征服歴1486年某月某日
…ごめん、ちょっと言ってみたかっただけなんだ。
ともかく久しぶりだね、カイト君12歳だよ!
あ、ちなみにお父様には殴られた事はないけどお祖父様と剣の師匠には何度も殴られてます。特にお師匠様は一見すると優しいお爺さんなのに修行になると鬼だよ鬼。まだ10歳の幼気な美少年の顔が腫れ上がるぐらい殴り倒すとかトラウマものだよ!?
まあカルネアス流剣術総本山『錬武館』の
あ、お祖父様には僕が変な発明をした時とかに殴られます。いやぁあの時は大変だったなぁ…。
おっと話が脱線しちゃったね、衝撃的な体験だったのと人生で一回は言ってみたい名台詞をちょっと言ってみたかったんだ。
実は昨日、王都でパーティーがあってね。僕もまだ子供だけどおめかしして三人の婚約者を連れて出席したんだ。
まだ社交界デビューはまだなんだけど、今回はある意味で身内だけの集まりだから成人(この国では15歳、お酒も飲めるよ!)していない僕達も招待してもらえたんだ。
パーティーの主催はリガール辺境伯家。僕の家と同じ七大貴族の一角で、招待されたのも同じ七大貴族やその親戚筋だけだった。
このパーティーは身内だけのささやかな、それでいて大事なものだとお祖父様が真剣な顔で僕と兄上、そして父上に語っていた。何故ならこのパーティーは、リガール家に100年振りに生まれた“祝福の御子”のお披露目の場だったからだ。
この“祝福の御子”、大それた名前だけど別に凄い魔法を操るとか、神様と対話できます、みたいなファンタジーな存在ではないんだ。
ただ、この連合王国で最も尊敬される大英雄、初代“カナンの騎士”ロイ・リガールとその妻エリーゼの瞳と髪の色を受け継ぐ子供は、その二人の“祝福”を受けて生まれてくると解釈されてこう名付けられたらしい。実際、この二人の孫である二代目“カナンの騎士”リシャール・グランツは祖父母の才覚を受け継ぎ連合王国の英雄として歴史に名を刻んだ訳だから、あながち間違いでもないのかもしれない。
まあともかく、そんな珍しい金色の瞳と銀色の髪の女の子が100年振りに生まれて、6歳まで無事に成長したことを祝うのが、今回僕が参加したパーティーの目的だった訳だ。
それとお祖父様曰く、その“祝福の御子”の婚約者探しも兼ねている、と。
まあ僕にはもう三人も婚約者がいるわけだけど、僕が目指す“
二代目が“祝福の御子”だったのもあるけど、その次の三代目“カナンの騎士”グラッパ・ザーレの妻もまた、リガール家出身の“祝福の御子”だった。平民出身の英雄に箔をつけるためとも言えるけど、英雄の妻に相応しいのは“祝福の御子”だとこの時に強く印象付けられたらしい。まあ、その後の四代目以降の“カナンの騎士”は生まれるタイミングが会わずに“祝福の御子”が妻になる事は無かったけど、五代目“カナンの騎士”ロバート・ミストと共に戦ったリガール家の最精鋭部隊“竜爪兵団”を率いたのは、当時の“祝福の御子”にして当代の辺境伯キール・リガールだったし、六代目“カナンの騎士”ゲオルク・グレンリベットの妻は“祝福の御子”でこそ無かったけどリガール家の令嬢だった。
まあつまりどういうことかと言うと、僕が“カナンの騎士”になったら、リガール家の“祝福の御子”が僕のところにお嫁さんに来る可能性が高いということだ。お祖父様にも『カナンの騎士になるなら、リガール家とは仲良くしておくのじゃぞ』と言っていたしね!
とはいえ、相手は所詮6歳の子供、無難に挨拶する位だろうなとパーティーに行くまでは思ってたよ。
でも、そうじゃなかったんだ。
おめかしした婚約者達を連れて出席したパーティーで、僕は
ひと目見た瞬間、僕は雷に打たれたような衝撃と共に悟った。僕が転生したのは、僕が
まだ幼いその少女、リガール家の次女エリカは美しかった。6歳の、本来ならば可愛らしい以外の称賛は受けないはずのその少女はしかし、輝くような美貌で僕の心を撃ち抜いた。
本物の銀で出来ているかのようにキラキラと輝く髪、宝石のように煌めく黄金の瞳、肌は人形みたいに白く、それでいて作りものではあり得ない温もりを感じさせる。幼い顔立ちでありながら完成されたその美貌は、10年後にはより磨きがかかるだろう。僕には分かる。
見惚れていたのは僕だけじゃない。僕と同じように、彼女に挨拶しようと集っていた多くの少年達(と一部の少女達)、それどころか妻も子供もいるいい大人達まで、その圧倒的な美貌に見惚れ、そして心を撃ち抜かれていた。
彼女の登場と共に静寂に包まれた会場で、一番早く動いたのは僕だった。
人混みをかき分けて、彼女の前に立った僕は、この七年間で叩き込まれた作法を完璧にトレースして、優雅に頭を下げた。そして僕に見惚れている彼女の手を取り告げた。
『お初にお目にかかります、お嬢さん。私の名はカイト・ジャッカード、将来
完璧な挨拶だった、今でもそう思う。おっと、気持ち悪いとかロリコンとか言わないでくれよ? 僕は本気だ!
いやまあ、その後凄い勢いで手を振りほどかれた挙げ句、
いやああの時は本当に大変だった。エリカ嬢は激怒して僕をもう一発殴ろうとするわ(手がパーじゃなくグーだった)、それを止めようと彼女のお兄さんが出てきて殴られるわ、近くで見ていた赤髪のお姉さん(こう言わないと何故か寒気がするんだ…)とエリカ嬢の母親は大爆発してるわ、お祖父様にエリカ嬢の父親と祖父が土下座せんばかりに謝ってるわで大混乱だったよ。
まあ僕も女の子に殴られるのは初めてだったから、冒頭の台詞を日記に書いて自分への戒めとしたんだ。
もし次に彼女に会う時は、殴られないように気をつけようってね。何せ、彼女は将来僕の四人目の伴侶になるんだから。
そろそろ本編に戻るか、閑話的な濡れ場を投稿する予定です。