※この作品はR-18です。

カナンの騎士列伝 −無貌鬼と白銀の戦姫−   作:Recent

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109話 凶弾

 

 

ーーー征服歴1500年12月 王都カルネアス TBM技研ーーー

 

「伏せろ!!」

 

 TBM技研の本館に繋がる中庭に、アレクの鋭い叫び声が響く。

 

 アレクの声に即座に反応したエリカが、連合王国第一王子アリウスを即座に地面に引き倒す。

 アレクがサーベルを鞘から抜き放つ寸前、”ドオォン“という落雷のような音が響き、アレクの抜き打ったサーベルが()()()()を弾き飛ばす。

 

「っ!?」

 

 アレクのサーベルで弾かれた鉛の()()が、レンガ造りの建物の壁にめり込む。

 だが、強襲はまだ終わっていない。

 

 ”ドオォン“と、再び発砲音が響き、別の狙撃手が放った凶弾が、地面に伏せるアリウスと、それを庇うように覆いかぶさるエリカへ放たれる。

 

「チィッ゙!」

 

 アレクが即座にその射線に飛び込み、サーベルの剣腹で鉛玉を受け止めるが、弾丸の衝撃でサーベルが根本から折れる。

 

 そして狙い澄ました三番目の狙撃手が、アレクの護る二人を狙って弾丸を放ち━━

 

「使って、アレク!!」

「ああ!」

 

 エリカがアレクへ自身の懐剣を投げ渡し、アレクが流れるように鞘から引き抜いた刃が、エリカ達を狙う弾丸を叩き落す。

 代償に、エリカの懐剣もまたへし折れる。

 

「厄介な…」 

 

 アレクは、工房の屋根から自分達を狙って()()()()()()を構える狙撃手()を睨む。

 必殺の狙撃を剣で防がれるという有り得べからざる事態に動揺した狙撃手達は、即座に逃走しようとするが、アレクは懐から取り出した石を最初の狙撃手に投げつけ、その頭を砕く。

 2つ目の石で2人目の狙撃手の頭を砕いたアレクだが、そこでポケットに入れていた石は弾切れになる。

 

「ヒ、ヒイィ!!」

 

 必死で逃げようとしたする最後の狙撃手に、アレクは地面に捨てたサーベルの柄を足先で跳ね上げ、キャッチした刀身が殆ど無いサーベルを、狙撃手へと投擲する。

 

「ぐぇ…!」

 

 サーベルの柄が頭から生えた狙撃手が屋根から滑り落ち、アレク達を狙った者達は全滅した。

 

 だが、アレクは警戒を解かない。

 

「エリカ、殿下達を連れて直ぐに避難しろ!! ()が来るぞ!!」

「分かったわ!!」

「逃げた先にもいる可能性がある、そっちは任せるぞ!?」

「任せなさい!」

 

 エリカと護衛の兵士達がアリウスを助け起こし、壁になるように周囲を囲み、狙撃を警戒しながら本館へと向かい始める。

 

「ウォーカー大尉、こちらを!!」

 

 殿を務めるアレクへ、護衛兵達の隊長が自身の佩いていたサーベルを渡す。

 

「良いのか?」

「貴方がいなければ殿下は死んでいました。遠慮なくお使いください」

 

 明らかに一般兵が使う剣とは格の違う業物を渡されたアレクは、サーベルを抜きながらも確認するが、隊長は迷いなく頷く。

 

「恩に着る…殿下やエリカ達を頼む」

「大尉殿もご武運を」

 

 隊長が踵を返すのと時を同じくして、マスケット銃を装備した10人程の男達が中庭に流れ込む。

 

「覚悟しろ偽りの騎士め!! カイト様の真の力を思い知れ」

 

 男達は、アレクが逃げられないように、建物内へ避難しようとするアリウス達へと照準を向ける。

 

 アレクは人差し指と中指を立てた左手を前に突き出し、右手に持つサーベルを地面と平行に、弓を引き絞るように構える。

 

「何が”カナンの騎士“だ、剣などでカイト様が創られたこの銃が防げるものか!! 全員撃てぇ!!」

 

 おそらくリーダーであろう、中心の男の号令に従い、男達が構えたマスケット銃の引き金を引く。

 

 不発だった2丁を除く11丁のマスケット銃から、雷鳴のような音と共に鉛玉がアレクを狙い放たれる。

 

(今避ければアリウス殿下や、何よりもエリカに当たるかもしれない…ならば、叩き落とすしかない)

 

 数百倍に加速した思考の中で、アレクは即座に決断を下す。

 

 アレクは視覚だけでなく、聴覚も触覚も、そして嗅覚すらも研ぎ澄ませ、自らの()()の範囲を広げ、振り向かずとも避難しようとするアリウス達を認識し、迎え撃つ弾丸の軌道を把握する。

 

(放たれる弾丸は11、内無意味な方向の弾丸が2、俺に直撃する弾が9、俺が避ければ後のエリカ達に当たる弾は6…ならば)

 

 アレクは呼吸を整え、加速した時間の中で違和感無く身体を動かし、サーベルを振り下ろし弾丸を纏めて3発、地面に叩き落とす。

 

(次!)

 

 一歩踏み込み、振り下ろした勢いを殺さないまま剣を薙ぎ払い、更に2発、弾丸を左斜め方向へ弾き飛ばす。

 

(これで!)

 

 そして柄尻で一発を受け止め、その勢いを利用して身体を回転させ、更にもう一発を虚空へとかち上げる。

 

(9発目!!)

 

 最後の一発、己の顔面に向かう弾丸を()()()()()()()、竜を模した禍々しい仮面の左上側を砕かれながらも、致死の弾幕から生還する。

 

「な……え?」

 

 勝ち誇り、顔に醜悪な笑みを浮かべていたリーダー格の男は、銃弾を剣で防ぎ切るという有り得べからざる現実を認識できず呆然と声を発し、視界からアレクが消えた事に疑問の声を上げる。

 

「どこ……ぁ?」

 

 彼はアレクを探して振り向こうとしたところで己の視界が反転し、地面に落ちてゆくところでその生涯を閉じた。

 

「ヒッ」

「やめ」

 

 アレクに斬り飛ばされてリーダーの首が地面に落ちる前に、更に二人が首を刈られる。

 

「っ距離をとれ!! 早く装填し」

「や、やめ」

「うああぁ!?」

 

 とっさに指示を出そうとした男は指示を言い終える前に距離を詰められ、とっさに小剣を抜こうとしていた男達と共に首を落とされる。

 

「畜生っきやが」

 

 銃を捨てて勇敢に立ち向かおうとした男は、啖呵を切る暇すら与えてもらえず首が飛ぶ。

 

「死ねぇ化物ぉ!!!」

 

 距離をとり、辛うじて弾込めの間に合った男がアレクへ向けて発砲するが、射線を読んだアレクは余裕をもって躱す。

 そして弾丸はアレクではなく、まだ生きていて逃げようとしていた男の胸に当たり、運の無い男が心臓を撃ち抜かれ即死する。

 

「ひ、あえ…」

 

 最後の弾丸を放ち終えた男は、絶望に心をおられ膝をつく。

 アレクは一目散に逃げ去ろうとしている男に、死体から奪い取った小剣を投げつけて殺すと、魂が抜けたように呆然とする、襲撃者最後の生き残りにサーベルを突きつける。

 

「一応聞くが、誰の差し金だ?」

「う…あっがぁ!?」

「まあいい、後で聞く」

 

 アレクは男の手足の腱を手早く切り、自決できないように顎を砕いて無力化すると、先に避難したエリカ達を追うために踵を返した。

 

 

 

 

 




ほのぼの工場見学編がなんでこんな事に…
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