今夜も彼氏を鳴かせたい!~そして俺は彼女に抱かれる~ 作:桃ノ木ネネコ
浅葱の運転する帰りの車の中でユキヤは先ほどの出来事を思い出していた。
(あれじゃあ・・・まるで女性には性欲がないということになるじゃないか!)
そう思うとだんだん腹が立ってきた。「おや、ご立腹のようですね。」
後部座席から蘇芳が声をかける。
「そりゃそうですよ。だって・・・」
女性にだって性欲はある!しかもそれは男のそれよりも格段に強い。
ユキヤはそれを身をもってよく知っている。
「まぁ毎度毎度あの代表の主張は矛盾しまくってるから、
気にしなくていいっスよ」
運転席の浅葱が口を挟む。「そうなんですか?」
ユキヤは浅葱の言葉に疑問を抱く。
「彼女たちは主観と自分に都合のいい意見しか受け付けません。
それ以外は敵とみなしてきます。
だからあんな風に自分の主張と少しでも反するような意見を聞くと
異常な怒りを見せるんです」
「なるほど。」
確かにそういう人間を何度か見たことがあるな、と思い出す。
「・・・すべての女性団体がそうとは言いませんが
ああいった人たちがいるのも事実です。」
蘇芳は付け加えるように言う。
「まぁ、でも、ユキヤさんは気にしすぎなくても大丈夫っスよ」
「そうですかねぇ」
「ただ、彼女の場合、問題はそれだけではありません。
彼女の感情優先で育てられた結果、根岸君は
あんな事になってしまいましたから。」
蘇芳はミラー越しにユキヤを見る。「え、どういうことですか?!」
「大学に入って私と出会うまで、彼は性欲どころか恋愛感情すら
害悪と考えていましたからね。」
「・・・どこの箱入りお嬢様ですか?」
「なのでまず独立心を養うという名目で一人暮らしを勧めて、母親から遠ざけ、
・・・誰かに愛されることから始めないといけませんでした。」
「うわ、なんつー極端な教育を・・・」
ユキヤはここでようやく、蘇芳と根岸の関係と、
彼がなぜあんなに偏執的に蘇芳を求めているのかを知った。
「まぁそれくらいしないと彼のような人間は社会に適応できませんから。
それに・・・あんな可憐な反応ができる子をあのまま放置するのは勿体ない 。」
最後の方で発言内容が欲望丸出しになってくる。
(・・・途中まで感心して聞いていた俺がバカだった)ユキヤは呆れ果てる。
しかしそれでも教え子を救いたい気持ちはあったんだなと思った。
「さ、ついたッスよ、今日はお疲れさまでした。」
そう言って浅葱はユキヤを送り出してくれた。
「ありがとうございます、色々勉強になりました」
とユキヤは頭を下げた。
「いやぁ、こちらこそ、ユキヤさんと話せて楽しかったっす。
また遊びに行くっスよ。」
浅葱は微笑んでくれた。
「・・・もうこの前みたいなのは勘弁してくださいよ」
ユキヤはそう言って自宅へと向かった。
***
「ただいま」
ドアを開けると、すみれが出迎えた。
「おかえり、ユキヤ」
「おう、ただいま」
「ご飯にする?お風呂に入る?それとも―――」
すみれはそこで言葉を切った。そして少し恥ずかしそうな表情をする。
「わたし?」
ユキヤはため息をつきながら答えた。
「お前はいつも通りだな。安心したぜ」
すみれはふふんと得意げに笑った。
「ユキヤも相変わらずね。つれないわね」
「漫画に出てくる新婚夫婦じゃないんだから・・・」
ユキヤは苦笑いする。すみれは不満そうだ。
「あ、あとね、昼間ネギちゃんが私のところに来て、
いちご大福置いてったよ。『今日のお礼』とか言ってたけど・・・」
どうやら彼なりに気を使ってくれたらしい。
(いちいちちょっとズレてるあたりもあいつらしいが・・・)
「お茶入れるね」
と言ってすみれはキッチンへと行った。
しばらくして戻ってきたすみれの手には湯呑が2個持たれていた。
1つはすみれの分だろう。
ユキヤの目の前にすみれは湯呑を置いた。中身は緑茶のようだ。
「ん、ありがとな」
ユキヤはいちご大福を頬張りながら今日の事を話す。
「ああいう席だとさすがの俺でも緊張するなぁ。
まあ、変なこと言わなくて良かったけど。
てか、蘇芳教授も普段あんなだけど、
ああいうところにいるとそれらしく見えるというか・・・」
ただ、その後の懇親会については話さなかった。
「しかしユキヤがスーツ着てるなんてほんと珍しいよね」
「そりゃ、ああいう席だしスーツじゃなきゃおかしいだろ?」
「そうだけど・・・なんか見慣れないから新鮮と言うか・・・」
すみれはくすっと笑う。そしてまじまじとユキヤを見つめる。
「なんだよ、あんまり見るなってば」
ユキヤは恥ずかしげに顔を背ける。
「いやー、こんなイケメンだったかなあって思って。
これはエリート社員の振りしてお姉さん方を騙せますよ」
すみれがからかうように言う。
「・・・・着替えてくる」ユキヤは呆れて立ち上がる。
「え?別にいいじゃん。せっかく似合ってるんだしそのままで」
「お前がそういうならこのままでもいいが・・・」
ユキヤはソファーに座ってお茶をすすり始める。
ユキヤはちょっと嬉しかったのか照れ隠しをしているようでもあった。
「うん!やっぱりユキちゃんは格好良い!」すみれが微笑みかける。
ユキヤはますます照れる。それをごまかすかのようにいちご大福をパクつく。
「ふぅ~食った、食べた。結構量あったのにもう全部食べちまった。
このいちご大福美味いな。」
ユキヤが満足そうな表情を浮かべる。
「チョイスの仕方はともかく、ネギちゃんは意外とセンスいいよね」
すみれも自分の分のお茶をすする。
「そうだな。まあ、こういうのは味だけじゃないしな。
見た目とかパッケージとか色々あるし」
ユキヤは一息ついて湯呑を置く。
「で、これからどうしようかね。」
「ユキちゃん・・・」
すみれが声をかける。
「ん?何だよ?」
「あのね・・・その・・・」すみれは言い淀む。
「だから何だってのさ。はっきり言ってくれよ」
ユキヤはやや苛立ち気味に促す。
「・・・今のユキちゃんを動けなくしたい」
すみれがぼそっと言った。
「は?どういうことだよ?」
ユキヤは困惑して聞き返す。
「・・・私がユキちゃんを拘束して色々したい・・・」
すみれは恥ずかしそうだが力強く言う
(そういやさっきからこいつ俺の事『ユキちゃん』って・・・)
ユキヤは気づく。すみれがこう呼ぶのは、いつも興奮しているときだ。
「えっと、それはつまり、縛ったり目隠ししたり?いろいろ?
プレイ的なことをやりたいって事かな?」
ユキヤは確認するように聞く。
「うん・・・ユキちゃんの困った顔と泣き顔が見たくて仕方がないの・・」
すみれは頬を赤らめて答える。それと対照的にユキヤの顔は
青ざめていった・・・。
「えーと、すみれちゃん?そ、それ本気で言ってるのかな?」
ユキヤは引きつった顔で言う。
「うん、本気!」
すみれはにっこりと笑う。
「いやいやいや、すみれさん、あなたちょっとおかしいですよ!
なんでそんな発想になるんです!?」
ユキヤは必死に訴える。
(大体スーツ着た俺をどうにかしたいって・・・AVとかじゃないんだから!)
「ユキちゃん、私知ってるんだよ。ユキちゃんがそういうの好きだって」
すみれはユキヤを見つめて微笑む。
「ぐぬう、確かに嫌いではないけど、別に好きというわけでは・・・」
ユキヤは口ごもる。
確かに「女上司モノ」のAVは見たことがある。だが、
あくまでフィクションとしての話であって、
現実で実際にやってみたいと思ったことはない。
「じゃあ一晩焦らしプレイとどっちがいい?」
すみれはユキヤの耳元で囁く。(ひ・・・一晩?!)
ユキヤの顔が真っ青になった。
「わ、わかった。すみれの好きなようにしてくれ・・・」
ユキヤは観念した。
「やったぁ~♪」
すみれは嬉しそうな笑顔を見せる。
「でも一つだけ条件がある」
ユキヤはすみれの目を見て真剣に話す。
「何?」
「せめて・・・優しくして欲しい」
ユキヤは懇願する。「ふふん、任せてよ。気持ちよくさせてあげる」
すみれは自信満々の様子だった。
つづく