※この作品はR-18です。

今夜も彼氏を鳴かせたい!~そして俺は彼女に抱かれる~   作:桃ノ木ネネコ

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第13話:すべてを奪いたい女とすべてを奪う彼女(後編)

そんなこんなで夜、飲み会は盛況を迎えていた。

明日奈は何とかしてユキヤの隣の席を陣取っていた。

「あ、これおいしい」「あ、ほんとですね!」

女子二人は料理をつつきながら楽しげに話している。

(ふん、呑気なものよね)

一方の明日奈は、ユキヤの隣をキープしながら、彼を横目で観察していた。

彼は黙々と酒を飲んでいる。

「どうしたの?なんか難しい顔してるけど」

「あ、いや、なんでもない」

そう言ってユキヤは慌てて笑顔を作る。

「ええと、どこかであったことあったっけ?」ユキヤは彼女のことを覚えていなかった。

 

「ひどい!忘れたふりなんて!」

「えっ?」

「私よ、覚えてない?」

「うーん・・・ごめん、ちょっと思い出せないかも」

「もう、あんなに仲良く遊んだ仲なのに!」

そう言って明日奈はわざとらしく口を尖らせた。

「ええと・・・」ユキヤは必死に記憶をたどるが、やはり思い出せない。

「・・・」明日奈は無言のままユキヤを見つめている。

「ええと、本当にわからないんだけど・・・」

「・・・・・・」(ちょっと覚えてないってどうい事よ!)

と心の中で怒りをあらわにする明日奈だったが、

その場では笑顔を作って取り繕った。

「まあいいわ、また今度改めて自己紹介するから!」

そう言って持っていたグラスを一気に飲むと、

明日奈は再びにっこりと微笑んで見せた。

「ああ、うん・・・」

ユキヤは戸惑いながらも返事をする。

「それよりさ、もっと楽しい話しましょうよ!」

明日奈はユキヤの腕にしがみつくと、そのまま胸を押し付けた。

「ちょ、おい、あんまりくっつかないでくれよ」

ユキヤは少し困った表情を浮かべる。

「いいじゃない、私たち友達でしょう?」

そう言って明日奈は更に体を密着させる。

「ちょ・・・おいこの子かなり酔ってるぞ・・・」

ユキヤは思わず隣にいる幹事の友人に助けを求める。

「まあ落ち着けよ。こういう時は適当にあしらっとけばいいんだよ」

「でも・・・」

「大丈夫だって。いつものことだから」

「そうなのか・・・」

「ほら、こっちも飲めよ」

そう言ってユキヤに酒を勧める友人。

「・・・わかったよ」

ユキヤは諦めたようにため息をつくと、目の前にあったビールを飲み干した。

****

「ねえ、あなた名前は?」

いつの間にかユキヤの隣には明日奈が座っていた。

「俺?俺は茶木ユキヤだけど」

「ユキヤ君っていうのね。かわいい名前じゃない」

そう言って彼女は妖艶な笑みをユキヤに向ける。

「あ、いや、それは・・・」

相変わら明日奈はもたれかかったままだ。「ねえ、この後二人で抜け出さない?」

「いや、そういうわけにもいかないだろ」

「あら、私のことが嫌い?」

「いや、別にそんなことは・・・」

この時、ユキヤの脳裏にすみれの顔がよぎった・・・

(いや、これは浮気とかでなくてね・・・)頭の中でユキヤは言い訳を始める。

「ふーん、じゃあ好きなんだ?私のこと」

「そ、そりゃあまあ・・・」

「ふふっ、正直でよろしい」

そう言うと明日奈はユキヤの頬に軽くキスをした。

「お、おい!」ユキヤの頭の中にいるすみれは微笑んだままだ・・・

(いやその・・・)

ユキヤは慌てて明日奈を引き離す。

「つれないわねぇ」明日奈はクスリと笑うと、今度は耳元で囁いた。

「ユキヤ君のエッチ」

(露骨に口にしないで含ませるのがポイントよ。)

「うぐ・・・」ユキヤは顔を真っ赤にして俯く。

(まずい・・・このままだと、この空気に流される・・・)

相変わらず頭の中のすみれは微笑んだままだが、

よく見ると右手に何か持っている・・・

そしてそのままゆっくりと近づいてくる・・・

(だから、危ないからそんなもの振り回すのやめなさい!・・・お願いだから!)

自分の妄想との戦いが始まってしまい、ユキヤは冷や汗まみれになる。

「ねえ、聞いてる?」明日奈はユキヤの肩を掴んで揺する。

「え!?あ、ごめん。何の話だったかな」

「もう、ちゃんと人の話を聞きなさいよね」

「ああ、うん。悪かったよ」

「わかればいいけど。ところでユキヤ君は彼女いないのかしら?」

「い、いや・・・」

「へぇ、そうなんだぁ。私立候補しちゃおうかしら」

そう言って明日奈はユキヤの腕にしがみつく。

「ちょ、ちょっと待ってくれ!」

「いいじゃない。ユキヤ君、顔も可愛いし、性格も素直だし、それに、その・・・」

そう言って明日奈はユキヤの股間に手を伸ばす。

「ちょ、おい!」

「ここだって大きいじゃない。こんなの初めて見たかも」

「いや、ちょっと待ちなさい!」思わず敬語になってしまう。

「ねえ、いいでしょう?ユキヤ君」

明日奈は上目遣いでユキヤを見つめる。

「いや、あの、でも・・・」

明日奈の瞳に見惚れてしまい、ユキヤは何も言えなくなってしまう。

(やっぱり押しに弱いタイプね・・・)

すぐ顔に出るので、結構弱点も簡単に見抜かれてしまう。

「大丈夫よ。優しくしてあげるから」

そう言って明日奈はユキヤの唇を奪う。

「むぐっ・・・」ユキヤは驚いて抵抗しようとするが、明日奈に頭を抑えられて動かせない。

「ふふっ、かわいい」

そう言って舌を絡ませてくる。

「んん・・・」

明日奈の甘い香りが鼻腔を刺激し、頭がボーっとしてくる。

明日奈はしばらくユキヤの口内を楽しんだ後、ようやく解放した。

「ぷはぁ・・・」

「ねえ、もっと気持ち良いことしましょ」

そう言って明日奈はユキヤの足の間に膝を入れてくる。

「あ、いや、ちょっと・・・」

「ふふっ、じゃあ行きましょうか」

明日奈はユキヤの手を引いて歩きそうとしたその時・・・

 

ユキヤのスマホが大音量で鳴り出した。

 

それはアラームの音だった。

すみれが「終電逃さないように」と設定してくれたものだった。

音はどんどん大きくなっていき、この雰囲気をぶち壊すには十分だった。

ユキヤはアラームを手で止めながら、「ゴメン、俺そろそろ帰るわ」

と言った。

「・・・・」明日奈は呆然としていた。

「じゃ、そういうことで。」

明日奈は呆然としていたものの「そうね、連絡するわ」とすぐに笑顔を作る。

「じゃあまたな!」と自分の分の飲み代を置いていき、ユキヤは足早に店を出た。

「・・・」

一人残された明日奈は無言で席に戻り、残っていたワインを飲み干すと、

グラスを叩きつけるように置いた。

「なにあれ・・・ふざけんじゃないわよ!!!」

周りにいた客が一斉に明日奈を見る。

「あ・・・あら、私ったら、酔っぱらっちゃった~」と慌てて胡麻化す。

周りの客はクスッと笑い、再びそれぞれの時間に戻る。

明日奈はため息をつく。

「まあいいわ。簡単に堕ちたら面白くないし」

そう言ってニヤリとする。

「次はどうしてやろうかしら・・・」

明日奈は再びメニューを手に取り、新しい酒を注文した。

 

一方ユキヤは、一目散に駅に向かって走り出していた。

(た・・・助かった・・・)

明日奈は美人だし、スタイルも良いし、何より胸が大きい。

そんな人に迫られたら、男なら誰でも落ちるだろう。しかし・・・

「うぅ・・・」思い出したら涙が出てきた。

明日奈の柔らかい感触を思い出してしまったのだ。

そしてあの甘酸っぱい匂い。

明日奈はきっといいところのお嬢様なんだろう。

今まで会ったどんな女性よりも魅力的な人だと思った。

あんな人と付き合えたら幸せだろうな、と思う。

確かに以前ならおいしい状況と感じただろう・・・。

(俺、なにやってんだ?)

 

「・・・・・」しばし無言で空を見る。

そしてまた走り出した。

気が付いたらその足はすみれのマンションへと向かっていた。

 

「どうしたの?こんな時間に・・・って汗びっしょりじゃない!」

すみれが驚いた声をあげる。

「ああ、うん、ごめん・・・」酒を飲んで走ったせいで汗が凄いことになっていた。

「ほら、シャワー浴びてきなさい。着替えは用意しておくから」

「悪い・・・」

ユキヤは浴室に入り、頭から熱いお湯を被る。

さっきの事が頭の中から離れない。

明日奈の柔らかそうな唇。

押し付けられた大きな乳房の弾力。

ユキヤの手を包み込むように握る細い指。

明日奈の顔が脳裏に焼き付いて消えてくれない。

そんな事を悶々と考えていると・・・

「背中流そうね」いきなりすみれが浴室に入ってきた。

ただ服は着ていたが。「え?ちょっ!?」

ユキヤは焦る。

「はい、じっとしてー」

ユキヤは観念して目を瞑る。

するとユキヤの体を泡立てたタオルが滑っていく。

「なんだよ、いきなり・・・」「ふふ、ちょっとね」

スポンジにボディソープを垂らす。「はい、前向いてー」

ユキヤは言われるがまま、後ろを振り向く。

すみれはユキヤの体全体を洗い始めた。

「・・・」すみれはちょっとだけ小さな声で何かをつぶやいた。

「どうした?」「ん~、なんでもないよ」

「そうか」

「じゃあ私も入ってくるわね。先にベッドに入ってていいよ」

ユキヤは言われた通り、寝室に入る。

そしてそのまま、ベッドの上で横になった。

このベッドで普通に寝るのはどれぐらいぶりだろう。

そして、先ほどまでの事を思い出す。

(明日奈さんとキス・・・してしまった・・)

明日奈の柔らかい唇の感触を思い出してしまい、思わず顔が熱くなる。

明日奈の甘い匂いと、あの胸の谷間と、綺麗な瞳と、長い髪と・・・

明日奈の事ばかり考えてしまう自分に嫌気が差す。

(やっぱりバレたら怒られるのかな・・・いや場合によってはそれ以上の事を・・・)

そんなことを考えているうちに眠ってしまった。

 

夜中。

何かに締め付けられる感覚でユキヤは目を覚ます。

背後から誰かに抱きしめられている・・・すみれであった。

眠っているのか起きているのかは分からなかったが、

その指先には爪が立っていた。

痛くはないが、思いの強さが感じられた。

(もし、俺がいなくなったら、こいつも泣くのかな・・・?)

ユキヤはぼんやりと考える。

浮気を繰り返していた頃も、怒りはするものの泣いたのは見たことがなかった。

きっとその時は自分が悪いからだろうと思っていた。

でも今は、自分の為に泣いてくれるような気さえしていた。

だから、ユキヤは少し嬉しかった。

そして、すみれの腕を解き、そっと抱き寄せた。

「ごめんな・・・」

すみれは眠っていた。ユキヤは久々に自分の腕で彼女を抱きしめていた。

そしてその日はそのまま眠りについた。

 

****

「・・・気分どう?」

「うう、気持ち悪い・・・目が回る・・・」

翌日、しっかり二日酔いになっていたユキヤがいた。

「ほら、お水飲める?」

「うん・・・」

ユキヤはコップを受け取り、水を一気に飲む。

「もうお酒やめたら?」

「そうだね・・・」

(くそ・・・なんつー悪い酒だ・・・)

酒のせいというより、昨日の明日奈の雰囲気に当てられた方が強いだろう。

「はい、お薬。お昼ご飯食べたら飲んでね。あとお風呂入るなら、

今日はシャワーだけにしておいて。お湯に浸かるのはまだダメだよ。いい?」

「わかった・・・」

すみれはテキパキと指示を出す。

「じゃあ私は大学行ってくるけど、ちゃんと大人しくしているんだよ?

また夕方には帰ってくるからね」

「ああ、行ってこい・・・」

「あ、それと・・・」

そう言ってユキヤに近づき、耳元に口を寄せる。

「昨日のこと、忘れてないよね・・・?」

「え・・・いや、覚えてるが・・・」

「ふふっ、それじゃ、いってきまーす!」

「おう・・・」

バタンとドアが閉まり、部屋の中に静寂が訪れる。

「はぁ・・・」

ユキヤはため息をつきながらベッドの上に倒れ込む。

(昨日の事は・・・早く忘れよう!)

頭痛と吐き気が続く中、ユキヤは必死に自分に言い聞かせる。

だが、なかなか忘れられなかった。

 

***

大学での抗議が終わり、帰ろうとしたところで、

すみれは、見知らぬ女性に声を掛けられる。明日奈である。

「あ、白石さん、こんにちは」

「あの、私に何か用ですか?」

「あ~、ちょっと言いたいことがあってね・・・」

明日奈は周りをキョロキョロと見回す。

「ここだとあれだし、どこかで話さない?」

「別に構いませんが・・・」

明日奈に連れられ、すみれはカフェテリアに入る。

「それで、何の話でしょうか?」

明日奈はコーヒーを一口飲み、カップを置くと話し始める。

「単刀直入に言うわ。ユキヤ君と別れたほうがいいわよ」

「はい?」

明日奈の言葉の意味がわからず、すみれは聞き返す。

「あなたに言うべきか迷ったんだけど・・・昨日の飲み会で・・・あの、

ユキヤ君って結構積極的だったのね・・・」

明日奈がいかにも言いづらそうに言ってくる。「は?どういう事です?」

「だから、その・・・キスとか・・・胸触ったりとかね・・・」

すべて明日奈が仕掛けたことだが、まるでユキヤからやってきたように言う。

「はぁ・・・」

「その後は・・・大体想像がつくとは思うけど・・・私たち、二人で・・・」

明日奈は顔を赤らめながらも、

具体的な表現を避けたような言い回しをする。

「彼、結構その場の空気に流されやすいところがあると思うの」

「まぁそれは否定しませんけど・・・」

「だから、もしこのまま付き合っていても、

きっといつかはあなたの事を裏切るかもしれない。だから・・・」

明日奈はいかにも心配するような表情を見せてくる。

「うーん・・・でも大丈夫だと思いますよ。ユキヤ、今うちで寝てるし。」

 

「え!?」

明日奈は目を丸くする。

「ちょっと二日酔いみたいですね。今日は一日ゆっくり休ませるつもりです」

「そ、そうなんだ・・・」

「それに、彼のことは私がしっかり管理しますんで。安心して下さい」

「わ、わかったわ・・・」

「じゃあ失礼しますね。」

そういうとすみれは立ち上がり、自分の分の会計を済ませて去っていった。

 

すみれは歩きながら

(まぁ、あれの話題を出してないあたり、何もなかったとは思うけど。)

昨晩すみれがユキヤの背中を流した理由・・・

それはユキヤの背中に油性ペンで『この男浮気者につき!』と

大きく落書きしていたからだ。

これはユキヤが寝てる間に書いたものなので、本人ですら気付いてない事だった。

つまり服など脱いだら、大変なことになっていたのだ。

 

(ちょっと悪いとは思ったけど・・・今回は信じられる証拠になったからいいかな)

そう思いつつ、すみれは家路につく。

 

****

 

「・・・流石本妻の余裕ってやつね。あなどれないわ。」

「いい加減あきらめなさいよ」

「だってぇ~!」

すみれと別れた後、明日奈はまだ諦めきれずにいた。

(あんな女より、私の方がいいじゃない!なんでわかってくれないの!)

明日奈は自分が美人であるという自覚があった。スタイルもいい方だと思う。

そして何よりも、男性経験が豊富だという自信もある。

「・・・ますますもってあの二人が気に食わなくなった」

明日奈は一人呟く。

「もうこうなったら実力行使しかないかしら・・・」

「だから明日奈ちゃん、それただの悪役ムーブでしかないからね」

友人がつっこむ。

「とにかく!あの二人を別れさせたい!」

 

明日奈は(無駄な)闘志を燃やしていた。

 

おわり

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