〜征服歴1479年 某月某日〜
やあこれを読んでいる君、こんにちわ。僕の名前はカイト・ジャッカード、今年五歳になったばかりの可愛らしい平凡な少年さ。
何で五歳の子供がこんな日記を書いているのかって?
これには深い意味があるにはあるんだ。なんせこれを書いている今日は僕にとって記念すべき日だからね。
乗馬の練習中に馬から落ちて頭を打ったら突然、自分の
そう、この僕の日記を読めているということは、君は僕の同類、即ち
前置きが長くなってしまった、ごめんよ。まあ、そもそも僕以外にこの日記を読む人が本当に現れるのかわからないけど、この日記がいつか僕と同じ境遇の人の助けになるかもしれないと思うと浪漫があるだろう?
だからいつか、この日記を読める人にだけは僕の名前を知っておいて欲しい。
僕の名前はシンドウ・カイト、漢字はもしかしたら読み間違えられるかもしれないから書かないでおくよ。
前世では30年程生きた、しがない会社員さ。そこそこいい大学を出て、結婚はできなかったけどそれなりに生活に余裕があって、ちょっとだけサブカルチャーに詳しかった、平凡な男さ。
そんな僕が、異世界転生(いや、厳密には憑依なのかな?)した先でどんな人生を歩んだのか、どうかこの日記を通して知ってほしい。
〜征服歴1480年 某月某日〜
異世界転生して約1年、色々なことが分かった。まず、僕の転生したこのカイト君はかなり良いところのお坊ちゃんらしい。
今の僕、カイト・ジャッカードは、ヴィーテ=ガスク連合王国の”七大貴族“ジャッカード侯爵家の次男坊だったようだ。
そもそもヴィーテ=ガスク連合王国なんて聞いたことも無いし”七大貴族“とかどういう事だと思ったけど、自分の身辺の事だから必死で調べたよ。
まあ折角だし、僕が調べたこの世界の地理と歴史について簡単に説明しよう。まずこれを読んでいる同郷の君には残念なお知らせだが、この世界は十中八九僕たちが生きていた地球じゃない。
僕の家の書斎には、かなり詳細なこの世界の地図が置かれていたんだけど、明らかに地形が違う。
今の僕の生まれたヴィーテ=ガスク連合王国、長いからこれからは連合王国と書くけど、まずこの国があるのは、この世界の人類が認識している世界最大の大陸、ユーシア大陸の中央部だ。
この大陸は、形は僕らの世界のユーラシア大陸に似ているけど、いくつか大きな違いがある。
一つはインド亜大陸に当たる半島が無い。それにアラビア半島や、アフリカ大陸に繋がる陸橋も無い。インド亜大陸に当たる大陸は確かにこの大陸の南東にあるし、南西にはアフリカ大陸に近い地形の大陸もあるけど、まずここが違う。
それにヨーロッパに当たる大陸は、ユーシア大陸の北部から細い陸橋のみで繋がっていて、それ以外は海だ。
あと、もしかしたら期待しているかもしれないけど、この世界には魔法なんて便利な物は無い。いや、僕も転生して色々調べたよ、自分に莫大な魔力が宿っていて転生チートとか夢だろう?
まあ、魔法なんてものはおとぎ話で、錬金術も詐欺のネタか、冶金とか薬学が発展する途上で生まれた妄言と片付けられる程度には、この国の教育はしっかりしていると言うことさ。
兎も角、僕の生まれたヴィーテ=ガスク連合王国は、魔法の無い世界でそれでも転生者の僕が不自由なく暮らせる程度には豊かで技術水準の高い国だ。
約300年程前に成立したこの国だけど、大陸のほぼ中央に位置する立地を活かして東西貿易で豊かになった国なんだ。この国を建国した人達はかなり優秀だったみたいで、貿易で得た利益の大半を国内の整備に使ったらしい。技術水準としては中世〜ルネサンス程度だけど、主要都市は舗装された街道で繋がっているし、ある程度の都市は上下水道が整備されていて、僕のように上流階級に生まれた人間なら、現代の価値観から観てもそこそこ快適な生活が送れている。
食料事情も悪くない。元々王国中央部は大陸でも有数の穀倉地帯だったんだけど、北方の騎馬民族を吸収したお陰で家畜(特に馬)が大量に供給されるようになって、農業生産力が増えたんだ。しかも交易で色々な作物をユーシア大陸どころか海の向こうの大陸からも手に入れたお陰で、麦や豆だけじゃなくてジャガイモやトウモロコシも栽培されている。それに100年程前に大陸南方の島嶼地帯を支配下に置いてから、そこでサトウキビやコーヒー豆なんかの大量生産もするようになったから、僕は食卓で美味しいお菓子とコーヒー(砂糖とミルクたっぷり)を楽しむことが出来る。
しかもインフラ整備だけじゃなく、初代国王の宰相を勤めたソーヤ・ラーズ(僕はこの人物も転生者じゃないかと睨んでるけど、理由はまた今度)の方針で教育にもものすごく力を入れている。貴族の子弟は一定の年齢になると王都の“学園”に通うことが出来るんだけど、この“学園”は貴族以外も試験に通れば通うことが出来る。それ以外にも、それなりに整備された都市には“学校”が建てられていて、子供に読み書きや計算も教える制度が整っているから、他の国と比較すると考えられないくらい識字率が高い。
国土の広さや純粋な国力なら連合王国より大きい国もいくつかあるけど、こんな風に現代に近い価値観で運営されてる国はこの世界でも珍しいだろう。
そしてそんな国だけど、きちんと“貴族”という特権階級は維持されている。とはいえ他の国だと“王侯貴族にあらずんば人にあらず”という価値観が当たり前で、それこそ大貴族ならその国の王でもおいそれと手出しできないくらい権力と財力を持っているんだけど、この国ではそこまでででも無い。
150年程前に大きな内乱があったのだけど、結果として王様の権力が暴走しないように、そして貴族同士が対立した時に安易に軍事力で解決しないように、“貴族議会”が設立されたんだ。そこから紆余曲折があって“衆民(平民)議会”も成立して、今では2つの議会が国内における立法権と予算審議権を有するようになったんだ。その他の改革もあってこの国の貴族は“権威”はあるけど“権力”は他の国程大きくない。代わりに国王、というよりも“政府”が大きな権力を有する中央集権体制が確立している訳だ。
とまあ異世界転生した国としてはなかなか悪くない国なんじゃないかと思う訳だ。魔法が無いのはちょっと残念だけど、少なくとも不味い食事を改善するのに知識チートを使う必要は無さそうだ。
でも折角転生したんだし、この世界でより良く生きていくためには転生前の知識も有効活用出来たらいいな。
連載して苦節一年、ようやく転生タグが嘘でない事を証明(?)できました。
この物語のもう一人の主人公がどの様な存在なのか、あと2,3話かけて書こうと思います。濡れ場もあるよ♪