英雄ヘクトールはとてつもなく強い。
それを彼女は分かっていたはずであった……しかし、想定外のクラスで来た為、予想よりもはるかに強くなっていた。
……そもそも、既に4回ほど致命打を食らってしまっていた。
「おや、まだ降伏しないのかい?別に恥ずかしいことじゃないだろう?……その目からはまだやるって言う意志を感じるよ。ま、いいさ俺だって年端も行かねえ女の子をいたぶる趣味は無いからな、すぐに終わらしてやるさ」
「……はは、言いやがりますね!……確かに致命傷は食らってしまいましたが、貴方の動きや能力はある程度わかりましたよ……いてて……」
「ほう、なら……本気を出さしてもらおうか…………我が復讐。それは聖杯の力であの時……アキレウスに負ける前に戻るという願いのため、お前を倒す。」
ヘクトールの構えが変わる。デュランダルに赤黒いエネルギーが集まる。
そしてその光に呼応するように肉体が波打つ。
「一撃で終わらせてあげよう!……我が絶世の剣は消して折れぬ救世の力なり!」
「
本来の一撃とは違いこれはアキレウスを倒すための力。
本来有り得ぬ勝利をもぎ取る為の
例え、相手が不死であろうが、関係なく相手の弱点を確実に貫く因果の逆転の一撃。
──────当然普通の人間の肉体など木っ端微塵であり、回避も防御も不可能な英雄の一撃
「……完璧だよ。英雄殺しの恨みの籠った宝具。だけど宝具なら潰せる。」
私は不敵に笑みを浮かべながら、腕をだらんと下ろす。
はたから見たら諦めてしまったように見えたかもしれない。
されど、彼女は違う。
構えないことを構えとするスタイル。
天衣無縫の構えとでも言うべき全ての力に反応する攻撃姿勢。
私は唱える。「
それは宝具に対する最強のカウンター宝具。
それのアレンジバージョン。本来フラガラックは構えが固定されるが、彼女はそのシステムを自分なりに改造した。
そしてその結果、ヘクトールの宝具は発動前に破却される。
結果を受けて、結果が出る前にその結果をなかったことにする宝具。
その力はヘクトールに大打撃を与える。
本来のフラガラックは一撃で相手を殺すことで結果を逆転させてなかったことにするが、今回のは少し違う。
──────本来とは違い、これは魔力を相手に押し返す方式であり、すなわち自爆させて結果を改竄するという技。
つまり相手が硬すぎると倒せないことがある。
「……やるねえ……ぜぇ……はは……まさか自分の力をそっくりそのまま逆流させられてしまうとは…………おじさんは少し驚いたよ……。」
「さすが、ギリシャの英雄。ヘクトール、今の一撃でも死なないですか……。ま、時間切れなんですけどね。」
そう、時間切れである。
「ん?……まだ俺はボロボロではあるが、まだ戦えるが?……まて……なんで夜になっている?!そんなに長く戦ってなどいないはずだぞ!」
「だから言ったでしょう。時間切れです……と。さあ、もうすぐ夜がやってきますよ。……良い子は皆寝る時間です。」
その言葉を合図にヘクトールの身体が闇に包まれ始める。
「……なんだ……!?くそっ身体が闇に溶ける?!だと…………」
「
どぷん。という音とともにヘクトールは闇に消えていく。
それは呆気ない幕切れであった
寝るの楽しい。