私だって、手加減はしていない。
いつだって私は本気だ。だからこそ言う、相手が悪すぎると。
「ちっ……マジですかあれ、簡単な要塞程度なら落とせる一撃なのに?!」
私の一撃を食らった巨人は、ニヤリと笑いこちらへとゆっくりと歩いてくる。
下駄な笑い顔をして、弱者を踏みにじる時の快楽をもう一度味わうために。
私とて、英霊なら問題なく倒せる。
しかし、あれは神なのだ。はるか昔、ティターン神族と呼ばれた、古き神々なのだ。
その血を引いている巨人。末裔であろうと、神は不変。
故に私はかなりの苦戦を強いられている。
私は考える。
あの肉体の内部にダメージを与えないと、倒しきれない。と、……しかもゲイ・ボルグですら弾くあの肉体をどうやって傷つけて倒すか。
──────巨人はその武器を振りかぶる。
それは、タルタロスの岩壁。それを荒削りしただけの棍棒。
されど、私はその叩きつけられた際の衝撃波で吹き飛ばされる。
全身がすくむ。
あれは、英雄達ではどうしようもない代物。しかも私を助けてくれるヴォイドも、セミラミスもいない。
……だからといって、あれを放置して逃げることなど出来ない。そう考えていた私をさらなる絶望が襲う。
巨人の肉体が機械へと変貌し始めたのだ。それは機神と同じ力。
私の目の前でその姿は全く異なる異質な巨神兵へと変貌する。
そして、その巨人は、いや巨神兵はものすごい速度で私に拳を打ち出す。
そう、打ち出したのだ。
「あ………………」
私の、相手から見れば非常に華奢な肉体は拳によって難なく吹き飛ばされる。300キロ以上の速度で彼女は壁にめり込む。
息付く暇もなく私に拳のラッシュが撃ち込まれる。
1発2発……どんどん加速する拳に私は押し潰される
もはや息をすることも、魔術を使うことも叶わぬ程の高速の攻撃。幸い、回帰の魔法により私はすぐに元通りになる。
しかし、逃げることが出来ない。
私はだんだん視界が真っ暗になっていくのを感じていた。
あ、やばい……ダメだ
そんな私の叫びは拳の撃ち込まれる音にかき消される。
徐々に私のからだから力が抜ける。辺り一面に血が飛び散る。
既に私の肉体は原型を留めていなかった。
私は、肉体を戻すことでただのサンドバッグへと変化してしまっていた。
何も出来ない。
──────数刻の後、飽きたのか私は引きずられながら何処かへと運ばれてゆく。
私はどうなってしまうのだろう。……。
──────
私は、走っていた。
そう、私はあの巨人と出会う前、即ち、ヘスティアと別れてすぐの時間まで時を巻き戻した。
あの時と同じことは二度としないと誓って。
まさかの、初敗北。ま、彼女は二度同じ手は踏まない女ですので