浮気ではないです!!
あと一応ハーレムタグはまだ有効です!
ーーー征服歴1500年11月 王都カルネアス ミスト侯爵家別邸ーーー
浴場で汗を流したアレクは一人、自分の泊まった部屋とは別の客室を訪れていた。
「目は覚めたか、レナ?」
「アレク…にい様っ」
客室のベッドに横になるアレクの
「すまない…俺のせいでお前にも、従叔父様にも迷惑をかけたな」
「いいえ、むしろ私のせいで…にい様まで怪我を…それにあんな」
「俺のことはいいんだ。こんな傷が今更増えたところで」
悲しそうな目をするレナを、アレクは穏やかな声で諭す。
アレクの傷だらけの手がレナの頭に伸びる。恐る恐る、少しだけ震えながら。
レナは怯えること無く、目を閉じてアレクの手を受け入れる。
アレクは優しく、昔のようにレナの頭を撫でる。艷やかで滑らかな絹糸のような黒髪の懐かしい感触がアレクの手に伝わる。
レナの目尻に涙が浮かぶ。
「にい様の手です。暖かくて、優しい、にい様の…」
「レナ…俺は」
「
レナの小さな白い手が、アレクの傷だらけの手を握る。
戦場であらゆる武器を操り、時に素手で敵を殺し続けてきたその手で、アレクは壊れ物を扱うように優しくその手を握り返す。
「アレクにい様、改めて助けていただいてありがとうございます」
「いや…むしろ俺のせいで」
「いいえ…にい様は命懸けで私を助けて下さいました。その前も、私達の為に戦って下さっていたのに、私は一度もお礼を言えていませんでした。今更かもしれませんが、本当にありがとうございます、アレクにい様」
レナは体を起こし、深々と頭を下げる。
「ああ…なあレナ、頭を上げてくれ」
「はい…にい様?」
アレクはレナの手を離しその場に片膝を就く。まるで古の騎士が、高貴な姫君に忠誠を誓うかのように。
「礼を言うのは俺の方だ、レナ。四年前に全てを、名前も過去も、何もかも捨てて戦って、それでも生き延びることが出来たのは、お前がいてくれたからだ。何もかも失くした俺にもまだ守るものが、家族がいたからだ。だからありがとう、レナ」
「アレクにい様…」
レナが傷の痛みに耐えながら、涙を流しながら微笑む。
そしてレナは、枕元に置いてあった小箱を手に取り、アレクへと差し出す。
「どうぞ、アレクにい様」
「これは…ああ、そうだったな。お前が持っていてくれたんだったか」
「はい。本当ならもっと早くお渡ししたかったのに、私が…」
「いいや、俺が忙しさを言い訳に会いに来なかったのが原因だ。気に病まなくていい」
アレクの受け取った小箱には、簡素な木彫りのペンダントが大事そうに納められていた。そのペンダントはかつてレナが自身の手で作り、アレクへと贈った二人の絆の証だった。そして己の命を捨てる覚悟を決めたアレクが、自身の
アレクは大切そうに、ペンダントの入った小箱を懐へとしまい込む。
それに対してレナは少しだけ心配そうに目を細める。
「その…渡しておいてこう言うのはどうかと思うのですが、いいんですか?」
「…?」
「その…エリカ様に怒られたり」
事情を詳しくは知らないレナだが、何となく
「大丈夫だ。あいつはそこまで器の小さい女じゃない」
「そうかもしれませんが…うーん」
確かにアレクの言う通りかもしれないが、レナは同じ女として、エリカが複雑な心境になりそうだと察する。ついでに兄にそれを忠告すべきかどうかも。
首をかしげ考え込むレナの気持ちが分からない
「ありがとうな、レナ。正直ここのところ不運続きでな…特にお前のくれた
「……そうですか」
割と本気で嬉しそうにしているアレクの気分に水を差すのも気の毒かと察したレナは、それ以上なにも言わないようにする。まあアレクなら何とかするだろうという楽観も込めて。
「従叔父様も午後にはこの屋敷に来るそうだ。それまで休んでおくといい」
「はい。にい様は?」
「俺はこの騒動の後始末だろうな…」
「お疲れ様です」
心底うんざりした顔のアレクに、レナは同情と申し訳無さの混ざった顔で頭を下げる。
その頭をもう一度撫でたアレクは、少しだけ名残惜しそうに部屋を後にした。
「お疲れ様」
「まだ歩くのが辛いんだろ、待って無くてもよかったんだぞ?」
「心配だったからよ、二人共ね。それに椅子に座ってたからそこまででもないわ」
「そうか」
「そうよ」
アレクが手を差し出すと、部屋の外で待機していたエリカは立ち上がり、差し出された手をとる。
アレクに支えられながら歩くエリカが囁く。
「レナとなら、私はいいわよ?」
「俺は一度に何人も愛せるほど器用じゃない」
「ふーん、そうなんだ」
迷わず答えるアレクに、エリカは少しだけ嬉しそうに言葉を弾ませる。
その二人に、ミスト家ではなくリガール家の使用人が声をかける。彼らは昨晩この屋敷に泊まったエリカやダニエル、そして先代辺境伯レオポルド・リガールの世話をするためにこの屋敷へ呼ばれた者達だ。当然能力も忠誠心も高い。
「エリカお嬢様、ウォーカー卿」
「どうしたの?」
「どうした?」
足を止めた二人に、その使用人は頭を下げた。
「ご先代様がお待ちです、どうぞこちらへいらしてください」
その言葉に、アレクとエリカは顔を見合わせた。