エルフ少女の秘密基地をあとにしてから、およそ1時間。
ボクたちは地面に降りていた。
そして、巨大樹の森を歩いて――いなかった。
「あんた、驚くほどなっさけないわね」
先を歩いていたエルフ少女が、振り返って言う。
苛立ちを通り越したのか、もはやその視線には呆れが混ざっていた。
(うっせぇえええ! 体力がないのも、裸なのもボクのせいじゃないねぇっつーの!)
テオにおんぶされた状態で反論するのもなんだが……。
運動不足ももちろんあるが、ボクが本当にへばっている原因は『状態:水分不足』だ。
もし、これが進行したら『状態:脱水症状』にでもなるのだろうか?
そうなったら……。
(もう、死ぬのはもうゴメンだぞ!?)
コーラじゃなくてもいいから、なにか水分を取らないと。
ボクは掠れた声でエルフ少女に訴えた。
「み、ず……、こほっ……」
「なにあんた、のど乾いて動けなかったの? そういう言い訳、いらないんだけど?」
(……! やった、伝わった!)
ボクもそろそろコミュニケーション能力が上がってきたようだ。
返って来たのは相変わらずの辛辣な言葉だったが、これで解決……。
「ガマンしなさい。このあたりに飲み水はないから」
「!?」
そんな無情な!?
それに、ないなら出せばいいだろ? こういうときのための魔法じゃないのか!?
「あーはいはい。なにが言いたいのかはわかるけど、意味ないわよ。だって魔法で出した水は飲めないから」
「……」
いや、結論だけ述べられても困る。
きちんと理由を説明しろ理由を。
正直、納得できない。
コイツ絶対、ボクに対して魔法を使いたくないだけだろ。
「はぁ、信じてないって顔ね。フンっ。だったら口を開けなさい」
ボクの無言の返答を受け取り、エルフ少女は嘆息した。
ちょっとずつ、彼女のボクに対する読解力が上がってきている気がする。
ボクは言われたとおりに口を開けた。
彼女は人差し指を立てて、唱える。
「マジック<ウォーター>」
エルフ少女の伸ばした指先から、ちょろちょろと水が溢れはじめた。
彼女はニヤニヤと笑っていた。
「あんた、口に入った分は全部、1滴残さず飲み干しなさいよ」
指先がボクの口元に差し出された。
え? 本当にいいのか?
「ちょっと、早くしなさいよ。魔力がムダになるでしょ」
ボクは急かされ、意を決する。
相手が許可してるんだから、いいんだよな?
「きひっ。い、……いただき、ます……ぱくっ!」
そして、ボクはエルフ少女の指先にしゃぶりついた。
咥えた彼女の指先は、ものすごく……柔らかかった。
「~~~~!?!?!?」
エルフ少女がガキンと硬直していた。
髪がぞわっと逆立っていた。
なにを驚いているんだろう?
けど、そんなことどうでもいいか。
(き、気持ちいいぃいいいっ!)
なんだこのすべすべとした触感は!? ぷにぷにとした
あぁっ、一生このままでいたい!
魔法で作られた水が口内に溜まっていくが、構うものか。
ボクはぶちゅぶちゅと指先を堪能する。
口で息を出来ない分は、フゴフゴと鼻を動かして呼吸した。
1秒でも長くエルフ少女の指を味わうのだ。
「べろんべろん、ちゅぱちゅぱ、じゅるるるぅっ……!」
エルフ少女の指の形を覚えるかのごとく、舐めまくる。吸いまくる。
興奮し過ぎて、味なんてわからない。
けれど、舌に触れるきめ細やかな肌はボクに『美味』という感情を抱かせる。
それを甘噛みすることで、さらに堪能する。
簡単に噛み切れそうな、柔らかくてほっそりとした指先。
歯茎がムズムズしてしまう。
「じゅぶっ、はぁっ……!」
あぁっ、なんでこのエルフ少女の指は、こんなにもおいしいんだろう!
もっと強く噛み締めたら、いったいどれほどよいだろう!?
彼女が痛みに悲鳴を上げる瞬間を見たかった。
同時に、永遠にこの歯がゆさを感じ続けたいという思いもあった。
そんな二律背反の思いは、しかしどちらも叶うことなく終わりが来る。
口中が、水でいっぱいになってしまったのだ。
「ひっ、ひぃいいいイヤぁああああああッ!?」
同時に、ほとんど白目を向いていたエルフ少女が我に返った。
指を引き抜き、ボクを蹴り飛ばした。
ボクは最後の一瞬まで、彼女の指を堪能した。
人生一の肺活量を発揮して「ちゅぽんっ」と吸い尽くした。
「……んむっ、ふんむぅぅっ」
ボクのチンポは完全に勃起していた。
それに、まだ最後の楽しみが残っている。
口中に溜まったエルフ少女が出した水。
それを彼女のエキスとかき混ぜるように口内でしっかりと味わい……。
「ブフゥウウウウウウ!?」
ボクは顔を背け、勢いよく吹き出した。
真横に立っていたテオがそれを頭から浴びて、ビショビショになった。
「ごはっごはっごはっ!? んだ、コレぇ!? にっがぁっ!?」
まだしも小便のほうがマシでは? と思えるほどにヒドい味だった。
そもそも、これは本当に水なのか?
「ぺっ、ぺっ!」
口内に一滴も残すまい、と執拗にツバを吐く。
後味も最悪だ。まだマズさが舌にこびりついている気がする。
「あっ」
そこで我に返った。
エルフ少女が静かに肩を震わせていた。
「だ……だれがっ! 直接っ! 口をつけていいなんて言ったぁあああっ!?」
これ、やばいかも……!?