※この作品はR-18です。

カナンの騎士列伝 −無貌鬼と白銀の戦姫−   作:Recent

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154話 新たなる任地

ーーー征服歴1501年6月 スペイサイド州北部 エーギルン郡前哨砦ーーー

 

 休養と再編を終えたアレク率いる龍驤大隊は、軍団本部の指示に従い次の任地へと早急に移動した。

 

「ようこそ北の最果てへ、ウォーカー()()

「お出迎え有難うございます()()()()()()殿()。それとも()()()()()と呼ぶべきで?」

 

 現在スペイサイド方面軍が制圧した地域の最前線、その最北端に設営された前哨基地の司令室で、アレクはこの地区の制圧を任された連隊の司令官を()()()()()()()エスタ・ハワード大佐と冷ややかな挨拶を交わした。

 

 因みに、連隊の基幹人員は以前第三王女を回収するために臨時編成された連隊がほぼそのまま使用され、輜重隊や工兵隊などが追加されただけである。

 

 ハワード大佐は心底嫌そうに顔を顰める。

 

「やめろ。()()()()()()()を無駄に格式高く言っても嫌味にしかならねぇだろうが」

「お望み通り出世できて良かったじゃないですか」

「俺の望みは()()()後方勤務なんだよ! なんで毎回危険な前線でお前の世話係しないとなんねぇんだよ!!」

「俺の上司で半年以上生き残ったのが大佐だけだからでしょう」

()()()それ言うと冗談でも笑えねぇんだが」

 

 舌打ちしたハワード大佐が窓から彼らの新しい任地を、スペイサイド州の北端に広がる湖沼帯を眺める。

 

「ケッ、また()()に戻って来る羽目になるとはな」

()と違って冬ではないだけマシでしょう。流石に何度も寒中水泳するのは身体に悪いと学びましたので」

「俺は危うく凍死しそうになったんだが!?」

「……何があったのよ?」

 

 共にハワード大佐へ挨拶に来ていたエリカが、普段の数割増しで現実を嘆く被害者(ハワード大佐)の姿に首を傾げる。

 何気なく溢れたエリカの疑問に、ハワードは盛大に顔を顰めながら忌々しそうに当時はまだ成り立ての中隊長(中尉)だった部下を睨む。

 

「言ってねえのかよ」

「…俺の主観で話すのは公平性を欠くかと」

「あー…それはまぁ……うん」

「ゴメン聞き方変えるわね。アレク、貴方ここで()()()()!?」

 

 先程まで不機嫌だったハワードが遠い目で虚空を見始めた事で、エリカが咎める様にアレクの肩を揺らす。

 

「何と言われても……大佐、これどこまで話していいんですかね?」

「ここでの作戦に関わりそうな事は喋っていい……のか?」

「露骨に不安煽るの怖いからやめて!?」

 

 普段なら余計な事は話さないが必要な事なら(軍事機密でも)迷わず話すアレクが本気で悩んでいる様子に、エリカは自分の不用意な発言を後悔し始める。

 

「まぁ、獣国軍の指揮官が()なら話すべきなんじゃねえか?」

「そうですね…ジルベルト少将からも最優先で()()と言われてもいましたし」

「お前()()その小遣い稼ぎやってんのか」

「金は幾らあっても困りませんよ?」

「ねえ私先に帰っていい…?」

 

 途中からわざとらしく意味深な会話を始めた二人に、本気で後悔し始めたエリカが逃げ腰で尋ねる。

 

「丁度いいから大隊の幹部達を集めて来てくれ」

「あ、ついでにうちの連隊の参謀達も頼む」

「ちょっ…!?」

「バグラムとエクトル中尉は先に来てくれと言っておいてくれ」

「あとうちの連隊の兵站幕僚もな。俺ら以外だとその三人しか()()知ってて生きてる奴いねえしよ」

「みんな…ゴメンネ」

 

 これから知らされる事が絶対厄ネタだと確信したエリカは、自分以外の被害者を可能な限り巻き込む為にトボトボと司令室を後にした。

 

 





次回(過去編)への繋ぎ回なのでちょっと短いです
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