※この作品はR-18です。

カナンの騎士列伝 −無貌鬼と白銀の戦姫−   作:Recent

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140話 急転(挿絵あり)

ーーー征服歴1501年4月 スペイサイド州北西部 獣国軍砦ーーー

 

 獣国軍二万の実質的な総指揮官(名目上は八大将軍第三席クッゴイ将軍)ハッフィ・ツイーガ将軍は、監視用の櫓の上から西側に陣を敷く連合王国を、実際にはその陣地とその陣地を包囲するように展開する獣国軍の間にて折り畳み式のソファで寛ぐ仮面の不審者(アレクサンダー・ウォーカー)を眺めていた。

 

「本当にただ寛いでおるのぉ」

「…そう見えますか?」

 

 いつの間にか隣に立っていたクッゴイ将軍(盟友)に、ツイーガ将軍は普段の戯けた態度を控えて問いかける。

 そんな友の問いかけに、クッゴイ将軍は皮肉げに獣のような顔を歪める。

 

()()じゃろうな」

「でしょうね」

 

 ツイーガ将軍もまた皮肉げに笑い、改めてアレクの姿を眺める。

 視線の先で、アレクは従卒の淹れたコーヒーを飲みながら、折り畳み式の机に積み上げられた本を読んでいる。遠目ではタイトルまでは分からないが、表紙の装丁があまり豪華で無いことから量産品の娯楽本なのだろうとは分かる。

 

「鎧着てますしねぇ…」

「油断は全くしておらんのぉ…」

 

 やっている事は敵地でバカンスを楽しむ狂人のそれだが、鎧をきちんと着込み手の届く場所に佩刀が置かれている事からもし奇襲をかけても返り討ちにされると思わされてしまう。

 そもそもわざわざ砦からよく見える開けた場所で寛いでいる事自体、ツイーガ将軍の配下にある暗殺者対策なのでは無いかと勘繰ってしまう。

 

「周囲に斥候は放っていますがぁ、あの部隊が邪魔で西側の森はあまり調べられないんですよねぇ…」

「一応()()()()()()のじゃろう? 仕掛けて来るとすれば今夜じゃが…」

「警戒網は敷いていますが、今のところ網には何も引っかかっていませんねぇ」

 

 アレクとの()()から既に3日が経過している。予定では明日にはアレクは有給休暇を消化し帰る、はずだ。

 

「バカンスなど確実に戯言ですがぁ、じゃあどうやって囚われのお姫様を助け出すのやら」

「夜陰に紛れて乗り込んで来るんじゃないかのぉ? あの男ならやれそうじゃが?」

「そんな力技出来るならぁ、わざわざ我々の目の前まで来てあんな風に寛ぎますかねぇ?」

「挑発か油断を誘うか、そんなところだと思うがのぉ」

 

 互いに可能性を確認しながらもどうにもしっくりこず、結局、アレクの監視と砦の警備に緩みが無いことを確認するしか対策を打てず、ツイーガ将軍は座りの悪さに前髪を弄る。

 

「……日が暮れて来ましたねぇ」

「どうする? 包囲しとる兵達の所に行くか?」

「…敵の狙いがお姫様と道化殿なのは確実です。我々が砦から離れるのは愚策でしょう」

 

 視線の先で、アレクが本を閉じ椅子を片付け始める。

 日が傾き、夕日に照らされた森が赤く染まる。直にこの地は、かつてのスペイサイド州の俗称の如く闇へと沈む。

 

「普段より明かりを多く立てましょう。兵士達にも通達します」

「ふぅむ…?」

 

 急速に視界が暗くなってゆく中、櫓から降りたツイーガ将軍が今夜の対策を部下に伝えようとしたタイミングで、森から()()()()()が届いた。

 

「のうハッフィ、この辺りは()()()()()()()()?」

「…? どうでしょう? ()が豊富なのでは?」

「…いや、これは───」

 

 違和感を感じ狼の遠吠えが響く砦の北側に視線を向けたクッゴイ将軍の言葉は、()()()()()“ドオォォォン”という爆発音に遮られた。

 

「っ!?」

「総員、警戒し──」

 

 ツイーガ将軍が命令を叫び切る前に、天空より飛来した砲弾が先程までツイーガ将軍とクッゴイ将軍が登っていた櫓に着弾し一撃で倒壊させた。

 

「─ろ…なん、と?」

「ハッフィ!!」

 

 呆然とするツイーガ将軍の襟首をクッゴイ将軍が掴み、崩れ落ちる瓦礫を回避する。

 

「やってくれたのう…疵顔の孺子」

 

 獰猛に笑うクッゴイ将軍だが、本人も知らず知らずの内にその顔は引き攣っていた。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

「観測手より発光信号、初弾はg21地点に着弾、見張り台倒壊」

「幸先が良いね。二番砲発射準備は?」

「問題ありません、ジャッカード少尉」

 

 獣国軍の占拠した砦の北側、鬱蒼と茂る原生林は外から見ると平地に広がっているように見えるが、実際には起伏に富んでいる。

 そうして生まれた窪地(標高としては獣国軍の砦より高い)に布陣した龍驤大隊索敵騎兵小隊は、持ち込んだ騎兵砲に組み立て型の架台を組み合わせ無理やり仰角を上げることで、遮蔽物となる丘を飛び越える形で砲撃を開始していた。

 

 

「斜角そのまま、()っー!!」

 

 臨時の砲兵指揮官となったクルト・ジャッカード少尉の高く凛々しい宣告と共に2つ目の騎兵砲が火を吹く。

 

「観測手より発光信号。c33へ着弾」

「砦の北部城壁か。命中した?」

「着弾は近とのこと」

「二番砲は斜角2度上に、装填準備急いで」

 

 持ち込んだ騎兵砲は6門。事前に試射が不可能な事から撃ちながらリアルタイムで射角を調整する。

 

「三番砲、()っー!!」

 

 クルトは猛烈な勢いで弾道の再計算を行いながら、射撃命令を下してくゆく。

 手元の机にはアレクが元々持っていた周囲の精密な地形図を碁盤目状に区切った写しが置かれ、着弾点が付け加えられてゆく。

 

「観測手より発光信号、敵砦にて火災発生!!」

 

 丘の上に配置した観測手からリレー方式で送られる発光信号(ランプを利用した簡易のモールス通信)により、見えない筈の獣国軍砦の被害状況がクルト達へと送られてゆく。

 

「ジャッカード少尉、全砲門初弾撃ちきりました!!」

「斜角修正は先の通りに! 自由射撃開始!!」

「了解!! 野郎ども、獣国の野蛮人共に文明国の叡智をぶち込んでやれ!!」

 

 小隊長のザテレン少尉の咆哮の下、騎兵砲が小型であろうと大砲である事を証明せんと硝煙塗れの咆哮を始めた。

 

「……今更ですが、これ捕虜に当たりません?」

「所詮は騎兵砲の小型砲弾だし、よっぽど運が悪くないと当たらないよ。それに()()だと捕まってるのは地下牢みたいだしね」

「……火災が起きてますが?」

「大丈夫、あの兄と姫様は悪運が強いから」

 

 やや心配そうなザテレン少尉に対して、クルトは口元に冷たい笑みを浮かべながら鉛筆をクルクルと回す。

 

「さて、持ち込んだ弾薬を撃ち尽くしたら撤退だね。申し訳ないけどまた後ろに乗せて下さい、ザテレン少尉」

「……へいへい、ジャッカード少尉」

 

 実の兄と元婚約者(王族)の安否に欠片も興味を示さない、美しくも目に闇を宿した美少年の頼み事に、歴戦の騎兵は辟易しながら頷いた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

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◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「さて、休暇は終わりだな」

 

 獣国軍の砦が蜂の巣をつついたような阿鼻叫喚に苛まれる中、アレクは愛馬に跨り、その混乱の坩堝へ向かわんと刀を引き抜いた。

 

 

【挿絵表示】

 

 





200話を突破した記念というわけでもないですが、仕事関連でChatgtpを始めたので使い慣れる為に本作の挿絵を生成してみました。

(挿絵あり)の話には挿絵を入れていきますので、折角なので見直して頂けると幸いです。
上手く絵が生成出来ればエロシーンなどにも活用したいなと考えております。
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