本来の予定ならもう最終決戦が終わってる話数だったのに書きたい話がどんどん増えていくので決めました
書きたい話は全部書きます!!
151話 逆鱗 ①(挿絵あり)
ーーー征服歴1501年
獣国軍に捕らえられた第三王女を救出した龍驤大隊は、拠点を設営していたイメーム丘陵の防衛を後続の部隊に引き継ぎ、休養と再編の為に後方拠点であるカルメリア基地へ帰還した。
その際に大隊長であるアレクが軍団本部に出頭命令が下され実質的な軍法会議にかけられ、副長のエリカや半ばアレクの信奉者と化したクルト・ジャッカード少尉がキレて実家の権力を駆使してまで軍団首脳部(参謀長のカレウス・グランツ少将を含む)を失脚させようとするなどちょっとした事件は起きたが、龍驤大隊自体は概ね平和に休養と再編を行っていた。
アレクやクルト、そして戦務参謀のアルバート・ケルビム大尉が中心として纏めた戦訓を下に、龍驤大隊は欠員の補充の他に新たに一個歩兵中隊(二個小隊200名強)が加わることとなる。
なので、方面軍司令部の頭越しに
その歴史的な成り立ちから半ばミスト侯爵家の私兵であった海軍は、5代目“カナンの騎士”時代の組織改革により陸軍と同格の軍組織として連合王国軍に組み込まれたが、ミスト家の影響力が失われた訳では無い。海軍の要人の多くはミスト家の係累やミスト家の領地出身者で占められている。長年の組織拡大によりその比率は徐々に低下しているが、それでもミスト家が実質的な海軍のオーナーである事は否定できない。
なので、現ミスト侯爵たるミランダ・ミスト海軍大将(連合王国第一艦隊司令官兼陸戦隊総司令官)の命令は海軍にとって国王の命令の次に絶対である。
「なるほど、貴官達が龍驤大隊に着任したのはやはりミランダ様のご指示か」
「ハッ! 我が中隊は中佐殿のご要望を全て満たしていると自負しております」
龍驤大隊へ出向した海軍陸戦隊中隊長にしてミランダの娘婿でもあるフリッツ・アーフェン中尉は、アレクから発せられる
「既存の部隊との連携訓練等については明日、改めて戦務参謀より説明がある。長旅で疲れただろう、少ないが酒も用意してある。今日は英気を養ってくれ」
「…ハッ、有難くあります」
発せられる威圧感とは真逆の気遣いのある台詞に、フリッツは逆に緊張感を引き上げる。
着任の挨拶に同行した中隊副長と小隊長達、そして歴戦の最先任曹長もまたアレクの威圧感に無表情を必死に保ちながらも額には冷や汗が浮かんでいる。そして下手な戦場や大時化の海原よりなお怖ろしいアレクの殺気を正面から浴びながらも平静を保ち受け答えしている(ように見える)フリッツに隠れて尊敬の視線を送っている。
(こいつら俺に
大隊長室に部下達と、そして
(まだ爺ちゃんに無人島に放り込まれた時とか、兄貴達に猛獣達が解き放たれた闘技場にぶち込まれ時よりマシだ…少なくとも今すぐ死ぬことはない……よな、大丈夫だよな!? おいエリカ目を逸らすな!!?)
幼少期の壮絶な訓練を思い出しながら現実逃避しつつ、フリッツは救いを求めて
「ところで一つ良いか、アーフェン中尉?」
「ハッ、何でしょうか!?」
何でもない事のように、それでいて感情が不自然なほど抜け落ちた平坦な声音で問われたフリッツは必要以上に声に力を込める。
「先触れでは、貴殿達と共に
「………はい」
アレクから発せられる、もはや物理的な圧力すら感じそうな程の殺気に気圧され、フリッツは額に冷や汗を浮かべながら小さく頷く。
「なるほど」
付き合いの浅いフリッツでは、アレクが禍々しい龍を模した仮面の下でどのような表情をしているのか読み取る事は出来ない。だが祖父と二人の兄により鍛え上げられたフリッツの生存本能が、下手な事を言えば命に関わると脳内で警鐘を鳴らし続けている。
感情の読めない鋭いアレクの視線が、フリッツの隣に立つ
「お前が新しい秘書官だと、そういう事だな?」
短くも濃密に過ぎた戦場生活で4年前より重く、そして低くなった声がその名を呼ぶ。
「
「はい。にいさ……ウォーカー中佐殿」
名を呼ばれた少女は、白く滑らかな肌を緊張でより白くしながらも、アレクへ型通りの綺麗な敬礼を行った。
※お知らせ
設定資料集(人物編)にレナの立ち絵(私服姿 過去)を追加しています