漆黒の騎士王、新宿、ラブホテル…何も起きないはずがなく? 作:すこやかおにぎり研究所
・藤丸くんの服装はロイヤルブランド(漫画版などでもおなじみのZeroセイバー風な黒スーツ礼装)を想定
「ところでオルタさん……もといアルトリア、オレに着いてきてほしい所って?」
――1999年、亜種特異点・新宿。
人類最後のマスターこと藤丸立香は、特異点で出会ったサーヴァント・アルトリア〔オルタ〕に連れられるまま、
「……こっちだ、付いてこい」
彼女に手を引かれながら、ビルの裏口とおぼしき扉をくぐる。
――かつん、かつん、と歩みを進める。
彼女の手にこもる力が、若干だけど――さっきまでより強いような? 手のひらから伝わる体温も、なんだかちょっぴり熱いような。……立香がそんな違和感に首をかしげているうちに、気付けばとある部屋の前。
「暗くて分かりにくかったけど――そっか、ここってもしかしてホテル? どうりで廊下に出てから、足元がずっとふかふかだと思った」
なるほど、それなら絨毯張りの床にも、この
「――よし、空いたな。入るぞマスター」
「あ、うん。靴……は脱がなくていいのか。ホテルだもんね。お邪魔しまーす」
――ぱち、と照明スイッチオン。
まず視界に飛び込んできたのは大きなベッド。それも王者の風格、どーんと大きなキングサイズ。真っ白なシーツにむっちりとしたホテル枕、年甲斐もなくダイブすればきっとトランポリンのように跳ね返されること間違い無しであろうふかふかのマットレス。
助走をつけて飛び込みたくなる衝動を抑え、深呼吸。立香は部屋の中を見渡す。
ブゥンとうっすら音を立てる、レトロな小型の冷蔵庫。二十世紀末にはありふれたブラウン管の分厚いテレビに、"
硝子張りの……え、ガラス張りの?
「えーと……もしかしなくても……知ってる、」
こみ上げてくる羞恥と体温、そして動揺、動転、困惑。
「ラ、…………ラブホだこれーーーー!!?」
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ここから一人称視点・藤丸
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「これー、これー、これー……(セルフエコー)」
「ようやく気付いたのか貴様! まったく、本当にこれが世界の危機を救った人類最後のマスターか……!?」
鈍いにも程があるぞ、とため息を付くオルタ……もとい、アルトリア。
彼女の指摘はもっともだ。頼れるサーヴァントが一緒とはいえ――さらに言うなら彼女直々に誘われたとはいえ、ここは特異点。相手の意図や周囲の状況がわからないなりに、もっと観察や分析に努めてしかるべき、それはそう。
ホームズなら少し彼女と歩いただけで、あるいは彼女に声をかけられた時点でどこへ向かうのか察しが付いてたりしたんだろうか――なんてしょんぼりしながら考えていると、繋ぎっぱなしだった片手をほどいてアルトリアが冷蔵庫に近寄っていく。
「マスターは……いや、未成年か。仕方ない、オレンジジュースでいいな?
……む、サイダーもあるのか……悩ましい選択だな。どうする、マスター?」
『オレンジジュースで』『サイダーがいいな』――脳裏に浮かんだ選択肢はもちろんふたつ。
……でも、相手はお行儀の良い上品な食事よりもジャンクなそれを好むアルトリア・オルタさん。それなら、いっそ……。
「混ぜちゃおっか。誰も見てないし、ドリンクバーみたいにさ」
――猫のような『への字口』が、ニヤリと不敵な笑みに変わった。