神夜を夫の寝室へ見送った次の日の朝、まだ外が明るくなり始めたばかりの時間にネージュは起床した。
「さて……どうなっているかしら」
向かうのはもちろんロッドの部屋である。ピシャリと閉められた襖を開けた瞬間、濃密な男女の臭いがネージュの鼻に突き刺さった。
「……あらまあ♡」
「ちゅっ♡ ちゅっ♡ れろっ♡ しゅきぃ♡ しゅきでしゅロッドしゃん♡」
「じゅぼっ♡ じゅぼっ♡ んあ……♡ ふふ、お前は本当に絶倫だな旦那様♡」
白濁と汁で塗れた布団に横たわる夫と熱い口づけを交わす神夜と、彼のペニスを喉奥まで咥えこむ乙音の姿に、ネージュは満足げに口を吊り上げる。
美女二人を一晩で堕としたロッドはネージュの姿に気づく。
「三人ともおはようございます。ですが、そろそろ止めておかないと侍女の方あたりが訪ねてくるかもしれまわせんわよ?」
神夜と乙音を明るくなるまで抱きまくったあなたは部屋を訪れたネージュの指摘に慌てて二人を抱き起す。そして、チート能力で自分達の体や布団や畳に飛び散った精液や愛液をキレイさっぱり消し去った。
びっくりする神夜達だが、ネージュに「
ひとまず解散する一同。それから少ししてネージュの予想通り侍女があなたを起こしに来たので、あなたは今起きた風に装って彼女の後について謁見の間に向かった。
謁見の間には讃岐皇を初め他のメンバーも揃っていたが、何故か神夜の姿が見えなかった。
「すまぬ。どうやら神夜は風邪をひいてしまったようなのだ」
神夜を起こしにいった侍女いわく、声がひどくガラガラでやけにぐったりしている様子から風邪をひいてしまったのではとの事らしい。
もちろん、声がガラガラなのは一晩中嬌声をあげ続けていたのが原因だし、ぐったりしているのはあなたに抱きつぶされた結果なのだが、そんな事は口が裂けても言えないのであなたはそうなのですかと頷くしかなかった。
「いきなり出鼻をくじく様になってしまってすまない。娘は一日休めば快復するだろううが……ネージュ殿、よければもう一日この城に滞在してはいかがだろうか?」
「ええ、すぐに旅立たねばならない理由もありませんし、仲間になった方を置いていくわけにはいきませんもの。お言葉に甘えさせていただきますわ」
「うむ。部屋は自由に使ってくれて構わない。とはいえ、何もせずに時間を過ごすのも退屈だろう。よければ街に出て観光でもしてはいかがかな?」
「それはいいね! じゃあみんなで遊びに行こうよ!」
「残念。キュオン、あなたはアタシと一緒にマーカス・シティに戻るわよ」
「え゛……!?」
「ちょっと忘れ物しちゃったのよぉ。ついでにあなたがロッドちゃん達と一緒に出て行った後で届いたあなた宛ての荷物も受け取らないと」
「荷物? ……あっ! そういえば一週間前にブロンテ・クラフトの交換パーツ頼んでたんだっけ。うう……じゃあ仕方ないか」
「そういうわけで、アタシ達は一度あっちに帰るわ。夜までには帰るからロッドちゃん達は二人で思う存分デートでも楽しみなさいな」
讃岐皇に一礼し、カッツェはキュオンと共に謁見の間を去って行った。
「……」
「? 乙音、先ほどから険しい顔をしてどうした? もしやそなたも体調が優れないのか?」
「いえ、御心配には及びませぬ(力を入れておかないと垂れてしまう。出し過ぎだたわけ♡)」
というわけで、今日一日フリーとなったあなたはせっかくなのでカッツェの言うようにネージュと街に出る事にしたのだった。
「……デートか。ちょうどいいわ。これでわかるかもしれない」
何かを決意したネージュの呟きはあなたの耳には届かなかった。
さて、朝食を済ませたあなたは陽が高々と昇る頃に城を出た。ネージュと並びながらたくさんの人が行き交う街の喧騒を楽しみつつのんびりと歩く。
「この街は住人とそうじゃない人との違いがとてもわかりやすいですわね」
ネージュが言いたいのは服装の事だろう。例えば今あなた達とすれ違った和の装い
をした男性はこの国の人間で、向こうでエスニック調の服を着ている女性は観光でこの街に来ているのだろうとあなたは推察した。
「……考えてみれば、私デートなんて初めてだわ。あなたはどうなのかしら?」
初めてという事はロッドはしてくれなかったのだろうか。とあなたは思ったが、確かにキャラ的にそういう事はしないよなと納得した。
それはともかく、前世では素人童貞だったあなたにとってデートなど夢のまた夢であった。思い出して落ち込みながら首を横に振るあなたにネージュは心なしか嬉しそうに微笑んだ。
「そう。あなたも初めてなのね。なら、初めて同士、ド派手に楽しんじゃいましょうか」
迷惑かけない程度にね。と念押しするあなたに「わ、わかってますわ」とネージュも返す。
「おや、あなた達は……」
万屋「大判小判」前を通りがかったあなた達に気づいた士狼が声をかけてきた。
「あなたは、確かシロウさんでしたわよね」
「覚えてくださり光栄ですネージュ姫様。讃岐皇とはお会い出来ましたかな?」
「ええ。それでね……」
街に繰り出した理由を話すと、士狼はならばと手を叩く。
「それでしたらどうぞ我が店を覗かれてください。これでも、この街一番の品ぞろえの店と自負しております故、きっと姫様も気に入られる一品がございますでしょう」
「あら、自信たっぷりですわね。ならせっかくですしお邪魔しましょうか。あなたもよろしいわよね?」
あなたはもちろんだと頷く。お姫様が満足できるデートプランなど考えられるわけもないとはなから諦めているあなたは、とにかくネージュが楽しんでくれる事をしようと決めていた。
「では、お入りください」
自ら入り口を開けてくれた士狼に礼を言いつつ、あなた達は店内に足を踏み入れた。
「まあ……これは確かに街一番ですわね」
外から見るよりずっと広かった店内は様々な商品が並べられており、大勢の客で溢れかえっていた。
「ふふ、見て回るだけでも楽しそうですわね。じっくり見てたら日が暮れてしまいそうだけど」
「はっはっは。ご覧になるだけではなくぜひともご購入いただきたいものですな。では。私は一旦失礼します。何かありましたら私か近くの店員にお声がけください」
「ええ、ありがとうございますシロウさん」
別の売り場の方へ去って行く士狼を見送り、あなた達は商品棚を眺めながら店内を周り始めた。化粧品から子ども用のおもちゃ。さらには夫婦の営みに使うものまで多種多様な品物の数々にあなたは目が回りそうになる。
しばらくして、あなた達は女性用品コーナーに入った。そこでふと、ネージュの足が止まる。
「……」
無言で何かを凝視するネージュ。気になったあなたが覗いてみると、彼女の手元には可愛らしい白の花がデザインされたヘアクリップだった。
「―――それは待雪草の髪留めですな」
「ッ!? シ、シロウさん!? 驚かさないでくださるかしら」
ひょっこり現れた士狼の言葉にワタワタするネージュ。
「ははは。申し訳ありませぬ。たまたま通りかかったら何やら熱心に眺めておられたので、これは商売の好機かと思いましてな」
「はあ、商魂たくましいこと。……それで、なんて言いましたっけ、この花?」
「待雪草……寒い時期に咲く花ですな。雪の中、健気に咲くその姿からその名がつけられたと言われております。他にもスノードロップとも呼ばれておりますな」
「スノードロップ……」
「お気に召したのならぜひともお買い求めください」
「い、いえ。私は別に。ただ目に留まっただけで買うつもりは……」
髪留めを棚に戻そうとするネージュ。あなたはそれをさっと横からかっさらうと、士狼に購入の旨を伝える。
「うむ。お買い上げありがとうございます」
「……どうして?」
いきなり購入を決めたあなたに面喰うネージュにあなたは答える。この髪留めはネージュにピッタリだと。何故なら、とある国の言葉でネージュは「雪」を意味するから。そして、花言葉である「希望」も、自分にとって愛する希望であるネージュに相応しい意味だからと。
「あなた……」
「ほお、姫様の名にそういう意味もあったとは。若いの、中々に博識ではな……ちょっと待つワン。お主、今、愛する者と言ったワンか……!?」
唐突に告白めいたセリフを口にしたあなたに士狼の語尾がおかしくなる。一方、とっておきの知識を披露して得意げなあなただが、そもそもネージュの意味を知ったのは前世で彼女のエロ画像を検索する時にたまたま知ったのが理由だし、スノードロップの花言葉にいたってはクイズ番組で知った程度の事であったりする。
「……はっ。びっくりしてついおかしな口調を……。ネ、ネージュ姫様。せっかくですし、こやつの心意気を受け取ってやってはいかがでしょう」
「……そうですわね。そこまでおっしゃってくださるなら……」
「では、そちらに鏡がありますのでよければ試着してみてください」
士狼に促され、鏡の前に移動するネージュ。後ろで見守るあなたに士狼がこっそり声をかけて来た。
「よかったな、若いの。……まあ、なんだ。やんごとなきお方との恋となると色々障害もあろうが応援しているぞ。何か入り用な時はぜひここを利用してくれ」
そういう事ならと、あなたは士狼にあるものを用意できるか尋ねた。
「ふむ……。それなら用意はできるが。物が物だけに値は張るぞ?」
それならば問題ないとばかりにあなたは懐から札束を取り出した。明らかにポケットに入るわけないほどの厚さのソレに士狼は仰天する。
「待て待て待て! 今どこから出したワン!?」
そんな事はいま重要ではないと、どこからか霧が立ち込めて来そうなセリフで士狼のツッコミをぶった切ったあなたは彼に札束を握らせた。
「わ、わかった。もういい。お前さんとはあまり絡まん方がいい気がしてきた。
そう確認してくる士狼にあなたは首肯した。
「いいだろう。せいぜい派手にやってやろうじゃないか。……これも姫様の為なのだろう?」
「お待たせしました。……どうかしら?」
髪飾りをつけたネージュがあなたの方へ振り返る。彼女の艶やかな金髪に白い髪飾りがいいアクセントになっている。
「……ほれ、お前さんから何か言って差し上げろ」
小声で士狼から促されたあなたはどう褒めたらいいか一瞬考えた。しかし、こういうのは下手にカッコつけた事を言うよりストレートに伝えた方がいいと思ったあなたはシンプルに「綺麗でよく似合っている」と口にした。
「そ、そう? ふふ、あなたがそう言ってくださるなら、それで十分ですわ」
「よし。では若いの、会計はあちらで頼むぞ」
士狼の案内であなたは支払いを済ませると、ネージュと共に店を出る。時計を見ると約一時間ほど経過していた。昼にはまだ早いが、何か軽いものでも食べにいこうとあなたは提案した。
「それなら、スイーツにしましょう……!」
確かに、それくらいがちょうどいいと、あなたはネージュの意見に乗った。早速二人で甘味処を探すため街を探索する。
「わーい! って、わわわっ!?」
その途中、街の住人と思わしき可愛らしい男の子がネージュとぶつかるというハプニングが起きた。
「あらあら、ボク、大丈夫?」
「あ、うん。ごめんねお姉さ……ん……」
差し出された手を取ろうとした少年はそこで初めてネージュを見て固まった。彼は一目でネージュがこの街の住人では無いと理解したが重要なのはそこではない。
心配そうに自分を見下ろす女性は、彼が今まで出会って来たどんな女の人よりも圧倒的に美しく、密かに憧れていた近所のお姉さんすらこの人には敵わないと思った。
しかも、女性が纏う異国の服は凄まじく露出の激しいもので、普通の服なら決して見えない部分が多々曝け出されていた。見てはいけないものだと思いながらも、少年は女性の腋や臍、太ももに目が惹かれてしまった。
さらに、前かがみになった事で、重力に引かれるように地面に向かって伸びる長乳と深い谷間が少年の目に飛び込む。少年はそこでぶつかる時に感じた柔らかな感触の正体を知った。
そして、麗らかな陽気の下を歩く事でしっとりと滲ませた汗と、女性特有の甘い匂いが混ざり合った香りが少年の鼻をくすぐる。
何も知らない無垢な少年に、ネージュは図らずも”女”という存在を鮮烈に印象付けてしまった。その結果……。
「わァっ……あっ……」
ぴゅるっ ぴゅるる
「? どうしたの? 本当に大丈夫?」
「う……うわぁぁぁぁぁぁぁん!」
結局、ネージュの手を取る事無く、少年は泣きながらその場から走り去ってしまった。
「射精しちゃったっ!!!」
「うおっ!?」
「な、なんだよいきなり?」
「い、いや、今あそこの屋根になんかデカくて気色悪いやつが……」
「はあ? ……何もいねえけど。お前、昨日の酒が抜けてねえんじゃねえのか?」
横を通り過ぎて行く二人組の会話があなたの耳に届く。何故か前世のSNSで人気だった某作品が頭によぎったあなただった。
「……な、何だったのかしら?」
何も気づいていないネージュは不思議に首を傾げるだけだった。なお、今のやり取りを周りでたまたま見ていた複数の男性達は心の中で少年を羨むと同時にエールを送っていた。
ちなみに、この時の少年は十数年後、街でも評判の美丈夫へ成長し、女性達の人気の的となるが、当の本人は「金髪ロングヘアで長乳タンクトップの臍が綺麗な妖精族」にしか興奮しない体となってしまい、理想の嫁を求めて旅に出る事になるが、あなたの物語には何も関係ないので、これ以上は語る必要はないだろう。
気を取り直して、再度スイーツを探すあなた達の目に、目的の店が映った。店前で店員らしき少女が元気よく声を張り上げている。
「さあさあ! この街でいっちばん美味しいお団子が食べたければここしかないですよぉ! って、わあ! すっごく綺麗なお姉さん!?」
「こんにちは。お団子って何かしら?」
「ええ!? お姉さん知らな……って、そっか。外国の人じゃ仕方ないのかなぁ。えっとね、お団子って言うのは穀物の粉を丸めた物を茹でたり蒸したりして作る食べ物だよ。味付けによって甘いものやしょっぱいものって感じで色々あるの」
「ふうん。美味しそうね」
「ふふん! それならぜひ食べて行ってくださいな! さあさあ! 二名様ご案内!」
「え、あ、ちょっと」
少女に背中を押され店に入るネージュ。一番美味いと豪語していたのは見栄ではなかったのか、席はほぼ埋まっていた。
「こちらが品書きです。甘いのがご希望ならこっち、しょっぱいのとか辛いのがいいならそっちに書いてあるヤツから選んでくださいね」
「辛いのもあるのね。ちなみに、あなたのお勧めは何かあるのかしら?」
「うーん。そうですねぇ。やっぱり一番人気のみたらしと……あとゴマ団子もいいですよ」
「ならその二つをお願い。あなたはどうするの?」
せっかくお勧めされたので、あなたも同じものを頼むことにした。
「……なんだか、やけに視線を感じますわね」
周囲からの視線に居心地が悪そうに体を捩るネージュ。それはあなたも同じだった。
しかし、ネージュほどの美女ならば周囲の目を惹いても仕方ない。同様に、今のあなたも女性の注目を浴びるには十分な容姿をしている。つまり、あなた達に向けられた視線の正体はいきなり現れた美男美女のカップルに目を奪われた客達のものである。
「はーい、お待たせしました!」
先ほどの店員がお盆に乗せた皿と湯呑を机に置く。
「お茶のお代わりが欲しくなったらお店の人を呼んでくださいね。それじゃ、ごゆっくり」
「まあ、とっても美味しそう。では、早速頂きますわ」
ネージュはまずゴマ団子に手を伸ばし、一番上に刺さった団子を半分パクリと口に入れた。
「中にあんこが入っているのね。ゴマの触感もいいアクセントになっていて面白いわ」
幸せそうに団子を頬張るネージュ。それならばとあなたは先にみたらしの方を食べる事にした。タレはちょうどいい甘さでとても食べやすく、気づけばペロリと平らげてしまった。
「まあ、あっという間でしたわね。……っと」
何かに気づいた様に、ネージュがあなたの方へ手を伸ばす。口元をさっと撫でられたかと思ったら、彼女の指にみたらしのタレがついていた。どうやら口元にタレがついていたらしい。
「ん……れちゅ……。ふふ、気をつけなさい。服に落ちたら大変ですわよ」
ネージュはそのまま付着したタレを舐めとった。やけに色っぽい仕草にあなたはドギマギする。
「ちょっとはしたなかったかしら? ……まあでも、既にあなたの前じゃもっとはしたない姿を見せているし、今更ですわよね」
挑発的な目線とセリフをあなたに向けるネージュ。誘われているのかと思いつつ、あなたは気分を落ち着かせるためにお茶に手を伸ばす。
なお、今のやり取りを周囲で窺っていた客達は頭の中で妄想に浸っていた。
(はしたない!? はしたない姿ってどんな!?)
(野郎、ひょっとしてあのぷるぷるな唇に咥えさせたりしてんのか……)
「うっ……ふう……」
「ぶっ……。おいおい、流石にそのギャグは下品すぎ……え、マジで……?」
ざわめく周囲に「この街は賑やかな人達が多いですわね」とズレた感想を口にするネージュにあなたもそうだねと返すのだった。
そうして団子を堪能したあなた達は、街中で面白い絡繰を披露する見世物小屋や大道芸人の芸を楽しんだ後、「ジェンキン寿司」という店で昼食を済ませた後、観光客に人気だという手漕ぎ船に乗る事にした。
「涼しくて気持ちいいわね」
髪をかき上げながらのんびりと流れる景色を眺めるネージュは画になっており、あなたは士狼の所でカメラを買っておけばよかったと悔やんだ。
「お客さん達、この国には観光かい?」
年配の船頭がふにゃりとした笑みを浮かべながらあなた達に振り向く。
「ええ、そんな所ですわ」
「こんなせくしぃなお嬢さんと一緒なんて羨ましいのぉ」
自慢の嫁ですからとあなたは胸を張った。
「も、もう、あなたったら……」
ドヤるあなたを見て恥ずかしそうに頬を赤らめるネージュ。二人きりのデートなんだからこれ位は言っても問題ないだろうとあなたは判断した。
「ふぉふぉふぉ。仲がよろしい様で。なら、幸せそうな若い夫婦に楽しんでもらうためにも、ワシも精一杯務めさせてもらおうかのぉ」
何となくやる気を増した様子の船頭の手で、船はゆっくりと水路を進んで行く。途中、人気の店や観光スポット等の観光客用に考えたらしき説明を挟みながら決められたルートと一周する。
「他に何か聞きたい事はあるかい?」
それならと、あなたは街を一望できる程度に高い所を知らないかと尋ねた。
「ふむ……。そういう事ならば神楽神社に行くとええ。武酉城の西にある高台に建てられた所での、祭りの時は花火見たさに人が殺到するもんじゃ。昔は百段ある階段を昇るしかなかったが、数年前に緩い坂道が出来ての。おかげで足腰の弱いジジババでも行けるようになったわい」
快く答えてくれた船頭に礼を言いつつ、あなたは本日のデート最後の目的地を決めたのだった。
周囲が薄暗くなり始めた頃、あなたはネージュと共に神楽神社へ足を運んでいた。
「ふう……フ、フジザクラほどではありませんでしたが、中々歯ごたえのある階段でしたわね」
たった今昇りきった階段を見下ろしながらネージュが呟く。視線を移せば、明かりに包まれた城下町の姿がよく見える。
「……他に人はいないようね。こんな場所までやって来て一体どうしたの? わざわざ夕食のお弁当まで買って」
それはお楽しみだからまずは弁当を食べようとあなたは適当に腰を下ろせる場所を探した。
そうして静かな空間の中二人で食事を済ませしばらく経った頃、ようやくあなたが待ちかねていた時間を迎える事になった。
ひゅるるるる……ドン!
「ッ……!」
―――ふむ……。それなら用意はできるが。物が物だけに値は張るぞ?
夜の闇に美しく輝く光の華が咲き誇る。……あの時、あなたが士狼に頼んだのがこの
花火だった。
「なんて……なんて綺麗な……」
声を震わせ、階段前に駆け出すネージュ。目を輝かせ、頬を上気させながら花火を見上げる彼女は、「姫」ではなく一人の「少女」としての素顔をあなたに曝け出していた。
「あなたは……これを私に見せるために……?」
確信しているだろうにあえて横に並ぶあなたに問いかけるネージュ。我ながらちょっとやり過ぎかもと心配していたので、もし彼女の反応が冷めていたり引かれたりしたらすっとぼけるつもりのあなただったが、ネージュの様子を見る限り喜んでくれているみたいなのでこれは頷いても大丈夫と思ったあなたはそうだと答えた。
「ッ~~~~! もう! もう! あなたって人は……!」
感極まったのか、あなたに抱き着くネージュ。押し付けられた胸がぐにゅっと歪み、視覚の暴力となってあなたを襲う。
「嬉しい。本当に嬉しいわ。大好きよ、ロッド」
今日一日最後まで楽しんでくれたようでよかったと、あなたは満足そうに笑顔を浮かべた。
―――しかし次の瞬間、その笑顔は一瞬で凍り付く事になる。
「……いえ、
うーん。ただ女キャラとエロエロアヘアへしたいだけだったのになんでシリアル(断じてシリアスではない)っぽくなってんだろう。