。"五十嵐元太"という男だ。一度は離反し、殺し合ったが、再びヤツの中に戻った。あそこは案外居心地が良い…だから俺はあそこに戻る。そういう本体の望みが"俺"という残留思念を生み出し、そして何故かそれがギフに宿った……」
「そしてギフの棺は自身の次元干渉能力によってこの世界に送られてきた……君はデビルショッカーに元の世界へ帰るのを協力することを条件に結託…すぐに裏切られて離反。結構不憫だな」
「貴様を攫い、改造された事を詫びるつもりは無いぞ」
「結構。それを承知で僕も君を振り回してるんだからな」
一年前、まだベイルと手を組んで間もない頃、強化人間がヒロを炙り出すために、前にいた学校――城北大学附属高校で暴れる事件があった。もちろんこの時、ヒロは学校にはおらず、怪人が暴れているのを聞きつけて現場に赴いた。
「みんなが危ない!変身!!」
同級生が襲われるのを黙ってみる事の出来なかったヒロは、デモンズドライバーを装着し、仮面ライダーに変身しようとした。
だが、ドライバーは反応しなかった。
「おい、どうしたんだベイル!」
『俺と貴様との契約はこうだ…"命の危機から身を守る為に力を貸す"だ。この学校が襲われている事自体にお前は関わりない。ならば俺が貴様に力を貸す義理はない』
「屁理屈言ってないで力を貸してくれ!頼む!!」
『フンッ…貴様も"正義"の為に戦ってるのか?下らん…』
「……自分が正しいと思う信念の事を"正義"って呼ぶなら…そうかもしれないな」
『……』
「俺は正義なんて大層な物を背負って戦えるほど…立派な人間じゃない。でも、
『チッ………好きにしろ』
「ライダー変身!!!!」
「あの日から随分経つけど、君も僕も大して変わってないな……こうなったら…僕が覚醒して次元干渉能力を手に入れるしかないか…やっぱり僕に好き勝手戦わせた方が、お前が元の世界に帰るの早いんじゃないか?」
「ならば、今すぐショッカーの基地にでも行って暴れて来い」
少しふてくされた様子でドライバーの中に戻っていくベイル。
二人の会話が終わったタイミングで丁度、電話が一通入った。
電話の相手は…兵藤一誠だった。
「なんだ?一誠」
『聞け、俺はとうとう勝ち組になった』
「それはおめでとう一誠。どんな子だ?」
『天野夕麻ちゃん。隣の高校で俺に一目惚れだってさぁ…』
「浮かれてるところに水を差すけど、変なことして一日で破綻とかならないように気をつけろよ」
『フッ…俺ほどの
「うん、出すだろお前みたいな
『おい、ちょっと失礼だぞ!』
「悪いが、ちょっとこれから用事があるから惚気話はまたの機会に聞くわ。ほいじゃまたな」
半ば無理矢理会話を切って電話も切った。
「(さて…今日は駒王町北部の観測拠点だな…)」
ヒロはアパートの外に停めた仮面ライダーデモンズのカラーリングの専用バイク―――マシンデモンズに乗って出掛けて行った。
〜〜〜
デートの次の日、一誠は自分のベットで、掛けておいたヤンデレっ娘のボイス目覚ましで目を覚ました。
今日の目覚めは人生で一番悪い。なぜなら、昨晩の夢は「初彼女にデート終わりに刺殺される」という内容だったからだ。
「(妙に生々しかったし…何だったんだあの夢…しかも最後らへん…リアス先輩が出てきたような……)」
今日は何故か一段と気分が悪い。熱がある訳ではない。
ただ、朝日が忌々しく感じる。夜型人間というわけでも無いのに、こんなに朝を気怠く思うのは初めての感覚だった。
その事は学校に行っても変わらなかった。ただただ怠くて、寝ようと目を瞑ると、まぶたの裏にあの光景が浮かんでくる。
―――腹を槍で貫かれる。
――――自分の手が血で真っ赤に染まる。
――――――「私のために……死んでくれない?」
「一誠!!」
パチンと、俯く一誠のつむじ目掛けてデコピンが放たれる。ハッとして、前を見ると雲田ヒロがいた。
「話し掛けてたのに一向に返事が無いと思ったら寝てたのか」
「あぁ……雲田」
「元気がねぇな。どうかしたか?」
「実は……」
一誠は今日学校に来た時にあった不思議な出来事について話をした。今朝方、松田と元浜からヒロと同じように元気が無いと言われて――夕麻ちゃんとデートしてたときに刺されて死んだという夢を見た――と話した。
だが、松田と元浜は一誠の予想外の返答をした。
「イッセー貴様!
「
まるで、自分と夕麻が付き合っている事を知らないような口振りだった。そんなはずは無い。あれだけ自慢し回っていたのだから…。メールアドレスや写真がある。それさえ見せれば信じてくれる……。
そう思って携帯を開くと、写真も連絡先も綺麗さっぱり消えていた。
「―――つまりお前の彼女が綺麗さっぱりこの世から消え去った。そんな感じだな」
「…!!お前覚えてんのか…?」
「二、三日前にあんな煽り電話入れられて忘れる訳無いだろ」
少しホッとした一誠。だが、次は別の疑問が頭に浮かぶ。
何故、ヒロだけが憶えていてみんな忘れてしまっているのか…。
そんな事を考えていると、松田と元浜が一誠に絡みに来た。
「イッセー、お前雲田にも
「そんな空想を追いかけても虚しいだけだぞ。それよりどうかね?今夜、俺んちでAV鑑sy…ゴホン、紳士のお茶会でも」
「コイツの家に新しいやつが入荷したんでな。どうだ?お前もこい。空想を生み出すまで荒みきった心を慰めあおうじゃないか」
「………あぁ!まぁとにかくこんな日はパーッとやるか!」
少し元気を取り戻して安心するヒロ。
そして、別の事も頭に過ぎった。
「(記憶を消して姿を暗ます……上位存在が関わってる可能性が高いな…)」
そして夜。ヒロは紳士のお茶会帰りの一誠に偶然を装って一緒に帰宅路を歩いていた。
上位存在が絡んでいるということは、一誠もデビルショッカーに狙われる可能性があると思ったからだ。
ヒロは、一誠の彼女が消えてから他に変わった事が無いかを根掘り葉掘り聞いていた。
「そういえば、さっき…今も…やけに周りが明るく見えるんだよな…あと、朝はあれだけ辛かったのに…夜は何というか元気が出るっていうか…」
「なるほど、超夜型人間みたいになってるわけか」
「まぁ…言っちまったらそういう事だな」
「他に身体に異常とかは?」
「いや、特にねぇけど」
「そうか……(身体に異常が出ているのは明らか…彼女が上位存在で…接触した事で何か起こったのか…?)」
『考え事中のようだが、警告だ』
考え込みながらバイクを押していたヒロにドライバーの中から話しかけるベイル。
「どうかしたのか雲田?」
「あぁ…いや、何でも…(ベイル、急に話し掛けて来るなよ…)」
必死に誤魔化すヒロは超小声でベイルの話を聞き返した。
『前にいる男…奴からは匂いがする』
ベイルの言う通り、目の前には大柄な男性がいる。
喪服のような黒いスーツと黒いコートに身を包み、
「(匂い?悪魔?強化人間?)」
『違う…それとは…別の匂いだ』
黒ずくめの男がこちらに近づいてくる。
一誠も何かを感じ取ったのか、無意識に後ずさりをしていた。
ヒロは懐からドライバーを取り出し、装着する。
「ほう…おかしな者を連れているな…悪魔」
「(コイツ…ベイルの事を知っている!!)」
黒ずくめの男が瞬間見せた殺気は、一誠とヒロの全身の毛を逆立たせるほど威圧した。
ヒロはバイクのスターターを押してエンジンを全開で動かす。
飛び乗るように跨り、一誠にも乗るよう指示する。
一誠も急いで乗り込み、後部に掛けられたヘルメットを被ってがっしりとヒロに掴まる。
「飛ばすぞ!!」
ヒロと一誠は歩道から車道に出てバイクを飛ばす。
黒ずくめの男はすれ違う二人を目で追った。
「な、何だったんだ?!あの変なオッサン?!」
「分からん、僕が聞きたいくらいだ。一誠、お前の知り合いとかじゃないのか?」
「知らねぇよあんな奴!」
ヒロはあの男から離れようと、とにかく車道を走ったが不思議とあの殺気との距離が離れない事を不審に思う。
まるでこちらを『追いかけている』ようだ。
どんどん殺気が近づいてくる。
『奴がすぐ後ろに来ている』
ベイルに言われヒロは咄嗟に振り返るが、自分に掴まる一誠以外後ろには誰もいない。
だが、殺気はすぐそばに感じる。
「……上か!!」
ヒロが気づいた時にはもう遅かった。
黒ずくめの男がバイクの頭上から何かを投擲してきた。
「「うわあああっ!!?」」
紙一重で二人はバイクを飛び降りる事ができたが、バイクは刺し貫かれ、ガソリンが着火装置に引火し、爆発四散した。
「俺のバイク!!」
『バイクより貴様の命だ。もう一発来るぞ』
もう一発、光を帯びた何かが飛んでくる。
いや、それは光を帯びているのでは無い。
"光"そのものだ。
「うわわわ?!」
光でできた槍が飛んでくる。
必死になって避けるヒロ。
多数の槍が雨あられのように降り注ぐ中、何本かが一誠に向かって飛んでいく。
「危ない!!」
《
ヒロは一誠の元に駆け寄り、即座に変身して特殊粘性繊維――デモンストリングで光の槍を捕らえて軌道をズラす。
「はぁはぁ…だ、大丈夫か?一誠……。」
「く、雲田……お前…」
一誠は仮面ライダーの姿を見て驚き、少し恐怖を覚えた。
人とはかけ離れた異形の姿。何を考えているか分からないギョロっとした大きな六つの青い目、蜘蛛の巣を象ったような仮面、全身を包むのは鮮血を思わせる真っ赤な人工筋肉と刺々しい鎧。それが、一般人の見る仮面ライダーの姿である。
だが、ヒロは一誠にその姿を晒した事に後悔の色を見せてはいなかった。
「貴様、ただの人間では無いようだな。悪魔のようでもあり、人間のようでもある…。歪な存在だ。」
黒ずくめの男が二人の前に現れた。よく見ると、男の背中には鴉のような黒い翼が生えている。
その翼に一誠は見覚えがある。
「あれは…夕麻ちゃんと同じ……」
自分を殺した女性と同じ翼を持つ男。
あれはやはり、夢では無かったのだろうか。
黒ずくめの男は、一誠に話し掛けて来る。
「貴様、"はぐれ悪魔"だな。妙な信奉者を連れているようだが…まぁ、殺してしまっても問題はなかろう。その信奉者はお前を殺した後、始末すればいい」
「俺が…悪魔?何の事だよ…!!」
「貴様、転生したてか?転生なら、貴様にはご主人様がいるはずだが?答えよ、貴様の主人は誰だ」
「私よ。堕ちた天使さん」
「「「?!」」」
二人の会話に割って入ったのは、リアス・グレモリーだった。
リアスは一誠の隣に魔法陣で転移をし、黒ずくめの男―――堕天使と対峙する。
「これはこれは…まさかこの街が悪魔の名家…"グレモリー家"の領とは…しかも眷属の皆様まで来られるとは…実に光栄だ」
リアスが現れた魔法陣からさらに三人の悪魔が現れる。
全員、リアス・グレモリーの眷属悪魔である。
「初めまして、私はリアス・グレモリー…グレモリー家の次期当主。お見知りおきを、礼儀知らずの堕天使さん」
「フッ…グレモリー家の眷属であるならこれ以上関わる必要は無い」
堕天使は手に持った光の槍をしまって、翼を羽ばたかせた。
だが、堕天使は大人しく帰る事はできなかった。
悪魔、堕天使、そして仮面ライダーが集うこの場所。まさかデビルショッカーが見逃すはずも無い。
「グオオオ!!」
草の茂みから、突然大きくて長い影が襲って来た。
影はリアス・グレモリーに飛び掛かり、口から生えた大きな牙で噛みつこうとする。
「キィシャアアアアアアア!!!」
「なっ?!」
「!!」
ヒロが向かおうとしたが、怪人の攻撃してきた距離はかなりリアスと近く、デモンストリングを射出したが間に合わない。
眷属悪魔である剣士―木場も剣を抜き超越的なスピードで割って入ろうとする。
だが、誰よりも速く割って入り、攻撃からリアスを守った者がいた。
「うぐッ?!?!」
「一誠!!!」
一誠は、リアスの方に視線を向けていた為、後ろから忍び寄り、飛びかかろうとしてた怪人を目撃していたのだ。
一誠の伸ばした右腕に噛み付く。大きな牙はグサリと腕に突き刺さり、そこから獲物を失神される毒を流される。
一誠は苦しみの声を上げたあと、意識を失い、その場に倒れる。
「チガウ!コイツジャナイ!!ヌグッ?!」
「ナイスガッツだ一誠!強化人間、お前の相手は俺だ!」
デモンストリングでグルグル巻きにされた強化人間はハンマー投げの要領で一誠から引き剥がして投げ飛ばす。
そして投げ飛ばした先にいたのは堕天使だった。
「危ない!!!!」
「あ、ごめん!!」
ギャグ漫画の如くめちゃめちゃ上半身を反らして避ける堕天使。
「これ以上、面倒に巻き込まれてたまるか!」
堕天使は怒って飛び去っていった。
一方怪人は自分を縛る糸をねじ切り、仮面ライダーと対峙する。
「離反者、仮面ライダー!!オマエヲ…殺ス!!」
怪人は一誠の腕を噛んだ大きな牙を剥き出しにして威嚇する。ヒロは今更、怪人の威嚇に動じる事は無く、冷静に分析していた。
「大きくて赤い牙、頭髪のように長く伸びた"ソレ"に黄色い棘……ムカデの強化人間ってところか。しかも完全変身個体」
「シャアアアア!!!」
「またぶっ飛してやるよ、ワニ野郎みたいに!!」
《デモンズフィニッシュ!!》
ヒロは飛びかかるのに合わせて足刀蹴りを放った。
普通なら顎を砕かれ、顔面はバラバラ…そして爆発四散し、絶命する。
―――しかし。
「捕マエタ…!!」
「なんだと?!」
飛びかかっている怪人の身体は地面と平行になって浮いていて、踏ん張ることなどできないはずなのに、仮面ライダーの足を的確に顎で捕らえ、しかも逃れようとしてもそこから離せないようになっている。
ヒロは注意深く、怪人を観察する。
すると、怪人の頭から長く伸びたムカデの胴体のような器官が地面にまで伸びており、胴体から生えた棘のような足で、地面にしがみついている事を理解したッ!!
「マダダ!!」
怪人は捕まえた足を上に放り上げ、姿勢を崩したところで、胴体部分を尻尾のように動かし体当たりでライダーを吹き飛ばす。
変則的な攻撃に苦戦を強いられる仮面ライダー。膝を付き、息を荒げる。
「はぁ…はぁ…コイツら…前より強くなってる」
「強クナレルノハ、オマエダケジャナイ!!オレハ、オマエノ性能ヲ上回ルヨウニ、作ラレタ!!」
ガチンガチンと顎同士をぶつけ、自分の強さを誇示する怪人。
だが、これだけやられても仮面ライダーは冷静なままだった。
「確かに強い…でも、僕にはまだ"
「ナンダト!」
「蜘蛛の力だけが…デモンズの強みじゃ…無いんだぜ!」
ヒロは、バイスタンプホルダーにセットしていた、スパイダーとは違う緑色のバイスタンプを取り出す。
「ソレハ…バッタバイスタンプ!!」
「お前らの観測拠点にお邪魔したときくすねておいたんだよ。デモンズシステムの本領を見せてやる…GO!ゲノミクス!!」
《ADD…!!》
ヒロは
すると、仮面ライダーデモンズの脚がバッタバイスタンプに内包されたバッタの遺伝子の影響で、どんどん変形していく。やがて脚はバッタの後脚のように発達し、特殊武装――デモンボトムハイヤーになった。
《ドミネイトアップ…!!》
《バッタ!ゲノミクス!!》
「ゲノミクス?!ナンダソレハ!!」
「お前らはベイル封印の為だけにデモンズドライバーを作っただろうから知らないが、これが仮面ライダーデモンズ本来の力だ!!はァァッ!!」
デモンボトムハイヤーは仮面ライダーに卓越した跳躍力を授け、さらにキック力も上がっており、怪人はデモンズの回し蹴りを受け止めきれず仰け反る。
そしてその隙を見逃す事なく、ヒロはデモンズノックを三回押し込んで、きりもみ回転を加えた必殺キックを放つ。
《バッタ!デモンズレイクイエム!!》
「ライダータイフーンキック!!」
「ドビラアアアアアアアアアアアアアアアバアアアアアアアアアアアーーーッ!!!!」
怪人は爆発四散し、絶命した。
着地と同時にゲノミクスは解除され、足が元に戻ると変身も解除された。
ヒロは怪人を撃破したのを確認し、一誠とリアスの方へと駆け寄る。
「大丈夫ですか?」
一誠はぐったりしているが息は正常にしている。
恐らく、捕獲用に調合された麻痺毒だったため殺傷能力は無かったのだろう。だが、噛まれたところからは出血している。放って置くのはダメだろう。
だが、すでに噛まれた箇所には布が巻かれ、止血処置がされていた。ヒロが戦っていた時に行ったものだろう。
寝ている一誠を抱え、リアスは魔法陣に乗る。
「この子は私が治すわ…。また学園で会いましょう、仮面ライダー」
「はい、一誠を頼みます。それから、彼の身に何があったのかも…聞かせて下さい」
リアスは小さく頷き、眷属悪魔と共に転移魔法でその場から消える。
「(やはりデビルショッカーはリアス・グレモリーを狙っているのか?だとしたら、俺はあの人の元に……)」
〜〜〜〜
「クソッ!!またしても仮面ライダーめ!!」
『これはとんでもない大失態だな…死神博士三世。』
「申し訳ございません…!!次はもっと強い強化人間を……」
『もう良い。今は強化人間を作るより、バイスタンプ製造の方に注力せよ』
「な、何故ですか?!」
『強化人間を生み出す為には器になる人間が必要。だが、後も仮面ライダーに蹴散らされてはただの人員の無駄遣い。だが、バイスタンプによって生まれる怪人"デッドマン"は一人の人間から幾らでも生まれる。その方が、幾分か効率が良い』
「グッ……!!お、仰せのままに…!!(おのれ仮面ライダー!今に見ていろ、私の研究で必ずお前を殺し、世界を手に入れてみせる…!!)」
→To be continued→
次回、仮面ライダーデモンズ
自分が悪魔になったと言い渡される一誠。
悪魔とは何か、消えた彼女は何者か、何故自分が殺されたのか
新たに始まる悪魔生活。
第2話「悪魔生活、始めました」ご期待下さい。
=設定公表=
○デビルショッカー
大首領、大幹部、幹部、一般工作員という構成で組織された秘密結社。
全世界の裏社会で暗躍する。
その目的は世界の「完全征服」であり、何者もショッカーに逆らわず、思い通りに動かせる理想郷を作るべく、人を攫い、非人道的な改造手術をする。