ーーー征服歴1501年4月 獣国軍砦 臨時指揮所ーーー
龍驤大隊の騎兵砲による擾乱射撃を受けた獣国軍の指揮官ハッフィ・ツイーガ将軍は、砦内の部隊の混乱と並行して発生した火災に対処するため、普段使用している執務室ではなく中庭に設置した臨時指揮所で陣頭指揮を執り続けていた。
「ツイーガ将軍、北部兵舎及び兵糧倉庫で発生した火災は鎮火しました。しかし、倒壊した東部兵舎にて新たな火災が発生しています」
「手隙の兵を西部へ、元々当直業務に割当てられていた兵は城壁の確認を──」
司令官が陣頭で指揮を行ったことで混乱は徐々に収束し、火災もまた怖れていた程には広がらなかった。
念の為、地下牢のある中央兵舎にクッゴイ将軍と彼直属の精鋭を警備として向かわせたが、砲撃も止まった今なら呼び戻しても大丈夫だろうとツイーガ将軍が緊張を解こうとしたタイミングで、西側、即ち
「てっ、敵襲ーー!!」
「「「!!!?」」」
そして悲鳴は途切れ、新たな悲鳴達が砦内に響き渡る。
「ざっ」
「グフぇ」
「ドォ」
「ギャ」
「ゲレぇ」
中途半端に途切れる断末魔が、中央指揮所へ
それに追い立てられるように、悲壮な顔をした伝令が指揮所へ駆け込み───
「お逃げくださいツイーガ将軍、顔な…し?」
だが伝令が命懸けの報告を終える前に、その首が胴体から離れる。
首を失った胴体は、まだ自分が死んだことに気づかないかのように落ちた首を両手で受け止め膝をつく。首の断面から間欠泉のように血飛沫が舞い、赤い噴水の向こう側から
「
「貴様!!」
「っまて!?」
ツイーガ将軍の脇に控える護衛達、ツイーガ将軍から直接技を叩き込まれた暗殺兵団の精鋭が、己の師の制止を振り切り
残酷で、非現実的で、いっそ幻想的とすら評しうるその光景に、ツイーガ将軍はようやく思考のスイッチを切り替え叫ぶ。
「退避ぃぃ!!」
司令官の厳命にその場にいた非戦闘員は弾かれたように逃走し、護衛の兵士達が武器を構え、ツイーガ将軍は書類の積まれた机を
逃走し体勢を立て直すため、己の姿を
曲芸か、または戯画じみたその選択を彼が行ったのは、今ここで
「冗談でしょう…?」
思わず漏れた愚痴は、己の直感が正しかったという証明。
ツイーガ将軍の視界の中で、
「
ツイーガ将軍の袖口から
「ぐぅぅ!!」
常人なら、否、鍛え上げられた精鋭ですら何が起きたか分からぬ内に首と胴の泣き別れする
牽制の手裏剣で斬撃の軌道を限定したとはいえ、
鋭く、それでいて戦鎚の一撃よりな重い斬撃に愛用の短剣を圧し折られながらも、腕だけでなく全身の筋肉を連動させ致命の一太刀を受け流したツイーガ将軍は、衝撃に逆らわずそのまま後方へと跳ぶ。
無様に地面を転がりながら
鉤爪を用い、
「ぜぇ…老人にこんな運動はっ!?」
死地を脱し安堵の息をつこうとした所で、殺気を感じたツイーガ将軍は即座に振り向き両腕で急所を護る。その直後、窓から
「ガバっ、ぐぁ…っ」
盛大に部屋内の家具を破壊しながら吹き飛ばされたツイーガ将軍は、血反吐を吐きながらも次々に叩き込まれる
「つぅぅ」
血の匂いが充満する地獄のような部屋で、ようやく新手の死体が飛び込んで来ないのに安堵しようとした所で、ツイーガ将軍は部屋の床に違和感を覚える。
「……勘弁してもらえません?」
痛む身体にムチを入れて飛び退いたツイーガ将軍の立っていた床が
「人の部下を何だと思ってるんだあの男は!!」
やる方も殺られる方も正気を失いそうな攻撃に思わず叫びながら、ツイーガ将軍は必死の形相で血と臓物で満たされた部屋から逃げ出した。
そして崩れた床の下から現れた血塗れの
ジークアクス最高でした。
だからという訳ではないですが、今話のアレクはジオン兵視点での連邦の白い悪魔をイメージして書いてみました。