※この作品はR-18です。

テイマー職は奴隷商!?   作:可愛ケイ@VTuber兼小説家

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第15話『エルフの父娘』

 

「だれがっ! 直接っ! 口をつけていいなんて言ったぁあああっ!?」

 

 トリップから回帰したエルフ少女がブチ切れていた。

 えっ、そうしろって意味じゃなかったのか!?

 

「キモい、キモい、キモいキモいキモいッ! マジでイミわかんない! なんで直接、咥えるの!? ありえないでしょ!? サイッテー! もうやだ、死にたい! 殺すっ!」

 

「ヒィイイイ!? たっ、”助けて”テオっ!」

 

 命令を聞いたテオは、すぐさまボクを担いで逃げ出した。

 背後でマジック発動の予兆であるエフェクトが光った。

 

 テオは巨大樹の裏側へと飛び込む。

 爆発音が響き、遮蔽物にした巨大樹の木片と爆風が飛び散った。

 

「……っ!?」

 

 ボクは恐怖で悲鳴をあげることすらできない。

 そんな中、テオは爆風に紛れ、ボクを担いだままほかの巨大樹へと場所を移動した。

 

「チッ、いない!? クソッ、逃げるな! 殺す! 絶対に殺してやる! ……そうよっ! あんた、全部飲めなかったじゃない! これは正当な罰よ! 約束だったでしょ!? だから戻って来なさい!」

 

 あれはエルフじゃない。鬼だ!

 いずれはここも見つかるだろう。

 

 もうダメだぁ! ボクはここで死ぬんだぁ~!

 そう、諦めかけたときだった。

 

 

「――”エリィ”!」

 

 

 どこからか声が響いた。

 男性の声、だと思うのだがやけに透き通った音色をしていた。

 

 どこか中性的で、妙に耳に心地良くって……。

 それが逆に、なぜかボクの癇に障った。

 

「え!? お、お父さん!?」

 

 エルフ少女――エリィが慌てた様子で返答する。

 って、お父さんだって!?

 

 ボクは状況を察した。

 娘を心配して彼女の父が探しにやってきたのだ。

 

(というか彼女、エリィって名前だったのか)

 

 そういえばボク、今まで名前すら知らなかったのか。

 そのことに、ボクは驚……かないな、べつに!

 

 コミュ力を考えれば、むしろ当然の成り行きだわ。

 ボクは息を潜め、エリィたち親子の会話に耳を澄ませた。

 

「エリィ、なぜここにいる。いったい、ここでなにをしている」

 

「それはっ。お、お父さんには関係ない、もん」

 

 あれだけボクに対して高圧的だったエリィだが、今は形無しだった。

 もにょもにょとはっきりしない声で、口先だけの反論をしている。

 

「魔法を使っていたようだが、まさか敵でもいたのか!?」

 

(もしかして、ボクの存在はバレてない!?)

 

 一瞬、光明が差しかけたが……どうやら、そんなことはなかったらしい。

 「その質問を待ってた!」と言わんばかりに、エリィは声のトーンを上げた。

 

「そ、そうじゃないよっ。でも、聞いて! あのねっ! あたし、おもしろいものを見つけたのっ!」

 

 あぁ~っ! 終わった!!

 ボクはこのままエリィの父に見つけ出されて、処刑されるのだろう。

 

 全裸のおっさんと、年頃の娘。

 なにもしていません、と言って信じるやつがどれだけいる?

 

 ボクが死んだ原因でもある、弟の彼女に対するレイプ未遂と同じだ。

 結局、人は真実よりも外見やステータスですべてを判断する。

 

「それでねっ! 今、そいつがあっちのほうに逃げたから、捕まえようとしてて……」

 

 

「なんだ――そんなことか(・・・・・・)」

 

 

「……え?」

 

 エリィに対する父の反応は、驚くほどにそっけなかった。

 一瞬、それがボクの父の声とダブった。

 

「勝手なことをするんじゃない。それよりも急ぐから、僕について来るんだ」

 

「……そんなこと、じゃないもん」

 

 エリィがぽつり、と反論した。

 2人の間に不穏な空気が流れはじめていた。

 

「どうした、エリィ?」

 

 この状況は、ボクにとっては幸運なことのはずだ。

 逃げ出す隙が生まれるかもしれない。

 

(そのはず、なのに)

 

 ボクは木の陰からわずかに顔を覗かせ、様子をうかがった。

 ふたりは会話に意識を取られているようで、こちらには気づきそうもなかった。

 

 なんだか、やきもきする。

 一見、父が悪く見えた。

 

 しかし、外側から見ていると、エリィの父がどこか切羽詰まっているようにも見えるのだ。

 

 彼女はそのことに気づいていない。

 

 ふたりがなにかすれ違っている(・・・・・・・)気がしてならなかった。

 すこし冷静になれば、ふたりとも……。

 

(はっ、バカバカしい)

 

 もしかして、エリィに同情しているのか?

 ボクはくだらないことを、考えかけている。

 

「あたしはほかの子とはちがうの! 特別なの!」

 

「いったいなんの話だ。とにかく、今はこんなこと話しているヒマは……」

 

「また、そうやってはぐらかすの!? あたしはみんなとちがうもん! そうよ、あたしはみんなが行けない村の遠くにだってひとりで行けるし……」

 

 まるで駄々をこねる子供だ。

 ……いや。

 

 エリィは事実、まだ子どもなのだ。

 ボクよりもずっとエラそうにしゃべっていたから、そんな実感はなかったが。

 

「っ! まさか”外”に出ていたのか!? ひとりで遠くまでいくなと言っただろう!」

 

 エリィの父が大声を上げた。

 

「ぁ、ぅ……で、でも! あたしは……」

 

「まったく、もうすこしみんな(・・・)を見習って過ごせないのか。いい加減にその人間みたいに粗野な考えかたをやめて、おしとやかになりなさい」

 

 聞き分けのない子供を叱るように、エリィの父は言った。

 当然のようにその言葉は悪い方向に働いた。

 

「ふ、フンっ! 人間? お父さんは『人間は人間は』って言うけど、本物を見たことがないんじゃないの!?」

 

「……どういう意味だ」

 

 そして、エリィはまるで父親を挑発するかのように言い放つ。

 その致命的な一言を。

 

「人間って、お父さんが言うのとは全然違ったわ! お父さん、今日ね、あたし……」

 

 

「――人間に会ったのよ!」

 

 

 次の瞬間、エリィの父は態度が豹変した。

 




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