※この作品はR-18です。

テイマー職は奴隷商!?   作:可愛ケイ@VTuber兼小説家

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第10話『だれかを守る背中』

 目を覚ますと、ボクは天井の木目を見上げていた。

 背中には固い感触。

 

 ボクはベッド……ではなく、なぜかその脇の床に転がされていた。

 ひとまず疑問も脇に置き、生きていたよろこびを噛みしめる。

 

「きひっ、きひひっ!」

 

「うわ、気持ち悪っ」

 

「っ!?」

 

 気づかなかった。すぐそばにエルフ少女がいた。

 彼女は自分の腕を抱いて『鳥肌が立った』とジェスチャーしていた。

 

 寝起き早々、美少女から嫌悪の視線で見られる。

 うん、ご褒美だな!

 

「人間ってみんな、そんな笑いかたするの? ……ところで、傷はどう?」

 

「ぇっ、……ぁ」

 

 本当だ。身体から痛みがほとんど消えている。

 身体中をペタペタと触ってたしかめると、ここも、そこも傷がない。

 

「ケガなら<キュア>をかけたから、まぁそれなりに治ってるんじゃない? あんたのケガ、見た目よりはずっとダメージが少なかったし」

 

 それはレベルアップによってHPの上限が増えて、結果的に回復しただけだ。

 でも、よかった。

 

 幸いにも、エルフ少女は約束を守って助けてくれたようだ。

 それに、まだ彼女の父と対面させられてもいなさそう。

 

「で? なにか言うことあるでしょ?」

 

「……?」

 

「チッ」

 

 いきなりエルフ少女が舌打ちした。

 そういえば、寝起き以来ずっと機嫌が悪い。

 

「助けてもらったら『ありがとう』でしょ。あんただって、いい大人じゃないの? 人間って、そんな当たり前のことも親から教えてもらわないの?」

 

「ぁ、う……ぁっす」

 

「あ~、もーいいから。今さら遅いし。気持ち悪いからやっぱ黙ってて」

 

 なぜ、こんなに怒っているのかわからない。

 マナーに厳しいのか、あるいは彼女自身がそう躾けられてきたのか。

 

 あるいは、これがツンデレなのか?

 間違いなくすでにフラグは立っていたはずだし。

 

「……」

 

 とてもそうは思えず、ボクは逃げるようにエルフ少女から視線を外した。

 それで気づく。

 

 この部屋、四角形をしていない。

 天井を見て木造建築だと思い込んでいたが、ただのソレではなさそう。

 

 家具も木製ばかりで、窓にはガラスもハマっていない。

 手を伸ばせば庭? に生えている木の枝葉に手が届きそうだ。

 

 エルフらしいと言えばエルフらしい家、なのだろうか?

 ゲーム時代、わりと偏った遊びかたをしていたせいで、こういう部分はあまり覚えていない。

 

 ぐるっと視線で室内を一周し……。

 背後に、巨大な影があったことに今さら気づく。

 

「きひぁぅぼぁひッ!?」

 

 ビックリして、思わず変な声が出た。

 いつからそこに立っていたのか。テオがそこにいた。

 

「お、脅かすなよ! クソッ、このクズが!」

 

 ボクはキレてテオを蹴りつける。

 そのとき「ぷっ」と、一連の様子を見ていたエルフ少女が吹き出した。

 

「ぷふっ! ダッサ!」

 

 羞恥でカァっと全身が赤く染まったのがわかった。

 熱いを通り越して、身体中が痒いほどだった。

 

 気になっている女の子に笑われた。

 なぜか、許せないほどに感情が高まった。

 

「……ひっぐ、ぇぐっ」

 

「えっ? なにあんた、マジで泣いてるの!? うわぁ~。人間ってホント意味わからない。けど、見ている分には滑稽でおもしろいかも……ぷふっ」

 

 笑われた、笑われた、笑われた。

 そう自覚したとき、ボクの中でなにかがプツンと切れた。

 

(――もういいや(・・・・・))

 

 なんだかフラグとか全部どうでもよくなった。

 だいたい、エルフ少女がなにを考えてるのかもよくわからないし。

 

 決めた。もう、なにもかもムチャクチャにしてやる。

 痛めつけて、傷つけて、犯してやる。

 

 最後には「ごめんなさい」ボクにすがりつかせてやる。

 そうして、ボクが恥をかいたという事実を消してしまおう。

 

(見てろよ。だれが”上”か教えてやる!)

 

 ボクの胸中に暗い笑みが浮かんだ。

 目が合った。エルフ少女の視線はボクを見下していた。

 

「ふん、なに睨んでるのよ。カンにでもさわった? べつに事実じゃないの」

 

「……っ」

 

 ボクはとっさにうつむいた。

 エラそうなことを言ったが、結局まだ目を合わせるほどの勇気もなかった。

 

 人間、そんな簡単に変われるなら苦労はない。

 ボクだって引きこもりになんてならなかった。

 

 しかし、そんなどっちつかずな態度がいけなかったのだろうか。

 ぼそりとエルフ少女が呟いた。

 

「……あんたのその目、むかつく」

 

「ぇ?」

 

 エルフ少女が腕を突き出し、宙を握り込んだ。

 そして、キーワードを唱える。

 

「マジック――<クリエイト・ウェポン>!」

 

 エルフ少女の手に淡い光に集い、細剣が形成された。

 次の瞬間、少女はそれを振り抜いていた。

 

(っ!? 死っ……!?)

 

 細剣がボクを分断した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――かと、思った。

 

 寸前で、ボクの足が払われた。

 ガクンとバランスを崩し、後ろへ転んでいた。

 

 刃がボクの目と鼻の先、すぐ真上を通過した。

 ビュッ! という風圧が一拍遅れて、ボクの額を叩いた。

 

「……ぁ、ぁ」

 

 パクパクと口を開閉させるも、悲鳴すら出ない。

 エルフ少女は「フンっ」と鼻を鳴らした。

 

「さすがはテオオザル、身体能力だけはムダに高いわ。いい反応。それにペットって忠実なのね?」

 

 え? テオオザル?

 そうか。今、助けてくれたのはテオか。

 

 エルフ少女は再び剣を構えた。

 テオがボクを背に庇うように立ちふさがった。

 

「……」

 

 ボクはテオの背中を見上げていた。

 この行動は、ボクがテイマーだから、命令していたからだ。

 

 そんなことはわかっている。

 けれど……。

 

(だれかに守ってもらえるなんて、いつ振りだろう?)

 

 ボクはすこしだけ動揺した――。

 




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