ふぅ……。
いや、結構なお手前────じゃなかった。結構なお湯加減でした。
ナニとは言わないけどスッキリした。溜まってた疲れとかその他いろいろが全部出た気がする。
あまりにも気持ち良いからついつい長湯してしまった結果、まだ子どもなレオナルドくんがのぼせてしまったのでソファに寝かせている。
ユーリに膝枕してもらって団扇で仰いでもらうなんて羨ましい。
そして風呂上がりの楽しみ。ジイさんが用意してくれたキンキンに冷えた牛乳を、腰に手を当ててグイッと飲み干す。
カーッ、美味い! この一杯の為に生きてる!
風呂上がりにはやっぱり牛乳だよねー。
ユーリもどう? 牛乳美味しいよ。年に1回ドラゴンに襲われてヒイヒイ言ってる農家のおじちゃんところの牛乳。
「いえ、ボクはもうたくさん飲ませていただいたので……♡」
………………ウッス。
「ホッホッホ。お楽しみでしたな?」
何がぁ!?
あ、ああそうね。温泉ね! 楽しくゆっくり出来たよ! ありがとうねジイさん!
ユーリも思わせぶりな笑いしながら唇撫でるのやめて! 色々と思い出しちゃうから!
「ご主人様の、またのご利用をお待ちしています」
お前ちょっと調子に乗ってんだろ?
あんまり調子に乗ってると上だけじゃなく下の口にも飲ませるからな?
「………………♡」
期待した目で見ないでくれる? 冗談のつもりだったのに真に受けられちゃうとこれから下ネタなんにも言えなくなっちゃうからさ。
それにしても。
俺たちもかなり長風呂したと思うんだけど、女性陣はまだ出てきてないみたいだな。
やっぱり女性は色々と時間がかかるもんなのかね。
「レイアお嬢さまとアンズ様でしたら、すでに宿の方へお戻りになられましたよ」
え? マジで?
ずいぶんと早く戻ったんだな。待っててくれてもよかったのに。
「非常にお疲れだと仰っておられました。それとなにやら準備があるようでして」
準備? あとは寝るだけなのに?
明日のこととか、これからどうするのかって事か? 王太子ぶん殴ったとか言ってたし、それが本当なら俺たちはお尋ね者ってことになるしな。
最低でも国外に逃亡する必要がある以上、ただノンビリ休むって訳にもいかないのか。
………………なんか思い出したら憂鬱になってきたな。義理チョコもらってマウント取ってただけなのにどうしてこうなってしまったんだか。
まあレイアたちが策を考えてるんだったら、それを聞いてから先の事を悩んでも遅くはないか。
もともと俺は考えるのは苦手だし、そういうのは得意な人に任せればいい。適材適所ってやつだよ。
「それでは、坊っちゃまはこちらの部屋をお使いくだされ」
考え事をしていたら宿屋に着いていた。
ジイさん案内ありがとう。ユーリとレオナルドくんも、ゆっくり休んでね。
じゃあ、おやすみ~。
3人を見送ってから部屋の扉を開ける。程よい倦怠感と眠気があるし、今夜はグッスリ眠れそうだな────
「ぉ、お帰りませだニャン!」
────何やってんスかレイアさん。
---数刻前。温泉浴場にて---
「ヤバいヤバいヤバい」
「マズいマズいマズい」
男性陣+αが更衣室に消えてから数分。真っ青な顔を見合わせてオロオロとする2人の少女がいた。
公爵令嬢レイアと聖女アンズ。
彼女らが想いを寄せるリュートが風呂での奉仕を命じたのが、あろうことか従者であるユーリだったのだ。
特にレイアの一緒に入浴しようという誘いを断っての行動だった為、2人の少女は大いに焦燥の念に駆られていた。
「な、なんで? ユーリが好きなの? 今までまともな会話とかしてなかったよな!?」
「まさか胸が小さい方が良いとか? いやでもだったらレイアが選ばれないのはおかしいわね」
「ケンカ売ってんのかウシ女」
「黙ってなさいよ洗濯板」
お互いに胸倉を掴み合いメンチを切り合う。
リュート共有条約によって和解はしたものの、お互いが恋敵であることに違いはない。
好きな人を独占したい恋する乙女たちは、いつでも敵の隙を狙っているのだ。
「ともかく、なんでユーリが選ばれたのか考えないと」
リュートが気絶している間に締結した条約によって、リュートの貞操をいただく権利はレイアが保持している。
自分の権利が従者に奪われるという屈辱を回避するためにも、レイアは必死に思考を回す。
「そうね。ユーリも締結する場所にいたから出過ぎた真似はしないと思うけど……」
もちろんアンズにとっても他人事ではいられない。
なぜなら彼女もまた、リュートに最初に後ろの不浄の穴を捧げる権利を保持しているからだ。
このままではお互いが割譲した権利をまるごとユーリに持っていかれかねない。
もしもリュートがレイアでもアンズでもなくユーリを選ぶのであれば、その要因を解明して気持ちを取り戻さなければならない。
ユーリにあって自分たちにないモノ。
2人が必死に頭を悩ませた結果、ふと浮かび上がったものがあった。
「……………慎み?」
それを言っちゃあおしまいよ。
前世が男であるが故に男に刺さる仕草を積極的に行うレイアと、母親から「恋は戦争」と教えられて育ったアンズ。
どちらかといえば肉食系女子に分類される2人にとって、ユーリのあんまり女を感じさせずガツガツもしない様子は真似しにくい。
でも、もしそれが原因ならリュートは自分たちから離れていってしまうだろう。
というか実際に逃げようとしてたし。
逃げても捕まえればいいけど、ちょっと悲しくなるからできれば逃げないでほしい。
むしろ自分たちを求めてほしい。たっぷり愛してほしい。
ということで、2人は一計を案じた。
こっちからガツガツいくのではなく、リュートが我慢できず襲いかかってくるようなシチュエーションを作ればいいのだ。
これ即ち『誘い受け作戦』。
かくして温泉もそこそこに2人の少女は作戦遂行の為、早くに宿屋へ戻った。
そこでジイさんがどこかから用意した、たくさんの夜戦用の衣装を比べながら虎視眈々と機会を伺っていたのだった。
---時は戻って、リュートの部屋にて---
ということで出来上がったのが、猫耳と尻尾を付けたレイアにゃんだったと。
「そ、そうだニャン……」
恥ずかしくて顔を真っ赤にするくらいだったら止めておけばいいのに。
あとその無駄に布面積の少ない下着は何ですか。
「マイクロビキニっていう水着」
そんなの着て人前で泳ぐの!? 絶対にやめてよ! 変な虫が近寄ってくるから!
「わ、分かってるよ。私がこんな格好をするのはリュートの前だけだもんっ」
ふんぬぬぬぬっ!
静まれ俺の《聖剣》! さっき温泉で手入れしてやったばかりだろ!
あ、危ないところだった。上目遣いで可愛いことを言うもんだから、危うくルパンダイブするところだった。
エロい格好で可愛いこと言うなよ。ムラムラするだろ。
「で、どうかな? 興奮……する?」
めっちゃします。
まあでも聞いてくださいよレイアさん。
あんまり本能に任せて退廃的なことをしてると良くないと思うんだ。
特に俺たちはいま逃亡生活中なわけで、少しでも体力を温存するためにここはよく寝てよく休み、
「よく気持ち良いこと、しよ?」
……………ッスゥーーーー。
あっぶね~。
耐えた。なんとか耐えた。え、ちょっと前屈みになってるって? ゴメンだけどあんまり気にしないでもらえると助かるかな。
「そんなに私とするの、イヤ?」
イヤじゃないです! いやもう全然ウェルカムなんですけどね!? だからその涙を引っ込めて! なんでも言う事聞きたくなっちゃうから!
今はちょっとその時じゃないというか、間が悪いというか《聖剣》が悪いといいますか!
「……………なにか隠し事してるでしょ」
えっ。いや~、ちょっと何言ってるか分からないな~。
「折檻」
スイマセンっしたー!
いや実は俺の股間にあるやつとはまた違う《聖剣》がかくかくしかじかでして!
「なるほど。だいたい状況は分かった」
ホッ、良かった。じゃあこの猫耳はなかったことに────
「じゃあ、いっぱい子ども作ろっか♡」
────話聞いてた?
このままだと《聖剣》の思う壺なんだってば!
勝手に遺伝子組み換えされて、好きな人も決められて、なんでも決められたレールの上を走るなんて自分の人生じゃないでしょ!?
「あぁ、それが不安だったんだ?」
……不安?
「私とかアンズの気持ちが、《聖剣》によって作られたものだったんじゃないかって思ったんだろ?
『勇者』の血を持つ者同士で惹かれ合うようにするなんて、すごいこと考えるよな」
そ、そうそう。
もしも俺が産まれていなければ、こんな王族殴り飛ばして逃げる羽目になっていなくて、レイアがごく普通に貴族の令嬢として幸せになってたかと想像したら、さ。
今のこの状況が間違ってるって思うだろ?
「いーや、まったく?」
……ずいぶん自信満々に言い切りますね。
「だって私が惹かれたのはリュートの遺伝子じゃなくて性格だしな。何回リュートと会っても、その度にリュートを好きになる自信があるよ」
だからそれはそうなるように俺が創られたからで……
「いい加減にしろよ」
……胸倉、掴まないでくれません? 痛いんですけど。
「つまりお前はアレだ。私の気持ちを疑ってるわけだ。自分の生い立ちに負い目があるから逃げてるわけだ」
まあ、そういうことになりますね。
「なめんなよ?」
………………舐めてないし。
「どこの馬の骨かも分からないポッと出の奴に吹き込まれた妄言を全部信じ込みやがって。
『勇者』の血がなんだ? 数百年前にいた赤の他人だろうが。
実験で産まれた遺伝子改良がリュートだって? この世に産んでくれてありがとうだ。
遺伝子レベルでお互いに惹かれる? 最高じゃねえか。運命の相手ってことだろ?」
レイアは、それでいいのかよ。
「もちろん。だいたいその《聖剣》の言う通りにしたからって何か不都合があるのか? 世界を救う英雄。けっこうなことじゃないか。自分の子どもがそんなすごい人になるなんて誇らしいね」
子孫の末裔まで、実験動物扱いされるんだぞ?
「そんなの私たち親の教育次第だろうが。《聖剣》の言う事には従うなって教えとけばいいんじゃねえの? それから先は子孫たちの好きなようにやるだろ」
でも……
「でもでもうるせえな! そんなにデモがしたいなら国会議事堂の前に行けや!」
たぶんデモ違いだと思う。
「大事なのはテメーの気持ちだろうが! 俺は、リュートが好きなの! 結婚したいの! イチャイチャしたいの! 子どもを作って幸せに暮らしたいの!」
………………身に余る光栄です。
「リュートはどうなんだよ! 俺のこと、どう思ってんだよ!」
好きだよ。
小さい頃に会った時からずっと。
怪我をしたら自分の事のように泣いて手当てしてくれる君が。
どこまでも純真で、大切な人たちの為にまっすぐで一生懸命な君が。
バカな俺の思い込みをほどいてくれる君が、大好きだ。
「だったらいいじゃねえか!」
そうだね。
ゴメン、俺が間違ってたよ。
謝るから、泣かないで?
「っ、うるせぇバーカ!」
うん。バカでごめんね。ありがとう。
そうだな。未来の事を考えても仕方ない。なるようにしかならない。
大事なのは今。目の前の大切な人を幸せにすることだったわ。
スンスン鼻を啜ってないで、ほら紙で拭きな?
────っておい! それ俺の服だから! 温泉上がって着替えたばっかなのにどうすんだよ! これじゃあ服着て寝れないじゃん!
「じゃあ裸で寝ればいいんじゃないか?」
ニヘヘって笑うレイア。
涙で赤くなった瞳、イタズラっぽく誤魔化すけど幸せそうに緩む口元、俺にしがみついてくる小さな手、布面積の小さい水着、俺の胸板に押し付けて少し潰れる柔らかい胸、無駄に似合っている猫耳、フリフリと揺れる尻尾、柔らかくて掴みがいがありそうな臀部、鼻を突き抜けて脳まで揺らす甘い匂い────
プツンッ
オラァ!(ズボッ)
「ンニャァァァァァァァァァ!?」
ほう。尻尾をどうやってくっつけてるのかと思ったら、後ろの穴に突き刺してたのか。
「ぉっ♡ ほぉっ?」
……う~ん、やっぱり尻尾はあった方がいいな。戻すか。
エイッ(ズニュッ)
「おっほぉぉぉぉぉぉ!?♡♡♡」
コラコラ、ダメだろ。今のレイアは猫なんだから、ちゃんとニャンニャン鳴かないと。
「ど、どうじていきなり……♡」
どうして?
だってその為に俺の部屋で待ってたんだろ?
そんなにエロい格好して、発情期の身体を慰めてほしかったんだろ?
いいぞ。好きなだけ可愛がってやるからな。
「な、なんか怒ってる……?」
い~や? 怒ってはないよ。
ただ、俺の聖剣がイライラしてるだけ。
レイアの鼻水でビチョビチョだし、服は脱ぐかな。
言ってたもんな? 全裸で寝ればいいってさ。
「うそ……、気絶してた時よりおっきい……」
やっぱり俺が気絶してる間にイタズラしてたな?
悪い猫には、たっぷりワカラセしてあげないとなぁ?
「お、お手柔らかにお願いします……」
無理です(ニッコリ)。
その晩、宿屋の建物全体に響き渡るほどにレイアが張り上げた嬌声は、宿泊者のほとんどの安眠に多大な影響を与えたのだった。
レイア ・・・遺伝子とか人類の未来とかどうでもいいからリュートが欲しい。
リュート ・・・馬鹿なりにアレコレ考えてたけど、もういいや好きにやろう。
アンズ ・・・メイド服を見つけてwktkしてる。
ユーリ ・・・いろいろ満足して爆睡中。
レオナルド・・・様子がおかしい。
ジイ ・・・急な来訪者に応対中。
濡れ場シーン集を統合しますか?
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