※この作品はR-18です。

慧音の日誌   作:guriguru

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9,出産の夜

 

「まっ 待て!行くな!!今日産まれ…ムグッ!」

 

「先生 そう言っていつも産まないじゃん。」

 

「んむっ!」

 

「帰らなきゃいけないし明日は産んでね。」

 

「また明日ね、慧音先生。」

 

「ん゛ーッ! ん゛んーーッ!!」

 

 

 

 

慧音は一人、監禁小屋に取り残された。彼女の心中に次第に怒りが湧いた。

 

 

 

(……何が帰らなきゃいけないだッ……私の子が、産まれるかもしれないのにッ!!……それを、あいつらはッ!!!)

 

 

もはや、彼女の心身は限界に達していた。臨月の身重と長きに渡る凌辱の数々によって……。

 

 

 

(もし、出産日が今日だとしたらッ……私にはどうすることもできないッ……。)

 

 

 

慧音は、我が子が孕む自分のお腹を涙ながらに見下ろす。

 

 

 

(せめて……明日に……明日に産まれてちょうだい……今日だけは……。)

 

 

 

そう願い続けた。だが……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少年達が去り……時が過ぎ……そして、真夜中に。

 

 

慧音は、なぜか寝付けなかった、身体が妙に熱かった。

 

 

(おかしいッ……身体の調子が変だ。)

 

 

 

ズキッッ!!    

 

 (ッッ!?)

 

 

 

突然、お腹に鋭い痛みが走る。陣痛が始まった。

 

 

 

(い…痛いッ!?これって…まさか!?)

 

 

 

陣痛が治まるどころか次第に激しさを増していく。お腹の子も動きが活発になっていく。

 

 

 

(い…いやッ!!…こんな日にッ……よりにもよって!!)

 

 

 

いくら慧音がいくら願っても陣痛は止まらない。時間がたつにつれ、お腹の子も暴れ始める……。

 

 

 

(だ…だめッ!!……この日だけはッ…この日はッ!!)

 

 

 

ビシャッ!! ビチュチュッ!!

 

 

 

(ッッ!!?)

 

 

 

慧音の股間から羊水が溢れ出す、破水だった。

 

 

 

(これは…破水ッ?……嘘だろッ…そんなの!!?)

 

 

 

今日が出産日だった、そしてすでに出産間近だった。嘘だと思いたかった、夢であって欲しかった。

 

だがこの破水が現実だということを物語っていた、慧音は焦燥と絶望に襲われていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

!!!ッ !!ッッ~~ッ!!ッッッ~~!!

 

 

ビクッ! ビクッ!!

 

 

 

慧音は悶えていた、あまりにもの苦痛に、あまりにもの生き地獄にッ。

 

陣痛は極限にまで達し、腹が裂けるといわんばかりの激痛に変貌していた。胎児が暴れる度、さらに響く。

 

だがこの原因は、慧音の体質だけではなかった。今、監禁されている小屋にもあった。

 

この古小屋は、隙間風が多く真冬になると室内が低温と化すのだった。分娩するには劣悪な環境だった。

 

身体が低温に晒され、分娩する穴が閉まる。母子ともに危険な状況に陥っていた。

 

 

 

 

ッッッ!!!!! !!!ッッ ッッッッ!!!!!!

 

 

 

 

 

慧音は、号泣し、悶絶し、暴れ狂い、失神しかけていた。文字通りの命懸けだった。

 

それでも必死に産もうとした。望まれない子でも、それでも自分にとっては愛する子だった…。

 

 

 

 

 

そして……。

 

 

 

 

 

オギャアッ!! オギャアッ!! オギャアッ!! オギャアッ!! 

 

 

 

 

赤ん坊が産まれた。慧音と少年たちの初めての子が……。

 

 

 

 

(産まれたッ……私の赤ちゃんッ……やったッ。)

 

 

 

慧音は喜びと感動で震えていた、自分の子が誕生したことに……。

 

 

慧音は、産まれた子を抱きかかえようとする。しかしッ……。

 

 

 

(あ…あれ、私の手が……足が……。)

 

 

 

分娩の激痛で頭から吹っ飛んでいた、だが思い出した。今まで自分が手足を拘束され身動きできないことに…。

 

 

 

 

(う…動けないッ!?……私の赤ちゃんが!ッ……抱きたいのにッ!!)

 

 

 

 

いくらジタバタ抵抗しても拘束は解けない、それどころか縄で縛られた両膝が激しく痛んだ。

 

 

産み落とされ地面に転がり、へその緒で繋がれた赤ん坊も最初のうちは元気に泣いていた。しかし、ろくに母親に抱かれず授乳もされない状況が続き、次第に衰弱し始めていた。

 

 

(私の子がッ……このままじゃ……死ぬ?……そ…そんなのいやッッ!! 私が…助けなきゃ!!!)

 

 

乾燥し、肌寒い低温の環境が赤ん坊を蝕み衰弱を加速させていく。

 

 

 

 

オ…オギャァ……オギャ……オ…ギャ……。

 

 

 

(死んじゃうッ!!このままじゃッ!!!…誰かッ!!

 誰か助けに来てぇッッ!!!)

 

 

 

赤ん坊の動きが弱く、鈍くなっていく。低体温症に陥っていた。もはや一刻の猶予も許されない。

 

 

 

ガタッ!! ガタッ!!

 

 

 

ギシッッ!!ギシギシッ!!ギッ!ギッ!

 

…ミシミシッッ!!

 

 

 

 

慧音は、出産直後の母親とは信じられないほどに、目を血走らせ暴れ狂った。

我が子を助けたい一心だった。

 

だが必死の抵抗も虚しく緊縛は解けなかった、両膝が縄と激しく擦れて皮膚が裂け血が流れる。

 

 

 

 

オ…オ………おッおぎゃ……。

 

 

 

 

お……ぉ……ッ……。

 

 

 

 

ぉ………っ……。

 

 

 

 

…。

 

 

 

 

 

赤ちゃんが泣き止んだ、僅かに動きもしなくなった、まるで石像のように固まっていた。

 

静寂だけが流れた。

 

 

 

 

(泣いてもいいのよ…もう一度……母さんにッ………元気な姿を見せて……。)

 

 

 

 

 

 

 

 

(お願いだからッッ!!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

慧音の赤ん坊は、死んだ。死因は低体温症だった。

あまりにも、短すぎる命だった。

 

 

 

 

 

 

 

この夜、一人の女の慟哭が古小屋を震わせた、それを知るものは誰一人いない。

 

 

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