ーーー征服歴1501年4月 獣国軍砦中央棟ーーー
「
搾り出される罵倒を気に留める事もなく、
そんな
「フッ、フフ…完敗ですよ、まぁ始めから私如きが貴方に勝てるとは思いませんでしたがねぇ」
血の気の失せた青白い顔で、目を血走らせてツイーガ将軍はアレクを嘲笑う。
「ですが…」
ツイーガ将軍の口角が上がる。
「
その言葉に反応した
「っ!!」
「貴様の負けだ
ツイーガ将軍の叫びに呼応する様に、石壁を突き破って現れるは獣国八大将軍第三席エイブ・クッゴイ、獣国軍最強戦力である。
「ゴアァァァァァァ!!!」
仁王の如く鍛え上げられた肉体を重厚な鎧で固めたクッゴイ将軍が、羆の如き咆哮と共に突撃しながら身の丈を超える大戦斧を無手の
荒々しい見た目とは裏腹にその超人的な膂力を精密な技巧により完璧に制御しきったその一撃は、回避も防御も許すこと無く鋼鉄の鎧すら紙の如く斬り裂き人体など容易く両断する。
それは数瞬後にアレクに訪れる確定した未来
相手が、
「
「なんとぉぉ!!?」
絶殺の斬撃を、
頭の高さを越えて持ち上げられた
板鉄で補強された軍用ブーツの踵と、獣国ではなく帝国の名工によって鍛えられた大戦斧の刀身が激突し轟音と共に激しい火花を上げる。
高級品とはいえ規格品の軍用ブーツとオーダーメイドの大戦斧、
「オォォォォぉ!!?」
獣国最強、剛力無双の英雄は
完全に
大戦斧を蹴り砕いた左足がクッゴイ将軍の右足を踏み砕く。そして逃げ場の無くなった
「ぬうぅぅぅ!!」
人間の頭を熟れた果実の様に容易く握り潰す慮外の握力を有するアレクの拳は、人間の顔面など容易く殴り潰す。右足を踏み砕いて固定された状態ならば、その威力に逃げ場なく頭蓋骨を
全力で叩き込まれんとする必殺の拳骨に対して、クッゴイ将軍に出来ることは殆ど無い。足を固定され身は引けず、両腕は武器を握ったままで防御も間に合わない。そもそも体勢を崩されているため拳をかわす余裕など無い。
絶命までの一瞬が、極限の集中により数百倍に引き伸ばされる。
手甲で護られたアレクの拳が己の顔面に迫る最中、クッゴイ将軍はそれでも諦める事だけはしなかった。
逃げることも防御することも出来ない。
そう、それはつい先程の
「ゴオオォォォォ!!!」
猪の頑強な頭蓋骨すら叩き割るアレクの拳骨に、クッゴイ将軍は
自由の利く背筋を用いて、極限の集中によりインパクトの瞬間を完璧に合わせたカウンターのヘッドパッドがアレクの拳骨と激突し、室内に再び轟音が響く。
クッゴイ将軍の兜が砕け、肉が裂け血飛沫が飛ぶ。
「グゥオオォオォォォ!!!!」
噛み締めた奥歯が砕け、目と鼻から血が噴き出す。
互いに踏みしめた床に亀裂が入り、肉と骨の砕ける生理的嫌悪感を齎す音が呆然と戦いを傍観するツイーガ将軍の耳へと届く。
そして大陸屈指の剛と剛の激突は───
「チッ」
ツイーガ将軍の目の前に
「ガッ…ハッ、…ガはッ」
対して、クッゴイ将軍は額と両目、鼻、口から血を流し、砕けた大戦斧の柄に縋るように膝をつく。
「馬鹿な……」
ツイーガ将軍が呻くように呟く。
交戦時間は僅か数秒。
だが、必殺を期したクッゴイ将軍の奇襲は失敗に終わり、逆襲により追い詰められたのは奇襲した側である。
策も、罠も、無双の剛力すらも、
ラドロス少尉(故人)がアレクに殴られて生きてたのは、殴られた時に踏ん張りが効かずぶっ飛ばされて衝撃が逃げたからです。