リョウの裸体が、手を伸ばせば届く距離にある。
引き締まって、均整の取れている肉体。本人は、特別意識して運動などをしているわけではないようで、自然に生活する中で出来あがった身体なのである。
ちょっと埃っぽいソファーに座り、豪がリョウに手を伸ばす。瑞々しい肌。腰のあたりを撫でているだけでも、簡単に幸福感を味わえてしまう。
「んっ……。なるほど、島津くんは女を焦らすのがお好き、と」
「そうでもない。リョウがあんまりにもきれいだから、見惚れてただけだ」
「よろしい。それなら、許して進ぜよう」
座面が軋む。
乗りかかってくるリョウを受け止め、唇を吸った。どちらも、舌の動かし方がたどたどしい。それでも、試行錯誤しているうちに、こうすれば気持ちよくなれる、というポイントがなんとなく掴めてくる。
唾液を送り込むのにも、リョウは容赦がない。溺れてしまわないように鼻で呼吸をし、大人のキスに没頭する。
「あむっ、はっ、はふっ……。わっ、でっか……。豪のちんちん、ガッチガチだね」
「これだけやって小さいままなら、それはそれで心配になるだろ。んっ……。胸、さわってもいいか?」
「いいよ、豪にならどこでも。大きさなら、虹夏より自信あるし」
知らないぞ、いつか虹夏に怒られても。
今頃くしゃみでもしていそうな幼馴染の顔。思い浮かべながら、豪は苦笑していた。
なるべく平静を保ちつつ、リョウの乳房にふれていく。やわらかい。なんでもない表現だが、まず浮かんできたのはやはりそれだった。
男女の違いを意識していなかった昔は、風呂にも一緒に入っていた記憶がある。だが、これからはそれも完全に意味が違ってくるのだ。
「こんなとこでも、豪は優しい。もう少しくらいなら、強くしても平気だから」
「そっか。リョウのここ、無限にさわっていたくなるな。このくらいなら、大丈夫?」
「うん。不思議な感じがするけど、これが気持ちいいってことなのかも。私も、してみていい?」
「喜んで。正直、いつさわってもらえるんだろうって、そいつもやきもきしかけてたところだ」
リョウの視線が、限界まで張り詰めたペニスに落ちている。
いたずらっ子のような表情。両手をわきわきとさせ、新しい玩具に向かうような気持ちでリョウはいるのかもしれない。
「おおっ、凄い熱。辛かったりするの、豪?」
「やっ……。たまんないな、これ。リョウの手が、気持ちよすぎて」
かすかにひんやりとしている手のひら。それに左右から擦られて、ペニスが歓喜にふるえていた。
力加減を確かめている段階なのか、リョウに顔をじっと見つめられている。
気恥ずかしさはあるが、興奮は間違いなく高まっている。先端から溢れる我慢汁。物珍しそうに指でいじくり、リョウは得意気に笑っている。
「これ、知ってるよ。気持ちよくなると、勝手に出てくるんだよね。ふふっ、私にシコシコされるの、豪はいいんだ?」
「そんなの、いいに決まってる。というか、リョウと一緒ならなんだって愉しめる自信があるぞ、俺は」
「虹夏にも、ロインでいろいろ教えてあげないとね。あっ、写真でも撮って送るのもあり?」
「やめなさい、それだけは。うっ……。リョウ、それつよっ……」
「ぐちゅぐちゅって、すごいことになってる。射精したいの、豪?」
「いいのか、俺だけ気持ちよくなっても」
手による刺激を続けながら、リョウが優しくほほえんだ。
頭がくらくらする。まさか、この幼馴染からこんなにも母性を感じる日が来るなんて思いもしなかった。
ゆったりした中に激しさを織り交ぜて、リョウが追い込みにかかってくる。
「出して。出して、豪」
「うっ、ああっ……!」
ずっと味わっていたいような心地よさだったが、自分でも呆れるくらい早く限界がやって来てしまう。
真っ赤になって喘いでいる亀頭。そこを手のひらで撫でるかたわら、リョウが情熱的なキスで唇を塞いでくる。
気持ちよさが弾けていく。
幼馴染の手によって導かれる、初めての射精。引き返すことなど、もうどうやったって出来はしない。ペニスをぎゅっと握るリョウの手が、白濁に染まっていく。自分でも驚くような量で、しかも少しも勢いが衰えないでいる。
「わっ、すごっ……。豪のおちんちん、ずっとふるえてる。匂いも、こんななんだ」
どろどろの液体にコーティングされ、リョウの手は妖しく光り輝いている。
暴走しかけの状態でつながるよりかは、よかったのかもしれない。一度クールダウンしたことで、リョウのことも多少は冷静に見られるようになっている。
とりあえずティッシュを数枚抜き取り、興味津々に精液の観察を続ける幼馴染に手渡した。
「どうだった、豪。私の手、気持ちよかったんだよね」
「それはもう。でなきゃ、あんな馬鹿みたいな量でないって」
「なのに、まだおちんちんかたくしたままなんだ。もしかして、豪って絶倫?」
「わかるかよ、そんなの」
リョウを抱きしめ、再度口づけた。
互いの陰毛が擦れあっている。ここまで来たら、もう止まれない。行きつくところまで行かなくては、心が満たされることはない。
「あっ。せっかく買ってきたんだし、ゴムつけよっか。私は、どっちでもいいんだけど」
立ち上がり、袋を置いてある場所までリョウが歩いていく。
離れ離れになる体温。今は、この時間ですらもどかしい。
「なんか、ドキドキするね。こういうの見てると、すっごく意識しちゃうのかも。豪と、今からエッチするんだって」
「んっ、リョウ……」
「不思議。こんなので、嬉しくなれるんだから。ふふっ。つけてあげるから、じっとして」
いても立ってもいられず、勃起したものをぶら下げた状態でリョウに近づいていった。背後から身体にふれ、尻のあたりを撫でまわす。うなじに軽く口づけると、くすぐったそうにリョウは声を洩らした。
箱から取り出した銀色のパッケージ。指でぴっと破いて、リョウが中身を取り出している。
「むっ……。意外とむずかしいんだ、これ。サイズ、合ってないのかな」
「ああっ……。ちょっとキツいけど、たぶん平気」
「今度、虹夏と別なやつ買いに行きなよ。くすっ。かわいい色のほうが、喜んでもらえるかも」
「こんなのでかわいいアピールしてどうする。むしろ、ドン引きされるオチしか見えないんだが」
「んっ、最後まで入ったね。ぷぷっ……。おちんちん、変な色」
薄いピンク色をしたゴムが、ペニスに覆いかぶさっている。
箱には0.01と記載されていたから、たぶん感覚を阻害されることは少ないのではないかと思う。
手探りにリョウの陰部をまさぐり、状態を確認する。
滑り気。これが、世にいう愛液というやつなのだろう。慎重に指を差し入れ、軽く中をほぐす。それが気持ちよかったのか、リョウの表情にも少し変化が生じている。
「はあっ、ふうっ。まだ、挿れてくれないの。もしかして、焦らしたくなってきたとか?」
「もう、大丈夫そうなのか。準備とか、よくわからないからさ、俺」
「だめだったら、またやり直すだけ。だから、豪」
「わかったよ、リョウ。それなら、いくぞ」
細い身体。壁に押しやり、ペニスで入り口を探した。
ゴムにまぶしてある潤滑油が、挿入の手助けをしてくれる。わずかに歪むリョウの表情。馬鹿みたいに大きくなったものを突っ込まれているのだから、苦しくて当たり前だった。
「豪。キスしてくれたら、きっと我慢できるから」
「それなら、いくらでも」
腰を掴み、さらに身体を密着させていく。
吐息が熱い。互いに唾液を送り、口のまわりを汚していく。これが、甘いという感覚なのか。
呼吸の合間を見計らい、腰をじりじりと進めていく。肉による締めつけが凄まじい。これだけでも、気を抜くと射精してしまえるような気持ちよさがあった。
「あっ、ふぐっ……。きてる、豪が。ああっ、んーっ……」
一番きつい部分は、越えた気がしていた。同時に、苦しそうにしていたリョウの呼吸も、幾分楽になっている。
「最後まで入った……のか?」
「わからない。けど、そうなのかも。んっ、はうっ……」
満たされているのと同時に、切なさが足先まで駆け抜けていく。
ゴム越しに伝わってくる体温。リョウに包まれているという感覚が、かなり強い。
「動いていいよ、豪。おちんちん、辛いだろうし」
「別にいいよ、俺はこのままでも。リョウのあたたかさは、十分感じられるから」
「うわ……。その言葉に、ちょっとゾクっとしちゃったかも。だからあったかくしてよ、中から」
切なさを感じているのは、リョウも同じなのかもしれない。
頷いて、徐々に腰を揺さぶっていく。締まりのある肉。割り割き、奥を窺った。
吸い取られる。そう錯覚してしまうくらい、リョウの締め上げは甘く切なかった。
子宮の入り口の付近を責めると、その傾向はより顕著になる。
ゴムをつけている今でも、感極まってしまいそうなのである。生での挿入というのは、想像を絶するくらいの心地よさがあってもおかしくないのではないか。
「ふっ、はふっ……。どう? 気持ちいい、豪?」
「正直、よくわからないな。全部がよすぎて、感覚がおかしくなってるのかも」
「へえ、そうなんだ。私も、似たような感じかな。豪がお腹の奥にいるって思うと、変なくらいドキドキする」
拙い腰遣いでも、リョウは満足してくれている。
いつか、この瞬間を笑い話として思い出す日が来るのだろうか。
リョウ、それに虹夏とともに、歩んでいく日々。
きっと刺激的で、甘いものになっていくのだろう。
「あっ、結束バンド……。ふふっ、そういうのも、案外悪くない、か」
リョウの視線が、机の上に向いている。
転がっているのは、コードを束ねていた結束バンド。昨日虹夏がいる時に切ったもので、捨てるのを忘れていたようだ。
「バンド、また組んでみようかな。私と虹夏をつなぐ、絶対に切れない結束バンド。なってくれる、豪?」
「わからないけど、努力する。それが、リョウのためになるのなら」
「そういう優しいとこ、好きだよ。んっ、あぐっ……。あっ、そこっ……!」
心の奥が熱くなる。
リョウのことを、五感のすべてで感じていたい。そんな思いが、果てしなく強くなっている。
張りつめたペニスで、突き上げるように責め立てる。リョウの身体はそんな動きすら許容するまでになっていて、昂ぶる欲望を受け止めてくれていた。
「んっ、やばっ……。頭の中、ふわふわする。豪のおちんちん、弱いとこ突いてきて」
「イキそうなのか、リョウ? 正直、俺もまたっ……」
「いいよ、いつでも。ああっ、ふーっ、はぐっ……」
なにかを堪えるような喘ぎ声。
感じているのが自分だけでないという事実が、それだけで嬉しかった。
言葉は、もう必要ないのかもしれない。
甘く蕩けるようなキスを愉しみ、最後の瞬間に向けて腰を動かした。
煮えたぎるような衝動。それが、下腹部を支配しようとしているようだった。
「あっ、くっ……!」
「豪。んっ、ちゅむっ、はーっ。豪、ごうっ……」
ペニスを包むゴムの内部に、生温かさが拡がっていく。
リョウの子宮に亀頭を押しつけて、直接射精しているわけではない。それなのに、腰が抜けそうになるくらい気持ちがよかった。
「んっ……。豪のおちんちん、たくさんふるえてる。ゴムの先、ちょっと破いておくべきだったのかも」
そうやって冗談を言うリョウの顔が赤い。
たまらなくなって、腰を限界まで押しつける。凄まじい快楽の味。簡単に、忘れられるものではなかった。
射精が止む。それでも、二人は離れられずにいた。
時計を横目で見る。早いもので、もう午後七時を越えていた。
「……お腹空いた。ご飯にしよ、豪」
「ははっ。こんな時でも変わらないな、リョウは。風呂沸かしてくるから、着替えでも用意して待ってろよ。いろいろついちゃってるしな、どっちも」
「あっ。そういえば、服持ってくるの忘れてた。なんでもいいから貸してよ、豪のでいいからさ」
取りに帰るという選択肢は、最初から存在していないらしい。
だぼついたシャツでくつろぐリョウの姿を想像する。かわいい。よもや、これはなにかの作戦なのではないかと勘繰ってしまうくらいだった。
「豪、お風呂はやくー。かわいい幼馴染を、餓死させないでくれー」
前言撤回。あの山田リョウが、そのような計略を巡らすはずがない。
今夜は間違いなく、いつになく長くなる。
自宅の中であるとはいえ、裸のまま動き回るのはなんとなく恥ずかしい。
床に脱ぎ捨ててあった下着。素早く拾い上げ、豪は風呂場に向かうのだった。