街の人々が徐々に活動を始めた頃、あなた達は宿屋を出る。キュオンとカッツェはまだ来ていない様だった。
「……不思議ね。いつもの様にあなたの傍にいるだけなのに、世界が全然違って見えますわ」
そう言ってあなたに寄り添うネージュ。その目からはあなたに対する「愛」が確かに感じられた。
「ねえ、ロッド。私はこれまで通り、表ではネージュ・ハウゼンとして振舞うわ。だけど、そうじゃない時は……あなたのお嫁さんとしてたくさん愛してくださいましね?」
―――やばい。自分の嫁が超かわいい。
あなたは心の中で悶えつつ当然だと頷いた。
「あらあら、朝からお熱い事」
とそこへ、カッツェがキュオンを連れ立ってやって来た。
「おはよー、二人とも!」
「え、ええ。おはようございます、キュオンさん」
「うふ、お姫様ったら、昨日と比べて雰囲気が変わった気がするけど、一夜の間に何かあったのかしらぁ?」
「な、何でもありませんわ! 変な詮索は止めてくださるかしら、カッツェ・コトルノス!」
「はいはい。ごめんなさい。それと、アタシの事はカッツェでいいわよ」
挨拶もそこそこに、あなた達は近くの店で朝食をとりながら今後の予定を話し合う事にした。
「それで、あなた達はこれからどうするつもりなの?」
「とりあえず、アルクオンを捜索しつつ私の故郷の城を目指すつもりよ」
「なら途中でナンブ家のお城を訪ねたらどうかしら? この街を出て南東の橋を渡れば見えてくるはずよ。ロッドちゃんは初めてかしら? タケトリ城のフジサクラって凄く有名でね。もうとっても奇麗なのよ」
「カグラアマハラね。確かにド綺麗な国でしたわ。最も、私があの国の方に最後にお会いしたのは十年以上前でしたけど。サヌキ皇とそのご息女にね。あの時は小さなお姫様でしたけど、今では立派に成長されているのでしょう」
確かに、ネージュの言う通り驚くくらい”立派”に成長しているお姫様の姿をあなたは思い浮かべた。
「キュオン、あなたは昨日言った通りに動いて頂戴ね」
「わかってるって。そういうわけだから、改めてよろしくね、ロッド、ネージュ」
「ええ、こちらこそ。……けど、これからまた戦艦の中を通って外に出るのは面倒ですわね」
「あら、そんな所から出なくても街の南側にあるエレベーターを使えばいいじゃない」
「はぁ!? そんなのありますの!?」
「当たり前でしょぉ。旅人や観光客、品物の卸業者に一々中を通らせてたら大変だもの。……その様子じゃ知らなかったみたいねぇ」
「わかるわけありませんわよ……」
がっくりと肩を落とすネージュに、あなたはおかげでキュオンと出会う事が出来たからよかったじゃないかとフォローをいれる。
「うんうん、そのとーり! ロッドはよくわかってるねぇ♪」
フォークの先をあなたに向けながらドヤ顔するキュオン。そういえば、昨夜ネージュは彼女に催眠をかけたと言っていたが、今の所不自然な点は見受けられない。
「へえ、ずいぶんロッドちゃんの事が気に入ったみたいね、キュオン?」
「うん。だってバナナ頭からキュオンを守ってくれたし、普通にいい人だもん。……それに、なんかロッドを見てると胸がポカポカするというかキュンキュンするというか……よくわかんないけどいい気持ちになるんだぁ」
「……アレは私の催眠と関係ありませんわ。……ふふ、やっぱり彼女もお嫁さん候補にしちゃいましょうか?」
ネージュはそっとあなたに耳打ちした。催眠でないのならここまで好意的な態度を向けられる理由は何なのか。あなたにはわからなかった。
「あらあらまあまあ♪ 素敵じゃないキュオン。競争率高そうだけどアタシは応援してるわねぇ」
「? よくわかんないけど、わかった!」
そうして、朝食を済ませたあなた達はカッツェにエレベーターまで案内してもらい、それを使ってマーカス号の外へと出たのだった。
「今から出ればおそらくお昼前には着くと思うわ。いってらっしゃーい」
ゲームではあっという間にたどり着く距離でもリアルではそうはいかない。あなた達は約二時間ほどの道のりをひたすら歩き続けた。
そして、長長と続く橋を渡り終えたあなた達の見上げる先に、信じられないほど巨大な桜の木と、その木を囲う様に築かれた街の姿があった。
「ふわぁ、いつ見ても凄いなぁ。花びらがこっちにまで飛んできてるよ」
「世界が融合した影響かしら? 海に面した場所になっているのね。ロッド、あの木がフジザクラ。そして根元に見えるあのお城がタケトリ城よ」
あなた達は花びらの舞う中、カグラアマハラへと足を踏み入れた。前世の影響か、「和」が溢れるその街並みをあなたは一目で気に入った。
「久しぶりに訪れたけど、やっぱり独特な雰囲気の街ね。こういうのも悪くないですけど」
「それで、どうするの? すぐに王様に会いに行くの?」
「そうしたいけれど……簡単に会えるものかしら?」
「それなら大丈夫だよ。ええっと……。あ、いたいた! おーい、シロちゃーん!」
ネージュに疑問にあっけらかんと答えたキュオンは商店の前に立っていた獣人の男性に手を振る。男性の方もこちらに気づいたのか軽く手を上げた。
万屋を営んでいるというその男性は士狼と名乗った。この街でも有名な店でキュオンもよく牛乳を買いに来ているとの事である。
自己紹介の際、ネージュが帰還した「妖精族」と聞いた士狼はかなり驚いていた。それだけ行方不明だった彼女達が戻って来た事は衝撃的だったのだろう。
それはそれとして、あなた達は士狼に王様に会うにはどうすればいいのか尋ねた。
「ふむ……。それならば「裏玄武」の頭領に頼むのが早いだろう」
「ウラゲンブ……とは何ですの?」
「この国の守備隊ともいえる忍者部隊の事です。その裏玄武の頭領である乙音殿は楠舞皇、そして姫様である神夜様の身辺警護をしている方なのです」
「ウラゲンブの人達にはフォルミッドヘイムの復興にも協力してもらっててとっても助かってるんだよ」
「そうでしたの。ですが、その様な立場の方においそれとお会いできるものなのでしょうか?」
「それならば問題ありません。何せ……乙音殿はここにいますから」
士狼が店の入り口へ目を遣ると同時に、中から一人の女性が姿を現した。彼女こそ、たった今話題となっていた乙音である。
黒い長髪に黒い鉢がね。そして白と紫で彩られた忍衣装。まさしくTHE忍者である。もっとも、あなたの視線は肩からバックリと開かれた空間から覗く鎖帷子と、それに包まれた彼女の胸。そして深々とスリットの入ったミニスカートの様な着物から覗く太ももに注がれていたが。
「ん?」
乙音の視線がこちらに向きそうになったのであなたは慌てて視線をそらした。
「ええ!? どうしてウラゲンブの頭領がこのお店に!?」
「夕飯の材料の買い出しだ。部下に任せていてはいい野菜が手に入らんからな」
「乙音殿、聞いていた通りだ。後はお願いしても?」
「ああ。……では、ネージュ・ハウゼン様。ここからはこの乙音がご案内いたしましょう」
こうして、あなた達は乙音の案内でこの国の皇である楠部 讃岐の元へ向かうのだった。そこで互いの再開を喜び合うネージュと讃岐皇だったが、そこで思いついたようにこうもちかけて来た。
「そうだ。せっかくこうして再会が叶ったのだ。ぜひとも娘の神夜にも会ってやってはくれぬだろうか?」
「娘というと……。あの時の子ですわね。確か……今から十三年か四年くらいにナンブ皇がエルフェテイルを訪れた際にお会いした覚えが……」
「うむ。だが、妖精族と我々とでは成長速度が違う。成長した娘の姿に、きっとあなたも驚くだろう」
「まあ、それは楽しみですわ。それで、カグヤ姫はどちらに?」
「娘は儀式の為に「使者の間」にいる。……ここ最近不死桜が妙にざわついておってな。それを抑えるためだ」
「では、その「使者の間」に行けばよろしいのですね」
「案内は乙音にさせよう。では、頼むぞ乙音」
「御意。……では、さっそくご案内いたします」
再び乙音の案内の元、あなた達は不死桜の中へ足を踏み入れる。巨木の中に立ち並ぶ鳥居をくぐった先に小さな祭壇の様なものが確認できた。
「「使者の間」にはこちらから行けます。準備はよろしいですね」
「ええ。お願いします」
「承知しました。……予め申し上げておきますが、「使者の間」はこの木の頂上に位置しています。故にそれなりに険しい道のりが待ち受けていますのでお覚悟を」
「……え?」
そして、乙音の言う通り、木の中をひたすら上り続け、ようやくあなた達は「使者の間」にたどりついた。
「ぜえ……ぜえ……。よ、ようやくたどり着きましたわね」
「ぷぷぷ~。情けないぞお姫様~」
「あなたは途中からずっと箒に乗ってたでしょうが!」
「落ち着かれよネージュ姫殿。……あちらにいらっしゃるのが神夜様です」
そこには宙に浮かぶ巨大な勾玉の様な物体を背に、一人の女性が立っていた。
「―――ようこそお越しくださいました。異国の友人よ。私は楠舞家の姫……神夜です」
彼女こそ、当時のユーザー達の心と股間をワシ掴んだ無印版ムゲフロのヒロインにして、セクシー担当、スケベの化身と散々に称される楠舞 神夜その人である。
乙音どころかネージュすら凌駕するその胸のサイズは某キャラの分析によると100前後と巨乳を超える爆乳である。そして、その乳やほっそりとした腰、そして安産型の尻を包みながら、激しく動いたら色々ポロリしそうな超絶に際どい衣装は「楠舞家の正装」と呼ばれている。そう……あれが正・装なのである。
「おいーっす、お姉ちゃん元気そうだね」
「まあっ! あなたはキュオンちゃん!? それに、そちらの方はもしかして妖精族の方なのでは!?」
「そ、そうですが……。え、マj……本当にあなたがカグヤ姫なのですか?」
「はい、そう名乗ったばかりなのですが……」
「十四年……十四年ですわよ? 当時はホントに子どもボディだったはずなのに……それが、こんな猛牛ボディになっていたなんて……!」
食い入るように神夜の胸を見つめるネージュ。その後ろでこっそりあなたも同じ様に彼女の胸に目線を向けた。
大胆というレベルではないほどに曝け出された上乳と、その中心に深々と伸びる谷間。あそこに挟まれればきっと天にも昇るほどの気持ち良さを味わえるのだろう。
エロい妄想に耽っていたあなたは、傍に佇む乙音から意味深な視線を向けられている事に気づかなかった。
「……ネージュ姫殿。お戯れはそのあたりで」
「そ、そうね。……オホン。お久しぶりです、カグヤ姫。私はネージュ・ハウゼン。今日はこちら側に帰還したご挨拶の為にお邪魔いたしました」
ネージュは自分の身に起きた事を神夜に話した。
「その様な事が。……よくお戻りになられましたネージュさん。めでたい事極まりないですね」
「まあ、私からしたら三年くらいの年月でしたからあっという間ではありましたけどね。その間に、このエンドレス・フロンティアも色々大変だったみたいですけど」
ネージュの言葉に、神夜は図星とばかりに顔を伏せた。
「そうですね。現にこの不死桜もここ最近様子がおかしいんです。まるで何かを恐れているみたいに」
「何か意味深ね……」
その時、一陣の風と共に一人の忍者が姿を現した。彼曰く、何者かにより城下町が襲われているとの事。さらに街だけではなくこの不死桜にも侵入を許しているらしく、そもそも敵の侵入経路すら不明だそうだ。
神夜は楠部皇を守るため城に戻るよう乙音に指示を出す。あなた達は神夜と共に不死桜を降りる事を決めた。
「せっかくの再会を邪魔した不届き者はド突きまわして差し上げますわ!」
「まあ、オルケストル・アーミーとしてここで逃げるわけにはいかないしねー」
「ネージュさん。キュオンちゃん……」
二人がカッコよく決めているので、あなたもそれに倣う事にした。拳を合わせ、必ず神夜を守るとあなたは宣言した。
「ありがとうございます。ええっと、その……どちら様でしょう?」
そういえば自己紹介してなかった……。せっかく決めたつもりだったが、締まらないオチがついてしまったあなたは改めて神夜に名乗ったのだった。
さて、あなた達は登りとは違うルートで不死桜を降りる事になった。道中では木肌に広がる蔦を掴みながら上り下りする場所があり、そこであなたはマーカス号の時の様に女性陣の下着を覗き見るラキスケに遭遇したりしながらひたすら地上を目指す。
「はーい。お久しぶりね、牛姫様」
その途中、あなた達の前にカッツェが現れた。彼は乙音に頼まれてあなた達の救援に来たそうだ。
「それは心強いです。よろしくお願いしますね、カッツェさん」
頼もしい援軍に喜ぶ神夜にあなたも頷く。実はカッツェはあなたにとってムゲフロの男キャラの中でも結構好きな部類に入っていたりする。オネエキャラとして振舞っていたと思ったら、シリアスにはキッチリ決めるそのギャップが気に入っているのだ。
さらに、ムゲエロではフラグを立てる事で彼も攻略する事が出来るのだが、それはあなた次第だ。
チラホラと湧いてくる雑魚敵を片付けながらあなた達はようやく不死桜の入口へたどり着く。そこへ新たな人物が立ちはだかった
「……いつまで経っても制圧の報告が無いと思ったら、アンタ等が邪魔してたのかい?」
「何者です?」
「あたいはヘラ。
ヘラと名乗った女性はあなた達一人一人の顔をねめつける。
「その恰好……。やっぱりあなた達、アグラッドヘイムね」
「あら、それってあなた達が向こうで戦ってたっていう?」
「ええ。ここに来るまでに戦って来た相手もおそらく同じでしょう」
「詳しいねアンタ……。って、おや? そこにいるのはもしかして……」
ヘラはあなたの顔に視線を固定したままポンと手を叩いた。
「やっぱり! アンタ、ロッド・ロールだろう! まさか「修羅の恥さらし」にこんな所で会うとはねぇ」
「あー、それバナナマンも言ってたやつだよね?」
「どういう意味かしら、お嬢さん?」
「なんだ、アンタ等知らないのか? その男はあたい等が戦っていた「修羅」って連中の中でも最低の雑魚として有名だったのさ。あたいも戦場で一瞬だけ見たけど、その時のソイツの情けなさったらなかったよ。あはは、思い出すだけで笑えてくるわ」
ロッド・ロールの弱さは修羅の敵対者達にも有名だったようだ。しかし、ヘラの口から語られたロッドの過去にネージュを除いた面子は首を傾げる。
「えー、ロッドは強いよ? キュオンは初対面の時に戦ったけど、早すぎて目が追い付かなかったもん」
「そうねぇ。ここにたどり着くまでにも何度かあなたの配下達と戦ったけど……ほとんど彼に瞬殺されてたものねぇ」
「あはは……。おかげで私達の出番あんまりなかったですけど。……けど、私の目から見てもロッドさんは相当な実力者だと思います。あなたが戦場で見たって言うのは別の人なんじゃ……」
「はあ? そっちこそ何言ってんだい。……まあいい、そこまで言うのならその実力とやらを見せてもらおうじゃないか!」
ヘラが戦闘態勢を取ると同時に、物陰から複数の敵が姿を現す。必然的にあなた達は分散しての戦闘を強いられる事となった。そして、あなたの相手はヘラ・ガンドである。
「へえ、本当にあたいと戦うつもりなんだアンタ? 生意気だね。雑魚はお呼びじゃないんだよ!」
ヘラは高い魔力を活かし様々な魔法を操る魔族である。天に向かって伸ばした彼女の両手の間に魔力球が生まれ、その大きさを瞬く間に増やしていく。
「そら、受け止められるもんなら受け止めてみなぁ!」
放たれた魔力球が一直線にあなたに迫る。しかし、心配する必要はない。今のあなたは最強なのだから。
あなたは呼吸と共に腰を深く落とす。そして、ゆっくりと引いた右腕を魔力球に向けてただ真っすぐに突き出した。
―――瞬間、魔力球は弾ける様な音と共に消え失せた。あなたの視線の先には、愕然としたヘラの姿がある。
「馬鹿な……。あたいの魔力球があんなヤツに……!?」
よほどのショックからか微動だにしないヘラに向けて、あなたはお返しとばかりに気弾を放った。ヘラの魔力球に比べ小さい弾だが、大きさ=威力という計算は当てはまらない。
「チィッ……!」
その気弾に込められた覇気の強さに気づいたヘラは寸での所で回避した。気弾はそのまま射線上にあった木の瘤を直撃、跡形もなく消滅させた。
「ロッド!」
そこへ、敵を片付けたネージュ達が合流する。辺りを見渡せば、もう残っているのはヘラだけだった。
「……まさか、偵察隊とはいえ、ここまで簡単にやられるなんてね。そしてロッド・ロール。あたいの魔力球を拳だけで消し飛ばしたどころか、今の馬鹿みたいに強い気弾……。アンタ、一体何があったんだ……」
「まあ、まだお判りにならないのかしら?」
「どういう意味だい?」
「ロッドは本当の実力を隠していたのよ。あなたや他の修羅の方々はみんな「修羅の恥さらし」という彼の演技に騙されていたに過ぎませんわ」
「ッ……!? まさか、あの頃から周囲を欺いていたって言うのかい!?」
「現に、あなたはロッドを舐め腐っていたでしょう? それこそが彼の作戦。油断しきったあなたが本気になったロッドに敵うはずがありませんわ」
ドヤ顔と共に胸を張るネージュ。その勢いでブルンと揺れる双丘を見てヘラとキュオンの目から一瞬光が消えた。
そして、あなたは盛大に勘違いされていた。
「は、ははは……いやあ、参った参った。まさか、「修羅の恥さらし」にそんな秘密があったなんてねぇ。いいさ。ロッド・ロール。たった今からアンタはあたい等の”敵”さ。早く帰ってヴァナーの姉貴とダンナに報告しないとね」
「あら、もう終わりなのかしら?」
「ふん、調子に乗るなよ。次に会った時は油断なんかしないからな」
そう言い残し、ヘラは去って行った。いつの間にか周囲に倒れていた配下達も消えている。
「姫様、ご無事ですか……!」
そして入れ替わる様に乙音があなた達の前に再び姿を見せた。
「師匠! 城下町の様子は?」
「敵は全て撤退しました。幸いな事に怪我人、死者、共にいません」
「そうですか、よかった。……では、すぐにお父様にお話しなければなりません。行きましょう」
「御意」
あなた達は再び楠舞皇に謁見し、不死桜内での出来事を伝えた。
「……なるほど。しかし、アグラッドヘイムか。聞いた事は無いな。なぜそやつ等が不死桜を狙ったのか、見当もつかぬ」
「その理由を確かめるためにも。お父様、私はネージュさん達と一緒に行きます」
「うむ。楠舞家のしきたりである全国行脚の旅もまだだったしな。この機会に世界を見て来るがいい神夜」
「はい! ……というわけでみなさん、よろしくお願いしますね!」
こうして、正式に神夜を仲間に迎えたあなたは次の目的地を目指そうとしたが、そこへ楠舞皇から待ったがかかる。
「すでに日も暮れている。今日はこの城で一泊していくといい」
「よろしいのですか?」
「不死桜を守ってくれた恩人をそのまま放り出すなど出来はせんよ。後で夕食も用意させよう」
「わあ、太っ腹ぁ! なら牛乳が飲みたいでーす!」
「キュオンさん。こんな時まで牛乳なんて……」
「ならば楠舞印の特製牛乳を用意しよう」
「あるんですの!?」
「はい! とっても美味しいって好評なんですよ」
「食事もいいけど。アタシは温泉に入りたいわねぇ。カグラアマハラの温泉っていえば入るとお肌がツルツルになるんでしょ?」
にわかに騒がしくなる謁見の間。どうやら今晩の食事は豪勢なものになりそうだとあなたは期待したのだった。
数時間後、期待を超える夕食を堪能したあなたは用意された部屋の中でぼんやりと寝ころんでいた。
瞼が少しずつ重くなって来たころ、あなたは誰かが部屋に近づいて来る気配を感じ取った。その気配はそのままあなたの部屋の敷居の前で立ち止まる。
「……まだ起きているか、ロッド・ロール」
意外な人物の声に面喰いつつ、起き上がったあなたは襖をスライドさせる。するとそこには声から予想していた通りの人物……乙音が立っていたのだった。
さて、あなたの部屋に乙音が訪ねて来た頃と時を同じくして、ネージュは神夜の部屋で二人きりの女子会を行っていた(キュオンも誘うつもりだったが、既に夢の世界に旅立っていた)。
「ええ!? じゃ、じゃあロッドさんがネージュさんのお婿さんなんですか!?」
過去の出会いから今日までのお互いの身の上を話し合ったりしている内に、ふと興味が湧いた神夜がネージュとロッド(あなた)の関係を聞くと、ネージュはあっけらかんと「夫婦」と答えたのだ。
「い、いつ結婚したんですか!? 式は!?」
「正式な結婚式はまだあげていませんわ。というか、プロポーズされたの昨日ですし」
「そうなんですk……昨日!?」
「今まで全然そんな素振りも見せてくれなかったのにいきなり告白されてしまったのよ。……けど、心と体を何度も何度も愛してくれた彼のド熱烈なプロポーズにはもう「はい」としか言えませんでしたわ」
赤く染めた頬に手を当てながら幸せオーラを出すネージュに苦笑する神夜。しかし、今の言葉の中にとんでもない部分があった事に気づく。
「ネージュさん。あの、今、心も体もって言いましたよね? それって……」
「SEXよ」
「せっく……どういう意味でしたっけ?」
「ああ……。抱かれたと言った方があなたにはわかりやすかったかしら」
「抱っ……!?」
まさかと思っていた事が的中し、神夜の顔が真っ赤になる。
「私の処女マンコをたくましいチンポで犯しながら耳元で囁くの。「好き」「愛してる」って。私が嫌、許してって断ろうとしてもそんなの許さないと言わんばかりに何度も何度も奥を突いて来たわ。その度にどんどん幸せな気持ちになって来て、最後は子宮口にチンポを押し付けながら熱々のザーメンをびゅるびゅる出し……」
「わー! わー! 止まって! 止まってください! 破廉恥です! 破廉恥極まりないです!」
昨晩の情事を赤裸々に語りだすネージュを慌てて止める神夜。
「あら、私としたことが。ごめんなさいね、カグヤさん。今までこういう話をする相手がいませんでしたからつい……」
「そ、そうだとしても。ちん……とか、まん……とか直球すぎますよぉ」
「ふうん。そういう言葉の意味はご存じなのねぇ。あんなに厳格そうなお父様をお持ちだから男性とそういう経験なんて皆無と思いましたけど」
「あ、甘く見ないでください。私にだってそういう相手はいますもん!」
小馬鹿にされたと思ったのか、答えなくてもいい事を答えてしまった神夜。瞬時にハッとなったが時すでに遅しである。
「あらまあ、そうでしたの? それは失礼しましたわ。どんな方ですの? 姫であるあなたの相手なのですからそれなりの身分の方だとは思いますけど」
「名前はハーケンさん。人呼んで「さすらいの賞金稼ぎ」です」
彼女の言うハーケンとはもちろん無印版ムゲフロの主人公ハーケン・ブロウニングの事である。原作のEDで二人がどうなったかは定かではないが、このムゲエロ世界では男女の関係になっているようだ。
「……あなた、騙されてませんわよね?」
訝し気な目で神夜を見るネージュ。すでに神夜が天然ポワポワ娘であると見抜いている彼女は頭に浮かんだ可能性をつい口にしてしまった。
「ハ、ハーケンさんはそんな人じゃありませんよ? とってもクールでカッコいい人なんです」
「まあ、あなたが納得しているのならこれ以上は言いませんわ。では、そのハーケンとかいう男があなたの猛牛ボディを好き勝手に出来るという事ですわね」
「(その呼び方気に入ってるのかな?)そ、そうですね……。ネージュさんがぶっちゃけちゃったから私もそうしますけど。……私はハーケンさんと結ばれました。もちろん、あの人が初めてでしたよ? それからは、たまにふらっと会いに来てくれた時に何回か抱いてもらいました」
「え、それって普通に最低じゃない?」
それではヤるために会いに来ているだけではないか。ネージュの中でハーケンの評価がガクッと落ちた。
「仕方ないんです。ハーケンさんはツァイトっていう戦艦の艦長さんでもありますし、賞金稼ぎとして色々な所を旅していますから」
納得している風に言っているが、それが強がりである事をネージュは見抜いた。この時、彼女の中にある考えが浮かんだ。
「でもでも! その分、会えた時には凄く愛してくれるんですよ。ハーケンさんって頭もいいから色んな言い回しで私を褒めてくれながら抱いてくれるんです」
「なるほど。それで、あなたも満足していると」
「それは……もちろんです」
言い淀む時点でダウトである。神夜は心で満足しているつもりでも、体の方は欲求不満なのだ。事実、ハーケンとのSEXでは彼女が絶頂を迎える前にハーケンが彼女の膣の快感に我慢できずに発射して終わりがいつものパターンとなっていた。
「……ねえ、カグヤさん」
神夜が無意識に溜め込んだ体の疼きを察したネージュは優しい目で
「色々な言い回しって、言い換えれば回りくどいとも言えるわ。私なら、そんなキザなセリフよりもストレートに愛していると言われる方が心も体も満たされるわ」
「それは……」
「だからね、カグヤさん。もし……もしあなたがもっと満たされたいって思うのなら、後で私の部屋に来てくださるかしら? その時は、きっと新しい世界をお見せできると思うわ」
そう言い残し、ネージュは神夜の部屋を後にした。残された神夜は座布団に座ったまま頭の中で彼女の言葉を繰り返していた。
「……違うもん。私はちゃんと満たされてるもん」
気づけばネージュが退室して二時間が経過していた。すでに城内のほとんどの者が寝静まった時間の中、神夜は一人城の廊下をゆっくりと歩いていた。
(私、何やってるんだろう……)
そんなつもりはない。そう思っていても、足は目的地……ネージュの部屋に向かって動き続ける。
(……そう。これはネージュさんの為。私が来ると思って何か準備してくれているのなら、行かないと失礼だもの)
断じてネージュの言う「満たされる」為ではない。しかし、彼女は気づいていなかった。満たされている……つまり、ハーケンとの性交に本当に満足しているのなら彼女の足がネージュの元へ向かうはずがない。こうして廊下を進んでいる時点で不満だと証明しているのだ。
(ここを右に曲がれば、ネージュさんの部屋まであと少し)
突き当りを右に曲がった先にネージュの部屋が見えた。けれど、その前にある別の部屋の襖が少し開いている事に神夜は気づいた。
(あそこは……確か、ロッドさんが休んでいる部屋)
ネージュの夫だという青年の姿を思い浮かべる。自己紹介から感じた印象は、真面目そうな人。そして、初心な人だと神夜は思った。不死桜から下りる道中、彼の視線が何度か自分の胸や尻に向けられている事に彼女は気づいていた。けれど、自分が目を向けると、慌てて目を反らす。その反応が楽しくてわざと胸を強調したポーズを取ったりして揶揄ったりした事を思い出し神夜はクスリと微笑む。
お目付けの”鬼姫”や、ハーケンの部下である”毒舌アンドロイド”その他の様に胸の悪口をいう事もなく、かといっていきなり求婚してきた”牛”の様に真正面から「揉ませろ」という事もない。これまでのどんな相手とも違う彼の反応は新鮮だった。
(ふふ、少しくらいは見逃してあげちゃおうかな)
しばらくは何も言わないで、ある日いきなり揶揄ってみても面白そう。そんな楽しい計画を思い浮かべていた神夜の耳に何かが聞こえて来た。
「……ッ♡ ……ぃ♡」
(……誰かの声?)
その声はロッドの部屋から聞こえて来ていた。そして、近づくにつれ、神夜の耳に正確な音が届く。
「はあっ……ん……♡」
(え、この声って……!?)
幼い頃からずっと聞いて来たその声を聞き間違えるはずがない。それは間違いなく乙音のものだった。どうしてロッドの部屋から彼女の声が聞こえるのか。しかも……あんなに甘い声色で。
止めなさい。覗いては駄目。頭の中にそんな警鐘が響くが、神夜はとうとう襖の間から中を覗き込んだ。そして……見てしまった。
(え、ええ……!?!?!?)
彼女の目に映ったのは、ネージュの夫であるはずの青年にまたがり、いやらしく腰を振りながら恍惚の表情を浮かべる師匠の姿だった。膝に手を置きながら上下に激しく動く彼女の秘所には遠目からでもわかるほどの巨大な剛直が突き刺さっていた。
(う、嘘……。おちんちんってあんなに大きくなるものなの!?)
あまりに衝撃的な光景に頭が追い付いていないのか、他に追求すべき点を全て放り投げて神夜が抱いた感想はそれだった。
彼女の混乱はさらに続く。
「ん……♡ ほら、どうした
(師匠!? 旦那様ってどういう事ですか師匠!?)
「おっ……♡ ほっ……♡ そ、そうだ。やれば出来るではない……んあぁ♡」
下から力強く突き上げられ、低音声を漏らしながら喘ぐ乙音。快楽を貪る彼女の様は、無理矢理犯されているようには見えない。ならば、乙音は望んで彼に抱かれているのか?
わからない。何もかもがわからない。神夜はどうすればいいのかわからなくなった。今すぐ部屋に飛び込んで二人を止めるのか。それとも、全て見なかった事にしてネージュの部屋に向かうのか。
そして、彼女が無意識の内に選んだのは二人を止める事でも、その場を離れる事でも無く……自らの胸と股に手を伸ばす事だった。
ハーケン好きの方には悪いと思っています(だが私は謝らない