本編に戻ります
ーーー征服歴1501年4月 スペイサイド州北西部 イメーム丘陵ーーー
龍驤大隊が会議用に使っている大天幕で、王都から遥々やってきた
「お願いだウォーカー少佐…頼むから君の大隊も…いや最悪の場合は君だけでいい。一緒についてきてくれ!!」
「えぇ……」
恥も外聞も何も無いダニエルにアレクも、そして同じ天幕にいるエリカや大隊の幕僚達もドン引きする。
「…
「んなこと言われてもよお…これをお前と一緒に
「ねえ仮にも義兄になる相手をこれ扱いは酷くない!?」
アレクは目の前に置いてある土下座から目を逸らし、護衛連隊の隊長であり元上司でもあるエスタ・ハワード大佐に尋ねるが、ハワード大佐も気不味そうに目を逸らす。
アレクは心底面倒くさそうに、目の前の土下座に事情を問う。
「そもそも、なんで単に
「あー、ウォーカー少佐。俺の隊、定数不足で実質2個大隊しかいねえし、後備役部隊の寄せ集めだぞ…?」
「行って帰ってくる位なら問題ないのでは? 一応、ここから最前線までの敵兵は掃討してありますし」
「だよなぁ…」
土下座、もといダニエルの代わりに答えたハワード大佐だが、アレクに冷たく返され簡単に引き下がる。
仕方なくダニエルが、頭を上げないまま話し始める。
「言ったら君も巻き込まれるよ…?」
「必要なら
「うぇ…でも仕方ないか……」
心底嫌そうに、葛藤のもとダニエルは話し始める。
「僕が王都の参謀本部、というより実際は陛下とアリウス殿下から受けた指令は要人護送なんだ」
「わざわざ形だけとは言え連隊を連れてこないといけないとなると…まさか」
「うん、そのまさかだ…
第三王女アイネは、昨年末に行われたアレクとカイトの決闘において、王族の権限を乱用し決闘を汚した咎で国王より謹慎を命令されていた。
また既にカイトと肉体関係にあった事から、カイトとの婚姻自体は許されたが、その際に王位継承権は放棄される事も決定しておりアイネはそれに大いに反発していた。
「監視役は何をやっていたんです?」
「買収されてたみたいでね…侍女を影武者にしてかなり早い段階で脱走していたらくてね」
どっこらせとおっさん臭い仕草で立ち上がったダニエルがうんざりした顔で溜息をつく。
「どうにも龍哮大隊が匿っていたせいで発覚が遅れてね…判明した時にはアイネ殿下は最前線というわけさ……はぁ」
アレク達の後ろで話を聞いていた
「放っといてもいいんじゃないかしら。アイネ殿下も別に前線に出るの初めてじゃ無いでしょ?」
「そういう訳にもいかないんだよね…もしアイネ殿下がいる場所でカイトが戦功を挙げ続けたとしたら、
「馬鹿らしいわね。そんな事しても結局決闘でアレクに負けるだけじゃない」
憤懣やる方ない様子でエリカが不機嫌そうに眉をひそめる。
天幕にいる士官たちも、カイトに近いはずのアルバート・ケルビム大尉ですらエリカの言葉を肯定して頷く。
「まあアイネ殿下を龍哮大隊まで送り出した”革新派“も儚い願望だとは思ってるだろうさ。他に手が無いから仕方なくだろうけどね」
ダニエルはやれやれという様に肩を竦める。
だがアレクは、
「問題は
「はぁ…やっぱり分かるか。そうだよ、あんなのでも王族だ。万が一、殿下が敵に捕らえられれば、ただでさえ落ちた王族の権威が更に失墜する」
「
「あはは…君も巻き添えだよ」
「分かりました…流石に大隊は動かせません。俺だけが同行します」
「ちょ、アレク!?」
アレクの返答をエリカが咎める。
対してアレクは肩を竦めるる。
「
「だからってわざわざ行かなくてもいいじゃない」
「しばらくここを動く必要は無いからな。それに俺がいなければ、上から面倒な仕事をこれ以上押し付けられないだろ?」
決断すればアレクの行動は早い。
「ケルビム大尉、陣地の設営を急げよ」
「はっ!」
「バグラム軍曹、兵の調練は徹底しておけ」
「はっ!」
そうして自分が不在の間の指示をアレクが出し終えたタイミングで、天幕に索敵騎兵小隊の副長が駆け込んで来た。
「急報! 急報です!!」
「どうした?」
小隊長のザテレン少尉が、汗と泥まみれの副長に駆け寄る。
「まだ龍哮大隊から戻る時間では無いはずだが…」
副長は補給物資の搬送に遅れている事やその調整の為に龍哮大隊へと赴いていたはずで、到着は翌日だったはずだと、アレクは疑問を口にする。
「ぜぇ…ウォーカー少佐、
「何だと…?」
それは束の間の安穏を壊す号砲だった。
後に