※この作品はR-18です。

テイマー職は奴隷商!?   作:可愛ケイ@VTuber兼小説家

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第16話『”奴隷商団”』

「どこだ! どこで会った!?」

 

「ヒっ!?」

 

 エリィが父の怒声に小さな悲鳴を上げた。

 だが、彼にはそれをおもんばかる余裕すらないようだった。

 

「そんな、まさか、もう回り込まれていたのか!? エリィ、もう一刻の猶予もない。今すぐ逃げるぞ!」

 

 エリィの父が、彼女の腕を掴んだ。

 ムリヤリに引っ張って歩き出す。

 

「イ、イヤっ!」

 

「エリィ! 僕のいうことを聞くんだ!」

 

「絶対にイヤっ!」

 

「早くっ!」

 

 エリィと父は激しく揉めていた。

 今なら気づかれずにこの場を離れられそうだった。

 

 ボクが逃げるべきか迷っていると……。

 遠くのほうからまたべつの、それも複数の声が聞こえてきた。

 

「おい、あっちから声が聞こえたぞ!」

 

「急げ! 3班に分かれて追いつめろ!」

 

「このバカ新人が! お前、監視を怠っただろ! 包囲から漏らしやがって!」

 

「ひぃっ!? す、すいませんッス!」

 

 それらはエルフであるふたりとは似ても似つかぬダミ声。

 いや、普通の……人間(・・)の声だった。

 

「しまった! 気づかれたか! エリィ、たしか前に秘密基地があると言っていたな? そこへ逃げて隠れるんだ。そして3日間、絶対に出てくるな」

 

「え!? どういうこと? なに言ってるのお父さん? 今日、なんだか変だよ。それに今の声はいったい?」

 

 エリィも大勢の声を聞き、ようやく冷静になりつつあった。

 彼女の父は膝を着き、目線の高さを合わせて伝えた。

 

「よく聞きなさい、エリィ。あいつらは……」

 

 

「――”奴隷商団”だ」

 

 

「どれ、い?」

 

 エリィがまるで聞いた言葉の意味がわからなかったかのように、その単語を繰り返した。

 正直、信じられない思いなのはボクも同じだった。

 

(奴隷商団だって? そんな設定、この世界(ゲーム)に存在しなかったのに)

 

 呆然とするボクたちを置いてけぼりにして、事態は急展開を見せはじめていた。

 

   *  *  *

 

 ――僕が注意を引きつける。隠れてやり過ごしたあと、すぐにこの場を離れるんだ。

 

 エリィの父はそう言い残し、マジックで奴隷商団の人間を挑発しながらこの場を離れていった。

 彼女は木の陰に座り込んで、小さくなってしまっていた。

 

「……ぅっ、ひっく」

 

 やがて、エリィは耐え切れなくなったように嗚咽を漏らしはじめた。

 秘密基地で見せていたような傲慢さは見る影もなく、まるで迷子のようだった。

 

「え、と……」

 

 ボクは意を決し、巨大樹の陰から姿を現した。

 まぁ、正確にいえば『ボクを背負ったテオが姿を現した』のだけれど。

 

「ひくっ、なに、よ……ひくっ」

 

「ぁ、その……」

 

 ボクはじっとエリィを見つめる。

 彼女の目元は赤らんでいた。頬を伝って涙がまた一滴、地面へと落ちた。

 

 もはや隠さずにいうが、ボクは彼女のことを心配していた。

 しかし、どう声をかけていいのかわからない。

 

「なによ。人の泣き顔なんて覗き込んで……ひくっ。あんた、ほんとに悪趣味で……サイテー、ね」

 

「ぃっ、ぃや! ち、が……」

 

 慌てて否定しようとするが、言葉に詰まった。

 ボクがコミュ障だからというのもあるが、一番の理由はほかにあった。。

 

 まったくもって彼女の言うとおりだったのだ。

 ボクは彼女の泣き顔に、興奮していた。

 

「……ごくっ」

 

 思わずのどが鳴った。

 なんというか、エリィはすごく泣き顔が似合った。

 

 彼女の泣き顔はすごくいい《・・》。

 その美しい相貌が涙で濡れ、悲しみに歪むのはとてもそそる(・・・)。

 

 ボクはそんな思いを誤魔化すように「そうだ!」と声をあげる。

 テオに話しかける。

 

「テオ、さっきの人も言ってたしボクたちは帰ろっか!」

 

 言った瞬間、エリィはキッとこちらを睨みつけた。

 

「ひっ!?」

 

 ボク、なにか間違えたこと言ったか!?

 反射的にテオを盾にするが……やけに静かだった。

 

「わかってる、わよ……」

 

 エリィは弱々しい声でそう呟いた。

 しゅんと項垂れまま立ち上がり、ボクたちがやって来た方向――秘密基地へと、とぼとぼ歩きはじめる。

 

 てっきり怒られると思ったのだが、そうはならなかった。

 それほどまでに、落ち込んでいるということだろう。

 

「テオ」

 

 ボクもテオに指示を出し、エリィのあとを追って歩かせる。

 ……沈黙が痛い。

 

 今まで、あれだけやかましかった彼女が大人しいと調子が狂う。

 この空気を変えようとボクは意を決し、口を開いた。

 

 そして、知ることになる。

 コミュ障はなにもしゃべられないだけじゃないのだ、と。

 

「にしても、さっきのエリィのお父さんさぁ……マジで最低だったよな!」

 

 もちろん話し相手はテオだった。

 空気が凍る、というのはこのことを言うのだろう。

 

「――は?」

 

 エリィがゾッとするほど冷たい声を出した。

 

 ボクは沈黙を誤魔化そうとした結果、余計なことを口走ったのだと気づいた。

 しかし、すでに口は止まらなかった。

 

「い、いや! だってさっ、なんだったのかなアレ! 普通あんなのムカつかない? 自分勝手なことばっか言って、子どもの話も聞かないで。最低だろ、そんなの。マジで、あんな親は死んだほうが――」

 

 その言葉には、自分の父親に対する怒りも混ざっていた。

 そして、次の瞬間。

 

 ――ボクは吹き飛んでいた。

 




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