※この作品はR-18です。

カナンの騎士列伝 −無貌鬼と白銀の戦姫−   作:Recent

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難産だった…
おそらく次回で躍動編は〆る予定です









117話 茶番劇

ーーー征服歴1500年12月 王都カルネアス 貴族街ーーー

 

 新年が数日後に迫り、雪がちらつく王都の舗装された道を一台の馬車が行く。

 ”黄金の瞳を持つ龍“の紋章が掲げられたその馬車は、連合王国最強の誉れ高き七大貴族が一角、リガール辺境伯家の物である。

 

 貴族街の端にあるミスト侯爵家の別邸を出発したその馬車は、貴族街の中心部、七大貴族や王族に連なる公爵家などの屋敷の立ち並ぶ区画へと進んでゆく。

 

 そして立ち並ぶ屋敷の中でも特に王城にほど近い屋敷へと辿り着く。華美さは無いが、屋敷を囲む壁は高く、万が一の場合に籠城も可能な無骨な作りをしている。

 

 そこは王都におけるリガール辺境伯家の屋敷。

 連合王国最強にして王の忠臣たる大貴族の拠点であり、有事の際に王族が避難する拠点の一つでもある。

 

 鉄の門扉を開いた門番達は、馬車へ向けて最敬礼を行う。

 

 それは馬車に記された家紋に対してか、それとも馬車に乗りこの屋敷へと招かれた人物に対してか。

 

 

 整えられた庭には、リガール家で育てられた狼犬(ウルフドッグ)達が屋敷に侵入する不届き者がいないかを嗅ぎ回っているが、門から入ってきた馬車に対しては群れのボスに対するように従順に頭を垂れる。

 

 そして屋敷の正面玄関に停められた馬車から、コートを着た長身の男が現れる。

 禍々しい龍を模した仮面で顔を隠した男、アレクは馬車を降りると、次に降りてくる相手に手を差し伸べる。

 

 傷だらけの手に、手袋で包まれた手が重なり、馬車からアレクの恋人であり、本来ならこの屋敷で彼を出迎えるはずの美人、エリカ・リガールが優雅に降り立つ。

 軍服ではなく、お気に入りの緋色のドレスの上に白い毛皮のコートを羽織り、毛皮で作られた円筒形の帽子を被った美女は、己の伴侶に寄り添い、共に開かれた屋敷の扉をくぐる。

 

 玄関ホールには、リガール辺境伯家の王都屋敷に仕える使用人たちが整列し、本家の令嬢と、その恋人であり連合王国最強の英雄を出迎える。

 

「ようこそお出で頂きました、七代目“カナンの騎士”アレクサンダー・ウォーカー()()

「おかえりなさいませエリカお嬢様。さあ、お二人共コートを」

 

 使用人たちを代表して、白髪にモノクルの家令がアレクに頭を下げ、ベテランの雰囲気漂う老メイドがアレクとエリカのコートを受け取る。

 

 使用人たちの列の奥で、この屋敷の主人達がアレク達を歓待する。

 

「ようこそ我が家へ、七代目殿」

「光栄です、()()()()()()()閣下」

 

 エリカの父親にして、現リガール辺境伯アルトリウスは、一見すると武闘派貴族の筆頭であり現役の軍人でもある立場からはイメージしづらい、どちらかと言うと理知的な哲学者のような風貌だった。

 末娘のエリカと同じ銀色の髪は短く刈り込まれ、娘と異なり黒いその瞳には優しく穏やかな色が宿っている。

 

 差し出された手を、アレクが握る。

 その手は、アレクと同じように剣ダコが折り重なり皮膚が分厚くなった武人の手だった。

 

「君の”カナンの騎士“襲名に立ち会えなかったのは残念だよ、素晴らしい決闘だったそうだね?」

「まだまだ未熟な身ですが、閣下からそのようにご評価頂けたのは幸いです」

「謙遜することはないさ。君の活躍はミランダやヴォルスから聞いていてね。特にミランダから手紙が届いた妻()が君に会いたがって大変だったよ」

「流石ミランダおば様、リガール家(うち)で誰を味方につけるべきかわかってるわね…」

 

 陸軍大将であるアルトリウスは、連合王国の東の国門たるブリュンヒルド要塞防衛軍の軍団長として4年間、圧倒的多数の帝国軍を撃退し続けてきた。

 ブリュンヒルド要塞のすぐ後方に、リガール家の本領たるウィルムス州が存在しその支援に依るところも大きいが、それがアルトリウスの評価を下げることは無いだろう。

 ただし付け加えるとするなら、ブリュンヒルド要塞において連合王国陸軍が十全な補給を確保し士気を保つことが出来たのは、リガール辺境伯領を現在切り盛りするアルトリウスの二人の妻のお陰であるのは確かである。

 

 なので、軍状報告の名目でアルトリウスは短期間とはいえ王都に来ることが出来たが、彼の妻達は代わりがいないのでリガール辺境伯領に居残りであり、不平不満の溜まった妻達を宥めるのに、アルトリウスは帝国軍を撃退する以上の心労を覚えたらしい。

 

 アルトリウスが、握手をしている手に力を込める。

 

 

「可愛い娘の恋人をこうして迎えられて嬉しいよ」

「むしろご挨拶が遅れてしまい申し訳ありません」

 

 アレクもまた、握手に力をこめる。

 ()()()人間の頭蓋骨程度なら卵のように握り潰せる握力の持ち主ではあるが、流石にそこまで力は込めていなかった。

 

 そして互いの手が離れると、アルトリウスは和やかにアレクとエリカに微笑む。

 

「さあ堅苦しい挨拶は終わりにして、食事にしようか」

 

 アルトリウスは先導するように踵を返し、アレク達はその後を追っていった。

 

 

 

 

 

 





創作の息抜き兼ネタ出しの一環に、カクヨムにて新作を書いてみました。
本作とは世界観は共有していませんが、本作を読んでいると少しだけニヤリとできる内容…かも?

https://kakuyomu.jp/works/16818093081801746160
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